異世界で勇者のお世話役   作:Park M

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 続いた……だと?


どうやら俺は死んだみたいです

 

 

 

 「それでは異世界で勇者の水先案内人……お世話役のお仕事、引き受けて下さいますよね?」

 

 気付いたら俺は、長テーブルを挟んでなんか神々しいオーラを放つ女の人と対面していて、よく分からない仕事を依頼されていた。……うん、意味が分からない。女の人は何か長々と話をしていたけど、ほとんど頭に入ってこなかった。

 

 「あれ、おーい聞こえてますかー?……おかしいですね、魂の抽出の時に何かしてしまったのでしょうか…」

 

 「あのー、聞こえてはいるんですけど……ここはどこで貴女は誰ですか?」

 

 俺としては至極当然の疑問を投げかける。目の前の女の人はもちろんのこと、ここがどこかさえ分からない。しかもこの部屋、俺たちが座っている椅子と長テーブル以外に何も無いのだ。質素を通り越してもはや殺風景と言ってもいい。あと白すぎて目が痛い。

 

 「あら、聞いていなかったのですね……こほん、それではもう一度説明させていただきます」

 

 「あっ、はい。お願いします」

 

 女の人は仕切り直すように咳払いをして話始める。もしかしたら、さっきまで結構重要なことを話してもらっていたのかもしれない。聞いてなかったことに罪悪感と申し訳なさが湧き出てくる。今度こそちゃんと話を聞かなくては。

 

 「まず、私はあなた達の言う女神と呼ばれる存在です。名前は特にないので、好きに呼んでいただいて結構です」

 

 「???」

 

 さっそく意味が分からないが、いちいち疑問を口にしていては埒が開かないため、喉元まで登ってきた言葉をグッと我慢する。

 

 「あなたの居るここは、まあ……私の部屋だと思ってください」

 

 「この殺風景な場所が……?」

 

 女神様の言葉に俺は辺りを見回してみるが、やっぱり何もない。椅子と長テーブル以外は白、白、白。ただひたすらに白い世界が続いている。ミニマリストがドン引きするぐらい何もない部屋だ。

 

 「そしてあなたの名前は鵠沼龍一(くげぬま りゅういち)、今年で17歳……間違いありませんよね?」

 

 「はい、間違いありません」

 

 「では単刀直入に言わせていただきますと……あなたは死にました」

 

 「はい……はい??」

 

 聞き間違いだろうか。なんかいきなり死亡宣告をされた気がする。思わず女神様に聞き返してしまった。

 

 「えっと、俺がなんでしたっけ」

 

 「死にました」

 

 「聞き間違いじゃなかった……?!」

 

 俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏して女神様の言葉を反芻する。……えっ、いやっ、死んだ?誰が?女神様が言うには俺が死んだみたいだけど……じゃあここはあの世ってこと?

 

 「具体的に言うと、スピード違反と信号無視をした車から小学生の男の子を庇ってそのまま熟れたトマトみたいになって死にました。凄まじい殉教者精神ですね」

 

 「別に詳細を知りたかった訳じゃ無いし、あとグロい!」

 

 追い打ちをかけるかのような女神様の言葉に、俺は息も絶え絶えにツッコミを入れる。正直信じられない……が、今の話を聞いてここに来る前の記憶を朧げながらも思い出した。

 

 たしかに俺は、男の子を突き飛ばす形で庇い、車に轢かれていた……と思う。俺の生死までは分からないけど、かなりスピードが出ていたように見えたし……あとは女神様の言う通りだろう。

 

 「それじゃあ女神様の言うことが本当だとして、ここはあの世ってことになるんですか?」

 

 「厳密には違いますね。先ほどもいった通りここは私の部屋みたいなものですので」

 

 女神様の部屋はあの世とはまた違うらしい。まあ、だとしたら俺以外にも亡くなった人が居ないのはおかしいか。

 

 ……俺は、死んだのか。いまだにちょっと実感は湧かない。

 

 「……とりあえず、理解はできませんが納得はしました。それで……」

 

 自分が死んだことに色々思うことはある。だけど()()()()()()()、俺には知りたいことが一つあった。

 

 「それで、その男の子は無事だったんですか?」

 

 「……ふふ、この後に及んで自分ではなく庇った人の心配ですか……それでこそ、私の見込んだ人間です

 

 俺が質問をすると、女神様が俺には聞こえないくらい小さな声で何かを喋っていた。質問ばっかりの俺に気を悪くしてしまったのかとも思ったけど、機嫌良さげに笑っていたし、何かいいことでもあったのだろうか。

 

 「あの、どうかしましたか?」

 

 「ああいえ、男の子でしたらあなたの献身のおかげで軽い擦り傷だけで済みましたよ……心の傷はどうかは知りませんが

 

 「そうですか……よかった」

 

 女神様の言葉にほっと胸を撫で下ろす。もし、男の子も一緒に亡くなっていたら、後悔しても仕切れなかった。あの子を助けられたという事実だけで報われた気がする。

 

 「それで俺はこのあとどうなるんですか?やっぱり天国だったり地獄だったりに行くんですかね?」

 

 できれば天国に行きたいなー。いや、でも天国は無限に花畑だけが続く退屈な場所って聞いたこともあったっけ。それはそれでやだけど地獄にも行きたくは無いな……。

 

 「えっと、私が言うのもなんですが……鵠沼さん、あなたは現世に未練や後悔などはないのですか?」

 

 「未練や後悔……」

 

 困ったような顔をした女神様に聞かれる。未練……そう言われて思い浮かぶのは幼馴染や仲の良かった友人、親孝行も碌に出来ずに残してしまった両親……正直、例を挙げればキリがない。だけど……

 

 「未練は無い、といえば嘘になります。ですが、最期に男の子の無事も知れましたし、俺は自分の人生に後悔はありません」

 

 男の子が無事だったのなら、それでいい。俺の最期は無駄にはならなかったのだから。胸を張って俺の人生に後悔は無いと言える。

 

 「そうなのですね……それで、あなたがこれからどうなるのか、でしたね。そちらを話す前に、生命の仕組みについて軽く話します」

 

 「分かりました」

 

 「普通、生命が死んだときにその魂は魂の回廊というものを通ってそのまま輪廻転生の輪に組み込まれます」

 

 輪廻転生……つまり天国や地獄に行くとかじゃなくて、また新しく生まれ変わるということだろうか。

 

 「それじゃあ俺も、転生して新しく生まれ変わることになるんですかね?」

 

 「()()()そうですね」

 

 なんだか引っかかる言い方をする女神様。まるで俺が普通じゃないみたいな……

 

 「……死んだら輪廻転生の輪に組み込まれるんですよね?」

 

 「はい、そうですね」

 

 「それじゃあ、俺はどうしてここ、女神様の部屋に居るんですか?」

 

 「私が輪に組み込まれる前にあなたの魂を回廊から抽出したためです」

 

 「なるほど……」

 

 女神様の話を一つ一つ整理していくと、嫌な想像が俺の頭を過ぎる。

 

 「つまり俺は転生することは……」

 

 「このままじゃできませんね」

 

 「何してくれてんですか女神様……!」

 

 俺はまた頭を抱えてテーブルに突っ伏す。なんだかさっきから女神様の言葉に俺の情緒は振り回されてばっかりいる気がする。これが神様の試練ってやつなのか。多分違うけど。

 





 次こそ多分続きません。
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