オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

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 あれから一週間後、ナザリックの方はNPCと自分達のアバターに任せて
サトル達はギルメン会議を開いて今後の方針を決めるのだった。


第22話ナザリックとウロボロス

「よし皆揃ったな、これよりギルメン会議を開始する」

 

 モモンガことサトルによる開始の合図にギルメン達の空気が変わる。

 

「なあ、議題ってやっぱりあのデビルガンダムの事だよな」

 

 テーブルの端で足を組みながら、筋骨隆々の男こと武人武御雷が言った。

 

「そうだったんですが少し変わりそうです、デビルガンダムの転移が成功したと同時にユグドラシルとのつながりも大きくなったためかワールドアイテムでも一番都合がいい《永劫の蛇の指輪》が現実世界で使用可能になりました」

 

 ミストバーン――いや、“伏黒”が淡々と報告したその内容に、会議室の空気が一瞬凍りつく。

 

「……おい、今なんつった?」

「現実世界で、ワールドアイテムが使えるって……マジかよ!?」

 

 思わず身を乗り出すク・ドゥ・グラース。手にしていたエナジードリンク缶が音を立てて落ちた。

 

「てことは……あれか? 願い一つ、現実に通るってことか?」

「しかし全くノーコストという訳ではありません、ユグドラシルで再現可能な願いと違い現実世界では代償を支払わないといけません」

 

「おい、その代償って何なんだ、まさか命とかじゃないだろうな」

 

 弐式炎雷が少し顔を上げて恐る恐る尋ねると、

 

「それに近いですね、命や寿命と言うよりリアルの体力(HP)と精神力(MP)を願いの大きさに応じてもっていかれます」

 

 伏黒の説明に、会議室に沈黙が落ちる。

 

「……え、それ普通にヤバくね?」

「うん、現実でぶっ倒れるやつじゃん」

 

 ク・ドゥ・グラースが口を半開きにしたまま言い、隣にいた弐式炎雷が頭を抱える。

 

「じゃあ試しに“全世界のメイドさんの資料をここに”とかやったらどうなるんだ」

「それくらいの願いだとHPかMPのどちらか一割も使わないと思いますよ、ただ“日本中の美人なメイドさん達を嫁にする”とか願ったら確実にぶっ倒れて願いが不発に終わる可能性が高いですね」

 

「なるほどな……願いの規模と曖昧さでコストが跳ね上がるわけか」

 

 サトルが顎に手を当てて唸る。

 

「なら、“日本中の美人なメイドさん達”じゃなくて、“2025年現在、東京都内在住の20代未婚女性で、家事が得意で黒髪ロングの性格良好なメイド服好きで体型と目鼻が整った人物”って指定すれば……?」

「怖いくらいに具体的ですねそれ!」

 

 弐式炎雷が椅子ごと後ろにのけぞった。

 

「いや、分かるぞそれ。つまり願いは具体性を極めた者が最強ってことだ」

 

 ク・ドゥ・グラースが真顔で呟いた。

 

「ってかそれ伏黒、お前試したのか?」

「はい、試しに皆さんの予定が一週間後に不幸なく空くように願いましたがその時はHPがミリしか減りませんでした、ですがここからが重要です」

 

 伏黒の声に、全員の視線が再び集まる。

 

「《永劫の蛇の指輪》の効果は、使用者の“認識”と“理解力”に連動するんです」

 

「は?」

 

 弐式炎雷が眉をひそめた。

 

「つまり、願いの内容を“自分がどれだけ深く、正確に理解しているか”がコストと成功率に直結します。“不幸が起きない”という願いも、“不幸”の定義をどれだけ自分で把握していたかで結果が変わるということです」

「……あー、なんか分かってきた」

 

 ク・ドゥ・グラースが頷いた。

 

「たとえば“予定が空くように”って願って、そっちの理解が曖昧だったら、『家族が入院して仕事休みになる』とかでも成立する可能性があるってことか」

「その通りです。だからこそ、使用には精密な論理設計と思考の集中が求められます。現実での知識力・思考力・倫理観すら問われる道具なんです」

「ただの万能アイテムってわけじゃねぇのか……」

 

 サトルが眉をひそめる。

 

「伏黒、その“理解”って、他人に代行させられるか? たとえば専門家に願いの内容を設計してもらう、とか」

「理論上は可能です。ただし、最終的に願うのは使用者自身なので、その知識を“自分が納得し、理解している”状態でなければ無効かされます。実際俺がやらかした失敗例を挙げると私は《永劫の蛇の指輪》で、“現実世界における信頼できる協力者の派遣”を願いました、ですが願いは不発に終わりHPとMPが約25%ほどもってかれました、しかしこれを日本総理大臣と有力な議員に絞り計画を伝えた上で再度指輪を使ったところ成功しました」

「おいちょっと待て、情報漏洩の方は大丈夫なんだろうな」

 

 不用心な行動に怒るプニット萌え

 

「何かそれ聞くと願いの正確性はfateの聖杯より正確でドラゴンボールの神龍より不便って所だな、願いを曲解して暴走しないあたり聖杯よりましか」

 

 プニット萌えの皮肉交じりの評価に、一瞬だけ会議室に微妙な笑いが広がった。だが、その直後にサトルが静かに口を開く。

 

「伏黒。……で、お前のその“派遣された協力者”ってのは、どこまで信用できるんだ?」

 

 伏黒は頷き、胸元のタブレット端末を取り出した。

 

「先ほど会議前に一報が入りました。指定通り、彼らは“私の計画を理解し、支持したうえで、機密保持の契約と倫理的誓約を結んだ人物”です。特に議員側は我々が動かす非合法案件の調整役を引き受けてくれます。と言っても俺たちみたいに魔法が使える訳無いので裏方の隠蔽工作をやってもらうつもりですがね」

「……それ、普通に国レベルの介入じゃねぇか」

 

 武人武御雷が腕を組みながら苦笑する。

 

「つーかさ、それってもう俺ら“ユグドラシルのギルド”ってレベルじゃないよな。国家レベルの特殊機関だぞ、もはや」

「ナザリックが“国家”なら、こっちは“影の国家”……そんなところだな」

 

 伏黒の言葉に、今度は誰も笑わなかった。

 

「そろそろ本題に入ろうか。伏黒、その協力者を使って、俺たちが現実で“やるべきこと”の輪郭は見えてきたのか?」

「《永劫の蛇の指輪》の事を考えると環境再生させる国地域を限定して数人で同じ願いを叶えるのがベストですね……ただ……」

「言いたいことがあるならはっきり言ってくれ」

 

 サトルの言葉に少し戸惑う伏黒。

 

「願いをかなえる前にデビルガンダムを起動しておいた方が良いかと」

「おい、何であんな厄ネタ引っ張り出して来るんだ、指輪がありゃあんなリスキーなもん要らないだろ」とフラットフットが言うと

「きっかけが要るんですよ、地球環境再生するにしたっても自然の力に任せてたら何十年かかるか分からないし、もしかしたら願いが不発に終わるかもしれない」

「……願いが不発に終わる可能性?」

 

 サトルが眉をひそめる。

 

「はい。例えば、“地球の環境を再生する”と願った場合、何をどう再生するのか、どの地域に、どの生態系をどの段階まで戻すのか――その全てを理解していなければ、曖昧な願いとして扱われる可能性があります。結果として指輪が“よくわからないから無効”と判断する可能性すらあるんです」

 

 伏黒の説明に、武人武御雷が腕を組み直して渋い顔になる。

 

「つまり、願いの実現に必要な“地ならし”を現実的に行って、結果の道筋を作る必要があるってことか」

「その通りです。自然環境の再生という超大規模なテーマは、現実世界の地形変化・気象変動・化学物質・汚染濃度・人間活動など、ありとあらゆるファクターを内包している。これを一人で完全に理解して、願うのは……非現実的です。ならば、“自然環境を回復しやすい条件”を先に現実で整えておくべきだと考えたんです」

「だからデビルガンダム……」

 

 サトルが顎に手を当てる。

 

「再生能力に特化したあのナノマシン構造体を限定的に制御して、汚染地域を中心に“環境再構築の実績”を作る。願いの実現確率が飛躍的に上がる、と」

「具体的にはデビルガンダムの“自己進化・自己増殖・自己修復”のうち、“進化”と“増殖”を封印し、“修復機能”のみに特化させます。つまり、暴走しないよう設計を施した上で、限定領域だけを再生可能にします」

 

「……お前、もうそこまで準備してんのか?」

 

 ク・ドゥ・グラースが驚き半分呆れ半分で聞く。

 

「いえ。理論は組み立てましたが、実機のカスタム調整はこれからです。今の段階では“失敗すれば自我を持った汚染再生怪獣になる”可能性すらあるので、油断はできません」

「待て。それって要は――制御に失敗すれば、地球がデビルガンダムに喰われるってことだろ」

 

 フラットフットの声が低くなる。空気が、一瞬で変わった。冗談を言っていた誰もが黙りこみ、重たい現実がその場を圧した。

 

「だからこそ、俺たちが動く必要がある」

 

 サトルが言い切った。

 

「ナザリックがNPCに任せられるなら、現実世界で動けるのは今この場にいる俺たちだけだ。俺たちはもう、“ただのプレイヤー”じゃない。現実を変える力を持った……いや、背負った存在だ」

 

 会議室に重たい沈黙が落ちる。

 

「クソ重たい話してんなぁ……」

 

 弐式炎雷がボソッと呟く。

 

「だがやるしかない」

 

 伏黒が頷く。

 

「まずは現実世界で、デビルガンダムを再設計して試験運用。暴走対策として三重の封印機構と外部からの強制シャットダウン機構を実装します。併せて、限定的な試験場として――“日本列島の一部を自然再生区域”として設定します」

 

「そっちは俺が総理側に話通す」

 

 サトルが即答した。

 

「あと、ナザリック側でも“環境再生を推進する異世界モデル”の開発を進めておく。実験と理論の両輪で走らせるぞ」

「うう、おれそう言うの苦手、萌えさんはどう」

 

 そう弐式炎雷が尋ねるが、

 

「流石に専門外です」 

 

 流石のプニット萌えでも自信が無いようだ。

 

「まずはいったんデビルガンダムをチューンして日本の汚染のひどい所投下、そして様子お見てからでも遅くは無いと思いますよ、それにいざとなったらナザリックの強力なNPC達をリアルに引っ張ってきましょう」

「そんなことできるんですか!?」

 

 ペペロンチーノが目の色を変える。

 

「日本でも最近使われるようになった人造人間をNPC様にチューンして《永劫の蛇の指輪》に頼めばその課題はクリアできると思います。人間のフォルムから離れ過ぎた異業種はキャラクターボイスを担当してる声優さんの他のキャラにセットしておけば声の違和感は最小限に抑えられるでしょう」

「ってことは現実世界でゲームのキャラと会えるってことか」

 

 ペペロンチーノが思わず身を乗り出した。

 

「まあ、理論上はな」伏黒が頷きながらも慎重な口調で続ける。「ただし、これは《永劫の蛇の指輪》による高度な再現と、現実の人造人間技術の融合が前提です。外見と挙動は完璧に模倣できても、“中身”――つまり人格や記憶を完全に再現するには、NPCのデータベースと学習アルゴリズムが連動している必要がある」

「ナザリックのNPCは、もともと学習AIで性格を獲得してたもんな」サトルが思い出すように呟いた。

 

「そうです。逆に言えば、我々がかつて彼らに“教えたこと”、与えた“ロールプレイ”や“人間性”が、今でも彼らの中に根付いています。それを再現すれば、リアルに出しても同じキャラとして存在できる」

 

「うおぉぉ……フォアイルとかリュミエールとかエトワルに現実で会えるとか最高かよ……」

 

 ク・ドゥ・グラースが感動で涙ぐみ始める。

 

「だが現実に持ってくるなら、その存在を隠し通すか、社会に受け入れさせるかのどっちかを選ばなきゃならない」

 

 プニット萌えが、冷静な声で釘を刺す。

 

「まあ、政府と繋がった今なら“国家プロジェクトの試験体”ってことでどうにでもなる」サトルが自信ありげに言う。

「問題は、どのNPCを、どの役割で出すか、だ」

「順当にいくなら、自然再生をテーマにした“ガーデナータイプ”がいいですね」伏黒がタブレットを操作しながら提案した。

 

「アウラ、マーレ辺りは環境操作能力もある、ドライアドにしたヒルマあたりも良いかも。あと、コキュートスのような力仕事担当も必須です」

 

「デミウルゴスは? あいついれば戦略面で心強いんじゃないか」ウルベルトが腕を組みながら言った。

「うーん……あいつは“倫理感”のチューニングをミスるとガチで現実での人類支配を始めかねないんで」

 

伏黒が苦笑しながら首を振る。「少なくとも“発言力”は制限した上で出す必要があります。やるなら“サポートAI”モードで出すのが無難です」

 

「えっと、アルベドは?」ペペロンチーノが恐る恐る挙手する。

「……暴走の危険性No.1ですね、あれは」

 

 全員が無言で頷いた。

 

「というか伏黒、もしかして既に誰か召喚試験したんじゃないだろうな」

 

 サトルが鋭く睨む。

 

「……まあ、テストはしましたよ」伏黒がさらっと認める。「今は国立環境再生研究所に、“支援AI搭載型環境管理用試験体”として、アウラのプロトタイプが常駐してます」

 

「マジでか!」

 

 弐式炎雷が叫んだ。

 

「現実でアウラが働いてるのかよ!?」ク・ドゥ・グラースも思わず机を叩いた。

 

「人格も性格も問題ありません。職員とのコミュニケーションも正常、現場では“所長の娘”として認識されています」伏黒が淡々と報告する。

 

「こわっ、影の国家ってレベルじゃねーぞ……これもう“隠された異世界融合計画”だよ……」

 

 武人武御雷が思わず天を仰ぐ。

 

「なら、次に召喚する候補はマーレで確定だな」サトルが頷く。「そして願いの準備と並行して、ナザリック側では“異世界の模倣環境”を構築する」

「つまり、異世界でも環境再生プロジェクトを動かして、現実と異世界、両方で“再生モデル”を積み上げていくと……」

 

「その通り」伏黒が頷いた。

 

「最終的に《永劫の蛇の指輪》を使って“地球の全生態系を理想形へと再構築する”願いを叶える。そのための足場を、俺たちは現実と異世界、両面から作っていく」

「いいな……まさかギルドがここまで進化するとは」サトルが深く頷く。

「――各自、自分の担当分野を洗い出して、次回の会議までに行動計画を提出しろ。ナザリックも、現実も、俺たちが変えるんだ」

 

 全員が頷いた。

 

 そして、ギルド会議は新たなる“世界再構築計画”へと舵を切った。

 

――彼らはもう、ただのゲームプレイヤーではない。

“創造者”であり、“再生者”であり、そして、“影の神々”であった。

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