オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

21 / 28
 ミストバーンの独白の後それを受け止めたナザリックの仲間たち、
伏黒はようやく自分の居場所を見つけるのだった。


第21話いざ現実世界へ

◇あれから二日後

 

 

「ん、ミストバーン、お前『三日三晩寝倒します』とか言ってたけどもういいのか」

 

 そう弐式炎雷が尋ねると、ミストバーン――伏黒は肩をすくめて苦笑を浮かべた。

 

「いえ、まだ片付いていない問題がありまして。その問題の期限が……明日なんですよ」

「なんだよ、宴のときに話せばよかったのに」とフラットフットが口をとがらせる。

「しかしですね、この件は放置できないし保留にもしたくないんです」

「やっぱり現実世界の環境再生にデビルガンダムは必須なのか?」

 

 伏黒は、少しだけ俯いてから静かに首を横に振った。

 

「……いいえ、必須ではありません。けれど、“使えば確実に楽になる”のは事実です」

 

 彼の声音には葛藤がにじんでいた。否、葛藤ではない。既に決断は済んでいる——ただ、それを“共有”することの重さを噛み締めていたのだ。

 

「でも俺は……あれを使いたくないんです。少なくとも、“復興”という名目では」

「理由を聞こうか」と炎雷が真剣な声で促す。

 

 伏黒は頷き、仲間たち一人ひとりの顔を見渡してから、言葉を紡ぎ始めた。

 

「俺は、環境破壊や汚染、失われた土地や文明を、“力で塗り替える”ことでしか解決できないと思っていました。でも……それは結局、“やり直し”なんです」

 

「やり直し、ね」とフラットフットが呟く。

「はい。まるで“バグったセーブデータを巻き戻す”みたいなものです。でも、それって……本当に“未来”じゃないですよね?」

 

 沈黙が場を支配する。

 

「痛みも過ちも、人の歴史です。それをゼロにしてしまったら、人はまた同じことを繰り返す。だから、あえて“人の手”でやりたいんです。失敗を抱えたまま、苦しみながら、

それでも前に進む——そういう“歩み”こそ、意味があると思うから」

「……なるほどね」とブルー・プラネットが目を細めた。

「美しい理屈だわ。でも、それで苦しむ人々が救われなかったら?」

「そのときは俺たちが救います」と伏黒は即答する。「本当に限界になったら、デビルガンダムを“使う”。でもそれは最後の手段。環境を一瞬で直す機械じゃなく、“切り札”として使いたい」

「……それはつまり、“希望”として温存するってことか」とペペロンチーノが微笑む。「いいね。それなら、ボクも賛成」

「俺も異議なしだ」と炎雷が言う。「あんまり綺麗ごとは好きじゃねぇが、てめぇの覚悟には筋が通ってる」

「それにしても、ずいぶん変わったな、お前」とフラットフットがニヤつく。「昔のミストバーンなら、『俺がやる、以上!』って言ってただろ」

 

 伏黒は苦笑を漏らすと、軽く頭を下げた。

 

「皆が受け止めてくれたから、変われました。本当に、ありがとうございます」

 

 その言葉に、ナザリックの面々はそれぞれ小さな微笑みを返した。

 

 やがて、モモンガが口を開く。

 

「では、“現実世界の環境再生は原則として人力で行い、デビルガンダムは緊急時に備えた切り札として保持する”——この方針でいこう。異論ある者は?」

 

 誰一人、声を上げなかった。

 

 こうして、ナザリックという一つの“国家”が未来へ進むための意思を、一つに定めたのだった。

 

(——ここが、俺の居場所だ)

 

 伏黒の胸に、確かな実感が満ちていた。

 

 

◇そして、その翌日の深夜、デビルガンダム転移前――ナザリック前の草原

 

 

 夜は深く、風が静かに草を撫でていた。

 

 だが今夜、その地は——まるで神話の舞台のような光景へと変貌しつつあった。

 

「転移陣、展開完了。魔力安定中」

 

 アウラの報告に、アルベドが小さく頷く。その足元には、封印された“機械の魔神”——デビルガンダムが厳重な結界に包まれて眠っていた。

 

 そして——その時だった。

 

 風が止み、空が低く唸った。

 

「……来るぞ」

 

 伏黒の言葉と同時に、空が“割れた”。

 

 宙に走る稲妻のような亀裂。その中から、幾多の巨大な影が姿を現す。雷のような咆哮、空間を揺るがす翼の羽ばたき。大地すら震えるその威容。

 

 それは、ドラゴンの群れだった。

 

 神の血を引く古竜たち、数千体。青白い光をまとった氷竜、雷を纏う黒竜、地殻を砕く岩竜……そして、その中央。

 

 特大の覇気を纏った漆黒の翼を広げた存在が、舞い降りてきた。

 

——ドラウディロン。

 

 大気が震え、草原の魔素が一瞬にして収束する。

 

 その姿はあまりに神秘的で、まるで天より舞い降りた戦神のようだった。

 

 静かに地に降り立つと、彼女はゆっくりとナザリックの面々を見渡す。そして、一歩前へ。

 

「久しぶりじゃな、ミストバーン。いい顔になったの」

 

 伏黒は膝をつき、頭を下げる。

 

「ドラウディロン陛下、遠路はるばるありがとうございます。この地で、“あの存在”を送り出す許しを賜りたく、改めてお願い申し上げます」

 

 女王は微笑みを湛えたまま、歩を進め、封印されたデビルガンダムを見下ろす。

 

「……確かにこの力は、救いにも、災厄にもなり得る」

 

「その通りです」と伏黒は応じる。「だからこそ、ナザリックと共に誓います。この力は“最後の切り札”として、人の手による再生を補助するもの。環境を“奪う”ためではなく、“守る”ために使います」

 

 沈黙が流れる。

 

 だが、ドラウディロンはやがて頷いた。

 

「ならば、我ら竜王国はその覚悟を見届けよう。……“機械の神”を、この地より世界へ送り出すこと、許可する」

 

 その瞬間——空を覆っていたドラゴンたちが一斉に頭を垂れた。

 

 まるで、神聖な儀式における祝福のように。

 

「転送準備、最終フェーズに移行します!」マーレの声が響く。

 

 転移魔法陣が一層の輝きを放ち、封印が静かに解かれ、中心から異形の巨躯が姿を現す。

 

 脈動する金属の肌、禍々しくも整った機械構造。デビルガンダムは、まるで生き物のように微かに呼吸していた。

 

 伏黒は静かに前へと歩み出て、仲間たちを振り返る。

 

「さあ……始めよう。人の未来のために、“この力”を使う時が来る」

 

 その言葉に、モモンガを筆頭にナザリックの面々が力強く頷いた。

 

 デビルガンダム、転送開始。

 

 草原を包む魔力が高まり、光の柱が天空へと突き抜ける。

 

 その様は、まさしく“神の降臨”のようだった。

 

 そして伏黒は、もう一度だけ空を見上げる。

 

——俺は、もう独りじゃない。

 

 

◇カプセルコーポレーションMS格納庫(現実世界)

 

 

 ゴオォォォォ……ン……!

 

 白く輝く転送エネルギーの中から、巨躯のモビルスーツが姿を現した。

 

 巨大で異形のシルエットを持つ機体であり、通常のガンダムとはかけ離れた存在——デビルガンダム。

 

「……出た。こいつが、本当に、あの……!」

 

 格納庫の制御室から、スタッフたちのどよめきと驚嘆が上がる。

 ただの3DCGだったものが、物理的に存在し、床を軋ませる現実の巨兵として現れている。

 

「完全にマテリアライズされてる……!これ、仮想機構じゃなくて、“実体変換”じゃないか!?」

 

「質量もある!重力反応、実体化成功です!」

 

「中枢ユニットはまだ起動していません!ただし、自己修復構造が……え?なに?自己複製反応もある!?」

 

 研究員たちが騒然とする中、伏黒、マサキ、そしてサトルが現場に走り込んできた。

 

「うわあ、でけぇ……やっぱバケモンじみてるな。ゲームのデータそのままじゃないぞ、こいつ……“成長してる”」

 

 マサキが息を呑む。

 

 伏黒は足を止め、デビルガンダムを見上げながら小さく呟く。

 

「こいつ……現実世界に適応して、独自に構造進化を始めてる。もはや“あの頃のデビルガンダム”じゃない……」

 

 サトルが横で腕を組み、真顔で言った。

 

「これは“現実用のデビルガンダム”ってことか。ユグドラシル世界で完成されたAI知性と、現実科学との融合体……」

 

 その時、構内スピーカーから所長の声が響く。

 

「伏黒、サトル、マサキ!第三制御室でデビルガンダムの“制御リンク”が不安定だ!早く来てくれ!」

 

「やっぱり……完全制御はまだか」 

 

 伏黒は表情を引き締める。

 

「行こう。今ならまだ“人類の技術で抑えられる”。けど——長くは持たない。下手すれば、こいつ自身が“現実の人類の敵”になる」

 

 三人は再び駆け出す。

 

——目指すは、制御リンク中枢。

 彼らの戦いは、ついに現実世界での“第二段階”に突入しようとしていた。

 

 

 

 

「一時はどうなることかと思いましたが……何とか安定しましたね」

 

 第三制御室にて、ようやく一息ついた技術スタッフの一人が安堵の声を漏らす。

だが、その言葉に応える者はいない。

 

 伏黒も、マサキも、サトルも、沈黙したまま巨大モニターに映るデビルガンダムの姿を見つめていた。

 まるで“意思”を持つかのように、微かに蠢く装甲。自己進化を続ける白き巨神。

 

——この静けさが、次の嵐の前触れでなければいいが。

 

 彼らの心には、そんな言葉にならない予感が芽生えていた。

 

「さてここからが一番の問題だな、サトル、伏黒お前らはどうした方が良いと思う」

 

 マサキの問いにモモンガが答える。

 

「まずはギルドのメンバーに連絡を取った方が良いと思うよ、話し合ってから決めないと重大な見落としがあるかも」

 

「あの、マサキさんにサトル一つ言いたいことがあるんですが」

 

「何だ?」マサキが不機嫌そうに尋ねる

 

「デビルガンダムを転移した影響かあちらの世界とのつながりが太くなりまして、俺今ユグドラシルのワールドアイテムを持ってるんですよ」

 

「ええ!!それって何なんですか?」

 

「《永劫の蛇の指輪》です」

 

 伏黒の言葉が部屋に響くと、技術スタッフたちは一斉にその言葉に反応した。

 

「それってユグドラシルでは運営にお願いしてどんなことでも実現可能にして貰うアイテムじゃないですか!!」

 

 モモンガの声が部屋に木霊する。

 

「なのでここはどれくらいの願いが通じるか試そうと思いまして」

 

「ちょっと待てどんな願い事を頼むつもりだ」

 

 サトルが焦りながら言う。

 

「サトルさん言ってたじゃないですか、まずはギルメン達と話し合った方がいいって、だからモモンガさんの希望でギルメンの予定が偶然空く日をこの指輪に頼もうと思いまして」

 

「まあ、その程度なら大丈夫でしょう、それなら例え失敗しても何も変わらないし成功しても大した変化はないですからね」

 

「ではサトルさん、何時頃をご予定で?」

 

「急すぎると何かあるかもしれないから一週間後で、でもその前に事前連絡させて下さい、それとギルメンに不幸が無いようにという文章を付け加えた上で願いをかなえてくださいね」

 

「分かりました」

 

 こうしてサトルの事前連絡の後に伏黒が指輪で願いを叶えた、伏黒には何もなかったが願いを伝え終った指輪は粉々に砕け散った。

 

(今一瞬何かを持ってかれた気がしましたが――気のせいという事にしておきましょう。このアイテムは地球環境再生に無くてはならないアイテムだ)

 




 デビルガンダムより便利な物が来てしまった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。