戦術人形が指揮官を愛するまで_表   作:イエローケーキ兵器設計局

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 恋敵とペアを組まされた翌日。


3.AK-12_表1(残酷な表現注意)

「起きなさい。」

 起床時間にも関わらず起きてこないMG42の部屋に行き、頭を叩いて起こす。

「うぅっ……。」

「おはよう、MG42。訓練開始よ。」

「うにゅ……。」

 ほら、しゃきっとしなさい!

「指揮官との休暇……。」

「訓練行きましゅよ!」

「もう……。」

 やれやれと、なぜこんな奴の世話を焼かないといけないのか、とも思いつつ、訓練場に行く。

 

 今回の演習は狭く入り組んだ軍事施設内での近接戦闘を想定したものらしく、ターゲットとして人間や人形以外も存在する、と聞かされている。聴力が異様に発達した個体も居るらしい。

「何をしているの?」

「流石にあたしの銃は狭いと振り回しぇましぇんから。」

 それはわかるけれど……なぜエルマEMP44なの?

「指揮官様に借りた銃でしゅから。」

「な、なんですって!」

「こ、声が大きいでしゅ!」

「あ、ごめんなさい。」

 指揮官から持っていくように、と渡されたらしく都市迷彩が施されていた。

「サプレッサー付き……まあ、気をつけてよね。」

「射線に飛び込んでこないでくだしゃいね。」

「わかってるわ。」

 後衛は任せ、施設に飛び込む準備をする。

「準備は出来てる?」

「いつでも大丈夫でしゅ!」

 フラッシュライトもレーザーサイトもドットサイトも積んでいない裸のEMP44を、背負ったMG42の代わりに大事そうに眺めるMG42を見て少し不安になったけれど、やるしかない。

「それじゃあ…………3,2,1……突入。」

 ドアを静かに開ける。暗闇を忍び足で進む。暗視装置は付近に敵の不在を知らせてくれた。

「……。」

 MG42が覚えたてのハンドサインを繰り返す。ちょっとゴチャついていて読みにくいけれどまあ、良し。着いてきて。

「……。」(停止)

 廊下の三叉路を右に曲がった先に何かがいる。反響定位……目が見えない個体が居るのね。

「……。」(物音を立てるな)

 薬莢を左へ遠くに投げる。刹那、角の向こうから顔をサルノコシカケのようなキノコに覆われた人間様の何かが走り抜けた。パッシブソナーは薬莢の付近の個体以外の存在を教えてくれない。

「……カチッ…カチッ……。」

「……!」

 振り返るとMG42。視点を戻しても何も見えない。

 肩を叩かれる。

「……。」(2時方向、10mに敵1体)

「……。」(了解)

 思わぬ特技に驚きつつ、それってバレるのでは?とも思いつつ警戒、左にもう1回、薬莢を投げる。また走る人間様の何か。こっちはキノコには覆われてなかった。

「……カチッ……。」

「……。」(10時方向、7mに敵2体、他は分からず)

「……。」(了解、前進)

 足音を立てないように三叉路を右に曲がり……!

「……。」(停止)

 15m先に壁にもたれ掛かって倒れた人間様の何かが……。キノコに覆われてもはや動きそうな気配はない。

「……。」(警戒して前進)

 

 遺骸から極力距離を取って前進すると、目的の部屋が早くも見えてきた。が……。

「……。」(停止)

 ボスクラスの敵が早速、出待ちしている。肩を叩かれる。

「……。」(破壊します?)

「……。」(ダメ、音が大きすぎる)

 この一体だけならともかく、複数体居たらたまったものではないし、クラッタリングをする様な連中を銃声で引き寄せてしまうわけには行かない。

「……。」(前が見えてなさそう)

「……。」(確かに)

 薬莢を投げる。気は引かれたらしい。それがそっちを見た。誤算だったのはその場から離れない、と言うことと……音のした場所を攻撃しだした、ということ。

「思わぬ誤算ね。」

「攻撃開始でしゅ?」

「ええ。やるしか無いわ。」

 

 まずは音に引き寄せられてきた頭キノコを集中砲火。よし。次に走ってきた人間(様の何か)も銃撃。

「MG42、デカブツを頼むわ。」

「了解でしゅ。」

 鳴り響く銃声、切り裂かれるデカブツ。流石、発砲音を電動ノコギリに例えられるだけはある。毎秒30発(※1)の発射レートは伊達ではない。ん?毎秒30発?

※1:"MG42"の発射レートは毎秒20発

「……MG42、貴女……何者?」

「何者って、あたしはあたしでしゅよ?」

「そ、そうよね……。」

 なに、この違和感……。ぞっ、とするような……まるで偽物と話しているような……何かがおかしい……発射レート以外に変なところは……?わからない、そもそも最初に出会ったときからそうだったのだろうか?

「ほら、行きましゅよ〜!」

「ま、待って!」

 後続を断ち切りながら前進する。目的の部屋のドアに辿り着いた。ロックをハッキングで解除。その中には……。

「お疲れ様、MG42、AK-12。」

 指揮官が待っていた。

 

「初めての二人三脚訓練はどうだった?」

「少し……そうね、悪くはないわね。」

 相方が不気味だった、とは言えず、言い淀んで止めた。

「そうかそうか。君がそんな反応を示すとは意外だな。MG42は?」

「楽しかったでしゅ!」

「そうか。よし、訓練を再開しよう。私は居ないものと思ってくれ。実際の目標は多分、書類かデータだろうしな。」

 指揮官は笑って"透明"になった。

 部屋を出ようとドアを微かに開けると濃密な甘い匂いがした。思わずガスマスクを着ける。それはソ連製ガスマスクを被るMG42も同じだった。濃密な黄色い煙。慌てて暗視ゴーグルも着ける。

「あたしが先行しましゅ。着いてきてくだしゃい。」

 そう言って先行するMG42。機関銃は背負ったまま、EMP44で戦うつもりらしい。

「MG42!2時方向!」

「見えましゅ!撃ちましゅ!」

 弾丸の嵐によってデカブツが倒れる。

「GO!GO!GO!」

 この角を曲がって……こっち!

「引き付けましゅ!先行してくだしゃい!」

「で、でも……!」

「荷物が辿り着けば良いでしゅ!ほら急ぐでしゅ!」

 

 生存判定のまま帰還できたのは私だけだった。訓練終了の宣言後に全身、染料まみれで出てくるMG42と敵役の人形達。

「2人とも……良く頑張ったな。シャワーを浴びてくると良い。執務室で待ってる。」

 

 シャワーを浴びているとMG42にいかにも疑問の声音で聞かれた。

「AK-12は指揮官様の事、どれくらい好きなんでしゅか?」

「えっ……。」

 考えたことがなかったわけではない。ただ、他に好きになった存在が居ないからわからない。

「あー……わからないわ。」

 あっさりと白旗を揚げることにする。

「実はあたしも良くわかってないんでしゅ。」

「貴女も?」

「指揮官様の事を考えるとぽわぽわして、何も考えられなくなる……というのは共通認識でしゅか?」

「ええ。」

「きっと、あたし達個体の中では至上命令なんじゃないでしゅかね。指揮官様関連のことは。」

 そうなのかも。

 

「指揮官、こちら訓練報告書です。」

「あたしからもでしゅ、どうぞ。」

「2人ともありがとう。明日はもっと難しくなる。よろしく頼むよ。」

 

 了解、と伝えて2人で出る。その脚で食堂へ。レーションの気分ではない。

 

 その後は何事もなく。翌日になる。

 

「えーっと……演習内容の変更と、それによっての今後の予定の変更なんだが……。」

 

 指揮官が言うには、演習が無くなって代わりに実戦が2週間後に入ったという。そして伝えられた作戦内容もシミュレーション寄りの内容から一気に現実的なものになった。

 

「セヴァストポリの海軍基地の地下3階に他チームの火力支援の下に潜入し、情報を入手せよ、と。了解したわ。」

「了解しましゅた!」

 

 そして訓練内容も変わった。

「……不服ですが作戦ですから。」

「あら〜?指揮官と作戦に行けると浮いていたのは誰かしら?」

 

 指揮官率いる火力支援チームは地下3階に先に突入。敵部隊を引きつけその騒ぎの中を私とMG42が突入する。私のペアはなぜM3じゃなくてMG42なのか。

 

「AK-12、AK-15、頼んだぞ。」

「了解したわ。」

「了解でしゅ。」

 

(1回目の仮想訓練)

 地下に繋がるエレベーターにより指揮官率いる火力支援チームが地下3階に到達。戦闘工兵車が集中砲火を引きつけている間に私達が階段で潜入する。

「派手にドンパチしてるようね。」

「核を使ったりしてないでしゅよね。」

「使ってたら私たちまで吹き飛んでるわよ。」

「それもそうでしゅね。行きましゅか。」

 廊下を進み、目の前に飛び出してきた工兵らしい機械人形を射殺。

「えーっと……次はここを……。」

「こっちじゃない?」

「そっちに行ってみましゅか。」

「……む?ちょっとストップ。」

 このT字路、右から微かに電子音がする。カチッ……カチッ……カチッ……。

「……この先、トラップがあるわね。手榴弾はある?」

「行きましゅよ〜!граната!」(граната:手榴弾)

 MG42が柄付手榴弾を投げて罠を破壊する。貴女、ロシア出身じゃないわよね?

 

「コンタ……!」

「煩いでしゅねぇ。」

 MG42が叫ぼうとした機械人形の頭をEMP44で撃ち抜き、まだ動いていたのかもう2発撃ち込んでいた。

「さて、あたし達の目的地は……あそこでしゅかね?」

「そのようね。」

 資料を見つけて持って帰ることが私たちの仕事。

 

「コマンダーよりAK-12、一部の敵戦力がそちらに向かっている!すまない!」

 爆音の中、申し訳なさそうな声をしている指揮官の無線を聞いて私達は進軍速度を上げる。

「コンタクト!」

 後ろから銃弾が飛んできて、MG42が背負っていた機関銃をようやく下ろす。

「煩くてしつこいでしゅよ!」

 1800RPMの銃弾の雨に後ろから撃ってきていた敵が倒れていく。

「前!」

「うぉぉぉっー!」

 

「リロードしましゅ!」

「了解!」

 物陰に彼女を引っ張り込んで弾薬ベルトを換える間、制圧射撃を続ける。

「リロードできましゅた!撃ちましゅ!」

 "Brttttt!"……という擬音が似合いそうな破壊力で敵を一掃する相棒にちょっと寒気を覚えながら前進。

「セキュリティが頑強な部屋……ここのようね。」

「鍵破り、お願いしましゅ。」

「了解。」

 MG42に制圧を任せてハッキングに集中する。今まで見てきたセキュリティより頑強で……指揮官のスマホやSNSのパスワードよりは簡単。要するに時間はそうかからない。

「開いたわよ!」

「あたしも行きましゅ!」

 

 中には墓石に見立てられたサーバーが並んでいて、青い花が一面に咲いていた。そして……その中央には……。

「訓練終了。」

 ふと現実に強制的に戻される。仮想の私は滑り、回り、落ちていく、現実の私へと。でも、私は確かに見た。MG42がMG42と向き合っていたところを。銃口を向け合っていたことを。

 

 お昼は食堂で。今日は親子丼が無くて代わりにえび天定食なるものがラインナップに追加されていた。ユウリンチー定食を食べながらMG42について端末で調べる。情報は……出てこない。

「お隣いいでしゅか?」

 どうぞと答えると、MG42がえび天定食を持って右隣に座る。端末は仕舞った。

「指揮官様が言ってましゅたよ、AK-12とあたしのペアは信頼できるって。」

「指揮官が?」

 そうなら直接言えばいいのに。

「指揮官様が、でしゅよ?」

「そう……。」

 仕舞った端末を取り出して見る。指揮官が最近、SNSを始めたという情報が入っていた。そしてそのアカウントの最終更新は……9分前。ある女性指揮官の合コン失敗報告に励ましの返信をしたのが最後、か。ブックマークをしておきましょう。

「えび天はどう?」

「うーん……まずまずでしゅねぇ……。」

「少し交換する?」

「いいんでしゅか?」

「私達はペアでしょう?」

「やったぁ!」

「こら、声が大きい。」

 おかずを半分ずつ交換する。このえび天は複数人で突くには丁度いい味だけど、一人だけだとこの量をこの味で食べるのは苦しそうだ。

「ユウリンチー、おいしいでしゅ。」

「それはよかった。」

 

 食べ終わって食器を返し、食堂を出る。指揮官とすれ違った。今日の副官はサイガ12か。屋上に立て籠もった時はどうなるかと思ったけれど……馴染めたようで何より……何よ、MG42。

「なんと言いましゅか……お姉さん、というよりお母さん、みたいな顔してましゅたよ?」

「煩い。」

「あうっ。」

 頭にチョップを一発。

「酷いでしゅ〜!」

「ふん。さっさと行くわよ。」

「ふぁ〜い……。」

 

 昼休憩が終わって2回目の訓練。

「やけに静かね……。」

「指揮官様が地下3階に到着しましゅた。」

 集中砲火を受けている間に……集中砲火が始まらない?なぜ?

「罠じゃないでしゅかね?ほら。」

 階段のドアをMG42が開けた途端、ドアが穴開きチーズのようになる。うーんこれは不味い。

「陽動に暴れてもらうしかないわね。コマンダー!」

「了解!前進する!」

 暫くして57mm機関砲が火を吹き、ありとあらゆる物が粉微塵になる音が無線越しに聞こえだした。

「パワードスーツ数機と交戦中!おそらく……AA-02"アレス"だ!よし、主砲を破壊!うおっ!」

 お願い、負けないで……!

「はっ!その程度のキックで本車はやられんよ!それっ!(連続した発砲音)よっしゃ、1台上がり!まだ来るかぁ?相手してやるよ!」

 

「AK-12、ほら、早く行きましゅよ!」

「あっ、ごめん!」

 MG42に引っ張られて階段室を飛び出す。幸いにも誰も居なかった。廊下を進む。パワードスーツ一体に遭遇!

「あわわ!」

「早く隠れる!」

 曲がり角に逃げ込んで煙幕を炊く。どうする?歩兵では歯が立たないというのに……!

「あたしは任せてくだしゃい。」

「えっ?」

 MG42を構える彼女。

「あたしは確かにMG42でしゅけれど……。」

 振り返って妖しく笑うMG42。

「私はMG42じゃないですよ?AK-12。覚えておいてくださいね。指揮官様とMG34お姉様しか知らないことですけど。」

 さっ、と飛び出して乱射し、すぐに戻ってくるMG42。明らかに表情が抜け落ちていた。

「収束手榴弾が欲しいです。」

「えっ?」

「収束手榴弾が欲しいです。」

「あっ、わ、分かったわ!」

 柄付手榴弾の弾頭を手榴弾に束ねて収束手榴弾を作る。信管は着発信管に替えた。

「AK-12、あたしが姿勢を崩すので正確に投げてください。」

 データリンクで送られてきたのは投擲目標の位置。装甲が剥げて強度が落ちていそうだった。

「了解。」

「行きますよ!」

 カウントもなく飛び出すMG42に合わせて飛び出し、重量物を投げる姿勢を取る。目標、姿勢を崩したパワードスーツの関節部。

「今です!」

「了解!」

 投擲。放物線を描いて手榴弾が飛んで着発信管が作動、パワードスーツの中心で爆発する。

「ふぅ……あれ、あたし達、パワードスーツを倒したんでしゅか?」

「えっ、あっ、覚えてないの?」

「全く思い出せないでしゅねぇ……まあいっか、でしゅよね〜AK-12。」

 なにこの、怖いMG人形……。

 訓練は無事に終わる。

 

 その後も様々なパターンを試した。地下で戦車戦になったり、エレベーターが故障して歩兵だけの突入になったり……。

 

 そして迎えた実戦。ここまでの経緯は長いから略する。AK-15が指揮官のことに関して心理的負荷で体調不良を起こして暫く休んだりしただけでそれ以外に大したことはなかったし。

 

「今回はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願い致します。」

 今回は奇妙な事に鉄血から戦車小隊が手配されている。どうやら訓練よりも激しくなりそうだ。

「AK-12、MG42、彼女達が今回支援に付いてくれる。」

「マルフーシャです。どうも。」

「スネジンカです。マルフーシャの妹です。よろしくお願いします。」

 それぞれの戦車から飛び降りる姉妹。識別情報にはObject195とObject292と表記されている。

「指揮官、鉄血ってこんなに血色の良い人形を作ってたっけ……?」

「これがどうやら別の国から来た人形を預かっているらしいんだ。詳しくはライカ中佐に聞いてくれ……と言いたいところだが、当の本人が行方不明じゃあなぁ……。」

「あたしはMG42V、こっちがAK-12でしゅ。」

 MG42を持ったMG42が自己紹介を始め、私の自己紹介を勝手にされる。……MG42"V"?

「MG42V……見覚えのある服と顔……もしかして……MG45さん?」

「そう呼ぶ人もいましゅね〜。」

「うちの部隊にもMG42とMG45というMG人形が居るんだ。」

「そうなんでしゅか〜ぜひ会ってみたいでしゅねぇ〜。」

 

 陽動として突入する指揮官車とは別に突破火力として2台の戦車が途中から随伴してくれるという。ありがたいけれど過剰火力じゃないかしら……これ。

「過剰火力でも何でも無かったわ……!」

 実際は想定外も想定外。パワードスーツどころか大型の二足歩行兵器と戦車ばっかり。狂気とかそれどころじゃない騒ぎ。

「あわわわ!」

「スネジンカ!落ち着いて!車体下部を撃たれないように!」

「MG42!収束手榴弾が効くと思う!?」

「無理だと思いましゅ〜!」

「発射!」

 二足歩行兵器をスネジンカの152mm APFSDSが撃ち倒す。

 さらに、その隣の二足歩行兵器はマルフーシャが135mm APFSDSで撃ち倒してしまった。

「パワードスーツ!」

「あたし達の出番のようでしゅね!」

「撃たれないでよ!」

「了解でしゅ〜。」

 7.92mm APであっという間にパワードスーツを蜂の巣にしてしまうMG42"V"。

「本隊は本隊で苦戦してるようでしゅね。聞こえましゅか?」

「(ノイズ)……(165mm 破砕砲の発砲音とHESHの炸裂音)……クソッ、複合装甲持ちか!」

「ええ。嫌な程ね。先を急ぐわよ。」

「了解でしゅ!」

「姉さん!私達は!?」

「この機械兵の足止め!健闘を祈るよ!」

 

 

 二足歩行兵器に遭遇して迂回する。

 パワードスーツを破壊。

「スネジンカ車が大破したみたいでしゅ……。」

「スネジンカは無事?」

「げっ……マルフーシャ車もやられたみたいでしゅよ……。」

「急ぐわよ!」

 

 MG42が被弾!

「うっ、はぁ、お姉しゃま……。」

「立てる!?」

「ぐっ……あたしが相手でしゅよ!AK-12、早く行くでしゅ!」

 

 見覚えのある扉に辿り着いた。訓練よりもセキュリティレベルの高いロックを解除し、入ると……細く長い通路。足を一歩踏み入れると……壁が赤熱する。

「……マイクロ波か。」

 生体パーツが使用されている戦術人形にとってマイクロ波というものは大変な天敵である。そしてそれは私にとっても例外ではなく。

「……ぐっ!」

 すぐに焼けて焦げていく皮膚。それでも足を止めるわけには行かない。口を開けば口内にまで影響が及ぶ。口を閉じ、目も開かずめちゃくちゃなデータを寄越すレーダーを信じてただ進むしかない。

 もう10mは進んだ。まだこの灼熱地獄は終わらない。腕の生体パーツは水蒸気爆発で吹き飛んで、骨格が露出してしまっている。

 出口が見えた。

 

 あと5m。

 

 あと3m。

 

 あと1m。

 

 

 

 着いた。ドアを骨格と人工筋肉、ケーブル類だけになった手で開ける。外側の生体パーツは殆ど残っていなかった。

「綺麗……。」

 訓練で見た目的地の光景。蒼い彼岸花に覆われた墓場。そして……異質なものが一つ。

「人形がなんでここに……?」

 脚と腕が人間よりも多く、髪の蒼い謎の女性型の人形が中央に安置されていた。人形はディスクを大事そうに抱えているが、少し強く引っ張ればすぐに回収できた。

「ごふっ……血……?」

 目眩がする。足元がおぼつかない。バランスが取れなくなって崩れるように倒れる。あぁ……私もここまでか。指揮官……また会えるわよね……。

 

 硬い床の上を誰かに引き摺られている。頭の上で連続した銃声がする。視界はぼやけていてよく見えないけれど、マイクロ波照射エリアを通り過ぎて通路まで誰かに引っ張られているみたいだ。

「……12!」

「AK-12!」

 誰かが私の名前を叫んでいる。私を引き摺っている誰かではないらしい。ぼやけていた視界がクリアになった、と思ったらまた視界がぼやけ、暗転する。

 

 次に目覚めたのは医務室だった。知っている天井だからわかる。隣のベッドに重厚な拘束具を付けられて寝かされているのはあの髪の蒼い人形だった。




 鉄血式タンク・シューペリオリティーに毒される指揮官。マイクロ波が照射される通路を突き進んだAK-12。罠に掛かった脚を噛み千切る狼になったMG42V。そして……ブルースフィアと名付けられた謎の人形。
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