オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

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 ギルメン会議でデビルガンダムの転移許可が下りたミストバーン
 早速ドラウディロンに連絡して交渉に入るのだった


第18話ナザリックとドラウディロン

「ミストバーン、また面倒な話を持ってきたな」

 

 その日の午後。魔導通信水晶を通じて、ドラウディロン王国との特使交渉が始まっていた。

 

 女王ドラウディロンは、手元の書類に目を通しながら、わずかに眉をひそめた。

 水晶越しでもわかるその鋭い視線に、普通の人間なら声を詰まらせたかもしれない。だが、ミストバーンは微動だにしなかった。

 

「で、始祖魔法をそちらで使えるようにしてもらう代わりに――デビルガンダムを、そちらの“リアルの世界”に転移させるという事じゃな」

 

 女王の声には明らかな棘が含まれていた。

 まるで“理解した上で、なお疑っている”という圧力が、通信水晶を越えて突き刺さってくる。

 

「はい。その通りでございます」

 

 ミストバーンは即答した。だが、その声色には驚くほどの冷静さが保たれていた。

 

「正直に言うと気乗りしないのう、理屈は分かっとるが本当にそちらの現実世界に転移可能か疑問じゃし、下手すると始祖魔法を使った時の膨大な魔力でデビルガンダムは暴走せんのか」

「女王陛下、全く心配ないと言えば嘘になりますがデビルガンダムの暴走は休眠状態のままなので影響を受けません、転移の方はコモンアイテム程度ならこちらの現実世界に転移済みなので後はその穴を広げるだけなんです」

「……ふむ。つまり、転移そのものは既に成功例がある、というわけか」

 

 ドラウディロンは再び書類に目を落とす。だが、その視線は今や、敵意というよりも“見極め”に変わっていた。まるでミストバーンの言葉の裏に隠された意図を探るかのように。

 

「だがな、ミストバーン。我が国の“魔法的領域”は、既に幾度となく異界からの干渉に曝されてきた。お主らの提案がその延長線上にあるのは理解できる。だが、あのDG――デビルガンダムは、単なる兵器ではあるまい?」

「ええ、その通りでございます」

 

 ミストバーンは頷いた。

 

「デビルガンダムは兵器というより、一種の管理装置。自己再生、自己進化、自己増殖の三大機能を持ち、適応対象に応じて独自の進化を始める――“破壊的神格構造体”とも呼ばれています」

「神格構造体……」

 

 女王は小さく息を吐く。明らかにそれは、支配者として聞き捨てならぬ言葉だった。

 

「……それを、我が領域の地脈上に置こうというのか?」

「場所はこちらで用意させていただきます。一応予定地はナザリック周辺の草原地帯となってますが変更なされますか?」

「いや、それでよい」

「安心していただきたいのは、デビルガンダムは“完全休眠状態”で転移されるという点です」

 

 ミストバーンは続けた。

 

「魔力の供給源は切断され、意思核となる生体CPCは空。転移後も我々の“封界呪文”によって、起動条件を満たさない限り自立行動は不可能です」

「……ふむ。ならば、起動条件とやらについても確認せねばなるまいな」

 

 ドラウディロンは背凭れに深く身を預けながら、水晶越しにじっとミストバーンを見据えた。

 

「我らとしては、最悪の事態――デビルガンダムが“目覚めた”場合への備えを怠るわけにはいかん」

「当然です」

 

 ミストバーンは一切の躊躇なく応じる。

 

「起動条件は三段階。まず第一に、外部からの高密度魔力の特別供給。これは通常の環境では実現不可能です」

「……始祖魔法の余波程度では?」

「問題ありません。デビルガンダムが起動するには膨大な電力が一括で注がれる必要があります。故意にデビルガンダムに雷系の魔法を連発しない限り起こりえないでしょう。第二に、生体CPUとの再リンク――これは人工知能(デビルガンダム)との再結合を指しますが、現在は“情報断絶”状態であり、リンクは外されております」

「そして第三は?」

「万が一の暴走に備えての外部からの緊急停止装置、コードを送ればデビルガンダムは停止します」

「ふん、用意は周到じゃのう……。だが、忘れるなよ。用意周到であることと、安全であることはイコールではない」

「心得ております。ただ万が一暴走してもパイロットがいないデビルガンダムなら少し本気になった女王陛下ならワンパンかと」

「なんじゃ、その程度なのか」

 

 ミストバーンはうなずいた。

 

「それでも、デビルガンダムを必要とする理由は変わりません」

「その理由、改めて問おう。何ゆえ、そこまでしてデビルガンダムを“現実世界”へと引き入れねばならぬ? 始祖魔法を使いたいだけであれば、もっと簡便な手段もあろう?」

 

 沈黙が流れた。ほんの一瞬――だがその刹那に、ミストバーンの目がわずかに鋭さを帯びる。

 

「少し長くなるが構いませんか?」

「構わん」

「最初はプレイヤーの力を得た私たちが現実世界で頑張れば地球再生は叶うと思ったんです、でもそれをするには色々と足りませんでした。計算しましたがまず人数が足りない、あの日本以外が荒廃してしまった世界ではどうやっても再生より破壊のスピードの方が上回る。次に現実世界の私たちは人間であるという事、食事、ストレス、睡眠といろんな要素があり安定して結果を出し続けるには不向き、ついでに余計な所から狙われるリスクがあります。最後に人力でやればとても手間暇がかかってしまうという事、これではいくら人数を揃えた所で管理が行き届いていなければまた自然が破壊されてしまう。以上の結果から人力からデビルガンダムを使った局所的なテラホーミングという結果にたどり着きました」

「成程のう、そういうことか――よく分かった」

 

 水晶の向こうで、ドラウディロン女王は深く一つ息を吐くと、背凭れから体を起こして姿勢を正した。

 

「では、交渉は次の段階に入る。転移の日時、規模、監視体制――そして、我が国との正式な覚書についてじゃ」

「かしこまりました」

 

 ミストバーンもまた、わずかに頷き、手元の端末に何かを打ち込む。まるで、この場のやりとりすら予定通りであるかのような淡々とした所作だった。

 

「まず、転移の予定日は?」

「現実世界時間で三日後の午前零時、そちらの魔法的時間軸では“月蝕の刻”にあたる時間帯になります。地脈の動きが静まり、外部干渉の少ないタイミングを選びました」

「ふむ……“月蝕の刻”か。最も精霊の沈黙する時間帯じゃな。確かに、干渉のリスクは最小限になる」

 

 女王は傍らの参謀に目配せする。脇に控えていた一人の長耳の老精霊が、無言で頷いた。

 

「では、監視体制については? さすがに、転移装置の制御はそなたら任せでは済まぬぞ?」

「ナザリック側の監視網に加え、ドラウディロン王国の魔術院より三名を常駐させる形でいかがでしょうか?」

「……妥当な案じゃ。良いだろう」

 

 女王は頷き、続けて厳しい声を落とす。

 

「しかし、これは念押ししておくが……我が国の“対デビルガンダム部隊”も、すでに待機状態にある。転移直後に異常が発生した場合、躊躇なく破壊を行う」

「当然です。むしろ、起動と同時に撃ち込んでいただいても構いませんよ。起動したらですが」

 

 ミストバーンの薄ら笑いに、女王は思わず苦笑した。

 

「ほんに、お主は出会った時からこうじゃったな。冗談とも本気ともつかぬ物言いで、こちらの神経を逆撫でしてくる」

「お褒めに預かり光栄です」

「じゃがちゃんと約束は果たしてもらうぞ、まずはそちらのワールドアイテム永劫の蛇の指輪で竜王国のドラゴンを始祖魔法に目覚めさせるのが先じゃな」

「分かっております」

 

 そう言ってドラウディロンとの通信が途切れる

 

「モモンガさん」

「何だミストバーン」

「竜王国行ってきていいですか?」

 

 通信が切れた水晶の向こうで、ミストバーンは振り返ると神妙な面持ちでモモンガに問いかけた。が、そこに張り詰めた空気はない。むしろ、任務直前の遠足前夜テンションである。

 

「……お前、今の話を聞いてた限りだと、結構な国家間交渉だったよね?」

「はい、ですのでワクワクしております」

「どういう感情回路してんの!?」

 

 モモンガのツッコミも虚しく、ミストバーンはすでにワールドアイテム《永劫の蛇の指輪》を左手に装着していた。

 

「今すぐ外せ、使う願いがないのに一体何をしているんだ」

「モモンガさん俺はドラウディロンに竜王国に来いと言われたんですよ」

「それは分かっています、だからギルメンで誰をつけるか考えてから――

「それでは遅いですよ、転移するにも初めて行った場所には出来ないし、なので早速永劫の蛇の指輪使ってドラウディロンの所まで行ってきます」

「ちょっと待て、それだと本末転倒じゃないか」

「いえ私今二千個近くまで増やしたので大丈夫です、現実世界の私が頑張ってユグドラシルの私のデータ弄って増やしてくれました」

「二千個……?」

 

 モモンガは思わず言葉を失った。

 

「そうです、二千個です。なので願い事関係はもう困らないかと」

「いや、ちょっと待て、いくら現実世界の俺たちがチート気味とはいえ、それはもう開発者の領域だろ!?」

「開発者? いえ、普通にネットで拾ったデータ解析ツールを自作改良しただけですよ」

 

 さらっと言ってのけるミストバーンに、モモンガは頭を抱えた。

 

「普通じゃねぇ……!」

「では行ってきます」

 

 ミストバーンは軽く手を挙げて、すでに光り輝き始めた指輪の力で転移の詠唱を始めていた。

 

「ちょっ、おい待て! ちゃんとドラウディロン側に事前連絡――」

 

 だが、彼の言葉はもうミストバーンの光にかき消されていた。

 

 シュイィィン――。

 

 黄金の転移光が一閃し、その場から彼の姿はかき消えた。

 

「……うん、これ多分、また外交問題になるな」

 

 モモンガは呆れたように肩を落とす。

 

 

 

 

 そのころ、竜王国――ドラウディロン女王の執務室。

 

 光の柱と共に現れたミストバーンの姿に、部屋にいた数名の近衛兵が即座に構えを取った。

 

「何奴――ッ!」

「待て。こやつは……我らが同盟相手、ミストバーンじゃ」

 

 ドラウディロンが制止すると、兵たちは徐々に武器を下げた。

 

「陛下、突然の訪問失礼いたします。デビルガンダムの転移準備、もう完了しておりますのでこちらのドラゴン達の始祖魔法を使えるようにと駆け足で来た次第です」

「……お主、もはや挨拶すら省くのか」

「すみません、先に『準備できました』って伝えたかったんです」

「まるで報告メールのテンプレートか何かのように話すな」

 

 女王は頭痛を覚えつつも、ため息をつく。

 

「まったく……。まあよい。ならば早速、始祖魔法の媒介となる《永劫の蛇の指輪》の起動を行うがよい。精霊院の長老も立ち会っておる」

「ありがとうございます。あとで領収書切っておきますので経費の件はモモンガさんに」

「いや、お主ほんとに外交の礼儀ってもんを理解しておるか?」

「大丈夫です、ナザリック式交渉術は『最初に強気で押してから土下座』です」

「……モモンガの苦労がよう分かる」

 

 

 

 

 一方そのころ、ナザリック地下大墳墓。

 

「アルベド、デミウルゴス。あとコキュートスも。緊急のギルド会議を招集する。内容は……“ミストバーンがやらかした件”だ」

 

 モモンガの言葉に、執務室の空気が一瞬で凍った。

 

「……また、ですか?」

「まただ」

「で、今度は何を……?」

「竜王国にワールドアイテムで勝手に転移して、準備完了したって報告するついでにあちらのドラゴン達を《永劫の蛇の指輪》で始祖魔法に目覚めさせているらしい」

「……」

 

 沈黙が広がる。

 

「今からでも遅くありません。ミストバーン様を“事故死”したことにして処理する案を提案します」

「落ち着けアルベド! もう転移したし、向こうに接触してるから、事後処理の方が重要だ!」




 基本ミストバーンはこれやったら面白そうと思ったらすぐに行動してしまいます
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