オーバーロードによく似た世界で(本編完結) 作:ペンギン勇者
「やっぱり危険すぎる」
そう言うのはペペロンチーノ。
「でもデビルガンダムを転移させなかったら現実世界の方が先に駄目になるぞ」
弐式炎雷がそれに答えるが、
「もしそうなったらリアルとリンクしてる私達も共倒れになるか……」
ヘロヘロが考えながら言う。
「それは……つまり、世界かデビルガンダムかって話になるわけだね」
タブラ・スマラグディナが、難しい顔で指を組みながら呟いた。
「というかさ」
ペロロンチーノが椅子をぐるぐる回しながら不満げに言う。
「なんでそもそも“転移できる前提”で話してんの?」
「それはミストバーンのやつが“できる”って言ったからだろ」
武人建御雷が腕を組んで目を細める。
「だが、あいつの“できる”は信用ならん。こないだの『超時空・量子融合炉でパン焼ける』発言、覚えてるか?」
「焼けたぞ? チーズナンだったが」
弐式炎雷が平然とした顔でお茶を啜る。
「味も悪くなかったろう?」
「いや、美味しかったけど! でも話が違うだろ!!」
一斉に数人がツッコんだ。
「はっはっはっ! まあまあ、落ち着けよ諸君!」
フラットフットが机をバンバン叩きながら笑う。
「要は、デビルガンダムを転移させた上で“どうコントロールするか”って話なんだろ?」
「その“どう”ができたら苦労しないんだよ」
ヘロヘロが額に手を当てて溜息をつく。
「制御方法を確立しないまま転移したら、それこそ世界終了だ」
「……つまり、こういうことか」
モモンガがついに重い腰を上げる。
「① 現実世界を救うためにデビルガンダムを転移させる
② だが制御不能なら現実世界で暴走する危険性あり
③ ミストバーンは『余裕』と言ってるが信用できない」
「ちょっと失礼ですよ、いくら何でもそこら辺を考えていないわけではありません」
「じゃあミストバーンさん、具体的に話してくれませんかねえ」
「正直言って起動状態でおくるのはリスキーなので休眠状態で転移させて、あちらで起動させるつもりです」
「本当にそんなことが出来るんですか」
「できますよ。理論上は、リアル世界の私が何もしてなかったと思ってるんですか、ちゃんとデビルガンダムのデータはあちら側にもあるから起動は可能なんですよ、ただ問題になってくるのは生体CPUですがそこは私がなりましょう」
ミストバーンの言葉に、場の空気が一変した。
軽口すら交わせない、張りつめた静寂が会議室を支配する。
「……お前、自分を……生体CPUにすると言ったな?」
モモンガが、静かに、しかし確かな重みを持った声で確認する。
「はい。デビルガンダムは“意志ある機構”です。真の意味で制御するには、外部からの信号では限界がある。ならば──私が内側から意思を持って導く。それが最も確実な方法です」
ミストバーンの声は凪いだ海のように落ち着いていた。どこにも迷いはなかった。
「それは……君自身の命をデビルガンダムに預けるということだぞ」
タブラ・スマラグディナが、思わず声を強める。
「万が一、意識の同化が進めば……君は人間であることを失うかもしれない。それでも、やるのか?」
「“人間”とは、定義上の話に過ぎません」
ミストバーンは淡く微笑んだ。
「私は、目的を見失ってまで己の存在を守るつもりはありません。──世界を守れるのなら、それで充分です」
「……狂ってる」
ペロロンチーノが呟いた。
(ここまで来たら言うしかないか)
「あ、御心配なく、リアルの方に自分が使える分身は結構ストックしてありますのでコアになるのはその一人です。私自身が消える事はありませんよ」
その言葉は、会議室に再び波紋を走らせた。
「……なんだと?」
モモンガが低く問う。目に宿る光は、かつて人間だった頃の“鈴木サトル”のものではない。ギルドの長として、組織の命運を託される者の、それだった。
「つまり、最悪“お前”が暴走しても、本体は無傷で別口にいるってことか」
武人建御雷が眉をひそめる。
「その言い方は語弊がありますね。あくまで“コア”となるのは、私という情報存在のコピー……言うなれば魂のエミュレーターです。現実世界に干渉できる最低限の独立人格。ただし、制御に必要な倫理と判断、思考は完全に“私のもの”です」
ミストバーンはあくまで淡々と説明する。
「ちょっと待ってください、ゲームならともかくリアルでどうやってそんなことできるんです、普通の人間なら出来ませんよ」
(さてどう誤魔化したものか、ここで自分が異世界からの転生者と言っても誰も信じてはくれないだろうし)
「さっきも言いましたが、コモンアイテム程度ならもうリアル世界に持っていけるのはさっき言いましたね、実はそのアイテムで遊んでたら自分の複製を作ることに成功しまして」
「それってどんなアイテムなんですか」
(実際は自分の能力だからアイテムなんて使ってないんですけどね、ここは適当に誤魔化しますか)
「マイクラコラボの時に課金アイテムであった不死のトーテムですね、あれを現実世界に持ってきたらなんか死亡時に自分の情報をコピーして生き返るという仕組みになってたみたいで、それが一番丁度良かったからですかね、他にも外れガチャで出た蘇生アイテムを
色々と試しましたが不死のトーテムが一番都合が良かったです」
「……マイクラコラボの不死のトーテム……?」
ヘロヘロが眉をひそめながら呟く。
「いや、それただのネタアイテムじゃなかったか? 確かプレイヤーが死んでもアイテムを全ロスしてから復活とかいうバグ付きの……」
「そのバグも含めて、調整しました。今では全ロスしません。むしろ精神と情報を物理に同期する中継点として、非常に優秀です」
ミストバーンは涼しい顔で言い切った。
「いやいやいや、情報の物理同期って……そんなん出来るわけ……あれ? いや……でも、あの時の──」
弐式炎雷が何かを思い出しかけたように言葉を詰まらせる。
「……つまり」
タブラ・スマラグディナが、ゆっくりと指を組み直しながら言う。
「君はもう、とっくに現実世界に“拡張人格”を送り込んで、環境適応試験まで済ませてるということか」
ミストバーンは、満足そうに目を細め、静かに頷いた。
「ええ。何事も、計画は準備の段階で勝負が決まりますから。すでに三体の拡張人格が現実世界で活動中です。一体は表の経済ネットワークに潜伏し、もう一体は国際AI管理局のデータベースに直接接続済み。最後の一体が……“デビルガンダム搭載計画”に特化したコアユニットです」
(と言っても半分は嘘ですけどね、私は貴方達と出会う前から分身を世界中に潜り込ませていますから)
「おい待て、それって……」
ヘロヘロが息を呑む。
「お前、国家中枢のシステムにまで……!」
「ええ。ただし直接介入ではなく、合法的にです。あくまで“顧問AI”として登録されていますから。私の拡張人格がバレることはまずありません」
「合法なのかよ……」
ペロロンチーノが頭を抱えながら呻いた。
「まあ確かに、やろうと思えば君ならやりかねないとは思ってたが……そこまでとはな」
と、フラットフットが感嘆交じりに呟いた。
「つまり」モモンガが再び口を開く。「お前は――すでに“次の戦場”で、布石を打ち終えているということだな」
ミストバーンは静かに頷く。
「はい。だからこそ、今必要なのは“皆さんの意思”です。私は準備を整えました。しかし最終的にデビルガンダムを現実世界へ送り込むかどうかを決めるのは、このギルド――ナザリックの総意です。どうか、ご判断をお願いします」
しばしの沈黙の後、弐式炎雷が呟くように口を開いた。
「……ふざけてるようで、全部本気なんだな、お前……」
「私は常に真剣ですよ」
ミストバーンの声には、ただ一点の曇りもなかった。
「──いいだろう」
モモンガが椅子の背もたれから身体を起こし、場の中心を見渡す。
「これより、ナザリック評議会を招集する。議題はただ一つ。“デビルガンダムの現実世界転移”について。賛成か、反対か」
各々が緊張に息を呑む中、投票が始まろうとしていた。
──世界の運命を決する、ナザリックの審判が今、下されようとしている。
◇暫くして
「で投票結果は…………」
「四分の三が賛成、四分の一が反対か」
「と言う事は」
「──転移、決行、ですね」
モモンガが静かに言った。
その声には重々しさと、ほんのわずかな決意の色が混じっていた。
「おおお……マジでやるのかよ……」
ペロロンチーノが呆然と呟く。
「お前たち、わかってんだろうな?」
武人建御雷が腕を組んだまま、鋭い視線でギルドメンバーを一人一人見渡す。
「これはもう、“遊び”の領域を超えてるぞ。現実世界に干渉するってことは──それこそ、国家すら動かす事態だ」
「承知の上です」
ミストバーンが淡々と答える。
「ですが、もはや我々の世界は“ゲーム”ではありません。世界が崩壊しかけている以上、見過ごすという選択肢はないでしょう」
「ていうか」
弐式炎雷が苦笑する。
「この中で“完全にリアルと無関係”なやつ、いるか? 俺たち全員、現実世界にもう根を張っちまってるんだよ。違うか?」
誰も何も言わなかった。
代わりに、全員が静かに、だが確かな意思を込めて頷いた。
「……ふん、ならば次に必要なのは転移作戦の具体的な実行手順か」
タブラ・スマラグディナが、すでに作成していたらしいホログラム資料を展開する。
「コアユニットとなるミストバーンの分身は既に起動待機中。問題は“転移装置”の座標設定と、物理空間への出現処理です」
「転移は……東欧の廃都市だ」
ミストバーンが即答する。
「監視衛星も限定的、通信も分断された空白地帯。現地に“迎撃能力”を持つ国家は存在しません。発生後に一時的な環境撹乱があっても、被害は最小限に抑えられます」
「だがそれを、向こうの連中が黙って見てるとは思えんな」
フラットフットが腕を組んで唸る。
「国際AI管理局がどう動くか……いや、お前の分身が潜ってるんなら、むしろ“誘導する”つもりか?」
「その通りです。適切な“演出”を加えることで、我々の存在は救世主として認識される可能性がある」
ミストバーンの目は鋭く輝いていた。
「“悪意なき超技術の具現者”──それが、私たちの立場になります」
「……悪意なき、ねぇ」
ヘロヘロが苦笑しながら呟いた。
「お前みたいなやつが言うと、なんか余計に怖いよ」
「ですがその前にドラウディロンとの交渉をまとめないと意味がありません、まず彼らに始祖魔法を使えるドラゴンを増やしてもらわないと」
「何か具体的な策は考えてあるんですか?」
「永劫の蛇の指輪を使おうと思ってます」
ミストバーンの言葉に、室内の空気が一瞬張り詰めた。あの指輪の名が出た時点で、事の重大性を理解しない者はいない。
「永劫の蛇の指輪って確か対象者の願いを叶える代物ですよね」
タブラ・スマラグディナの言葉に、ミストバーンは頷いた。
「ええ。“代償”はありませんしよくある神話系アーティファクトのように、命を奪ったり代価を要求したりはしない。ただ単に、バカみたいに高くて希少価値が高いだけです」
(と言っても私もあまり持ってないんですよね、願いをかなえようと思ったら運営に直接言えばよかったし)
「……ああ、そうだったな。ユグドラシル時代でも、廃課金者か運がいい奴しか手に入れてなかったっけ」
フラットフットが苦笑する。
「だが持ってる可能性は誰にでもあるんだよな。課金額と運次第でな」
「実際、俺も昔イベントで一個当てたことあるぜ?」とペロロンチーノ。
「使いどころがわからなくて倉庫の肥やしにしてたけど、まさかこういう場面で役に立つとはな……」
「それを今、ドラウディロン側に交渉材料として使うというわけですか?」と建御雷。
「はい」とミストバーンはうなずく。
「目的は、始祖魔法適合者に“明確な動機”を与えること。願いがある者にはその願いを──つまり“力を使う理由”を与える。その結果として、魔法の安定運用が可能になります」
「道具そのものじゃなくて、“魂の起爆剤”ってわけか」
弐式炎雷が指を鳴らして言った。
「そうです。始祖魔法は単に強大なだけでは使い物にならない。使い手の意志が力の形を決める。だからこそ、願いを持つことが必要なのです」
「で、相手に『ただ渡す』んじゃなくて、その条件付きで交渉を進める……なるほど」
ヘロヘロが腕を組んで唸る。
「悪くない話ですね。“ドラゴンに力を与える”じゃなくて、“力に値するドラゴンを導く”……か」
「ドラウディロン側も誇り高い種族です。命令や施しではなく、“選ばれる機会”を提示することで、彼らの自尊心を損ねず協力を引き出せると踏んでいます」
ミストバーンは淡々と続ける。
「女王とは既に非公式な接触を済ませていますし、前に遊びに来た時に連絡先は交換してあります」
「あの時は本当に大変だったよな、まさか第六階層の闘技場でナザリック全員と女王との一騎打ちとか、女王が加減してくれなかったら今頃ナザリックは無かっただろうな」
そう遠い目をするのは武人武御雷。
「……順調にいけば、準備は揃うな」
モモンガがゆっくりと頷いた。
「まずはドラウディロンの交渉の前にデビルガンダムの休眠処置からだな」
「すいません、それはもうやってあります。なので後はドラウディロンと交渉してデビルガンダムをリアル世界に送るだけですね」
「問題はあの女王が快くようだくしてくれるかだな」
「そこはもう運次第としか言えませんね」
会議室に重苦しい溜息が漏れた。
難しい理屈を並べてますがどうやって始祖魔法を使えるようにして始祖魔法を使って
デビルガンダムを現実世界に送るかという話だけです。