死んでも治らぬ努力嫌い男の異世界世渡り記 作:テムテムLvMAX
「燃やす!」
いいね気に入った!
我が祖父の頼みと俺の目的は合致した、そうどのみち王都バルバンナードへは行くのだから行商人を案内してあげよう、と。
しかし考えて見ればその行商人は軍の封鎖を掻い潜り山を分け入り護衛無くここまでたどり着いたバイタリティ溢れる人間、正気じゃない肝の座り方してるんじゃ無ければ、頭おかしいと評価を付けねばならない。
前世が1代で成り上がった大豪商なのかと疑いたくなるような覚悟の決まり方してる正真正銘のヤバい人、それが、行商人のお姉さんであった。
「それじゃ行商人のお姉さん、道を案内しますのでついてきて下さい」
「まぁ……村長のお孫さんが? 大丈夫?」
「不安なら、この地図をお渡ししても構いませんが……」
「冗談よぉ〜、大人なんだし、心配してないわロ・ミ・ア君」
鼻をちょこんと人差し指で押され、思わずうおでっか……。
まぁはい、こういう感じの年下からかい系大人のお姉さんみたいな、そんな感じの行商人さんです……一緒についてくる予定のアルミスが瞳孔開いてて怖いです、何をそんなに警戒してらっしゃる?
「ロミア、あの人の胸見すぎ」
「だって男の子だもん」
「私の胸は見ないくせにぃ?」
「後で鑑賞する時間取るから……」
「わたしゃ胸像かい!」
__バチコーン!
「あの……ロミア君? 頬が……」
「いえ、何でもないです」
バッチリな手形付いた、いたひ。
お姉さんに心配されたが問題ない、俺は丈夫にできている、殴られても蹴られても刺されても死にはしない、なぜなら丈夫だからだ、それに、上手く力を逃がす方法も心得ている、主に軍人だった事を暴露する前の祖父から仕込まれた体術が役に立っている、生かす所にまだ遭遇してないけれども。
「さて、出発しましょうか、今が日の出直後だから……夕暮れ前には王都に到着する計算です」
「じゃあよろしくねロミア君」
「はい、任せてください、一応俺とアルミスが護衛しますから危ない時は逃げる事を優先して下さい」
「……ええ、そうする。もう恥も外聞も投げ捨てて泣き喚きたくないもの……いや、本当もういや」
はは……まぁあれだけキャーキャーやってたら恥ずかしいよな、恥ずかしいと思えるだけ、生きてるってことだから……
コラ、アルミスさんや、そんな目で見てはいけない、あの人にも尊厳はあるんだ、見てはいけないよ……やばい早く行こう、この人の尊厳が保たれているうちに。
ということで村の外へ繰り出す、しばらく街道沿いに進み王都バルバンナードの裏、正門に対する裏門事だが、そこへ真っ直ぐ突っ切るように森の中を進むルートが何故かあった。
祖父からもらった地図によれば、大昔に使われていた旧街道の名残りのようだ、確かに森を歩き慣れてないと道とは思えない、しかしなぁ馬車も通れるような道ではない、木々の合間を一人通るのが精一杯と言うような具合、シンプルに言えば行き詰まった。
「ふむ……なんでこの道を指定したんだろうな」
「ロミアのおじいちゃんはこの事知らないんじゃない? しばらく使ってない道だったから、木で道が塞がれてること気が付かなかったとか」
「ありそうな話だ、てことは……街道の脇をこっそりと進むしか無いか……」
アルミスの言葉は概ね俺の見解と一致していた、我が祖父がこの道を確認したのはいつか? 木が成長し道を防ぐ程度には時間が経ってしまっていたわけだ。
「あの……これは……!」
行商人のお姉さん? なにか見つけたんだろうか、ヤケに驚いているな……本当にどうしたのだろうか。
「お姉さん、どうしたんですか?」
「この木を見てみて、この印よ、魔法の印、それも隠匿の魔法」
「む? 魔法の印ですか、おっ本当だ!」
お姉さんが指さす所には確かに木に刻まれた魔法の印があった、いわゆる六芒星だがその中心にはこの世界の魔法に使われる文字で“隠”と書かれていた。この印、よく見ると地図にも記載がある……ほほぉなるほどな、魔法で隠してたのか……やるねぇ。
「なになに二人で盛り上がって? 魔法の印ってそんなに凄いの?」
「そうだぞ、魔法を使うだけなら俺やアルミスも教えられればすぐ出来るくらいに簡単だ、けど魔法の印は魔法を持続させ続けるから複雑で深い知識が必要なんだよ、それこそ人生かけて勉強する必要がある……で、良いですよねお姉さん?」
「そうね合ってる、で、付け足すならこの隠匿の魔法はその中でも難しいって言われてるの、あるはずの物を隠すだけじゃなくてあることが分かってても触れないし、その対象が空間なら通れなくなるのよ、それだけ凄い魔法なのよ」
「へぇ〜凄い〜、なんかこう実感はないけど、凄いってことはなんとなく分かった」
伝わって良かった、魔法の印は複雑だが、それは組み立てる時だけで解除に関しては手順が分かれば誰でも解除できるらしい、ま、その解除の手順が分からないから普通は避けていくんですよ、今回は解く必要があるんですけどね。
しかしここでアルミスが問いかける……!
「で、どうやってその魔法を解くの?」
「えっ」
「あー……」
そう、誰も魔法の解き方を知らない!
…………どうするんですか? 本当にどうしたら良いんですか!?
そうだ地図、地図に何かヒント無いか? さっきの魔法の印が書いてある所をよく見てみれば……ほら……
「何も無い!」
「なんかいちいち立ち止まる旅になりそうな予感がしてきたよ」
「アルミス、言うとそうなるジンクスがあってだな……」
__ビュゥゥゥゥ
「きゃっ」
「うおっ」
「んんっ」
突然の強風、体が持っていかれるような立っていては耐えられない風が吹き付け、木の陰へ隠れる……通り過ぎたか。
「嫌な風だったな……」
「あれ? ロミア……地図は?」
「え? ここに……」
無い……無いっ! ないないない!? なんで? どうして?! さっきまで手で持ってて……さっきの風!
「ねぇあそこに舞ってるのって……地図かしら?」
あぁぁぁぁ……! もうかなり飛ばされてる……! 回収不能だこんちくしょう!
クソ……なんで……こんな……えぇ……なんで上手くいかない、上手くいかないぃぃぃ……こんな初歩的なことでぇぇぇ……!
「どうするロミア君……一旦村に戻ろうか?」
「そうよロミア、一回戻っておじいちゃんに聞けばいいのよ」
2人の意見はご尤も、しかし我が祖父に煽られるのは必定なんだよなぁ……ムカつく! こうなったら意地でも王都に入ってやる……上手くいかないまま人に頼るなんて、ぐぬぬぬぬぬぬ……!
そうだ! こういう時の冒険ガイドブック! 何かと便利な冒険ガイドブック! サラサラとページをめくりめくり……これだ!
「上書きだっ!」