今回はタイトル通り、聖徳道士の登場になります!
それでは、ここから本編開始です。
俺たちは、アンデッドの行列を道標にして、さっそく最奥に向かうことにした。本来なら、アンデッドや低級悪魔などにおびえながらダンジョン探索の予定のはずだったんだが……
「さぁさぁ、並んでいるところ、済まぬが通してもらおうか! 我は物部布都! 太子様。豊聡耳神子様に仕える側近であるぞ! 道を開けてくれると助かるのだが!」
「おぉ、あの聖人様の!」
「そういや、あのお方がおっしゃってたな。そろそろ弟子が来るだろうって、貴女様でしたか。どうぞどうぞ。」
……と、こんな感じで、布都のおかげで、アンデッドの皆さんが、俺たちを関係者と理解してくれたのかすんなり通してくれた。低級悪魔やダンジョンもどき、なぜかひたすらに光弾を撃ってくる妖精の群れなんかにも遭遇はしたけど、その辺は小町さんが迎撃してくれていた。
そんなこんなで、皆でしばらく歩いていると、俺は少しばかり気になることがあった。
「ん? あれ、ちょっと気になることが。」
「どうしたんだい、カズマ君。」
「あぁ、いや。大した事じゃないんですけど。小町さんや布都って暗闇大丈夫なんですか? アクアもだけど。」
そう、俺の場合は、『千里眼』のおかげで暗視できているのだ。実際、他の面々は自前のランタンや、小町さんが持ってた提灯などを使いながら進んでいるわけなんだが……
俺がそう言うと、布都たちが軽く補足してくれた。
「我は仙術の応用で夜目が利くようにしてあるぞ。元々地下深くに眠っていた時期もあったからな。」
「あたいも仕事柄、夜目が利かないと困るというか……あ、提灯はあたいのためじゃないよ。たまに夜に出くわすんだよ。迷子とかに。そのため用さ。」
「私もそうね。暗闇でも昼間と変わらないぐらいには、はっきりとくっきり見えるわよ。」
なるほど、結構便利な……ちょっと待て。今、アクア。何て言った。
「おい、アクア。今暗闇でも昼間ぐらい見えるって言ったか。」
「えぇ、言ったわよ。」
「……馬小屋で一緒に寝てた時、夜中何か見てたか。」
俺がどこか青ざめた顔でそう言うと、アクアが何かを察したのかすぐにこう返してきた。
「何も見てないわ。……私、音がしだしたら反対向いてたし。もしかして、デリカシーない女だと思われてる?」
「あ、いや、それならいいんだ。……本当、ありがとうございます。アクア様。」
俺がそう言うと、布都とセナさん、トマは首を傾げつつ、他の連中は生暖かい目で見てきた。
「アクア様。あんた、腐っても女神様なんだねぇ。見直したよ。」
「……カズマさん、良かったな。アクアさん、とんでもなく寛容で。」
「……オレもそう思うよ。アクアさん、優しいんだな。」
「やめろ、やめろ! 勝手に慰めんな! おい、お前ら。そんな優しい目で見るんじゃない!」
そんな恥ずかしすぎることがありつつも、俺たちがさらに最奥に向かっていると、トマや布都が先程からの気まずさからか、話題をそらそうとあることを尋ねてきた。
「そ、そういえばですけど! こ、このダンジョンって、キールダンジョンって話ですけど! アクセルの街近辺に昔からあるんですよね!?」
「き、気が合うな、トマ殿! わ、我も気になっておったのだ! このような遺跡であれば、何か謂れがあるのではないか!?」
あー、そういやなんかあったな。キールダンジョンの伝説みたいなの。
俺は先程の恥ずかしさを忘れるべく、ギルドで聞いた話を思い出しつつ教えた。
「……えーと、確か聞いた話によれば、昔、キールっていう天才アークウィザードがいたそうなんだがな。ある一人の令嬢に一目惚れしたらしいんだ。で、令嬢との身分の差が大きくて結ばれなかったらしい。で、そのキールって人は国のために尽くして国最高峰のアークウィザードになったらしくてな。で、ある時、王様に呼ばれて、王様が尋ねたらしい。お前の望みはなんだと。」
「ほう、それでその望みとやらはなんなのだ?」
布都が俺にそんな風に聞いてきたが、セナさんが補足でこう伝えた。
「……それがですね。彼が何を望んだのかまでは伝わってないのですよ。ただ、一説によれば、キールがその令嬢を攫って、このダンジョンに立てこもっていた……らしいということはわかっているのですが……」
彼女がそう言うと、小町さんとスバルが即座にツッコミを入れた。
「いや、その望み、絶対にその令嬢と結ばれたいだと思うんだけど。あたい、よく見るよ。恋した男の火事場の馬鹿力ってやつをさ。」
「それな。こういう時は絶対そのお嬢様と結婚したいとかだろ。」
まぁ、言われてみれば確かに。昔話でも大抵頑張るのは、愛した人のためってのが鉄板か。一寸法師とかもそうだが。
そんなことを話しながら進んでいると、ついに例の隠し通路……というより、隠し部屋があった。その部屋には、小さなベッド、タンス、床に敷かれた畳と布団。そして、大量のお供え物やお宝が山のように置かれていた。
俺たちがその光景に唖然としていると、椅子に座って、大量のアンデッドの皆さんから相談を受けていた金髪の紫マントの女性。それから、目深にローブを被っていた骸骨の男がこちらに気づいて話しかけてくれた。
「……ふむ、なるほど。それは、また随分な苦労をされてきたのですね。……失礼、少々お待ちを。」
「おや? そこにいるのは、プリーストかな? ……随分と大所帯のようだが、何用かな?」
骸骨の男がそう言うと、金髪の女性が彼と布都に対してこう言った。
「いえ、キール殿。布都は私の関係者ですね……うん? それで布都よ。そちらの方々はどちら様かな? いえ、約一名はよく存じてます。一体何があったら、あのサボタージュの泰斗とここに来ることになるのですか?」
金髪の女性がそう言うと、布都が即座に彼女に言った。
「太子様、遅れながら馳せ参じてしまったこと、大変申し訳ございません! この者たちは現地で出逢った佐藤和真殿とそのお仲間でございます! そこの死神は霊夢殿が送り付けたようでして……」
なるほど、あの金髪の女性が太子様か。なんというか、カリスマオーラ全開の人だな。納得した。そりゃ、アンデッドの皆さんがありがたく並ぶわけだ。あんな感じの人が相談に乗ってくれるとなれば。
俺がそんなことを考えていると、その太子様がため息をついていった。
「なるほど、あの巫女が……いえ、私が彼女に頼んだとはいえ、よりにもよって、我々に死神を送り付けるとは……まぁ、尼と入道使いの類が来なかっただけ良しとしましょう。……おっと、大変失礼いたしました。皆様に名乗るのが遅れてしまいましたね。」
彼女が咳払いすると、背筋を正した後、自己紹介をしっかりしてくれた。
「……改めまして。私の名は豊聡耳神子。布都からは、私のことをおそらく『太子様』ということでご存知かもしれませんが、かつては聖徳道士……いえ、佐藤和真さんと菜月昴さん、それとアクア様……でよろしいでしょうか。貴方たちには『聖徳太子』、もしくは『厩戸皇子』と名乗った方がわかりやすいでしょうか。」
「「「……!?」」」
ちょ、え、なんだって!? 太子様……え、聖徳太子様!? マジで!? 歴史の偉人!? あの冠位十二階とか法隆寺でお馴染みの!?
俺たちがあまりの衝撃に唖然としてると、ニケとトマが俺たちに不安そうな様子で尋ねてきた。
「え、ちょ、カズマ。なんであの人にそんな驚いてるんだ?」
「スバルさんもアクアさんもそうですけど、あの方、そんなに凄い方なんですか?」
「凄いってもんじゃねえな。あの人、もし本当ならガチの王族だぞ。古代日本……大昔の俺たちの国の政治の礎を創ったガチの偉人だぞ。」
「あぁ、まだ名乗ってねえはずの俺たちの名前も当てられたしな。」
「私から見ても、実力もカリスマも本物よ。為政者特有のカリスマオーラ全開だし、神に並ぶほどの格はまず間違いなく持ってるわね。」
……アクアから見ても、とんでもない格の持ち主なのか。あれ、でも、聖徳太子って確か男だったような……
俺が内心で考えていると、太子様が何かを察したのか、すぐにこう伝えてきた。
「……なるほど、君たちの世界では聖徳太子は男性なのですね。ですが、我々の世界ではご覧の通り、女性です。あぁ、先に言っておきます。私は最初から女性ですよ。」
……あれか。俗にいう織田信長が女体化してた、じゃなくて、最初から織田信長が女性だった的な感じか。
俺がそんなことを考えていると、スバルが即座に太子様に尋ねていた。
「え、あの、太子様。一つ聞きたいんですけど。俺たちの心の中見えてるんですか? あ、いや、名乗ってなかったのに当てられたから……」
彼がそう言うと、太子様は笑顔で首を振って言った。
「いえいえ、私はさとり妖怪ではありませんので、正確な心の声まではわかりませんよ。ただ、私の能力である『十人の話を同時に聞くことが出来る程度の能力』は、人々や霊の話を十人同時に聞くことができるだけでなく、聞いた相手の持つ十の欲を知ることで、相手の本質を知ることができるのです。無論、例えば、生への執着などが極端に少ないなどのような場合ですと、外してしまうことも多いのですが……」
マジか! だから、俺たちのことを自己紹介なしでも把握してたのか! いや、外すかもしれないにしても、とんでもない人だな、この人!
俺たちがそんなことに驚いていると、キールと呼ばれていた男性が手をあげながら話しかけてきた。
「……太子様。申し訳ありません。そろそろ、私の紹介も……後、アンデッドたちがそろそろ……」
「おっと、キール殿。それはすまなかった。あぁ、紹介しよう。こちらはキール殿。この遺跡の主のリッチー殿だ。」
「初めまして、皆様。私はキール。このダンジョンを造った、貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いだったものさ。」
キールさんがそう紹介すると、アクアがリッチーという発言を聞いてこう言った。
「リッチーですって? 今、リッチーと言ったかしら? 私の前でそんなこと言うなんて、本来なら浄化されてもおかしくないのよ。今回はカズマとかがいるから、並んでいるアンデッド含めて、即刻浄化とかはしてないけど……」
彼女がそう言うと、キールさんがどこか期待を込めた目をして言った。
「……なんと、それは。願ってもない話だ。太子様がわざわざ『様』をつけるということは、それなりの格をお持ちのプリーストであろう?」
「え、えぇ。これでも水の女神だし……」
「それなら猶更都合がいい。私を浄化してはもらえないだろうか。」
キールさんからの思わぬ依頼に、アクアが素で聞き返していた。
「え、ちょ、キールさん……だったかしら? 普通、アンデッドが浄化って嫌がるもんなんだけど?」
「いやいや、私にはもう未練がないのだが、太子様は異世界から来られた方のようで、私や話を聞いてもらって満足したアンデッドたちの浄化に関しては躊躇われてしまってな。」
「えぇ、そうなのです。私は仮にも尸解仙。加えて、別の世界から来た者です。迂闊に浄化してしまうのは良くないかと思い、控えてしまっていたのです。」
「そんなわけでな。……アクア様。頼みがございます。未練の晴れた我々を浄化してもらえないでしょうか。」
「……。」
そういうわけで、俺たちは、この後、アンデッドの皆さんの相談と浄化の準備を手伝うことにしたのだった。
皆様、最後までお読みいただきありがとうございます。
今回はいかがだったでしょうか。
はい。今回は、『東方Project』より豊聡耳神子が登場いたしました。
豊聡耳神子。原典である『東方Project』の第13弾の6面ボスで出てきた彼女なのですが、本編にあるように、聖徳太子なんです。まぁ、この人。原作だと、後の作品である持ち物が異変を起こしたり、彼女の馬が一勢力の大物やってたりと影響力が凄い人なんですよね。
……と、そんなことはさておき、ここからどんどん書いていけるよう、ゆっくり頑張っていこうと思います!
それでは、また次の話もよろしくお願いします!