「うー…」
手持ち無沙汰ですわ。休めとは言われましたが私には時間が無い。
「作業を…うっ…!」
しかし始めようとすると思い出してしまう、初音のあの顔。
Ave Mujicaのドロリスとしてファンを魅了する顔でもsumimiの三角初華としてファンに見せる顔とも違うファンには絶対見せられないあの顔、あんなに目を赤くして顔をぐしゃぐしゃにして…
「…可愛いかったですわ」
あの顔見れるならもう一度倒れてもいいかもしれない…なんて言ったら多分本気で怒るだろう。
「はぁ…」
今日は大人しくしていましょう。
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「…んぅ…今何時…」
時刻は17時を指していた、どうやら眠っていたらしい。
「初音は…まだですのね」
今日初音は午前中学校に行き午後からsumimiのインタビューがある、まだ時間がかかっているようだ。
「…お腹がすきましたわね」
よく寝たおかげか体調がいい、食欲もあるみたいだ。
「…うどんでも茹でましょうか」
布団から起き、ロフトの階段を降りてキッチンへ向かおうとしたその時だ
「ッ…!」
まただ、頭が裂けるかのような頭痛、倦怠感、吐き気。
「ゴホッゴホッ…」
今回は咳のおまけ付きらしい。
「ゴホッゴホッ…ゴホッ!ゴホッ!」
酷い咳だまるで
(お母様のような…)
「ゴホッ!カハッ…」ピシャッ
「え…?カハッ…ゴホッゴホッ…」
口内に広がる鉄錆の味、これは、
「血…ゴホッゴホッ!ゴホッ…ゴホッゴホッ!」ピシャッ
咳をする度に血が出る、私の体は…もう…こんな…ところまで…。バタッ
床に倒れる、体はもう動かない。
「きゅう…きゅうしゃ…」
固定電話に手を伸ばそうとするが目が霞んでよく見えない。
(ああ…皆さん…ごめんなさい…何も…出来…ず…に…)
私は意識を手放す。
「ただい…ま…さきちゃん!さきちゃん!」
「さきちゃん!大丈夫!?声聞こえる!?」
「…」
「ッ…」プルルルル…ガチャッ
「もしもし!救急車をお願いします!住所は━━━━」
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「…」
「ウイコ!」「三角さん!」「初華!」
「…みんな…」
「サキコは!?どうなの!?」
「…まだ目を覚まさない」
「一体何があったんです?」
「私が…仕事から帰ってきたら…リビングで…倒れてて…血も…吐いてて…呼びかけても…返事…なくて…」
「今日…仕事…はぁはぁ…休めば…はぁはぁ…よかった…さきちゃん…はぁはぁ…一人にして…はぁはぁ…不安だった…ろうな…はぁ…体が…はぁはぁ…動かなくなって…はぁ…血も…はぁはぁ…吐いて…助けを求めてた…ろうな…でも…誰も…いなくて…はぁはぁ…一人…ぼっちで…はぁはぁ…私のせいだ…私が…私が!!!」
「初華」ギュッ
「はあっ…!睦…ちゃん」
「落ち着いて、初華だけが悪いんじゃない、私たちももっと強く祥に聞くべきだった」
「その通りです、気絶するほど酷い頭痛なんて普通じゃない、ただの寝不足じゃない、そこまで分かっていながら私たちはまあ大丈夫だろうと油断をしていました」
「ウイコ、自分をあまり責めないで」
「みんな…ごめん…取り乱した…ありがとう…」
「うんうん!とりあえず今はサキコが起きてくるのを待とう!アタシ達の神様はそんなにヤワじゃないんだから」
「うん(はい)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━「初音!」「初音ちゃん!」
「!さきちゃんのお父さんと定治さん」
「祥子の容態は?」
「…ここに運ばれてきてから二時間、呼吸とかは安定しだしたけどまだ意識が…」
「豊川さん!豊川祥子さんのご家族の方いらっしゃいますか?」
「あっ…」
「初音は座ってなさい、私たちが行く、清告君」
「はいお義父さん、初音ちゃん待っててね」
「…はい」
「三角さん今の方々は?」
「さきちゃんのお父さんとお祖父さん連絡入れといたんだ」
「なんで連絡先持ってんの?」
「…初音って何?」
「…私の本当の名前、連絡先を持っている理由はお祖父さん…定治さんが私のお父さんだから」
「じゃあサキコの叔母さんってこと!?」
「それはまた…闇が深そうな話ですね…若葉さんはご存知でしたか?」
「…」フルフル
「…ごめん今まで嘘ついてて」
「芸名と本名が違うことくらいよくある話、それで嘘つきってんなら殆どの芸能人が嘘つきになるよ」
「そうですね、私もバンドの掛け持ちをしていた頃は色んな名前使っていましたから」
「え何それウミコ初耳〜」
「あまり思い出したくはないですが、「鉄の処女(アイアンメイデン)」というバンドの時はゴスロリファッションでシーリンという名前でやってました」
「え写真ある?写真」
「ありませんし、あったとしても見せません」
「…あった」
「え?」
「ムーコナイス!見せて見せて…ぶはっ!」
「なんで出てくるんですか!!」
「バンド名入れたら一番上に画像出てきた」
「これはww可愛いじゃんwwウミコw」
「嫌なんですよ!私こういうフリフリの服!」
「似合ってるよ海鈴」
「似合ってません!…ともかく三角さん名前というのは些細なものです、初華さんだろうが初音さんだろうが私たちは"貴女"を信頼しています」
「うん」
「…」コクリ
「…ありがとう海鈴ちゃん睦ちゃんにゃむちゃん」
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「━━━それで祥子は?」
「ご家族にお伝えするよう祥子さんに話したのですが…伝わってないようですね…祥子さんは瑞穂さんと同じ病気です」
「!瑞穂と…」
「…つまり長くは無いと」
「はい…このまま目覚めない可能性もあります」
「何とかならんのか?」
「…延命治療しか」
「…できることを頼む、清告君行こう」
「…はい…よろしくお願いします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━「初音達には言わないでおこう」
「…祥子がそれを望んでないでしょうしね」
「…豊川の運命には抗えないということか」
「…」
「おじさん!定治さん!」
「初音ちゃんどうしたの?」
「さきちゃんが目を覚ましたよ!!」
続く