VSツツジ。バトル描写を上手くしたい日頃。
「ノズパス! いわおとし!」
「かわせ、コイル!」
開始と共にツツジからの攻勢。
その落石攻撃を、コイルはふよふよ浮遊して切り抜ける。
「でんきショック!」
あたしの指示にコイルが電撃を撃ち放つ。
「受け止めなさい!」
「ノズゥッ」
放たれたでんきショックをノズパスが真っ向から受け、それを難なく払い除ける。
流石のタフさだ。なら――
「マグネットボムだ!」
「ビィ!」
応じたコイルが金属の塊を形成し、ノズパスめがけて射出した。
見るからに危険そうな鋼の爆弾は狙い誤らずノズパスの体に憑りつき、次の瞬間には複数の爆発を引き起こす。
「耐えなさいノズパス! かたくなる!」
弱点を突いた攻撃に、しかしツツジは狼狽えず防御を固めに行く。マグネットボムは物理タイプの技。見る限りは半分ほどダメージ通ってれば良い方だから、次でも落とせなくなった。
しかも同じ手は許さないとばかり、ツツジからの反撃が襲う。
「がんせきふうじ!」
さっきよりも大きな岩が迫ってくる。スクール時代からツツジが好んで使う技。
それはつまるところ、あたしも散々見て対処してきた技だ。
「避けろ! そしてでんきショック!」
岩タイプ技の宿命・命中不安を運良く切り抜け、再びでんきショック。
牽制として繰り出したその技を、またノズパスは悠然と受け切る。
「ほんとかったいな岩ポケモン!」
「当然ですわ! わたくしがときめく岩の魅力はここからですわよ! いわおとし!」
今度は小さな落石が迫る。コイルがこれを負けじと回避。
鋼タイプに岩タイプの技は効きづらいが、何度も喰らえば流石にマズい。加えて相手はそれを承知で受けて立つ岩タイプのエキスパート。鋼でもそう甘んじて受ける勇気はないわ。
岩の雨を捌き、次はこっちと指示を飛ばそうとしたその時、
「――がんせきふうじ!」
得意の技命令がツツジから発せられる。瞬時に気付く。まさかさっきのいわおとし、コイルの動きを操って狙いの場所に誘導するための……!
気付いた時には遅く、大岩が囲むようにしてコイルを襲った。
「相変わらず見事な機動性ですが……貴女の戦いをわたくしが把握してないとでも?」
不敵に笑うツツジ。確かに侮った。こっちがツツジのこと知ってるなら、あの頃の模擬戦やバトルでツツジがあたしの手を熟知しているのは道理だ。ジムリーダー恐るべし。
倒れるダメージはなかったが動きを鈍らせるコイル。素早さが削がれてしまった。
「さあ、まだ避けられるかしら? いわなだれ!」
「ッ! コイル!」
畳みかけるようなノズパスの攻撃。素早さを削られたところに、本命らしい技にあたしはコイルに檄を飛ばす。コイルはマグネットボムを放ち、その爆発でいわなだれの相殺を狙う。目論見は当たり、大半を散らしダメージ最小限でなんとか範囲圏外へと退避した。
あ、危ねえ……ジム戦ルールで一匹でも落ちれば決着になる。ノズパスの特性『じりょく』で交代できない上に今のをまともに受けてたら詰んでいただろう。
それでも結構ジリ貧な状況。機動力を落とされ、少なくないダメージを喰った。向こうはまだ余力あって、守りも固めた状態だ。ぶっちゃけあたし不利とまで言えるかも。
岩にときめく優等生、看板に偽りないな。スクールで一緒だった勝ち気で泣き虫なツツジも、ジムリーダーとして腕を磨いてるんだと再認識する。
でもま、それでも勝ち譲る気ないが。
「ルルル……!」
ちらと目配せすれば、まだまだやる気なコイル。良いガッツだ。そのイカした金ぴかボディに恥じない意気じゃないか。
なら、お前の力を信じるぞ――!
「コイル、でんきショック!」
再度牽制の電撃。ノズパスはこれを避けるが、コイルは更に二度三度繰り出す。
そうして機を窺い――ドンピシャのタイミングを見極めた。
「技連結! でんきショックからのマグネットボムだ!」
「なっ!?」
ツツジが得意の岩技なら、こっちも得意の戦法をやらせてもらう。
技連結。陳腐なネーミングだが、文字通り技を繋げて繰り出すあたしの戦法だ。技の合間を限りなく削り、二つ以上の技を重ね合わせる。テレビで観た高名な空手家の話を聞いて編み出した、あたし一流の技術だ。
まだジグザグマほど仕上げられてないが……信じてるぞ、コイル!
「ビイィ!!」
その願いが伝わったかのように、威勢よく放たれた電撃と鋼の爆弾が、入り交じる形でノズパスに。狙い外さず憑りついた電撃爆弾は、先のマグネットボムより派手な爆発を以て炸裂した。
「ノ、ズッ!?」
強烈な攻撃をまともに受け、ノズパスの体はぐらりと崩れ落ちる。
審判がダウン判定を行ったことで、勝敗が決した。
「……負けたわ」
労わるように戦闘不能のノズパスを戻し、ツツジは穏やかに微笑む。
「お見事でしたわ。ただのマグネットボムでは倒せず、反撃の機会を与えるからと技を組み合わせてくるなんて。あの頃から鈍っていない腕前ですわね」
「まだ粗削りで成功するかは賭けだったけどねー。上手く行って良かった」
あれが外れたら負けてたのはあたしだった。ノズパスが思った以上の耐久を発揮して、ツツジが記憶よりも実力を伸ばしていたから危うかったわ。マジでジムリーダー恐るべしだ。
負けを認めたツツジがふと溜め息を零す。
「まったく。これでやる気があればジムリーダーにもなれましたのに。貴女がやるのであれば、わたくしはそのジムトレーナーとして全力でサポートいたしましたのよ?」
「え、マジでぇ? それは買い被りすぎじゃない?」
「そんなことありませんっ。たとえ他が反対しても、わたくしは貴女の実力を認めて推薦いたしますわ! だってその……わたくし達、親友じゃありませんの」
「…………」
「な、なんですか」
「え? なに、今デレたの?」
「脳天に『いわおとし』しますわよ?」
冷たくツッコむツツジの顔はそれに反して赤かった。
そうかー、親友かー。あの時からの腐れ縁で迷惑がられてるとばかり思ってたけど、ツツジからそう思ってもらえてたなんてなー。嬉しいこと言ってくれるじゃないのー。
……やっべ、恥ずかしくなってきた。今さらの友情実感にらしくもなく照れる。
ツツジも同じ思いか、コホンと一つ咳して話題を切り替えた。
「ま、まあとにかく。ジムリーダーに勝った証としてこのストーンバッジを進呈しますわ」
「ああ、これはどうもありがとう――」
「それと……これも」
「あん?」
そう言って差し出されたのは、あのキンセツジムのバッジだった。
「えーと、なにこれ?」
「どうせなら一つ目のジムをクリアしたなら、このままホウエンのジム制覇をしてみてはいかがかしら? 暇をしているなら時間もあるでしょう」
「えぇ……」
誰が暇人だ。その通りだけども。
にっこり笑顔でバッジを差し出してくるツツジ。……これ、ジム巡りのついでとして直接届けに行けって意味だよね? なんでそんなめんどくさいことやらにゃならんの。
しかしこの顔つきは、あのサボり中に追い払おうとしても追いすがってきた時の、岩みたいな頑固さあるツツジだ。そうなった我が
よし、ここは――適当にあしらおう。
「後ろ向きに検討するわ。それじゃあまた」
「あ、こら! せめて前向きに検討しなさいッ!」
踵を返し逃げようとするのを追ってこようとするツツジに、あたしはジグザグマが拾ってきていた進化の石を遠くに放り投げ、それに気を取られている隙にさっさとカナズミシティを後にするのだった――
技連結。モチーフはポケダンのれんけつシステムから。一見するとただ技を連続で出してるだけですが、ちゃんと技として有効に発揮させたり相乗効果をもたらしたりと一応は高等技術のつもりです。その辺も今後表現していければ。
もう一度言う、真面目優等生×不良生徒の組み合わせは良い文明。
これ書くまでそんなでもなかったけど、いざこのように扱ってみたら「良い(良い)」ってなりました。来たれ、理解者。
次回、原作スタート(間接)。お楽しみいただければ。