オーバーロードによく似た世界で(本編完結) 作:ペンギン勇者
王国への対応を決め、順番に休むモモンガさんたち、そこに気になる情報を持ったシャドウ・デーモンがやってきた。
ナザリック作戦会議室では、ひとまず王国への対応方針が固まり、モモンガたちは順番に休憩を取ることにした。気を張り詰めたままだと判断力が鈍る。英気を養うのも、支配者たる者の務めだ。
「では、先に我々が休ませてもらうぞ」
ウルベルト、タッチ・ミー、ペペロンチーノたち数名が席を立ち、交代で休憩に向かう。残ったモモンガ、ミストバーン、アルベドたちは待機組だ。
「……しかし、よくここまで話がまとまったな」
モモンガは骨の指を組みながらしみじみと言う。
「ひとえに、モモンガ様のご指導の賜物でしょう」
アルベドが微笑を浮かべ、しなやかに頭を下げる。
そんな時だった。──コン、コン。
会議室の扉が小さくノックされた。
「ん? 入れ」
モモンガが指示を出すと、すぐに扉が開き、影のように歪んだ存在──シャドウ・デーモンが、すぅっと部屋に滑り込んできた。
「報告。緊急情報──発見セリ」
機械的な低音でシャドウ・デーモンが言う。
「おお、思ったより早かったな。何か重要な情報か?」
モモンガが問いかけると、シャドウ・デーモンは淡々と続けた。
「報告。王国領内、南方村落ニテ、襲撃事案発生。目撃者報告、及ビ監視網記録──複数ノ集落民死亡確認。被害範囲拡大中」
「……襲撃?」
モモンガの骨顔に、わずかに緊張の色が差す。
「犯人の詳細は?」
モモンガが低く問うと、シャドウ・デーモンは一拍置いて、淡々と告げた。
「続報。襲撃者ノ正体──小型ノ肉食竜群、及ビ其ノ指揮ヲ執ル中型肉食竜ト確認。魔法生物、又ハ召喚体ノ可能性アリ。通常ノ野生生物トハ思エズ」
「……なんだと?」
モモンガが椅子からわずかに身を乗り出す。
「恐竜、だと?」
アルベドも顔をしかめる。
「この世界に生息しているとは聞いていませんが……。それも群れをなして? そして指揮系統があると?」
その言葉を聞くとミストバーンが申し訳なさそうに、
「すいません、多分俺が週一コラボで実装したモンスターハンターのモンスターだと思います」
モモンガとアルベドの視線が、ぴたりとミストバーンに突き刺さる。会議室の空気が一瞬、凍りついた。
「……おい」
モモンガの声が低く響いた。
「今、なんと?」
ミストバーンは額をかきながら、わずかに目を逸らして言葉を継いだ。
「えっと……昔、ユグドラシルの時にですね、週一でコラボイベントをやるって話になって、俺が企画の一環で“モンスターハンター×ユグドラシル”をやったんですよ。で、ちょっとだけ、小型肉食竜種のモンスターと、そこに使うAI指揮ユニットを実装して……」
「ちょっと、というのは……どれくらいの“ちょっと”なのでしょうかミストバーン様?」
アルベドが呆れた口調で問う。
「いや、その……訓練された群れAI、索敵スクリプト、捕食・拠点制圧行動、あと魔法適応能力の実験を兼ねて、広域行動パターンも……」
「つまり」
モモンガが立ち上がる。
「お前のせいで、王国の村が襲撃されているのか?」
「え、いや、俺もまさかログアウト後のデータが、この世界で実体化するなんて思ってなかったし……!あ、因みに小型肉食竜種はゴブリンから性欲と知能を取り除いて代わりに食欲と攻撃力に割り振ったモンスターだと思ってください」
つまり村人は襲われたらまず助からないという事である。
「お前なぁあああああああああ!!」
モモンガが思わず机を叩き、骨の拳が会議卓をパリンと砕いた。
「この世界の理と均衡を、どれだけ軽いノリでぶっ壊してんだよ!?」
「いやあの、でも逆に考えてください、ここからナザリックが颯爽と現れて助けに入れば、めっちゃ格好良くないですか? 信仰心爆上がりで民心ダダ漏れですよ?」
「ミストバーン様はそれしか考えていらっしゃらないのですか?」
アルベドは更に呆れつつも脳内でどうやったら効率的に村を救えるかシュミレートする、こんな奴でも至高の御方の端くれなのだ。
「……今必要なのは責任の追及ではなく、状況の収拾ですわ。ミストバーン様、詳細な生態データと弱点情報を早急に提出してください」
「了解、すぐに引っ張ってきます。あと、討伐用に対抗ユニットも用意してますから、それも投入できますよ」
「まさかとは思うが……その対抗ユニット、まさか“ラージャン”じゃないだろうな?」
「……うっ……違いますよ、イビルジョーです。ランポスだけ食べてもらえば後の処理が楽でしょう」
「お前なあああああ!!それをどうやってコントロールするんだ!!」
こうしてナザリックは、モンスターハンター由来のモンスターが現実化した世界で、急遽“週一コラボの後始末”という前代未聞の事態に対応する羽目になったのだった──。
◇
「で、ミストバーンの尻拭いを俺たちがする訳になった訳か」
そう呟きながら森の中を疾走する弐式炎雷。彼の濃紺の装甲が木漏れ日を弾く。
「と言っても俺たちも同罪だからな~。あいつに頼んで欲しいアイテムやエネミーを実装してもらったしな」
武人武御雷は苦笑しながら、横を並走する。太刀を肩に担ぎ、まるで狩猟部隊のベテランのような風格を漂わせていた。
「二人ともすいませんね、ここも自分の週一コラボで被害をこうむることになるとわ」
「自重しろ、と言いたいがゲームだったんだ仕方ないさ、それに俺たちも悪乗りして実装させてもらったしこの太刀も確かコラボアイテムだぜ」
申し訳なさそうに言うミストバーンに武御雷が返す
「“斬撃属性:龍”。追加効果に“怒り状態時、斬撃が爆ぜる”とかいうぶっ壊れ仕様。実装当初はPvPで猛威を振るってたからな」
「バグじゃないけどバグみたいな強さだったからね……」と弐式炎雷が肩をすくめる。
「ま、そのコラボ武器で今からコラボモンスターをどうにかしに行くんだ。皮肉な話だが、ゲームの流れとしては完璧だな」
そう言って笑う武御雷。その目の奥には、どこか楽しんでいる色があった。
「で、最初のターゲットはランポス群か?」
ミストバーンが周囲を見回しながら問いかける。
「そうだ。監視網の報告だと、南方の森沿いに進行してる一団があるらしい。早ければ夕方には次の村に届く」
弐式炎雷が短く答えると、三人の間に緊張が走る。
「ナザリックの名にかけて、これ以上の被害は出させねえ。そうだろ、ミストバーン」
武御雷が真剣な眼差しで振り返る。
「もちろんですとも。俺のケツは、俺が拭きますよ。……いや、なるべく巻き添え込みで」
ミストバーンが苦笑しながら、腰の装備ポーチから小型の召喚珠を取り出した。
「こいつが対群れ用の“焼却兵装ユニット”です。ユグドラシル時代はオーバーキル気味って言われましたけど、今回ばかりはちょうどいいくらいで」
「焼却って……まさか爆撃タイプじゃないだろうな?」
「……ノーコメントで、と言いたい所ですが小さな気化爆弾と思ってくれれば結構です」
「お前なあああああああ!!」
「それはカンストプレイヤーがいる対ギルド攻略課金アイテムじゃねえか、どう見ても過剰火力だから止めろ!!村を全部吹き飛ばす気か」
それを聞いてしょんぼりするミストバーンだった。
◇
その頃、襲撃された村の一角。
草むらをかき分けて現れたのは、血塗れのランポス。群れの一体が村の外れに取り残された子供に向けて、ゆっくりと牙を剥く。
「──そこまでだ、クソトカゲ」
乾いた声と共に、木々の影から黒い閃光が飛んだ。次の瞬間、ランポスの首が宙を舞い、胴体がその場に崩れ落ちる。
「“斬撃属性:龍”の名は伊達じゃないってな」
森の中から現れたのは、武人武御雷。蒼い太刀を振り払い、返り血すら寄せ付けぬ佇まい。続いて、弐式炎雷が子供を抱き上げ、安全圏へと運び出す。
「おい、そっちはどうだ!」
「村の裏手にまだ数体残ってる、ミストバーンは?」弐式炎雷が叫ぶ。
「──やれやれ、俺ばっかり働かされるのもどうかと思いますけどねぇ」
(さてここでエンリエモットだけでも保護しておかないと、俺が知っている数少ない原作キャラだし)
しかし、
「し、死んでる……!」
到着したそばで内臓を食い散らかせられた死体がどう見てもエンリだった、多分妹のネムと両親をランポスから守るために逃げ遅れたのだろう。
(やべー、後で蘇生魔法使っておかないと彼女はオーバーロードで結構重要な立ち位置になる予定の人物だ、死んだままなのは拙い)
ミストバーンは苦い顔で駆け寄り、死体の傍に膝をついた。あちこち食いちぎられた肉体、守ろうとした者の末路としてはあまりにも無惨だった。
だが蘇生魔法を使うのにはまだ早い、ランポスの群れを全て掃討してないし多分そのリーダー各であるドスランポスも健在だろう。
その時ミストバーンのスキルの感知でランポスの大群を見つける。
(こいつらは斥候か、だとするとあれが本隊。恐らくあそこに複数のドスランポスがいるはず)
「すいません、ここお願いします」
そう言ってドスランポスがいる本隊の方に飛んでいくミストバーン
「おい、どうするつもりだ」
いきなりの離脱に驚く弐式炎雷。
「とりあえずあの群を吹き飛ばします、武御雷さんたちは掃除が終わったらナザリックに連絡を」
「了解。こっちは残敵を掃除しつつ、村の生存者を捜す」武御雷が短く答えた。
森の奥、陽が差し込まない鬱蒼とした区域にて──。
唸りを上げながら蠢く、夥しい数のランポスと複数のドスランポス。その中心には、他を睥睨するかのように一際大きな個体がいた。
青い重鱗に覆われ、紅く爛れた双眸を光らせている。異常個体──いわゆる“狂個体”と呼ばれる存在だった。
その上空に、一つの影が舞い降りる。
「群れで行動するのが、君たちの強み……だが」
ミストバーンはゆっくりと両手を掲げ、指先から魔力の奔流を噴き上げる。空間が捻れ、気圧が変わり、大気そのものが軋みを上げ始めた。
「その強みごと叩き潰せば、何の問題もない……!」
十位魔法──《メテオ・フォール》
その言葉と共に、天が裂けた。
空の一点に開いた黒い虚空から、赤熱した巨大隕石がいくつも降下してくる。轟音と共に地面に激突したそれらは、地表を融解させ、爆風と火球の嵐を巻き起こした。
一発、また一発──群れのど真ん中に降り注ぐたび、数十匹のランポスが一瞬で塵となる。
ドスランポスたちが咆哮を上げて反撃の態勢を取ろうとするが、その意志が形成される前に、さらに巨大な隕石が本隊の中心へと叩き込まれた。
――轟。
辺り一帯が爆風と爆音に包まれ、熱風が木々を焼き払う。火の粉が舞い、ランポスたちの断末魔が森の奥まで響き渡る。
「……やり過ぎたかも」
地上に舞い降りたミストバーンは、焼け爛れた地表と、地形そのものが変わった“クレーター”を見下ろしながら、小さく呟いた。
爆煙が晴れた後、そこにランポスの姿はなかった。群れの本隊は、リーダー格もろとも跡形もなく蒸発していた。
(後で修復魔法も使っとこう……森がえらいことになってる)
そう思いつつ、彼は通信アイテムを取り出し、ナザリックへと連絡を入れた。
「こちらミストバーン。本隊、殲滅完了。ドスランポス含め、全て灰になりました。状況終了、ただし村に被害大……と報告願います」
その顔には、わずかに安堵の色。
しかし同時に、蘇生の準備を急がねばという焦りもあった。エンリの死体を前に、時間との勝負が始まっている。
(待っててくださいねエンリさん。俺の失敗は、俺で取り返します……!)
そう誓い、ミストバーンは再び村の方角へと駆け出した。
原作と違う所
襲われる方角が真逆、原作は帝国兵に偽造した法国の兵士が襲ってましたがこっちは肉食恐竜なので森側から攻めました。なので森の賢王の縄張りをドスランポス達は力ずくでとっぱしたことになります。