オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

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 リットン伯を教育的指導(ナザリック式)で改心させたミストバーン達、
 だがまだ最後に一人残っていた。




第14話ナザリックとバカ王子

「はぁ~マジでこれは粛清案件だわ」

 

 バルブロ王子の資料を見て呟くミストバーン。

 

「これは改心させるよりもとっかえた方が良いね、やらかした事が大きすぎる」

 

 そう答えるのはフラットフット。

 

「違法娼婦を買って飽きたら捨てる、こいつ本当に王子なのか」

 

 弐式炎雷も飽きれたように資料を机に叩きつける。

 

「王族だからこそ腐ったのか、腐ってるからこそ王族になったのか……どっちにしてもクズだな」

 

「というか、こいつのせいで王国の民衆は余計に貴族不信になってますからね。“おいたが過ぎた坊っちゃん”で済む範囲は超えてます」

 

 フラットフットが冷静に補足する。

 

「粛清だな」

 

 ミストバーンが淡々と結論を下す。

 

「出た、即決」

 

 弐式炎雷が苦笑しながら首を振る。

 

「リットン伯の時はやらかしてることが自分のためとはいえ貴族の範囲内でした。だが、こいつは小さい頃から甘い蜜を吸い過ぎたためか悪事に染まり切っている、リットン伯の様に改心してもまた悪事に染まりかねない」

「で、本音は?」

「生理的に無理、早く処分したい」

 

 ミストバーンが感情ゼロで断言すると、弐式炎雷が肩をすくめる。

 

「処分すると言ってもまたグレータードッペルゲンガーと入れ替えるのか」

「いやここは王子だしいっその事ライラの粉を使ってる所を石化させてそのまま晒し者にしたいですね、その方が後ろに隠れてる八本指に逃げられないぞっていう圧力をかけれるだろう」

「しかし、問題は家族だないくら何でも身内が晒し者になるのは避けたいじゃないか」

「ですよね~」

 

 弐式炎雷の問いにミストバーンが肩を落とす。

 

「なら駄目元でモモンガさんに聞いてみたらどうだ、優良な貴族や王族との交渉はあっちに任せっぱなしだろうし」

 

 そう返すのはフラットフット。

 

「そうですよね、先ずは聞いてみない事には何も分かりませんし」

 

 

◇暫くして

 

 

「なあ、王族も案外ドライなんだな」

「いやそれ以前にバルブロ王子が擁護できない悪党と言う所が大きいでしょうね、俺の身内にこんなのがいたら速攻で縁切りますよ」

「それで、結局モモンガさんの許可が降りたわけだが――」

 

 フラットフットが呟く。

 

「“民の信頼回復が最優先。王族の中にも腐ったリンゴはある”ってね」

 

 ミストバーンが淡々と続ける。

 

「まさか、“王の威厳を保つためにも見せしめを”ってコメントが来るとは思わなかったぜ」

 

 弐式炎雷が肩をすくめながら笑う、しかもその発言をしたのは案の定のラナー王女である。

 

「じゃあいつも通りの俺がバルブロ王子の捕獲、弐式炎雷さんが現物の証拠集め、フラットフットさんが記録や帳簿集めという事で」

「ああ」「いつも道理で」

「じゃあ行きますか」

 

 

◇王都・バルブロ王子私邸 深夜――

 

 

「侵入完了、外周の警備は“マジで目だけついてるカカシ”って感じですね」

 

 フラットフットが耳元の通信に報告する。

 

「こっちも同じ、従者が飲んだくれてて鍵付きの帳簿部屋が全開だった。ある意味才能だわ」

 

 弐式炎雷の声が呆れを通り越して感心に近い。

 

「こちらも接触完了。……現在、王子は未成年の娼婦らしき者をはべらせて風呂中。全裸で猿のように踊ってた。もう駄目だこれ」

ミストバーンの乾いた報告に、全員沈黙。

「……生理的に無理度が加速しましたね」

「もはや哀れだな。では、処置を始める」

 

 

◇10分後・王子私室

 

 

「――あ? 誰だてめぇら! 下がれ、俺は王子だぞ! このクズ共がァッ!」

 

 ベッドに裸で寝そべるバルブロ王子、傍らの娼婦が悲鳴を上げて逃げ出す。

 だが、その時にはすでに魔法が発動していた。

 

「《ライラ・ミスト》」(ただ単に風魔法でライラの粉と石化の粉を飛ばしただけ)

 

 薄紫の霧が王子を包み込み――刹那、歓喜の絶叫を上げる。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ァァァァ!!!」

「気持ちいい!! 今までで一番だァァァ――ッ!!!」

 

 その叫びを最後に、彼の肉体が硬直し、石像と化した。

 

「いや~ただの風魔法にライラの粉と石化の粉を混ぜるだけでこんな人権破壊魔法が出来るなんて驚きですね」

「ホントえげつないな使うのはいいけど使われたくはないわ」

「悪事に手を染めた者の妥当な最後だね、これで八本指の威嚇になってくれればいいけど」

 

 

◇数時間後・王都中央広場

 

 

 石像となったバルブロ王子が、恍惚の笑みを浮かべ、腰を突き出すようなポーズで晒されていた。

 全裸に見えるが、腰にはナザリックロゴ入りの黒布が一応巻かれている。

 ザナック王子とランポッサⅢ世からの「最低限の慈悲」だ。

 

像の台座にはこう刻まれていた:「公の場で私的快楽を貪った王子の末路」

                ~民は見ている、そして忘れない~

                 by ナザリック監修

 

 

 

 

「いや~これでようやく腐敗貴族は払拭出来ましたね」

「ああ、これでようやく本題の八本指の掃討にかかれる」

「なあもしかして八本指の掃討ってまた俺たちで全部やんのか」

「確か麻薬取引部門、奴隷売買部門、警備部門、密輸部門、暗殺部門、窃盗部門、金融部門、賭博部門の八部門ですね」

「ハハハハハ、流石にモモンガさんも全部俺たちに任せたりしないだろう」

 

 そう言う弐式炎雷は大量の冷や汗をかいている。

 

「これは急いでモモンガさん達に連絡した方が良いですね、もし全部やれと言われたらストライキする自信があります」

「その時は頼む、全責任をお前一人で背負ってくれ」

「そこは連帯責任でしょうが!!」

 

 そう言いいながらモモンガの所に行く三人、結果は、

 

「ああ、それなら包囲網が完成したから、一人一回で済むように手配してある」

 

 モモンガのその言葉に、三人は思わずホッと胸を撫で下ろす。

 

「本当ですかモモンガさん! 八部門って聞いた瞬間、血の気が引きましたよ」

 

「お前たちはそれぞれ、好きな部門を選んで動いてくれ。ただし、麻薬取引部門だけは例外だ」

 

 モモンガが一段と渋い顔をして付け加えた。

 

「例外……というと?」

「“来客”がある。しかも、かなり重たいお方だ」

「まさか……ドラウディロン女王陛下、ですか?」

 

 ミストバーンの表情が一瞬で緊張に染まる。

 

「そのとおりだ。ライラの粉の流通源が王都にあると聞いて、わざわざご自身で出向いてこられるとのことだ」

 

 モモンガは額に手をやり、深い溜息をついた。

 

「“自国の民が毒に蝕まれているのを黙って見ていられるほど、私は穏やかな支配者ではない”と仰っていた」

 

 静かな語調ながら、室内の空気は一気に凍りつく。

 

「……終わったな、麻薬部門」

 

 弐式炎雷が思わず呟いた。

 

「いや、むしろ始まったんだよ。ナザリックの責任としても、ここで誤魔化しは通用しない」

 

 フラットフットが神妙に言う。

 

「ドラウディロン陛下は、王としての誇りと責任を持つ真の“守護者”だ。彼女が本気で怒れば、王都どころか王国全体が吹き飛ぶ」

 

 モモンガの声音には珍しく重さが滲んでいた。

 

「麻薬部門の対応には、私の姉、キアラが同行する。お前たちは残りの七部門に集中してくれ」

「ハイハーイ、俺麻薬部門に行きたいでーす」

「正気かミストバーン」

「正気も何も多分そのままやったらドラウディロンがぶっ放して町ひとつ消えるとかありそうなのでストッパーが必要かと」

「お前の場合火にガソリンをそそぎそうで不安なんだが」

「言っておきますがふざける時と場合はちゃんと見てるんで問題ないでしょう」

『じゃあ何故リアルでは俺に理不尽な要求や仕事を任せたんですか?』

『でもどうにかなったでしょう、言っておきますが自分は仕事を出来ない人間に仕事を割り振ったりしません、というかこちらからも言わせてもらいますが、何故全部受けてしまったんですか、断っても良かったのに』

『そ、それは…………』

『別に俺は貴方をレベルアップさせるためにとかそんな事を考えていません、サトルさんがいつ断れるかを見てたんです、まあ結果はお察しでしたが、この前も過労で危なかったみたいだし貯めこみすぎなんですよ』

『……反論できないのが悔しい』

 

 サトル――モモンガが苦笑交じりに呟いた。

 

「そういう所なんですよ。だからこそ、俺たちは今ここで地雷処理をしてるんです」

 

 ミストバーンが淡々と返すが、その口元は少しだけ笑っている。

 

「そうそう、“火薬庫のフタ役”ってのも案外やりがいありますよ?」

 

 フラットフットが肩を竦める。

 

「爆発しないとは言ってないけどな」

 

 弐式炎雷の言葉に、全員が一瞬沈黙し――

 

「……爆発しないようにしますよ」

 

 ミストバーンが言った。

 

 その時、モモンガの背後に設置されていた魔導通信がチリリと鳴る。

 受信したキアラの姿が水晶に映し出されると、彼女は一言。

 

「ドラウディロン女王陛下、王都に到着されました。ご案内を開始します」

 

 その報告に場の空気が一瞬で張り詰める。

 

「ま、まずいぞ、予定より早い!」

 

 弐式炎雷が即座に反応する。

 

「キアラさんがついてるなら大丈夫でしょ」

 

 ミストバーンが落ち着いて言うが、次の瞬間――

 

『――女王陛下より、ミストバーン殿に“必ず顔を出すように”との伝言が』

 

 キアラの声が響いた。

 

「はい死んだぁッ!!」

 

 弐式炎雷が叫ぶ。

 

「いや、生きてる。まだ生きてる……はずだ……」

 

 ミストバーンは目を閉じて、静かに深呼吸する。

 

「何とか……交渉して……陛下の暴走だけは防ぐ……」

 

 小さく呟くと、彼はゆっくりと席を立つ。

 

「じゃあ俺たちは予定通り、他の七部門を手分けしていくぞ」

 

 フラットフットが皆をまとめるように指示する。

 

「それじゃあ、俺は密輸部門に行くわ。見つけたら片っ端から地面に埋めてやる」

 

 弐式炎雷が拳を鳴らしながら出ていく。

 

「私は金融部門を見ます。帳簿ごと脳を割りたい連中が多そうなので」

 

 フラットフットも軽く手を振って続く。

 

 ミストバーンは水晶の中のキアラに一礼し、最後に一言だけ呟いた。

 

「――せめて王都が、朝まで無事でありますように」




 殺してないからまだ温情(白目)

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