ポケットモンスター、縮めてポケモン。
この星の不思議な不思議な生き物。
空に、海に、森に、街に、世界中の至る所で
その姿を見ることができる。
青年レイは、ここリトス地方のクルメタウンでポケモン博士の手伝いをしている。
「え?」
「ん? 聞こえんかったか? 旅に出てみるのはどうだと言ったのだが」
「いやいやいやいや! 聞こえてるって!」
ある日、いつものように博士の研究の手伝いを行っていた際に、白髪が目立ち始めてきた、初老というには少々ガタイがよく目つきの鋭い男性、ヨシュア博士からそのようなことを言われた。
「なに、フィールドワークをするのにも、儂の身体も思うように動かんようになってきたのでな。手伝いの一環として、このリトス地方を見て回ってくるといい」
「にしても唐突でしょ! それに、私ポケモン持ってないが!?」
「そんならそこにあるボールをなんでも好きなのを一個持っていけ。それで文句はあるまい?」
この人は昔からこうだ。思いついたことを即実行、この性格に何度振り回されたのかもう数えきれないくらいだ。
博士の指差した方を見ると、モンスターボールが置かれている棚がある。もう長らくこのクルメタウンからは新たなトレーナーが排出していない。時代の変化とともに、田舎部であるこのクルメタウン周辺には、若い人手というのは減少傾向にある。
それでも、ポケモンの力を借りて日々を過ごしている風景は、もうレイにとっては見慣れたものだった。
幼い頃に両親を亡くしたレイは、親戚であったヨシュアに引き取られた。
育てる代わりとして、博士の研究を付き合うように言われてから、かれこれもう10年ほどの月日が経過している。レイとしても、このままヨシュアの手伝いを続けつつ、自分もそちらの分野に進んでいくのだろうと思っていた。
一応、ポケモントレーナーとしての知識は持ち合わせている。だが、もう17になるというのに、今まで自分のポケモンというものを所持していなかったのに、今ここで急にポケモンを持って旅に出るのは、少し、いやかなり不安がある。
「はぁ……わかったよ。じゃあそこのポケモン一匹貰うからね」
しかしこの博士、やると言ったら必ずやるので、今ここで旅に出なければ研究所の敷居を跨がせては貰えないだろう。故に、渋々といった調子にはなってしまうが、レイはこう言うしかなかった。
「ハッハッハ。何、籠ってばかりでは見えてこないものもある。ポケモン博士を目指すのならば、旅をして自らで見聞きし体験してこそだ」
「……まあ確かにそうかもしれないけどさぁ」
リトス地方を巡る旅、きっと数年では終わらない長旅になるだろう。そのために、レイは自室へと戻り長旅の準備をする。
持参するものとしては、数日間の着替え・きのみが数種類に薬草・治療道具セット、あとはキャンプセットといったところだろうか。長旅故に荷物はあまり多くない方がいいだろう。必要とあれば各街にて購入するのが良さそうだ。
しばらくして。研究フロアに戻ってくると、目についたボールを一つ掴む。ついでに研究所にあった「きずぐすり」や「モンスターボール」も何個か持っていくことにする。
「そんじゃ博士、行ってきます」
「ああ、気をつけてな」
研究所の扉を開き、旅への一歩を踏み出した。夢、はまだ漠然としているが、冒険とポケットモンスターの世界へと。
「実際にやってみんことには、何もわかりゃしない。この旅で、それを見つけてこい」
レイが出て行った扉を見つめながら、ヨシュアは呟く。さて、あいつが持って行ったのはなんのポケモンだったかと棚に目をやった時、ヨシュアは目を見開くこととなった。
「あ゛っ」
棚の中央右上辺りに鎮座していたはずの一つのモンスターボール。
とある人物から預かったタマゴから孵ったポケモンを置いていたボール置きには、今現在ボールは存在していない。
「……まあいいか。これも因果かねぇ」
****
クルメタウンを出てしばらく道なりに歩いていたレイは、そういえば貰ったポケモンが何かを確認していなかったと思いだす。
「やっば、急すぎて確認もせずに来ちゃったな。適当に取ったし、もしかするとコイキングとかの可能性も……」
コイキングが弱い、と言っているわけではない。戦い方次第では格上に勝つことも十分可能だろう。
だが、考えても見てほしい。『駆け出しのトレーナー』が『コイキング一匹』で旅をするのは相当に困難ではないだろうか。
「とにもかくにも確認をするか。出てこい!」
モンスターボールを軽く放り投げると、「ポン!」という小気味よい音とともに、中からポケモンが飛び出してくる。
そのポケモンは、二足歩行で大きな耳が特徴的なポケモンだった。
「ヒバ!」
「ヒ、ヒバニー!?」
うさぎポケモン ヒバニー
ほのおタイプのポケモンで、確かガラル地方で最初に貰える三匹のポケモンのうちの一匹のはずだ。
「ま、まさかヒバニーとはね……。これまた予想外だ」
「ヒバ?」
レイの呟きに不思議そうに首を傾げなるも、すぐに興味を失せたのか、辺りを駆け回り始めるヒバニー。
久しぶりに外に出られたうれしさからだろうか、楽しそうに跳ね回っているが、あまり遠くへ行かず、レイの視線から外れることはない。
「ヒバニー!」
しゃがんで、ヒバニーと視線の高さを近くしたレイはヒバニーを呼ぶ。すると、気付いたヒバニーは楽しそうに此方へと走ってくる。
随分とようきな性格なヒバニーだな、と思う。
「ヒバニー、私の名前はレイ。これからこの広大なリトス地方を旅する新米トレーナーだ。新米故に、至らないところも多々あるだろうけれど、もし君さえよければ、私の旅の最初のパートナーになってくれないだろうか」
「ヒバ!」
即答である。
レイの願いを聞いて即答でOKサインを出したヒバニーは、その小さな手をレイに向けて伸ばす。
「これは、了承ということかな。これからよろしくね、ヒバニー!」
「ヒバヒー!!」
レイも拳を突き出し、お互いにコツンと合わせる。
一人と一匹の長い旅路の第一歩が今踏み出された!
だが、レイは気付いていなかった。
スマホロトムに登録されている図鑑に表示されている、今パートナーとなったヒバニーの特異性に。
そこに映っていた内容は
ヒバニー
とくせい:リベロ
わざ:たいあたり/なきごえ/とびひざげり/ふいうち
特別な個体のヒバニー。これにレイが気付くのはもう少し後になる。
リトス地方
ガラル地方とカロス地方にほど近い位置にある地方
故に、リトス地方のガラル側は「スポットリトス」と呼ばれ、各地でパワースポットのような現象が見られる。
リトス地方の東側は「テラリウムリトス」と呼ばれており、こちらも各地でテラスタル現象が見られる。
北側には山脈が聳え立っており、この「マウンテンリトス」では、度々Zクリスタルが発見されたり、野生のポケモンが持っていたりする。
このように、リトス地方では「メガシンカ」「Zワザ」「ダイマックス」「テラスタル」が全て行える地方であり、それらを駆使するトレーナーたちもまた、セキエイに勝るとも劣らない実力者たちばかりである。
リベロは剣盾仕様です。