つれづれなるままにホウエン旅   作:秋塚翔

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改めて言いますと、ジム戦においてはポケスペの「交代自由、一匹でも手持ちポケモンが倒れたら決着」ルールを採用しています。フルバトルは執筆の限界あるというぶっちゃけ。

ムロジムリーダー戦。描写頑張った。


ふたつめ挑戦

 石の洞窟を後にしてしばらく。

 

「よーしよしよしよし! ほんと可愛いなあ、お前は! ここか? ここがいいんか? それともこっちかなあ? もっとしてほしいかこのこのこのぉ――!」

「クチっ、クチぃっ♪」

 

 クチートはあたしの手に堕ちていた。

 最初こそ戦った直後でいがみかかられたが、たっぷりと歓迎してやったらこの通り。めでたくうちの子にしてやりましたよ。お前も家族だ(ファミリーポケパルレ)。

 

 あたしはこう見えて可愛がる質だ。手持ちはもちろんのこと、昔はよくミツルくんも愛でてあげたものである。お陰で気弱な引っ込み思案だった病弱少年も、今や自分でポケモン捕まえてジムに挑戦すると意気込むくらい前向きになっちゃって……そのせいでこっち旅立たざるを得なくなったんだが。これが自業自得か。自宅のベッドが恋しい。

 

 何はともあれ。これで『仕込み』も上手くいったっぽいな。

 

「そんじゃあ行くか。頼りにしてるぞ、クチート」

「クチぃ!」

 

 気合いも十分。いざジムへ。

 

 

 

 

 

 ムロポケモンジム。

 やたら暗い迷路風の部屋を照らして、一つ一つ道順を記憶しながら進むという若干めんどいジムのギミックをなんとか乗り越えた先に、堂々たる佇まいでそこのジムリーダーがいた。

 

「ようこそ! ボクはジムリーダーのトウキ! よくここまで辿り着いたね。少し前までは施設全体を真っ暗にしていたけれど、挑戦者の資質を試すために改修したこのジム。それをクリアしてきたキミはボクに挑むに足るトレーナーだ。ボクに挑戦するキミの実力……どれほどのものか見せてもらうよ!」

 

 両の拳を打ち合わせ、快活に笑うトウキ。

 お互いに位置へとついて、審判の号令のもとバトルが開始される。

 

「行け、ワンリキー!」

「まずは頼むぞっ――ジグザグマ!」

 

 それぞれ先鋒を繰り出す。こっちは相棒のジグザグマ。

 

「ワンリキー、からてチョップ!」

「ごーご!」

 

 トウキからの指示にワンリキーが手刀を放ってくる。

 もはや言うまでもない、格闘タイプの技。分かっての対面とはいえ、ノーマルタイプのジグザグマには弱点になる攻撃だ。いかに鍛えていたって、一発でも食えばただじゃ済まないだろう。

 

「真正面からずつき!」

 

 そこをあえて真っ向から挑みかかる。

 駆け出すジグザグマ。向かう先には驚きながらも、まんまとやって来た相手に構えるワンリキーの手刀がある。しかし素直に受ける気はなく、ギリギリまで迫ったそれをジグザグマは得意のジグザグ機動でかわした。

 一層驚くワンリキーへと、スピードを乗せた頭突きを見舞う。

 

「おおっ!」

 

 感嘆の声を上げたのはトウキだ。

 ジグザグマはワンリキーの反撃を避けるべく後退する。

 一方、今の一撃では倒れなかったワンリキーの後方でトウキは更に感心した笑みを見せてくる。

 

「なるほど。あえて相性不利で挑むその意気やグッド、それを押し返さんばかりの技量もグッドだね。もりもり鍛え込んでいるのが良く分かる。侮れないよ」

 

 だが、と口角を勝気に吊り上げるトウキ。

 

「互いに小手調べ、というのはやはり張り合いがないね」

「あー……バレてたか」

「どうせならキミの起こす波を見せてほしいな。まさかジムリーダー相手に、相性の悪いタイプで突破しようなんてつもりじゃないんだろう?」

 

 そう言って、先んじるようにワンリキーを下がらせる。

 

「荒波を巻き起こせ、ハリテヤマ!」

「ソォイッ!!」

 

 代わりに繰り出すのは、明らかにエースと言わんばかりの風格を持つハリテヤマ。四股を踏み、まさに発気揚々(はっけよい)と構える様は、手加減を許さないという気迫に満ちている。

 ……くそぅ、こうもお膳立てされちゃ出し惜しみできんな。

 

「分かったよ――出番だ、クチート!」

 

 あたしはジグザグマを下がらせて、本命のクチートを場に出した。

 

「先手もらうぞ! アイアンヘッドだ!」

「クチっ!」

 

 タイプ通り鋼のような頭を構え、クチートが突撃する。

 向かうハリテヤマはそれに悠然として迎え撃ち、激突するのに合わせて腕を突き出す。

 ドゴォッ! という衝突の音と共に弾き飛ばされたのは、クチートの方だ。

 流石にパワー勝負ではあっちに分があるか……!

 

「かみついて牽制しろ!」

 

 ならばと、直接攻撃はせずに噛み付く動き。

 こちらに飛び技はないが、それはハリテヤマも同じこと。隙を作るように牽制する。

 

「そこだ! ビルドアップ!」

 

 が、こっちの一瞬の隙もジムリーダーは見逃さない。応えたハリテヤマが、徐にパンプアップして大きな体を更に膨れ上がらせる。筋力が増強し、攻撃に加えて防御も増した雰囲気。

 そう容易くはいかんよな。時間を掛ければ劣勢か。こうなったら――

 

「クチート、かみつく!」

「むっ?」

 

 指示に従ってクチートがハリテヤマめがけて大あごを剥く。

 こっちの攻勢を見て取ったトウキ、そしてハリテヤマは真っ向から挑みかかってくる。

 再びの衝突。しかし今度は弾かれなかったクチートは、ハリテヤマの巨大な掌によってその攻撃を押さえ込まれていた。

 

「いい一発だね。だけど正面から押し切るにはまだまだだ――つっぱり!」

 

 トウキから賞賛が掛けられ、命令が飛ぶ。ハリテヤマが大あごを押さえたクチートへとつっぱりの連打を繰り出してくる。

 閉じた大あごを固め、耐えるクチート。いかに弱点攻撃ではないといえ、これだけの連撃を受け続ければ耐え切れないだろう。反撃に出れず、相手も逃さない勢いで攻撃している。ジリ貧の状態。

 ――それが狙いだった。

 

「今だっ、クチート!」

 

 鋭く声を飛ばすと、見事に応えてくれたクチートは()()()()()()()()()()()

 ハリテヤマの視界には大あごだけ。それが死角になり、得意のあざむき戦法を披露したクチートが横からハリテヤマの隙を突いてかかる。

 戯れるように、クチートはハリテヤマをもみくちゃにする。

 

「ソ、イ……っ」

 

 そうしてハリテヤマはぐらりと倒れた。戦闘不能だ。

 一部始終を見届けたトウキは、神妙に納得する。

 

「なるほど……じゃれつくか」

「その通り。正面からじゃ押し切れないなら横から、ってな」

 

 内心ひやひやしたもんだが、『仕込み』は上手くいってくれた。

 ジムに挑む直前、クチートと戯れていたのは親睦を深めるためでもあるが、じゃれつくの技を思い出してもらう目的があった。ビルドアップされて焦ったけど、それでもクチートの底力に賭けた結果、それに勝った形だ。

 決着し、互いにポケモンを労ってボールに戻す。

 

「――うん! 予想以上のビッグウェーブだ! キミという波を乗りこなせなかったボクはまだまだ鍛える余地があるようだね。勝利した証、ナックルバッジを持っていきな!」

 

 清々しく笑うトウキからそんな言葉とジムバッジを受け取る。

 と、その時。端からパチパチと拍手の音が耳に届いた。

 

「お見事。いいバトルだったね」

 

 そこにいたのは、上等なスーツを着込んだ銀髪のイケメンだった。

 

「おっ、ダイゴじゃないか! また石の収集かい?」

「そんなところさ。ついでに顔を出しに来たんだが、どうやら上手いタイミングだったようだ」

 

 ダイゴというらしい男は、あたしの方に目を向ける。

 

「キミの名前は?」

「え? ヒヨリだけど……」

「ヒヨリさんか。鋼ポケモンを使うトレーナーとしては、キミの戦いは見応えがあったよ。いずれ何処かで会えたら、その時はよろしく」

「は、はあ……」

「それじゃあボクは石の洞窟に行くよ。またね」

 

 意味ありげに言った後、さっさとジムを出ていってしまった。

 なんだあれ。ずいぶんなイケメンだったな。やはりイケメンは行動が謎でも許される風潮があると思う。あたしはどっちかというとミツルくんみたいなショタっ子が好きだけどな!

 

 なんか締まらなかったが、これにてあたしはムロジムをクリアしたのであった。




ルビサファでポケモンデビューした頃、石の洞窟でくっそ迷った末にやっと辿り着いた時には「何しに来たんだっけ」とダイゴの存在が謎すぎた思い出。

●トウキ
ムロタウンポケモンジムリーダー。原作ママ。

●ダイゴ
ヒヨリ目線では急に出てきた謎イケメン。鋼ポケモン使ってるとあるけど、厳密には鋼タイプ使いじゃなくて趣味パという解釈見た時はちょっと好きになった。

次回、視点変更。お楽しみいただければ。
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