この素晴らしい世界たちに魔法陣を!   作:スマラカタ

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お読みいただきありがとうございます。
やっと、デストロイヤー戦が終わりを迎えます!
それでは、本編開始です。


第10章 この『魔法陣』の発動に祝福を!

「……私は……私の名は『芳澤かすみ』と申します。」

 

 『機動要塞デストロイヤー』内にいた少女がそう名乗ると、俺はその声と『すみれ』という彼女の発言を聞き、先日のあることを思い出していた。

 

「……『芳澤かすみ』。そうか、お前が……」

「え、あの、私に何が……?」

「い、いや、こっちの話だ。気にしなくて大丈夫だ。」

「……?」

 

 俺がそう言うと、彼女はきょとんとした表情で首を傾げた。

 ……実は、彼女のことを、俺は前から知っていたのだ。この間の交通事故の夢の中で、『すみれ』を鉄の塊から庇い救ったその姿を。

 

 俺がそんなことを考えていると、ウィズが俺に声をかけてきた。

 

「か、カズマさん。すみません、色々聞きたいことがあるでしょうけど、今は……!」

「おっと、そうだった! 今はそんな場合じゃなかった!」

 

 俺がそう言うと、かすみは少し困惑した顔でアクアに尋ねた。

 

「え、あの、すみません。あの……えーと……」

「あ、私はアクアよ。どうしたの?」

「……あの、アクアさん。私、さっき目覚めたばかりで、この場所で一体何が起きているのかを把握できてないんですけど……」

「あぁ、そうだったわね! えーと、簡潔に言うと……」

 

 アクアがかすみに事情を説明すると、彼女はかなり慌てたような表情でこう叫んだ。

 

「え、えぇ!? 何ですか、その状況!? ここが日本ではないことは、薄々気づいていましたけど、まさか、そんなとんでもない状況になっていたなんて……!」

「まぁ、驚くのは当然だな。多分、オレも同じ状況なら驚くだろうし。」

「……というか、アクセルの街の連中全員が驚くだろ。目覚めた瞬間、気づけば動く要塞にいましたなんてさ。むしろ、譲ちゃんがすぐに適応できてんのがすげえよ。」

 

 ニケとダストがそんなやりとりをしていると、ダクネスが椅子に腰かけていた白骨化した遺体の付近で、一冊の手記を見つけていた。だが、彼女はその中身を見て、首をかしげていた。

 

「……これは、何語だ? 我々の使っている文字ではないな。えーと……」

「どうした、ダクネス。」

「あぁ、カズマ。すまない、実は、この手記に書かれている文字が読めなくてな。」

「文字? ……ちょっと見せてくれ。」

 

 俺がそう言って、ダクネスから手記を借りて読むと、そこには、思わず顔をしかめたくなるような内容が日本語で書かれていた。

 俺のその表情を見て、アクアが少し驚いたような様子でこう言った。

 

「ちょ、カズマ! どうしたの、そんな険しい顔して!?」

「か、カズマ! 一体、何がそこに書いてあったのだ!? というか、読めるのか、それ!」

「あ、あぁ。この中身は読めるぞ。日本語……えーと、俺の元々住んでいた国の文字で書かれてたからな。ただ、内容がな……」

 

 俺がそう言うと、かすみがこちらに近づいて言った。

 

「あの、カズマさん……でよろしいでしょうか。ちょっと、私にも見せていただけませんか? 私も日本語なら読めるはずですから。」

「あ、あぁ。別にいいけど、多分読むと、滅茶苦茶ムカつくと思うぞ?」

「え、それってどういう……? と、とにかく、ちょっと読んでみますね。」

 

 そんなわけで、かすみにもこの手記の中身を読ませると、全て読み終えると、彼女もかなり険しい顔をしながらその手記を閉じた。

 

「……あぁ、なるほど。これは随分酷い……ですね。」

「え、ちょ、一体何が書いてあったんだ!? カズマもかすみも読んだだけで、そんな険しい表情になるって……!」

「いや、本当に何が書いてあったのよ! ちょっと、私が読み上げるから貸しなさいよ!」

 

 ……というわけで、アクアがその手記の中身をその場で読み上げることとなった。

 ちなみに、その中身がどんなものか簡潔にまとめると、次のような感じになる。

 まず、この手記の作者は、この『機動要塞デストロイヤー』の製作者のものであり、内容としては、機動要塞デストロイヤーが生まれた経緯と、なぜ暴走したかについて書かれていた。ただ、この暴走した原因というのが、この製作者の自業自得というか、酒に酔った勢いで、中枢部分にあるコロナタイトという動力源に、説教したのちに煙草で根性焼きをした結果というあまりの酷さであり、その結果、その暴走した『機動要塞デストロイヤー』がその国そのものを滅ぼしてしまったのだとか。

 

 ……そんな内容の手記を、しかめっ面をしたアクアが最後の一文を読み上げた。

 

「『……これ作った奴絶対バカだろ。……おっと! これを作った責任者、俺でした!』。……こ、これで、終わりよ。」

「「「なめんな!!」」」

「これは……どうりで、カズマさんやかすみさんが、そんな顔になるわけですよ……。」

 

 ニケたちやウィズがそう言った後、アクアが続けてこう言った。

 

「あ、まだ続きがあるわね。『追伸、もしこの手記を読んだ方、この機動要塞の動力源のコロナタイトをなくせば止められるはずです。止めれるなら止めてください。もっとも、それを書くなら俺が止めとけよって話ですけど。』……とのことよ。」

「いや、最後まで丸投げかよ!」

「とりあえず、その動力室とやらに向かおう。」

「そ、そうだな。」

 

 そんなわけで、俺たちは、動力源のある中枢部へと向かうことにした。

 

「こ、これがコロナタイト……!」

「凄く真っ赤に燃えていますね……!」

 

 俺とかすみがそんな風に言っていると、ニケが少し慌てた様子で尋ねてきた。

 

「な、なぁ、カズマ。こんなヤバそうな代物、どうやって処分するんだ? めぐみんたち、置いてきちゃったけど……」

「うーん、そこなんだよな。あいつらを連れ戻してたら、ちょっと時間なさそうだし……なぁ、ムスビ。これ、どうすればいいと思う?」

 

 俺がそう言うと、彼は少し考えた後にこう言った。

 

「基本的には、封印かどこか別の地に送る……が最適解だな。ただ、あんな代物、厄災の封印よりはマシとはいえど、今のワレでは流石に無理だからな。他の世界に送る方法もあるにはあるが、ワレの送り先は、結んだ縁や絆が関係するため、必ず人通りの多いところになってしまう。そして、『魔法陣』の力だが、カズマが使えるものは現状ない。……ゆえに、この作戦も使えんな。」

「なるほど。……アクアはどうなんだ? おとぎ話とかだと、こういう時、よく言うだろ? 女神が悪しき力とかを封じれるとかって。」

「いや、確かに、よく言うけども! ……結論から言うと無理ね。全盛期の私ならともかく、今の私は、結構弱体化してるから……」

 

 マジかよ! ……本当にどうしたものか。ムスビも駄目、『魔法陣』も使えない、アクアも駄目となると……

 俺が内心絶望していると、ウィズが手を上げながらこう言った。

 

「あの、それなら、ランダムテレポートはいかがでしょうか。」

「「ラ、ランダムテレポート?」」

 

 俺とニケがそう言うと、ウィズが色々教えてくれた。

 

「えぇ、この世界のテレポートには二種類ありましてね。一つは、特定の地域に転移できる『テレポート』。こちらは、最大三つまで登録できて、私の場合ですと、アクセルの街、王都、この世界最大のダンジョンの三つに転移できるものです。ただ、この登録しているダンジョンは観光地になっているので、この手は使えません。そのため、今回はもう一つの『ランダムテレポート』を使うことになるのですが、これは、文字通り、転移先を指定しないで送るものになります。ただ、その転移先が完全に運任せのため、最悪の場合、人が多いところになりかねないリスクがありまして……」

 

 なるほど、確かにそのリスクを聞くと、あまり使いたくないな。……でも、今回は、そんなことを言ってる場合じゃないな。

 俺がそう思っていると、ウィズが少し困ったような表情で言った。

 

「ただ、それには、魔力が少し足りなくてですね……。ダクネスさん、少し魔力をいただいてもよろしいですか?」

「あぁ、もちろんだ。そういうことであれば、遠慮なく吸ってくれ。」

「ありがとうございます! では、さっそく……」

 

 そんなわけで、ウィズがドレインタッチで、ダクネスの魔力を吸い取った後、『ランダムテレポート』でコロナタイトをどこかに転送したのだった。

 それから、『機動要塞デストロイヤー』から脱出した後、落ちた先を確認するため、ムスビの権能で行き先を確認してもらうことにした。

 

「……なるほど、ここに落ちたのか。これは、また面倒な……」

「「ど、どうだったんだ?」」

 

 俺たちが彼に尋ねると、彼は少し険しい顔でこんなことを聞いてきた。

 

「……お前たち、いいニュースと悪いニュース。どっちから先に聞きたい?」

「え、何その二択。嫌な予感しかしないんだが……」

「おいおい、海外ドラマの定型句じゃあるまいし……じゃあ、いいニュースから……」

 

 俺は嫌な予感がしつつも、いいニュースから先に聞くことにした。

 

「では、いいニュースからだな。……コロナタイトによる被害だが、それによる人的被害はなかったぞ。」

「そ、それは良かった。怪我人はいなかったんだな。」

「でも、それなら、悪いニュースは一体……」

 

 ニケがそう言うと、ムスビはかなり渋い顔でこう言った。

 

「……肝心の悪いニュースだが、この街で悪徳領主と名高いアルダープの屋敷の池に直撃し、屋敷のほとんどが消し飛んでしまったことだな。」

「「「……!?」」」

「「……?」」

 

 その言葉を聞き、俺たちはかなり驚いていた。ただ、ニケとかすみは、アルダープを知らないので、キョトンと首を傾げていた。

 

「えーと、アルダープ……? 誰だ、そいつ。」

「誰なんですか、それ。悪徳領主と言ってましたけど……」

 

 ニケとかすみがそう言うと、ダクネスがアルダープについて説明した。

 

「……アレクセイ・バーネス・アルダープ。この街の現領主のことで、性格は非常に卑劣で、私のことを幼少期から嫁にしようと、執拗に狙い続けている変態貴族の男だ。」

「な、なにそのヤバい人……!」

「話を聞くだけでもとんでもない人じゃないですか!」

 

 ニケとかすみがそう言うと、ダクネスは頷いて言った。

 

「あぁ、そうなのだ。私やお父様が、ダスティネス家……つまり、貴族の特権で、それをなんとか退けていたのだがな。……ランダムテレポートだから、事故とはいえ、面倒なことになったな。あの男は、目的のためならどんな手も使ってくるからな。……何をしてくるかわからないぞ。」

 

 おいおい、マジかよ! せっかく、コロナタイトをなんとかしたってのに!

 俺がそんなことを考えていると、先に外に出ていたダストたちが慌てた様子で声をかけてきた。

 

「た、大変だ! デストロイヤーが熱暴走を起こしやがったみたいだ!」

「「「は、はい!?」」」

 

 ……全く、次から次へと! トラブルに愛されすぎだろ、俺たち!

 

「ど、どうすんの、カズマ! こういう時こそ、カズマの出番でしょ!?」

「いや、俺に言われても!」

「あわわわ……! もうすぐ爆発しそうです! こうなれば、一か八かで私が……」

 

 ウィズがそう言いかけた時だった。突然、ムスビが持っていた『魔法陣』の本から一枚のページが『桃色』に輝きだし、物凄い勢いで街の方に飛び出していった。

 

「え、嘘だろ! こんなタイミングに!?」

「え、ちょ、マジで!? しかも、『桃色』ってどういう……!」

 

 俺たちがそんな状況に困惑していると、ムスビがハッとしたような表情でこう言った。

 

「『桃色』……! そうか、今が使いどころなのか!」

「え、使いどころ……って、それどういう……?」

 

 俺が首を傾げる中、ニケはある可能性にたどり着いていた。

 

「……そうか! カズマ、爆裂魔法だよ!」

「え、爆裂魔法……? あ、そうか、ククリか!」

「うん! 桃色は、ククリの好きな色だから……!」

 

 そうだった。先程は一人だから使うのを控えてもらっていたが、ムスビの『使いどころ』の言葉から察するに。……つまり、この状況の最適解は!

 俺たちがそんなことを考えていると、ククリを背負ったダストと、めぐみんを背負った荒くれ者がやってきた。ククリの手には、『魔法陣』のページがあった。

 

「……真打ち、登場です!」

「……皆、お待たせ! ここからは、あたしたちに任せて!」

 

 彼女たちがそう言った後、アクアたちが少し不安そうな顔で尋ねた。

 

「え、ちょ、ククリが爆裂魔法を撃つの!? 大丈夫でしょうね……!?」

「あぁ、私も少し不安だ。ククリは一度もまだ爆裂魔法を……」

 

 彼女たちがそう言うと、めぐみんが自信満々に言った。

 

「全く問題ありません! 今回は、爆裂魔法のプロの私がいますし、何より、こういう時は必ず成功するというのが、紅魔族の常識なので、心配しなくて大丈夫です! それに、私がそばにいますから!」

「うん! あたしも、今なら絶対に成功できる気がする!」

 

……ククリに爆裂魔法を撃たせるのは、個人的には少し不安だが、やってもらう他なさそうだ。

そう考えた後、俺は、彼女たちにこう告げた。

 

「……よし。ククリ、めぐみん。……後は、任せてもいいか!」

 

俺がそう勢いよく言うと、彼女たちは覚悟を決めたような表情をした後に、笑顔でこう言った。

 

「もちろん! 皆の期待に応えてみせるからね!」

「えぇ、紅魔族に二言はありませんからね! 全力でなんとかしてみせます!」

 

 彼女たちはそう言って、俺たちにハイタッチで交代した。

 それから、彼女たちが爆裂魔法を撃つために準備した後、ククリが大きなひし形の中に、四つのひし形が入ったような形の模様を描くと、『魔法陣』が発動し、『機動要塞デストロイヤー』に向かって、爆裂魔法の魔法陣が展開されていった。

 それを見た後、めぐみんがククリに真剣な顔でこう言った。

 

「……では、ククリ。私に合わせて詠唱をお願いしますよ!」

「うん! ……全力で行くよ!」

 

 ククリたちがそう言った後、彼女たちは息を合わせて詠唱を始めた。

 

「「光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし爆炎よ、異界の絆のもとに、我らが鉄槌を下さん! 穿て、エクスプロージョン!」」

 

 彼女たちの叫びとともに放たれた爆裂魔法は、『機動要塞デストロイヤー』もろとも、爆焔の彼方へと消し飛ばしたのだった。

 

 ……こうして、俺たちは、『機動要塞デストロイヤー』襲来という未曾有の危機をなんとか潜り抜けた。本来であれば、ここで頑張った報酬などをもらえるだろう、そんな風に期待したいところだが、今回はかすみの件に然り、アルダープの屋敷壊滅の件もあり、嫌な予感しかしてなかった。

 そして、案の定、俺たちの屋敷に、面倒な人がやってきた。

 

「……サトウカズマ! 冒険者サトウカズマはいるか!」

「……はい、俺が佐藤和真ですけど。えーと、あの、どちら様ですか?」

「……失礼、私の名前はセナ。王国検察官をしている者だ。サトウカズマ、貴様には、国家転覆罪の疑いの容疑がかかっている! そして、異世界からやってきた者たちも同様の容疑がかけられている! 自分と共に来てもらおうか!」

 

 俺はその言葉を聞き、思わずこう叫んでしまった。

 

「ま、マジか!!」

 

 そんなわけで、俺たちの冒険は、どうやら平々凡々といかないようだ。……『厄災』に、『魔法陣』に、かすみに、アルダープまで。本当、面倒事や謎が多くなってきているが、はたして、俺たちの運命はどうなることやら。全く持って、この時は、不安しかなかったのであった。




ここまでお読みいただきありがとうございます。いかがでしょうか。
これにて、第一幕は終了です。
今後の物語でどんどん謎を明かしていく予定ですので、今後の話を楽しみにしていただけると幸いです。

今更ではございますが、本作品をお読みいただいた上で、「この部分を良くすればもっと読みたくなるのにな」と感じられた点がございましたら、以下の選択肢のうち、どれか一つをお選びください。なお、感想欄での細かな回答は、規約により禁止されておりますので、大変恐れ入りますがご遠慮くださいますようお願いいたします。

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