地下貯蔵庫は広く、もはや使えるものは全て運び出されていた。
「フム、作戦は?」
「地下通路を以前拡張し、ある正規軍の基地に繋げました。」
「でかしたぞ。」
「私達は身分を偽って潜り込みます。貴方も。おそらくは……エイブル、ではもう、居られない。」
「そ、そうか……。」
「一ヶ月に一回でいい、妻に会いたい……子供に会いたい……家族に会いたいよ……。」
「残念ですが、家族もおそらくは探されているかと。」
「くそっ……。」
「急ぎましょう。ここもそのうち臨検されます。」
地下通路をひたすら歩く。換気穴や所々差し込む明かりを頼りに。
ずっと歩き続けていると無の境地、が見えてくる。
「奥様のお名前は?」
「ボニーだ。」
「ボニーさんが待っています。行きましょう。」
「さっき、探されていると!」
「可能性に過ぎません。それに……まだ分からないじゃないですか。観測するまで。」
「シュレーディンガーの妻ってか……クソッ!」
俺達はさらに歩き続けた。一日二日、三日くらい歩き続けたんじゃないか?
どこかの施設の地下へと辿り着いた。
「ここなら上がれます。」
極度の興奮状態で俺達は一睡もすることなく歩き続けていた。そんな中、寝床があるようなところなんてそうそう見つかるはずもないものが見つかったのならどうなるか。そう、ベッドに横になって寝てしまうのである。
「俺は後でいいよ。」
「ですが……。」
「大人は子供を守るものだ。」
「では……お言葉に甘えて……。」
固辞した2人だけ残して3人とも眠っている。ぐっすりと。ゆっくりお眠り。ん?足音が……。
「動くな、全員、ゆっくり手を上げ……エイブル……!?」
「え、ボニー?」
待っていたのは身重の妻との再会だった。
「そうか……。」
「ええ。なんとか生き残れたけれど……お隣さんは……。」
「言わなくて良い。大変だったろ。」
「うん……。」
邪魔しないように隅っこで小さくなろうとするフムとフーイに手招きをする。君達のお陰で俺は帰ってこれた。
「紹介しよう、彼女は俺の妻、ボニーだ。」
「よろしくね、可愛い守護天使達。」
差し出された手を握って良いのかわからない、といった表情をするフムとフーイ。
「こっちがフム、そして、こっちがフーイだ。」
5人分の紹介をする。
唐突に部屋にノックの音が響く。
「マルフーシャです、入っても?」
「どうぞ。いらっしゃい。」
そして新たな物語が始まろうとしていたのだった。
新聞見出しの切り抜き
「精鋭部隊の決死の自爆攻撃により敵国に大損害を与えたり」
「愛国者、決死の攻撃に散る」
「カゾルミアに栄光あれ」
ボニー
:エイブルの妻。タイミングこそ出来ちゃった婚ではあるがかなり以前から交際しており、結果的に出来ちゃった婚になったようである。お腹の中の子供はエイブルの子。
マルフーシャ
:原作の主人公。彼女は何を見て何を思うのか。