「ふぅ…外に出たのは久しぶりですわね」
「さきちゃん!退院おめでとう!」
「おめでとうございます」
「祥…」
「良かった…さきちゃん…」
「さきちゃん退院おめでとー!いやぁ入院したって聞いた時はびっくりしたよ!」
「ほんとに、入院してるなら言って欲しかったよ」
「血も吐いたって聞いてたけど…元気なら良かった」
「…退院おめでとう、祥子」
「良かったよ…祥子」
「皆さまありがとうございますわ!そしてご迷惑をおかけしてすみませんでした、私復活致しましたわ!」
「…」
サキコは退院…という名の自宅療養に切り替えた、そのことは本人と定治さん 清告さん アタシしか知らない。
「退院したし、お祝いしようよ!お祝い!」
「愛音ちゃん…退院初日だよ?空気読もう?」
「えー??」
「いいですわね!早速行きましょう!」
「おっ!さきちゃん乗り気ー!」
「と言ってもどちらに行くのですか?」
「ファミレスに決まっていますわ!味の濃いもの食べたいですわ!」ダッ
「あっ!さきちゃん待ってよー!」ダッ
「抹茶!」ダッ
「おい!祥子!愛音!野良猫!走るな!」ダッ
「あっ…」
「はぁ…」
「あはは…」
「…ふふっ」
「私たちはゆっくり行きましょうか」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「祐天寺さん、うちの祥子が無茶なことを頼んだみたいですまない」
「定治さん…いえいえ無茶には慣れてますから、それにサキコが作ったムジカを終わらせたくないんです」
「いい友達を持ったんだな祥子」
「にゃむちゃーん!行くよー!」
「分かったー!じゃあ行きますのでまた」
「ああ」
「祥子をよろしくね」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ〜美味しかったですわ!」
「良かったねさきちゃん」
「ええ、仕方の無いことですけど病院食は味が薄くて大変でしたわ…」
「ふふっ…本当に治ってよかった」
「…ええお医者様と皆さんのおかげですわ」
「さて!明日から練習を再開致します!台本も書き終えましたし、詰めますわよ!」
「さきちゃん病み上がりなんだから無理しちゃだめだよ?」
「わかってますわ!倒れない程度に無理をしますわよ!」
「さきちゃん…」
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サキコが退院してから二週間、ライブ前日の日。
〜〜
「…文句なし…!皆さん凄いですわ!」
「えへへ…さきちゃんが入院してる間もみんなで練習してたからね」
「祥を驚かせようと思って」
「流石私の皆さまですわ!!」
「さきちゃん…///」
「祥…///」
「ふふ…小っ恥ずかしいですね…祐天寺さん?どうされました?」
「んえ?なんか用?」
「いえぼんやりとしてたもので」
「そう?…時経つの早いなぁって」
「確かにそうですね前回の6thから今に至るまでの十ヶ月間濃かったですからね」
「…明日で最後か…」
「え?」
「いやいや、忙しいのが最後かって話」
「ああなるほど」
「…」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「━━今日はここまでにしましょう、明日も早いですから」
「分かった(はい)(うん)」
「ねえ、ちょっといい?」
「もちろんですわ」
みんなが片付けを始める中アタシはサキコに声をかけ、部屋を出る。
「体は?大丈夫?」
「…ハッキリ言って今立っているのがやっとですわ」
よく見るとサキコの顔色は悪い、それに足が震えている。
「無理しないでよ!明日まで持たないよ!?」
「ええだから少し横になりますわ」
アタシたちはソファーへ移動する。
「…」
「…何?」
「私今から寝ます」
「うん、どうぞ?」
「枕が欲しいですわ」
「はぁ」
「太ももを貸してください」
「はぁ!?!?何言ってんの!?」
「いいから!早く!」
「えぇっ!?ちょっ!サキコ!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ…今回だけだかんね」
「安心なさって?次回が来るまでには死んでますわ」
「…」
「ふふっそんな顔なさらないでジョークですわ」
「ジョークが笑えないんよ」
「…」スッ
「…何?」
「にゃむの手綺麗ですわね、腕も凄く引き締まっていて」
「…そりゃどうも」
サキコはアタシの手を自分の頬に当てる。
「それに暖かい…ずっとこうしていたいですわ…」
「…サキコさ、それ色んな人にやってんの?」
「?いいえ、にゃむが初めてですわ、ああ…ふふっ」
「なによ」
「にゃむは意外と独占欲が強めですわね」
「〜〜〜ッ///寝ろ!!!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「豊川さんと祐天寺さんなかなか戻ってきませんね」
「私呼んでくるよ、ちょっと待ってて」
「分かりました」
「うん」
私は階段を上り部屋を出る。
「さきちゃーん にゃむちゃーん 帰るよー」
返事は無い。
「どこ行ったんだろう…?さきちゃーん にゃむちゃーん」
私はリビングの方へ向かった。
「ここかな…?あ…!わぁ…!」
私はリビングのソファーで二人が眠ってるのを発見した。
「疲れちゃったんだね」
二人とも寝顔可愛いなぁ…ずっと見てられるかも。
「…写真だけ撮って起こそう」パシャッ
「ふふっ…にゃむちゃん さきちゃん 起きて、帰るよ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日
「さきちゃん、そろそろ…」
「ええ、そうですわね、行きましょう皆さん」
「━━今回も楽しみましょう、Ave…Mujica…」
━━壇上━━
「剣士ティモリス我恐れることを恐れるなかれ」
「剣士モーティス我死を恐れるなかれ」
「剣士アモーリス我愛を恐れるなかれ」
「剣士ドロリス我悲しみを恐れるなかれ…オブリビオニス!」
コツコツコツコツ
「…女神オブリビオニス我忘却を恐れるなかれ、今宵もお楽しみくださいませ」
「オブ様ーー!!」「きゃぁぁぁ!!」「ドロリス様!」「ティモリス様!」「モーティス様!」「アモーリス様!」ザワザワ
「…始める前に一つお話がございます」
「えっ!?」「なになに?」ザワザワ
「さきちゃん?」
「台本にはなかったはずですが」
「祥…?」
「…」
「これは豊川祥子としてのお話ですわ、実は私は病にかかっています」
ザワザワ
「この病は遺伝性、治療法はありません、私はあと半年しか生きられないと半年前に言われました」
「え…?」
「どういう…こと…ですか」
「さ…き…?」
「え…??」「オブ様…死んじゃうってこと?」「そんなの…嫌だよ…」ザワザワ
「だから、今回が私にとって最後のライブになります、今までありがとうございました」ぺこり
ザワザワ
「…さきちゃん治ったって言ったよね!ねぇ!!」
「祥!なんで!なんでまた嘘ついてたの!?」
「豊川さん!説明をお願いします!嘘をついたことに対する納得のいく説明です!」
「…ごめんなさい」
「ッ!!!謝罪じゃなくて…!!!」
「ウイコ!!!」
「!」ビクッ
「…アタシらはさここに何しに来てんの?喧嘩するために来てんの?違うでしょ、演奏をしに来てるの、それを楽しみにしてるお客さんたちの前でそんなことしちゃだめ」
「ッ…でもそれどころじゃあ…!」
「…サキコの最後のライブがこんなんでいいの?最高の思い出にしてあげようよ」
「…にゃむちゃん…」
「…」
「!睦ちゃん…」
「祥が言ったこと何も分からない、でも今はギターを弾く、待ってる人達がいるから」
「若葉さん…そうですね、オーディエンスを待たせるのはアーティストとして良くないですから、私も今はベースを弾きます」
「海鈴ちゃん…」
「アタシも今はドラムを叩く、ウイコは今何するの?」
「私…は…」
「…私は」スッ
コツコツコツコツ
「…さきちゃん」
「…」
「バンド、やろう」
「―!うい…」
「…」コツコツ
「…ありがとう」
ザワザワ
「…」
「…ようこそAve Mujicaの世界へ…!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『━━━━━━━━━━━━━━━』
「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」」
「うっ…ゴホッゴホッ…ガハッ…!」
「ッ!さきちゃ…」
「初華!気になさらず!最後まで…お願い…」
「はぁ…はっ…はぁ…ふー…」
「…」
『━━━━━━━━━━━━━━━』
(ここで負けるな、まだ倒れるな、この光景を目に…)
『━━━━━━━━━━━━━━━』
(初華の歌声を、睦のギターを、海鈴のベースを、にゃむのドラムを)
『━━━━━━━━━━━━━━━』
(全部…全部記憶に…残す…!)
『━━━━━━━━━━━━━━━』
(なんて…心地いいのでしょう…)
ずっとこうして居たい、ずっとここに居たい、今日という日が永遠に続けばいいのに。
『━━━━━━━━━━━━━━━』
『━━━━━━━━━━━━━━━』
(ああ…終わってしまう…)
『━━━━━━━━━━━━━━━』
『━━━━━━━━━━━━━━━』
私はキーボードから指を離す、そのまま私は目を瞑ろうをした、その時だった。
「まだだよ、さきちゃん」
「え…?初華…?」
初華が私の腕を掴みステージ中央に連れ出す、みんなも示し合わせたかのように中央に立つ。そして全員で手を繋いだ。
「皆…さま…?何を…?」
「アンコールだよ、さきちゃん」
『━━━━━━━━━━━━━━━』
私たちはアカペラで歌い出した、しかし歌っているのは私たちだけでは無い。
『━━━━━━━━━━━━━━━』
ここにいる人たち全員が歌っている、男性も女性も老若関係なしにみんなが一つになって歌っている。
(綺麗…)
死んでも忘れることの無い最高の光景だ。
「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」」」
(全て…やり切りましたわ…お母様…見ててくださいましたか?)
幕が降りる、本当にこれで終わりだ。
「…」スッ
スカートの端を掴みお辞儀をする。
「ありがとう…ございました…!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ライブ後、私たちは初音のマンションへ向かった。
着くと初音がみんなにコーヒーを入れてくれた。
「…終わりましたわね…」
「「「うん」」」「ええ」
「…今まで私…上手に出来ていたでしょうか…?皆さんにとっての神に…なれていたでしょうか…?」
「…さきちゃんは私たちにとっての神さまだよこれまでもこれからもずっと…嘘はやめて欲しかったけどね」
「うん」「その通りです」「間違いなーい」
「…やはり皆さん怒ってますの…?」
「逆に怒ってないと思う…?」
「ごめんなさい…」
「…でも…もういいよ、さきちゃんが素直に言えない性格なのは分かってるし、私たちに心配をかけたくないから黙ってたんでしょ?」
「はい…」
「次会う時にはもう少し素直になってくれてると嬉しいな」
「次…?」
「だって神さまだもん、神さまは死なない…死んだとしても蘇る…でしょ?またすぐ会えるよ」
「確かにその発想はありませんでした、では私たちは待っていればいいんですね」
「うん…ムジカで待っていればいい…」
「できるだけ早く戻ってきてよ〜サキコ、アタシ一人でこの三人抑えるの大変なんだから」
「祐天寺さんまるで手のかかる人みたいに言うのやめてください!」
「にゃむ…心外」
「あはは…」
「みな…さん…ううっ…」
待ってくれるなんて、本当に優しい人達だ。
なら私もその優しさに応えよう。
「ぐずっ…ええ!すぐに戻ってきますわ!だって神ですもの!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日はみんな初音のマンションに泊まることにした、夕食は一人一品用意するという方式にした。
「ウミコ最初に言っておくけどプロテインバーとかはなしだからね〜?」
「失礼な!私が料理出来ないように見えますか!?」
「見える」
「くっ…若葉さんまで…」
「…そーいうムーコもきゅうり一人一本とかなしだよ?ちゃんと手を加えてね?」
「素材本来の味を…」
「せめて味噌くらいつけて!」
「あはは…さきちゃんは何作るの?」
「鮭があったのでホイル焼きでもと」
「えっ?すごい!」
「レシピ通り作るだけですわ、初音は?」
「私はポトフを作るよ、汁物はあった方がいいかなって」
「いいですわね!」
「うんうん、そこ二人は問題なさそう」
「祐天寺さん!出来ました!見てください!」
「にゃむ私もできた」
「…この速さの時点で怪しいんだけど一応見るわ…って二人とも何これ」
「プロテインバーを砕いてプロテインに混ぜたものです!そして追いプロテインバーです!やはりデザートは必要かと」
「私のは赤味噌 白味噌 甘口味噌 辛口味噌 この家にある全ての味噌を混ぜた究極の合わせ味噌を添えた味噌きゅうり」
「…ツッコミが追いつかねーーーーーー!!!!!!!」
「ウミコのはプロテインじゃん!純度百パーセントのプロテインじゃん!」
「ムーコはやりすぎ!いくらきゅうりがほぼ水分の塊と言っても塩分過多だわ!」
「そういう祐天寺さんは何を作ってるんですか?私たちに文句をつけるならさぞ素晴らしいもの作ってるんでしょうね」
「アタシは野菜炒めだよ、冷蔵庫見たら野菜たくさんあったし」
「…普通ですね、祐天寺さん」
「面白みがない」
「面白い料理をする企画じゃないんよ!普通に食べるんだから普通でいいんよ!普通で!」
「ふふっ…あはっ…!」
この方たちは本当に面白い。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「「「「「ご馳走様でした!」」」」」
「にゃむちゃん野菜炒め美味しかった!料理上手なんだね!」
「まあね一人暮らしだし、実家にいた頃も割と料理してたし、ウイコのポトフも美味しかったよ、つーかサキコが料理出来たことが驚きなんだけど」
「できないと思ってたんですか?失礼な…レシピ見ながら作っただけですわ」
「見た目とか写真まんまだったし凄いよ、つーか納得いかないのがさぁ…」
「「?」」
「…ウミコとムーコのやつが意外と美味かったこと」
「「ああ…」」
「ふふん」
「もっと褒めてもいいんですよ」
「味噌は濃かったけどそれが気にならなくなるほどにみずみずしいきゅうり…言葉では表せない何かが詰まってた気がした…」
「流石アモーリス、愛を込めて一本一本作ってるから」
「プロテインに関してはなにか別の味がしたけど他になんか入れた?」
「気がつくとは流石です、バナナと卵あと牛乳を入れました」
「全部消化にいいものやね…」
「にゃむの野菜炒め凄く美味しかったですわ!」
「うん!野菜の切り方が食べやすい大きさだった!」
「味も濃すぎず薄すぎずといった感じで」
「また食べたい」
「おお…そんなに好評なんだ…ありがと」
「では片付けましょうか!」
「みんなはお風呂入ったりゆっくりしてていいよ私が洗い物するから」
「では私はお皿を拭きます」
「いいの?ありがとう海鈴ちゃん」
「お風呂入るね初華」
「行ってらっしゃい!睦ちゃん」
「乗り遅れましたわ…」
「アタシらはゆっくりしてようか」
「そうですわね」
私たちはソファーに腰かける。
…凄く眠い。時間。なのかもしれない。
「にゃむ…」
「どしたん?…眠いの?サキコ」
「ええ…よろしければなんですが…」
「いいよ、ほら」
にゃむは私が言う前に膝をあけてくれた。
「ありがとう…」
にゃむの膝に頭を乗っけて横になる。
「意外とすぐでしたわね次」
「確かに。…ご飯の後すぐ寝ると牛になるよ〜」
「もう今更遅いですわ。…明日は何をしましょう」
「前言ってたじゃん、みんなでカラオケでも行く?」
「いいですわね、その後は皆さんとご飯を食べて夜はプラネタリウムを見に行って…でも本物も捨てがたいですわね…小豆島に行きましょう」
「…なかなかハードな一日になりそ〜」
「ふふっ…楽しみですわ…」
「そうやね…でも今は眠いしょ?明日起こしてあげるから今は寝な」
「ええ…ちゃんと起こして…下さいよ…?」
「もちろん。おやすみ、神さま、おやすみ、サキコ」
「おやすみ…なさい…にゃ…む…」
意識が遠のく。そういえばお風呂に入っていない。歯も磨いていない。
…明日やればいいか。にゃむが起こしてくれるらしい。にゃむならちゃんと起こしてくれるだろう。ああ。明日が。楽しみだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「にゃむちゃん、さきちゃんは?」
「寝たよ、もう」
「そっか…寝ちゃったか。…おやすみなさいくらい言いたかったな」
「豊川さん…」
「祥…」
「明日カラオケ行こうだって、夜は小豆島に星を見に行くって」
「いいですね、楽しみです」
「うん」
「五人で遊びに行くの初めてだね」
「アタシらも早く寝よっかサキコ起こさなきゃいけないし」
「そうです…ね…ぐすっ…」
「ウミコ、どうしたの?」
「いえ…少し…目に…ゴミが…。…ぐずっ…豊川さん…」
「海鈴。私も。目に…ぐすっ…すん…ゴミ…が…」
「…」
「にゃむちゃん…ごめん…私も…ゴミが…入ったみたい…」
「…こんな偶然あるんやね…アタシも…だよ…アタシ…も…ぅぅぅぅ…あぁっ…ぐずっ…ああっ…サキコ…ぐすっ…サキコ…!!」
不思議な日だった。みんな同時に目にゴミが入って涙が止まらなくなってしまった。それはずっと止まらなかった。早起きしなければならないのに。サキコを起こさないといけないのに。日をまたいでも、日が昇っても、止まることはなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…」
「睦ちゃん!にゃむちゃん!海鈴ちゃん!遅れてごめん!」
「あ!ウイコ来た!おつかれ〜」
「お疲れ様初華」
「お疲れ様です三角さん」
「じゃあみんな揃ったし行こっか!」
アタシたちは駅に入り電車に乗る。
「海鈴ちゃん次の練習いつだっけ?」
「次回は明明後日の午後です」
「ライブまであと一ヶ月だからね〜練習増やしていくけど無理はせんといてね」
「ううん、調整するから大丈夫!」
そうこう話しているうちに降りる駅に着いた。ここからは徒歩、だいたい二十分くらいだ。
「そういえばマイゴが全国ツアー決まったみたいですよ」
「へぇ〜!凄いね!」
「立希さんから聞きました」
「合同ライブとかいつか出来たらいいなあ」
「対バンもいいかも…」
「それいいねムーコ」
話してると早いものだ、もう目的地に着いた。
「じゃあ会いに行こっか」
「「うん」」「はい」
目的地に入りアタシたちの神さまに会いにいく、その途中で水を汲んだり掃除用具の準備をしたりした。そしてご対面だ。
「ひと月ぶりやねサキコ」
あれから十年、キーボード抜きでムジカは続いている、サキコはねぼすけで困る。お母さんと、瑞穂さんと同じ所に入れてもらっている。
「というかなんか綺麗やね」
「誰か来たのかな…?」
「この前立希がマイゴで行ったって言ってた」
「えぇ〜!ムーコ早く言ってよ〜掃除用具持ってきちゃったじゃん。まあいっか、暑いから水かけてあげてお線香あげよう」
全体にくまなく水をかけそれが終わったらお線香に火をつける、お線香を置き手を合わせる。
「「「「…………」」」」
全員が伝えたいことをサキコに伝えている。楽しかったことから辛かったことまで。
(早く起きなよサキコ、星見に行くんでしょ。…アンタの代わりになるように頑張って務めてるけどさ、アンタ本当に凄いよ、アタシはみんなのサポートあって何とかやってるけどアンタは一人でやってたもんね、アンタには敵わないよ、聞きたいこともあるしさ早く起きてよ、待ってるから)
「…みんな話終わった?」
「「うん」」「はい」
「じゃあ行こっか、また来るねサキコ」
「またねさきちゃん」
「失礼します、豊川さん」
「じゃあね祥」
全員が立ち上がりこの場を後にする。
その時だ。
『来てくださってありがとう。頑張って』
振り返る。幻聴なんかじゃないはっきりと聞こえた。アタシだけじゃないウイコもムーコもウミコもみんなに聞こえたみたいだ。
みんなで目を合わせ、頷くとみんなで前を向き直す。
すぐ近くにいる。見守ってくれているそれがわかったのだ。
(見ててよサキコ。アンタが帰ってくるまでにムジカをもっとでかくする!)
そしてみんなは歩き出した同じ方向に同じ未来の方へ。
[完]