センリとの話し合い。マジで描写力上げたいという愚痴。
「――さて、ヒヨリさん。君はジム巡りをしたがらないと聞いたが、そうだね?」
「ええ、まあ」
トウカシティポケモンジム。
その板敷きの床で正座するセンリさんが、あたしに問いかけてくる。
「どうしてか、とは聞かない。ポケモントレーナーといえど、そこには様々な者がいる。ポケモンを育てる者、鍛えて強くする者、共に暮らしていく者、または私利私欲に使う者――千差万別あって、トレーナーならば必ずしもジムに挑んで強さを極める必要はない。要はどうポケモンと向き合っているかだ」
まるで真理を説く達人のように語るセンリさん。
それも当然か。ジム看板に掲げていた文言は『強さを追い求める男』。実にシンプルではっきりしている。ある意味納得させられるような、そういう凄みが目の前のジムリーダーから感じられた。
「しかし同時に惜しいと思うのも心情だ。さっきのバトル、あれは見事だったよ。私は故郷のジョウトで腕を磨いてきたが、才能があると間違いなく断言できる」
「それはどーも。でもあんまひけらかすほどのもんじゃないんですよねえ……それこそやる気もないのにジム巡りとか、本気で挑んでるトレーナーに失礼なくらいですよ」
「確かに心意気も重要だね。だが、ただ勝ちたいと思う者がジム制覇を目指すのでもないさ。遠くアローラ地方では、子供の成長を願い島を巡って試練を乗り越える儀式があると聞く。そうであるならば、逆にやる気を見出すためにジムを巡るのも一つの考えではないかな?」
もっともらしいことを投げ掛けてくる。確かにそれも分かるけど……だけどなあ。いまいち気乗りしないんだよなあ。それなら家でのんびりしていたいのが勝つ。好きに寝て起きて、ポケモン鍛えて一緒に遊んでの日々を満喫する方が性に合ってるのだ。
そんなあたしの心持ちを察してか、センリさんはすっくと立ち上がる。
「なるほど。ならばやることは一つだ――手合わせをしよう」
「は?」
「勝ち負けがどうなどとは言わない。トレーナー同士、対話をするならポケモン勝負も手段だろう? ジムにいるならばなおさらのことだ」
いや、ジムにいるのはあんたに呼びつけられたからなんだが……
けどまあ、バトル自体には断る理由もない。ジムリーダー相手なら良い腕試しだ。あたしが了承としてボールを構えれば、笑って応じたセンリさんも同様に身構える。
「行け! パッチール!」
「にょにょにょお!」
「ジグザグマ!」
「ぐうっ!」
こちらは相棒のジグザグマ、向こうがパッチール。奇しくもノーマルタイプのジムで、ノーマルタイプポケモンの対面になった。
「ジグザグマ、ずつき!」
「かわせ!」
こっちの先制攻撃を絶妙な距離感で回避する。流石はノーマルタイプ使いのジムリーダー、間合いを把握している。
「しっぽをふる!」
「まねっこ!」
こちらの技指定に、続けて同じ技を真似して繰り出してきた。お互いに防御が下げられ、不用意に攻勢へと出にくくなる。
「ふむ、采配は申し分ない。ならば、パッチール!」
「にょ~っ!」
ふらふらした足取りと共に、パッチールがその拳を振りかぶってくる。――ピヨピヨパンチか。これをジグザグマは避け、再びしっぽをふるで優位に立とうとした。
が、その瞬間。
「かなしばり!」
「なっ!?」
ちょ、それありか!?
こちらが同じ技を繰り出そうとしたのにドンピシャで合わせ、その技を封じる技を使ってきた。完全に埒外だったので、技を封じられて動きが止まってしまう。思考が一瞬だけ飛ぶ。
それを見逃してくれるジムリーダーではなかった。
「ピヨピヨパンチ!」
今度のパンチ攻撃はまんまとヒットし、殴り飛ばされるジグザグマ。
幸い混乱はしなかったようだが……予想以上の威力で四肢をふらつかせる。
「どうかな? 新任のジムリーダーとしては実力を示したつもりだが」
「……やってくれるわ。まさかここ、エスパータイプジムでした?」
「ははは、経験が活きたのさ。やる気のないトレーナーに負ける気はないからね」
わざとらしく言ってくるセンリさん。
事実だから怒りはしない。あたしは自他共に認める自堕落だ。スクールは頻繁にサボってたし、途中で辞めたくらい通う気なかった。今だって自由気ままな日々を過ごしている。指摘されて『そうだ』と臆面なく言える程度には自分の極楽蜻蛉ぶりを受け入れていた。
だが、そうであってなお――ちょっと癪だ。
あたしの育てたポケモンが出し抜かれ、押し負けている状況。相手がジムリーダーとはいえ、このままへらへらしてられるほど、能天気なプライドをしている訳ではない。
ちらり、とジグザグマを見る。結構のダメージを受けたが、まだまだな気合い。そこはトレーナーに似なくて、小憎らしいほど可愛いヤツだ。
「ジグザグマ!」
「ぐうッ!」
応えたジグザグマが勢いよく駆け出した。
あたしの初めての相棒。スクールに通ってから始めてゲットしたポケモン。特性違うくせになんか色々拾ってくる、面白くて可愛いパートナー。
こいつを捕まえた頃、あたしは今のようにやる気がなかっただろうか。自堕落でサボり魔だったのは変わってないと思うが、そうであればポケモンを鍛えたりもしなかったはずだ。
そうであるなら。きっと、あたしにも
たとえそれがジム制覇とか、チャンピオンになることでなくても。ポケモントレーナーとして譲れないものがある。相手がジムリーダーでも……否、強さの象徴であるジムリーダーだからこそ、ここで負けて笑ってはいられない。それは腐ってもポケモントレーナーであるあたし自身が許せない。
だから、こんなとこで負けられないんだ。
「すなかけ!」
「む!?」
ジグザグマのすなかけ。しかし直接ではなく、一時的な目くらまし。
次にセンリさんが見たそこには、ジグザグマの姿がなかった。パッチールもあのぐるぐる目で何処に行ったのかと見回している。
――そこにいるぞ、上だ。
「ジグザグマ――いあいぎりだ!」
頭上からのいあいぎりが繰り出される。するとパッチールがそれに素早く気付き、すかさず迎え撃ってくる。切り返しが早い。
くそ、相打ちか!? そう覚悟したその時、
「そこまで!」
と。
センリさんから制止の声が上がった。
思わず止まるあたし達。センリさんはパッチールを労ってボールへと戻してから、にっこりと笑ってこちらに向き直った。
「充分だ。君の心根は分かった。良いものを持っているじゃないか」
「む……っ」
その言葉で全てを察する。こりゃ……ハメられたな。
冷えた頭が自覚する。さっきのあたしは、まるで普通のトレーナーの如くバトルに熱くなって負けたくない、勝ちたい一心で戦っていた。それを引き出されたのが今の手合わせだった。
途端、バツが悪くなりジグザグマを戻しながら目を逸らすあたし。
「そう気を悪くするものじゃない。ありふれたものであれ、それは君の心が持った無二の心意気だ。強さを追い求める私と同じ、しかし君だけの魂なんだよ。むしろ誇ると良い」
「……ズルいな、あんた」
「それは少し不名誉ではあるが、その評価で有望なトレーナーを導けたんだ。お釣りが来るさ」
そういうとこが――はぁ……もういいや。
こうなると、まだ面倒だやる気ないだと並べ立てるのも格好悪い。
「分かりましたよ。あんたとツツジの顔立てて、とりあえずホウエンのジム巡ってみますわ」
「そうか。ツツジさんに良い報告ができるよ。ありがとう」
「そりゃ良かったですねー……」
……あたしからも後でちゃんと連絡しとくか。一応、礼として。
あーあ、まんまとやられたわ。こういう他人に言われて動くのとか嫌いなんだけど。
でも、まあ。自分で決めるきっかけになったってことで、良しとしておくか。
こうしてあたしは、さんざ渋っていたジム巡りに自ら乗り出すのだった――
色々語らせてキャラの導き役させたいくらいにはセンリは思い入れあるキャラです。ルビサファにおけるお父さんだしね。
●パッチール
センリのサブレギュラー手持ち。遺伝技のかなしばりを覚えている。実は中断しなければジグザグマが押し負けていたくらいには実力持ちであったりする。
次回、出立の時。お楽しみいただければ。