「サキコー…来たよー…」コンコン
病室の扉をノックして返事を待つ。
「来ましたわね、お入りになって」
「失礼します…」ガラッ
「何かよそよそしいですわね、何かありまして?」
「…」
腹割って話したいとか言われたら緊張もするよ…
「いんや、何でもない」
「そうですか、ではお座りになって」
「失礼します…」ガタッ
どうやら始めるらしい。
「先ずは、結核などと嘘をついてしまったことと治るなどと言ったことについて謝罪させて下さい、ごめんなさい」
サキコは深々と頭を下げた。
「…じゃあ聞き間違いとかサキコのお父さんお爺さんの早とちりとかでもなく、ほんとに…?」
「ええ、私は死にます」
「ッ…」
なんでこいつはこんなに平然としてるの…???
「…半年ってのはピッタリ?それとも以内?」
「恐らく以内です、だから今この瞬間に死ぬかもしれません」
「…」
「なんて冗談ですわ、自分の体のことは自分がよく分かります、少なくとも今日は死にませんわ」
「…」
「続けますわよ、本題はムジカの今後です」
「私が居なくなったあとも続けられるように台本 演出のデータなどをまとめたメモリを今製作中ですわ、そして一番大事なのはオブリビオニスの後継者の選出、これがなかなか難しい…」
「オブリビオニスはムジカの世界において神…カリスマ性 演技力 演奏力…非の打ち所のない完璧な存在でなくてはなりません、なので少なくとも選出に後ひと月は必要です、ごめんなさい遅れてしまって」
「ムジカについてはこんなところですわね、それでは最後ににゃむ貴女に…」
「…ざけんな…」
「はい?どうされ…」
「ふざけんな!!!!」バシッ
「ッ!何を…!」
「勝手に決めてんじゃねえよ!後継者?意味わかんない、アタシはアタシたちはアンタだから、アンタが神だからムジカやってんの!アンタが神じゃなくなるならアタシはムジカ辞める」
「ッ…にゃむ…!」
「アンタさ強がってるでしょ」
「何を…」
「豊川祥子は神さまだから弱いところを見せては行けない…気丈に振る舞わなければいけない…とか考えてんでしょ、だからアタシ達に嘘ついた」
「ッ…」
「アンタは確かに神だよ、アタシたちに道を示してくれたからね、でもそれはAve Mujicaのキーボードオブリビオニスの豊川祥子なの!今ここにいるのはただの女の子豊川祥子なの!」
「アタシたちにくらい本心で話しなよ、怖いんでしょ?死ぬの」
「…」
「サキコ」
「…ええ怖いですわ…怖くないわけないでしょう!?」
「まだ死にたくないですわ!再結成してから二年…破竹の勢いでムジカは成長しています!これからも十年二十年…死ぬまで皆さんとやるつもりでしたわ!後継者も嫌ですわ!神は私だけ!オブリビオニスを完璧にできるのは私だけですわ!私以外に皆さんの人生を預けるなんて許しませんわ!」
「サキコ…」
「でも!どれだけ嫌でも!私は神!皆さんの人生の責任は取らなければ行けませんわ!私がいなくてもムジカが続くようにしなければなりませんの!!!」
「……だから嘘をつきましたにゃむの言った通り弱いところを見せないために」
「でも…」ポロッ
「もう…無理ですわ…」ポロポロ
「うわぁぁぁぁぁぁん!!ぐすっ…ぐすっ…皆さんと離れたくないですわ!ずっと…ぐずっ…一緒にいたいですわ!」
「…」
「これから!ぐすっ…やりたいことも沢山ありますわ!初音と一緒に見た星をみんなで見たいですわ!みんなでカラオケとかも行きたいですわ!遊びに行ったり!旅行に行ったり!ライブをしたり!まだまだ…やりたいこと…あるのに…!うっ…うぅ…はぁっ…ぐずっ…」
「…サキコ」なでなで
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「…思いっきり泣いてしまいましたわ…」
「いやぁいいもん見れたわ、サキコ可愛いなぁ」なでなで
「ちょっと!子供扱いはやめてくださいまし!」
「いいじゃーん、よしよしサキコ♪」
「もう…」
「そいやなんかアタシに言いかけてなかった?」
「ああ…そうでしたわ、少し内容が変わったのですけど、にゃむ貴女に任せたいことがありますの」
「?任せたいこと?」
「Ave Mujicaの全指揮を任せたいですわ」
「は…はぁ!?!?!?アタシに全部の指揮をやれって!?」
「そうですわ、最初は新たなオブリビオニスと共にやってもらう予定でしたけど考えが変わりましたわ」
「オブリビオニスは私だけ貴女たちが信仰する神は私だけですわ、ですが指揮を執る人は必要ですわそれをにゃむ貴女に任せたいの」
「な なんでアタシなの?確かにムーコとかウイコは指揮を執る感じじゃないけど…ウミコでいいじゃん!結構めんどくさい性格してるけどマネジメントとかそういうのは完璧じゃん!」
「確かにマネジメント能力は海鈴の方が上ですわ、ですが行動力ではにゃむが一番ですわ」
「こ 行動力?」
「二年前貴女は仮面を取りましたわよね」
「…ごめんなさい…」
「貴女が仮面を取ったことによって睦の仕事量が増えストレスと寝不足が積もりモーティスが出てきてムジカは解散しましたわ」
「ですがあの時のにゃむの行動があったから今のムジカがあるのです、あのまま行っていたらメンバー不和で解散していたでしょう」
「…仲良しこよしとかそういう雰囲気じゃなかったからね〜」
「世界を変えた行動力…そういった力が必要ですわ」
「大袈裟だよ…サキコ…」
「にゃむ…引き受けてくださいませんか…?」
「…ずるい顔する神様だなぁ〜」
「あざとい神というのもおつでしょう?」
「アンタあざとい自覚あるんだ…」
「はぁ…いいよサキコ、アンタの世界受け継いでみせる」
「!ありがとうにゃむ!それでは早速継承を始めますわよ!」
「って言っても何すんの??」
「台本 演出のイロハ全てを叩き込みます」
「それはメモリに入れるんじゃ…」
「…」カタカタ
「?」
「…消しましたわ!!」
「はぁ!?!?!?!?!?!?何してんの!?!?!?」
「今後はにゃむが世界を作っていくんですの、文章より直接教えた方がいいですわ!」
「だからって全部消すこと…」
「?全て覚えれば良いことでは?」
「スパルタの神!!!」
「さあ!これから大変ですわよ!にゃむ!」
「あぁーーー!!分かった!やってやるばい!!!」
「その意気ですわ!にゃむ!」
その日から毎日神の講座が始まった、教え方は…鞭 鞭 鞭 鞭 ちょっと飴 鞭 鞭 鞭 鞭とえげつない教育だった、病室に泊まらされて夜どうしやる時もあった。毎日会う度に疲れていて他のメンバーに心配されているがサキコからまだ言わないで欲しいと言われているため運動のし過ぎなどと言って誤魔化している。気がつけば五ヶ月がすぎていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━「……うん、悪くないですわね、ですが五日はかかりすぎですわ、最低三日でお願いします、では次も頑張って」
「…は〜〜い」
「また明日、にゃむ」
「うん…じゃねサキコまた明日」
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「はぁぁぁぁぁぁぁ…疲れる…」
「ホントにスパルタ…三日って…えぇ…」ブルッ
「…つーか最近冷えるなぁ…明日は暖かい服着てこ」
「もう九月か…」
あと一ヶ月でライブだ、そこでサキコはメンバーとお客さんに全てを伝えるそうだ、それまでは生きる。と言っていた。そうサキコのリミットもあと一ヶ月なのだ。
「もう…ないのか…」
『にゃむ!これではダメですわ!』
『にゃむ!ここはこっちですわ!』
『いいですわ!やっぱり才能がありますわね!』
スパルタではある、でも楽しい、かけがえのない時間なのだ。
「そろそろ…終わっちゃうのか…」
その時アタシの頬を何かが伝う。
「あれっ?これは…?…ああ、そうか」
涙だった。
「…結構…ぐすっ…我慢できた…ぐずっ…んだけどなぁ…」
感情が溢れ出した。
「…嫌だよ…サキコ…アタシも…アンタとお別れなんて…やだ…」
「なんで死んじゃうんだよ…アタシだって遊びに行ったり、動画に出てもらったり、色々やりたかったよ…」
「なんで…こんな運命なのよ…神さま…ばか…」
続く