オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

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 前世で男は非業の死をとげ命を落とした。
誰にも知られず、誰にも覚えられず、ただひっそりと。
しかし、その魂は黄泉へ向かうことなく、何者かの気まぐれか、はたまた何らかの“悪意ある好奇心”によって新たな世界へと転生する。

 転生先の世界は、自分がかつて愛したアニメやゲームに似ているようで、まるで違っていた。 魔法?スキル?ステータス画面?もちろんある。むしろチート級だ。

だが、それ以上に――

“過去に視聴したアニメやゲームで暗躍していた碌でもない組織や企業”が、なぜかこの世界にリアルに存在していたのだ。かくして男は決意する。
「めんどくせぇ……だったら俺が、裏から全部ぶっ潰してやるよ」
平穏な日常を守るため、己のスキルと知識を総動員して、誰にもバレずに男は暗躍する。


第01話転移前の日常

 

(は~何でこうなるかな)

 

 その男は内心で溜息をつき企業同士の争いをどうやったら双方納得の上で停戦するか悩んでいた。

 アーキバスには医療関係、ベイラムには土木関係の新技術を提供したが両方とも新エネルギー産業から離れるつもりはないらしい。

 

 パソコンのモニターと睨めっこし、その男は決断する。

 

(仕方ない、分身を何体か動かすか。ついでに、両陣営に潜り込ませている分身も何体か動かせば、小規模な小競り合い(両陣営とも全滅)で済むかもしれないな)

 

 その男が顎に指を当てて考えていると後ろから声がかかる。

 

「またモニターと睨めっこですか伏黒さん、自分が手伝える仕事だったらやりますよ」

 

 流石ナザリックのギルドマスター、優しい上にちゃんと回した普通の仕事をこなせるから頼もしい。

 

「実は別件でアーキバスとベイラムの仲裁を考えてるのですが自分だけじゃ効率悪くて」

 

 その言葉を聞いたサトルはコメカミに血管を浮かべて怒鳴る。

 

「また他の企業に手え出してるんですか!!、一人の人間がどうにかできるレベルじゃないでしょ!!」

 

 サトルの叫びが社内に木霊する。

 

「いやでも俺が動かないと確実に大きな火種になると思ってね、でも今回は俺だけでどうにかできそうなので何とかなりますよ」

 

 サトルに“何時ものように”笑顔で返す伏黒。

 

(それで何とかなるからこの人は怖いんだよな、言ってる事も冗談のように見えて調べたら本当だったって事がよくあるし母さんが深入りするなって言うのは分かる…けど)

 

 サトルは右腕で顔覆う、どうやら相当考え込んでるようだ。

 

(この人は退職してもらうにしても危険な情報を握りすぎているし命の危険性すらある、やっぱり危険だけど持ってる情報と能力を最大限に生かしてもらうのが一番いいのかな~)

 

 サトルの内情をスキルの思考感知で読み取る伏黒、だが実際問題こいつは裸で宇宙に放り出してもピンピンしてるような人間(?)なのでそれは杞憂というものだろう。

 

(ここは話題を反らした方が良さそうですね)

「所でサトルさん、仕事の手伝い以外にも何か伝えたい事があったんじゃないですか?」

「ああ、そうでした今月で今までやってきたユグドラシルが終っちゃうのでサービス終了日に出席できるメンバーを集めてゲーム内で閉会パーティーでもしようと思って」

 

(ついにこの日が来たか、この世界は果たしてオバロの転生前の世界なのか、他の版権キャラも存在したがそいつを中心に世界が動いてる用には見えなかった。

 

 やっぱりこの世界は何処か見たことあるようで全く別の世界なんだろうか)

 

「どうかしたんですか、やっぱり忙しいですか」

「いえ、予定の方は問題ありませんよ、ただ……メンバーにウルベルトさんとベルリバーさんは来ます?」

「来る予定ですが何か」

「頼まれていた企業の黒い情報を渡すだけです」

「そんな事はユグドラシル内でしないでください!!」

 

 これがサトルと伏黒の日常だった。

 

 

◇そして時間は流れてユグドラシル最終日。

 

 

「よう、来たかミストバーン(伏黒)」

「本当にユグドラシル内でこんなことして大丈夫なんですか、今日が最終日とはいえ運営にログを確認されたら終わりでしょう」

 

 ウルベルトが挨拶しベルリバーが意見を述べる。

 

「ユグドラシルを買い取ったので問題ありません、ログの方もいくらでも改変できますよ」

 

 二人から重い溜息が漏れる。

 

「今更だがお前は普通に出来ない事をさらっとするよな、んでいくら掛ったんだ」

 

 ウルベルトが呆れた口調で返す。

 

「お金は払ってませんよ、ただ新しいゲームエンジンと脳内イメージを直接ゲームに出力出来る技術を渡して次に作るゲームを作りやすくしたらお金は要らないとあちらから言ってきました」

 

二人は思わず無言になる。

 

(こいつ……札束で殴るよりもタチ悪いな)

(運営も後半は熱意が落ちてたし、喉から手が出る技術だったんだろうな。ほんと、何者なんだこの人)

 

 呆れと感嘆の混ざった思考が、二人の脳裏を過った。するとミストバーンがテーブルの上にデータファイルを転送する。

 

「で、これが言っていた情報ですね。依頼された分です」

 

 二人は無言でそれぞれのモニターに表示された資料に目を通し、眉をひそめる。

 

「……やっぱりアンブレラだったか。でもこの資料だと他でも生物兵器を作ってる感じがするな」

「正確には、生物兵器というより“人造人間”ですね。少子高齢化が多少は改善されたとはいえ、不人気業種には人が集まりませんから」

 

 ミストバーンの淡々とした説明に、ベルリバーが口を挟む。

 

「でも、俺たちの取り越し苦労ってわけでもないんだろう?」

「ええ。問題は、この“人造人間”が“戦闘用”も含んでいるという点ですね」

「……それじゃあ、実質、生物兵器と変わらねえじゃねえか! 企業はいったい何考えてんだよ!!」

 

 机を叩かんばかりに怒鳴るウルベルト。だが次の瞬間、ミストバーンが短く一言。

 

「お金」

 

 ウルベルトが思わず激昂するがミストバーンの身も蓋もない表現に一気にボルテージが下がる。

 

「そうだけどさ! もっと言い方ってもんがあんだろ!」

(浮き沈みが激しいなこの人は……)

 

 ミストバーンは心の中でツッコミを入れながら肩をすくめる。

 

「そう言われましても。企業も営利団体なわけで――」

「なあ、この“戦闘用人造人間”って、国内で使われるのか?」

 

 ベルリバーが核心を突く。

 

「いえ、大半が輸出用です。さすがの企業も、国内でドンパチする勇気はないみたいですね」

「……また海外が荒れるな」

 

ベルリバーが溜息混じりに呟いた。だがその言葉は、国境の向こうでくすぶる戦火の現実を突いていた。

 

「皮肉な話ですよね今じゃ日本は避難所(ヘイブン)だ、特に戦争中の国の金持ち達が避難してくる始末」

 

 ここでこの世界の情勢を軽く説明すると日本国内は逃げてきた金持ちと企業の重役達がいるおかげで比較的治安は安定しているが、それ以外となると資源の奪い合いや領土問題でいたる所で火種がくすぶっている。原作と違い深刻な環境破壊はまだ起きてないがこのままでは原作と同じくらいまで環境が破壊されるのに時間はかからないだろう。

 

「そしてその金を持ってる奴らが国内にいるから、日本は潤う。でも、金持ちが出てった国は枯れる。……世界中が火種だらけだったら、こうもなるか」

 

 ベルリバーの言葉に、ミストバーンは目を細めた。

 

(すいませんね、二人とも。俺も頑張ったんだが、全部を抑え込むのは無理だった。特に思想や人種、宗教関係の軋轢は、もう諦めましたからね)

 

そのとき、小さな音がしてメール通知が届いた。

 

「あ、モモンガさんからですね。“そろそろサービス終了が近いから九階層に集まってくれ”とのことです」

「もうそんな時間か……」

「少し喋りすぎましたね。……いや、元から時間がなかったから当然なんだけど」

 

 ウルベルトとベルリバーは立ち上がり、それぞれ転移魔法で光に包まれる。

 

「じゃあな、ミストバーン。先に行ってるぞ」

「僕も行きますね。ミストバーンさんも、早く来てくださいよ」

 

 二人が去った後、静寂が戻った部屋でミストバーンはひとり天井を見上げた。

 

 (あの二人が今まで無事って事はこの世界のユグドラシルはただのネットゲーム可能性の方が高いですね、他の版権キャラ達とも会いましたがこれと言ってフラグが立つような事も無かったし、案外普通に終わるのかもな~)

 

 肩の力が抜ける。世界の謎を解こうとする気も、少しだけ薄れた。

 

「……さて、俺も行きますか」

 

 小さく呟くと、ミストバーンは転移の光に身を委ねた。

 

 

 

 

「すいません、お待たせしました」

 

 九階層の玉座間に入ってきたミストバーンを、モモンガがじっと見据えていた。仮面越しでもわかるその視線には、露骨な疑念が滲んでいる。

 

「何もやましいことはしてませんよ、ウルベルトさん達とお話ししていただけです」

 

 ミストバーンが平然とそう答えると、モモンガから個別チャットが飛んできた。

 

『伏黒さん、ユグドラシル内でやらないでくださいって言いましたよね!!』

『すいません悟さん、これが一番手頃で確実性のある連絡手段だったもので――』

『運営にばれたらどうするんですか!! ログはちゃんと残るんですよ』

『買い取ったので問題ありません、今なら何をしても揉み消せますよ』

 

 その一言で、モモンガの肩から力が抜けたようだった。息を吐き、地の底から這い上がるような絶望のオーラがその身から溢れ出す。

 

『……なんでそんなことした』

 

 声は静かだったが、その奥に怒気が混じっているのは明白だった。

 

『もったいなかったからですかね。あのままだとサービス終了と共に、全部がただのデータの塊として消えるだけでしたから。買い取って、自分の個人サーバーで運用して、皆さんが気軽に集まれる集会所みたいにしようと思ってますが……気に入りませんか?』

『はあ……それなら……まあ、いいでしょう。ただし、下手に改悪したら許しませんよ』

『ご安心を。改変するつもりはありません。ここには皆さんのたくさんの思い出が詰まってますからね』

 

 チャットが終わると、どこからともなく現れたバードマンのペペロンチーノと、その隣に寄り添うシャルティアが声をかけてきた。

 

「お~い、モモンガさん。こんなところにいたんですか? ご家族が探してましたよ。早く行ったほうがいいんじゃないですか?」

「私もペペロンチーノ様と同意見です。お兄様が探されてましたよ」

「……えっ、どっちの?」

「マサキお兄様です」

 

 ペペロンチーノが返答するより早く、シャルティアが即答する。

 

「ああ、もうそんな時間か。すぐに行くと伝えてくれ。ミストバーンさんも来てください」

「分かりました」

 

 モモンガ達が去る中、ミストバーンはその場で足を止め、ほんのわずかに顎に指を当てて考え込む。

 

(……思えば、原作だとNPCは異世界転移するまで意思を持たなかった。でもこのユグドラシルでは“学習AI搭載”で、かなり自然に応対できる。性格も微妙に原作と違ってるし……シャルティアが標準語喋ってるとか、もはや別人レベル)

 

 視線を上げる。九階層の荘厳な装飾、膨大な資産の象徴としての玉座、そしてそれを作り上げた仲間たちの存在感。それが、ミストバーンの記憶を過去へ引き戻す。

 

(それに“戦技”や“祈祷”といったシステムも、本来のユグドラシルには無かったはず……。自分の持ってる原作知識はあくまで参考程度か。原作だとモモンガさんは母親を早くに亡くして天涯孤独の設定だったのに、この世界じゃ家族健在で、しかも五人兄弟の三男……)

 

 ミストバーンはため息交じりに微笑む。

 

(……そして、原作ではサービス終了時に集まったのはヘロヘロさん一人だった。それが今では、まるで大規模イベントのように人が集まっている。やっぱり、自分の杞憂だったかもな)

 

「また顎に指を当てて何を考えてるんです」

「いえ、長い間ユグドラシルをモモンガさん達とプレイしましたが何かやり残したことはないかと思ってた所です」

「もう遅いですよ、と言ってもそれは半年ぐらい前から言っててほぼほぼやり遂げましたし、後はユグドラシルサービス終了に伴う閉会式パーティーぐらいですね」

 

 そうそう言うとモモンガ達は家族の元に移動した。

 

 

 

 

「全く今日のパーティーの主役が席を空けるのはどういう事だ、サービス終了まであと一時間を切ってるんだぞ」

 

 家族内では理性的かつ厳格な次男・マサキのド正論パンチが、モモンガ──いや、鈴木サトルの心にぐさりと刺さる。

 

「ごめん、マサ兄……」

 

 肩をすくめながらも、その視線はすぐ隣で気配を消しているミストバーンに向けられる。

 

 それだけで察したマサキは、内心で重い溜息をつきながら個別ボイスチャットを開いた。

 

『……またお前か伏黒。今度は何をやらかした』

『情報を確実に渡すために、買い取ったユグドラシルで企業の後ろめたい情報をギルメンに渡してました』

 

 静かに、それでいて堂々とした声が返ってくる。マサキは一瞬にして沈黙し、仮想空間とは思えぬほどリアルな挙動で、肩を落とした。

 

 サトルもその反応から、状況をなんとなく察する。

 

「全く……お前は生きた厄災みたいな奴だな。サトル、リアルでもこいつはこんな調子なのか?」

「マサ兄の言う通りだよ。辞めさせる話も出たけど、持ってる情報が危険すぎて、クビにするより面倒を見た方がメリットになるんだってさ」

「は~……実に母さんらしい判断だ。俺たち兄弟でこいつの面倒を見てないと、何をやらかすか分かったもんじゃない」

 

 しかし、そう言いながらもマサキの目線はサトルへと移る。訝しげな視線を受け、サトルは小さく肩をすくめる。

 

「なんだその目は。言っとくが、こっちも研究が忙しくて中々そっちに顔を出せないのは知ってるだろ」

「それでも月に一回は顔出してよ!こっちは毎日、伏黒さんのトラブルの尻拭いや監視で滅茶苦茶忙しいんだぞ!」

「ソウスケ兄さんは政治家だから論外として……部長の姉さんとマキマの奴も来てないのか?」

「来てないよ!! 俺一人だよ(泣)」

 

 悲しいかな身内に甘い性格のサトルだと先に自分で何とかしようとしてしまい、実際何とかなってしまってるので応援が来ないのである。だが建前上は社内にいる兄弟で監視する約束になっているが姉も部長と言う立場であるため簡単には動けない、そして次女はと言うと。

 

「オフィーッ!!お兄ちゃん達何してるの?」

「ちょっと待てお前酔っぱらってるな、ギルメンたちと飲んでたのか」

 

 絶賛飲みにケーションの真っ最中であった(ゲームしながら飲酒してます)

 

「お姉ちゃんたちやギルメンの人達とも飲んできたよ、にしてもやっぱりこのギルドは私達を含めても女性の比率が少ない気がするな~何でももっと女性を集めなかったの」

「異形種の人気は特に女性に高くないからな、人間種の方が装備できる武器や防具が多いし見た目もいい」

(その分尖った性能の装備は異形種が多いけど)

 

 ここで言う所のサトルの言う異形種が人気がないというのには語弊がある。実際獣人、いわゆるケモナーはある程度人気はあるのだが方向性がナザリックとは違うのでケモナー達はケモナーを集めてケモナーだけのギルドを作っている。獣人化具合でギルドが別になるくらいだ、ここら辺の事情はペペロンチーノの方が詳しいだろう。

 

「実際、女性に人気がある異形種って、獣人や天使、悪魔、サキュバスくらいですけどうちには来ませんでしたね」

 

 ミストバーンの分析に、マキマが間髪入れず反応した。

 

「ちょっとここに一人美人で可愛いグレーターデビルがいるじゃん!」

 

 ミストバーンの発言にマキマが反応するが、

 

「本当に美人で可愛い奴はそんな事は言わん、お前のは自意識過剰だ」

「マサキ兄ひど!助けてサトル兄ちゃん」

 

 そう言うとオーバーロードの姿のサトルに抱き着くマキマ。

 

「うへへ~ひんやりしてる~♪」

(相当酔っぱらってるなこいつ、後で母さんか姉さんに任せた方が良いな)

 

 サトルは酔っ払いになった妹に手を焼いている一方でミストバーンは、

 

(オーバーロードの状態のサトルさんだとゴツゴツしてそうで抱き心地はあんまり良さそうには見えませんね)

 

 そう思いつつミストバーンはスキルの魔力感知を発動するがやはりなにも引っ掛からない。

 

(やっぱり何も起こらな……ちょっと待てこれはどういう事だ!)

 

 念のためにユグドラシルのデータに異常がないか確認するためにログアウトしようとしたらログアウト出来ない。慌てて他のアバターを使って今の状況を確認しようとするも肝心な伏黒(リアルのアカウント)との接続が切れてしまっている。

 

(駄目だ他のアバターにもアクセス出来ない、やっぱりこの世界線でも異世界転移が来るのか)





オリ主、伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)CV子安

 見た目は呪術廻戦の伏黒甚爾、ただ外見が伏黒甚爾だが中身はお調子者。原作知識持ちの転生者かつチートスキルをいくつか持ってるが中身がポンコツなので全部使いこなせていない。モモンガの事をからかいがいのある後輩と思っており何時も仕事で無茶ブリをしてしまう。

 今回の登場キャラですが流石に鈴木無惨なんて名前なんてリアルで名乗れないので中の人繋がりでパイロット兼科学者やってる人物の名前をお借りしました、同様に兄弟と名前を統一するために悟→サトル表記に変更しています。

前作ではハジケすぎてしまったので今作はハジケ控えめで行こうと思います。

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