戦闘工兵、前へ   作:イエローケーキ兵器設計局

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 頭を使うのは得意ではない。取り敢えず実践する、それが俺のやり方だった。アンナは逆に頭ばっかり動かしてなかなか実行に移さない。いつも手が止まっていた。
 ……アンナって誰だ?
(申し訳程度のお色気注意)


3.遭遇

 寝返りを打つとむにゅっ、とした柔らかい感触で目が覚めた。目を開けるとアトラント隊長が傍で寝ていて、俺はその胸に頭を突っ込んだ形になっていた。オイルのツンとした匂いの裏に微かに香る女の子の良い香りがする。この匂いは……記憶に微かに残る幼馴染の背中の匂いを思い出させてくれた。

「なんだ夢か……。」

 もう一回、目を閉じる。

「んん……。」

 柔らかい感触が気になって眠れない。身体をゆっくりと確かめながら触る手の感触。俺は気がつけば隊長に抱きしめられていた。流石に上官のおっぱいに頭を突っ込んだ状態は何を言われるか分からないのでなんとか這い出て肩の高さが合うところまで移動する。が、これ以上は腕の力が強すぎて動けない。諦めるしか無いようだ。

「ベイカーくん……。」

「……。」

 隊長の寝言に出てくるベイカー、とは俺のことだろうか?でも、身に覚えは無い。幼馴染……"アンナ"……あれ?なんで昨日は思い出せなかった幼馴染のことを思い出せているんだ?

「ベイカーくん……まってくれ……。」

 俺は何を聞かされているんだ?他の男……いやまあ、幼馴染と付き合ったことは無いし、隊長とも付き合ってないから男が居ようと居なかろうとどうだって良い筈だが……少し不機嫌になっている自覚がある。

「ベイカーくん…………んっ……ん?」

「あっ。ど、どーも。」

 急に目を開いた隊長と目が合った。

 

 お互いに気まずい朝を迎えること2回目。明らかに自分のせいじゃないのになぜか緊張している俺と、上官へのセクハラは止めろと初日で言ったにも関わらず自分から部下にセクハラしてしまった隊長。

「す、すまない……。」

「隊長……よ、よく眠れましたか……?」

「あ、あぁ……とても……な。な、なぁ……私は君に何かしてしまったか?」

「と、とと特には何も……はい……。」

 眼福だったのと微かに女の子の香りがして良かったです、はい……すいません……。

「おはようござい……あれ?何かありました?」

「えーと……君は……。」

「フェ、何事もなかったの。4人は?」

「まだ寝ています。起こしますか?」

「ええ。お願い。」

 似たような子供……子供、か。よく名前と顔を覚えてられるなぁと感心しつつ支度をする。

「その……なんだ……君が嫌でなければ……たまに来て欲しい……かもしれない。わ、忘れてくれ!」

 

 今日の訓練は地図で地形を把握する訓練だった。一人一人にそれぞれ異なる間違った地図が与えられ、正しい合致するところを参考に書き直す作業を始める。

「フォ、その地図見せて。」

「どうぞ。」

「フーイ、どう思う?」

「ここは合ってる。」

「フムは?」

「こっちが一致するね。」

 俺は地図を片手に周囲を見渡す。どこまでも続くように見えた草原と、そびえ立つ壁。

「ベイカーさん、地図を見せてください!」

「すまんすまん!」

 地図を見せるとかなり修正が進んでいた。

 

 地図を新たに書き起こしてバインダーに留め、現地に行き、地形情報を書き入れていく。

「ここは泥濘……歩兵は足を取られる……。」

「木があって……ん?ベイカーさん!アトラント隊長!敵襲です!」

「何だと!?」

 敵襲!?

「総員、後退するぞ!フェ、降りて!」

「は、はい!」

 フェちゃんとフォちゃんを担いで全員をハンガーに走らせる。

「隠れろ!ベイカー君、フェ達を頼む!」

「総員、銃を取れ!」

 隊長が砲塔から戦車に乗り込むとエンジンが即座にかかる。

「ターゲットは300〜400m、1個小隊規模!交戦開始!」

 戦車の機銃が火を吹く。

「フォちゃん、撃てる?」

「ちょっと待ってください……。」

 遠くで人影が1つ倒れた。明らかに動揺している。

「サブマシンガン隊は引きつける!」

 取扱説明書には50〜75m程度までは引き付けて撃てと書いてあった。

 フォちゃんがリロードすると、ハンガーの壁が大きな音共に少し削れる。

「スナイパーだ!」

「ひっ、ひっ、ひいっ、怖い……!怖いよぉ!」

「落ち着け!君達は俺が守る!」

 ああ、言っちゃったよ、俺。出来やしないことを言うなんて。

「はぁ……はぁ……苦しい……苦しいです……。」

「よしよし……。」

 フォちゃんとフーイちゃんの背中を擦る。

「ベイカー!猟銃は使えるか!?」

 戦車のハッチから見えない程度に顔を出した隊長がエンジンの騒音に負けないように声を張る。どうやらガスマスクを外しているみたいだ。

「は、はい!」

「制圧射撃は任せろ!狙撃兵をやってくれ!」

 フォちゃんから預かったスコープを覗くと機械兵と髪の蒼い人間の姿が見えた。

「狙撃兵……見えた。」

 スコープの反射光が見えた。反射的に物陰に隠れる。

 次の瞬間、ピチュン、と例えるのが一番わかり易いか、銃弾が音を立てて戦車の装甲で跳ね返った。落ち着いて銃と頭を出す。顔が見えた。俺と同じ人間だった。

「すぅ……はぁ……すぅ…………。」

 パン、人間が倒れる。俺は……人間を殺したのか?

「よくやった!後はやる!」

 戦車が前進し約5分後、多少傷だらけで帰ってきた。

「総員、よく聞け。おそらくあれは斥候だろう。小康状態はもう、1週間は続かないと見たほうが良い。少なくとも正規軍の増援が居れば……まだしも……。」

 実質的な余命宣告を受けて、フォちゃんを始め、3人も倒れてしまった。動揺していないのはフムちゃんとファイちゃんだけか……。

「私達のために増援なんて割くわけ無いですよね……ははは……。」

 フォちゃんは完全に悲観的になってしまった。掛ける言葉も見つからない。

「ベイカー、ちょっと良いか?」

「はい?」

 隊長が耳元で囁く。

「君たちに渡した弾薬は低殺傷性の弾薬だ。でも、これからは子供騙しが効かなくなるだろう。今のうちに敵を撃つことに慣れておけ。」

「子供騙し、と聞いて。」

「げっ……フムとファイか。」

「私達は過去に人を殺しました。今更……引き返す気はありません。」

「自分の身を守る為に敵を殺すのはいつだって私とフムの仕事でしたから。」

 自分より小さい子なのにその目は死んでいた。この国は……おかしい。

 

 その夜、フムとファイ以外、誰も飯を食わず、誰も寝なかった。




Q:結局、饒舌では?
A:すいません、饒舌に書きました……。
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