オーバーロードによく似た世界で(本編完結)   作:ペンギン勇者

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 あれから暫くしてナザリックの回復サポートチームが到着、村人の蘇生と村の修復にあたる面々 




第08話ナザリックとライラの粉

 沈黙と焼け焦げの残滓が漂う村の上空に、次元転移の光が奔る。空間が裂け、異界の深淵から現れたのは、黒と紫を基調とした装束に身を包んだ集団だった。

 

「ナザリック地下大墳墓・第五階層所属、回復支援部隊、これより蘇生・修復支援に入ります」

 

 先頭に立つエルダーリッチ型の魔法使いが、儀礼的に一礼したあと、無感情に宣言する。彼の背後には、蘇生専門の高位クレリック、回復特化のアルケミスト、精密な記録係たちが控えていた。

 

「ゴメンお待たせ」

「支援に参りました」

「ニヒヒ、これでも一応蘇生と回復は出来るからね」

 

……ヤマイコは、一歩足を踏み入れた瞬間、焦げた土と死の気配に眉をひそめた。

 

「ここまで酷いとは思ってなかったよ……」

 

 来た面々は人化したヤマイコとペストーニャ、モモンガの妹のマキマである。

 

「目標:一般村人の死体五十六体、損壊家屋数十棟。蘇生対象の魂安定確認──開始します」

 

 金と青の蘇生魔法陣が村の広場に幾重にも展開され、死者たちが静かにその中へと運び込まれていく。魂を呼び戻す呪文が低く唱えられ、村の空気が再び温もりを取り戻し始める。

 

「魂の呼応反応良好。生体復元、継続中」

「精神安定剤、投与完了。記憶の混濁なし」

「私達も行こうか」

 

 ヤマイコの言葉に緊張が走る。本人も含めてリアルの蘇生は初めてなのだ

 

「お供します」

(う~、うまく出来るかな、まあ最悪課金アイテムを使えばどうにかなるか)

 

 次々と蘇る村人たち。その中には、必死に泣き叫びながら家族を探していたネムの母親や、傷を負って倒れていた少年兵も含まれていた。

 

 一方、損壊した建物には修復特化のゴーレム部隊が投入されていた。鉄と岩の塊で構成された彼らは、瓦礫を持ち上げ、破損個所を分析し、自動で最適な修復作業に取りかかる。

 

「……こりゃあ、ナザリック本気で動いてるな」

 

 弐式炎雷が、蘇生作業の光景を見て呆れたように言った。

 

「そりゃそうだろ。ナザリックが助けるんだ蘇生出来ませんでしたはジョークでも通じねえよ」

 

 武御雷が苦笑しながら太刀を地面に突き立てる。

 

 その傍らで、ミストバーンはエンリのもとに立ち、改めて深く頭を下げた。

 

「……あなたたちを巻き込んだ責任、必ず果たします。どうか……もう少しだけ、この世界に希望を持っていてください」

 

 エンリは、まだどこか夢の中のような目で彼を見上げたあと、小さく頷いた。

 

「……うん。ありがとう、助けてくれて」

「とは言ったもののこれからどうするか」

 

 ミストバーンは呟きながら、地面に目を落とす。蘇生された村人たちが、困惑しながらも家族と再会し、安堵の涙を流す姿が視界に映った。

 

 だが、それが終わりではない。

 

「これライラの粉になる植物だよね」

 

 マキマが、村のはずれで焦げた草地の中から慎重に拾い上げたのは、薄紫色の花を咲かせる野草だった。薬草としても知られるが、精製次第では神経系に作用する強力な毒にもなりうる、いわゆる"両刃の剣"である。

 

「は~っ、それってあの腐敗貴族と八本指が広めてる麻薬じゃない」

 

 ヤマイコが重い溜息と共に言い放つと、場に一瞬の静寂が落ちた。

 

「……まさか、ここまで広がってるとは思わなかったな」

 

 ペストーニャが花を見つめ、眉間に皺を寄せる。その瞳には、単なる蘇生支援の域を超えた“病巣の根”を見つけたという確信が宿っていた。

 

「調査記録追加:ライラ由来植物、自然分布にしては不自然な密度。何者かによる意図的な栽培の可能性」

 

 記録係のリッチが淡々と記述していく横で、マキマは花を手のひらで転がしながら呟いた。

 

「やっぱりこの村で栽培してたみたいね。シャドー・デーモンの情報によると、食うに困った村に八本指の傘下が“ライラ栽培キット”をばら撒いてるみたい」

 

 マキマの声にはどこか怒気がにじんでいた。

 

「援助という名の搾取か……。やることが本当に汚いわね、あの連中は」

 

 ヤマイコが忌々しげに吐き捨てると、ペストーニャも頷いた。

 

「見返りは安価な労働力と薬草の納品。でも美味い汁が吸えるのは八本指の傘下だけ、村人の様子を見ると支援は最低限ね、後村人から聞いたんだけどライラ栽培で生活立て直せるって話だったのに……結局、借金返済どころか、借りが増えてたってさ」

 

 マキマの声が刺々しくなる。

 

「利息で縛って、薬で依存させて、あとは死ぬまで使う。えげつなさすぎる」

 

 そう言って辺りを見回してみるとライラの粉の影響かはたまたただ貧しいだけなのか、瘦せ細った村人を何人も見る。

 

「つまり、ただの貧困じゃなくて、意図的に“依存させられていた”ということか」

 

 ミストバーンが静かに言い放つと、背後で記録係のリッチが再び筆を走らせた。

 

「新規項目追加:栽培指導および物資提供の実施記録確認要。関連文書の押収指示を要請中」

 

「このままだと、蘇生しても意味がない。また死ぬだけだ」

 

 ヤマイコの言葉は冷たい現実を突きつけていた。生き返っても、環境が変わらなければ同じ地獄が待っている──。

 

「栄養失調、慢性中毒、薬物依存……こんなの、回復魔法で全部治せても環境が変わらなければ同じです」

 

 ペストーニャの声には憤りが滲んでいた。

 

 その時、マキマが一歩進み出て、リッチの記録板を覗き込む。

 

「この村、強制的に“実験場”にされてる可能性もあるね。薬物栽培とその影響の経過観察……下手したら“選別”まで行われてたかも」

「選別……?」エンリが不安げに聞き返した。

「“使える村人”だけ助けて、残りは切り捨てる。効率重視の搾取構造にはありがちな話よ」

 

 マキマが返すその口調に、もはや容赦はなかった。

 

「ここからはナザリックの“粛清案件”ですね。少なくとも、これ以上“ライラ”が流れ出る前に根絶する必要があります」

 

 ミストバーンは頷き、掌に小さな黒炎を灯した。

 

「記録係、対象植物の分布マッピングを。修復班、村の地下および倉庫を重点調査。マキマちゃん、君のシャドー・デーモンに密売ルートの逆探知を頼む」

「はいはーい、こういうの得意だよ」

「それと、村の子供達はペストーニャとヤマイコさんで健康診断を。“実験対象にされた痕跡”がないかも含めて」

「了解しました」

 

ペストーニャが静かに頷き、ヤマイコも唇を噛みながら動き出す。

 

「モモンガさん聞いてましたか?」

『胸糞悪い話だな海外でよくある使い捨ての奴隷兵を思い出す』

「これ以上待つと被害が増える一方です、そちらの使えそうな貴族との接触はどうなってますか」

『ああ、ある程度目安はついた、後はどう接触するかだな、流石に僕共に貴族の相手は務まらんだろうし』

「となるとギルメン達で接触する感じですか」

『そうなる……何を考えているミストバーン』

「ちょっと八本指に見せつけてやろうと思いましてね、こっちにもシャドー・デーモンから貴族の情報は少量だが入ってます」

『気持ちは分かる……だが、バレるなよ』

「ド派手に屋敷を吹き飛ばすんじゃありませんから大丈夫ですよ、で、処分してもいい貴族は誰です」

 

一呼吸おくモモンガ。

 

『王派閥のブルムラシュー侯だな。金鉱山とミスリル鉱山を所有する王国一の金持ちだが欲深く金で家族すら裏切るだろうという悪評持ち。帝国に情報を売り渡している裏切り者だ、次に貴族派閥のリットン伯、能力的に六大貴族では一段劣る。自分の価値を上げることに必死で、そのためなら他人が苦しんでも構わないというやつだな。最後に同じ貴族派閥のボウロロープ侯こいつは一番最初に八本指との癒着が分かった奴だ、武闘派で数千の精鋭兵団がいる、だがその裏で八本指の六腕やそれに連なる警備部門の部下どもを訓練しているのを領地で発見した、この三人は処分確定だろう』

 

 モモンガの声は低く抑えられていたが、その中には明確な怒りが込められていた。

 

「では手始めにブルムラシュー侯本人に御退場してもらいましょう」

 

 ミストバーンの声には、氷のような冷淡さと揺るぎない決意があった。

 

 彼は掌の黒炎を弾けさせるように消すと、マントを翻しながら後方の記録係に指示を飛ばす。

 

『ミストバーンさん動くにはまだ早すぎます、貴族や王族と本格的接触がまだなのにこれだと取りこぼしが発生しますよ』

 

 そう苦言を呈するのはプニット萌えだ。

 

「ちゃんと考えてあります。私は退場させるのは“本人”と言いましたからね」

 

『ああ、そう言う事ですか、貴方も人が悪いですねククク』

 

 萌えはそう言うと低い声で笑う

 

『どう意味か聞いても』

 

 一人置いてきぼりな状況に面白くなさそうにモモンガが尋ねる

 

「「ドッペルゲンガー』』

 

『なるほど、確かにそれならいけますね、でも記憶の方はどうするんです』

 

「私が持ってる特別製のグレータードッペルゲンガーを使います、あれならゲームの使用と同じならレイドボスから重要NPCにまでなれる代物です、自演行為やPKされる時の影武者に使ってましたが問題ないでしょう」

 

『もっと生産的なことに使ってくださいよ』

 

 その時、後方からヤマイコが駆け寄ってきた。

 

「調査完了。子供達の健康状態は……正直あまり良くないね」

 

 彼女はタブレットのような魔導装置を開きながら説明を続けた。

 

「栄養失調だけじゃない。何人かは……微量の毒素が検出されたわ。ライラ由来の神経毒が常食の食料や水に混入してた可能性がある」

 

 ペストーニャも厳しい表情で頷く。

 

「これ、“試されてた”痕跡です。投与と耐性、反応の観察が行われていたと見ていいでしょう」

 

「……実験場というより、毒物の人体試験場だね」

 

 マキマが唇を噛んで吐き捨てた。

 

「この件、王国上層部に伝えても握り潰される可能性がある。だから──」

 

 ミストバーンは村の中央に向き直り、エンリと目を合わせた。

 

「我々はこの村を“守られた村”として再編します。薬物流通を断ち、独自の監視網と保護体制を敷く。もちろん、八本指の手は二度と届かないように」

「守られた……村……」

 

 エンリは驚きと戸惑いが入り混じった顔で呟いた。だが、それはすぐに小さな希望の光となり、彼女の瞳を照らす。

 

「……お願いします。みんなを、守ってください」

「ええ。守りますとも」

 

 ミストバーンが静かに答えたその背後で、空間が再び裂け、転移陣が広がる。

 

「では行ってきます」

「お前一人で行くつもりか」

 

 弐式炎雷が呼び止める。

 

「俺とフラットフットの奴もつれていけ」

「助かる、という訳でフラットフットさん聞こえてました?良ければご一緒いたしませんか」

『ほぼ強制じゃねーか、まあいいけどよ。俺の本分はアサシンだぞ、それを分かってるんだろうな』

「殺さずに気絶させるぐらいは出来ますよね」

『そんなの朝飯前だ』

 

 そう言うとミストバーンの目の前に転移で移動してくるフラットフット。

 

 こうして三人はブルムラシュー侯の屋敷の近くまで転移するのだった。

 




 ペストーニャの口調は周りがガチモードなので自重しました、書いたのですが最後の語尾に「ワン」が付くと何処か締まらなくなると感じたもので

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