貴方のことが好きすぎるゼンゼロ女子だなんてそんな 作:究極進化さむらい(2歳)
何処にでもあるような、何の変哲もないアパートの一室。
念入りに清掃がされているのか部屋は綺麗と言って差し支えなく、隅々にまで手が回っており埃の一つすら存在しない。
寝具のシーツや、取り込んだ洗濯物はシワ一つ無く整えられている
部屋に置かれた家具は、シンプルであるが可愛らしいデザインが施されており、住居者が女性であると推察できる。
棚の上や寝具周りには、パエトーンと呼ばれる者のグッズが大量に置いてあることから、重度のファンなのだろう。
テーブルの上に置き手紙と置いてある、作り置きであろう煮物やおにぎりからは、とても食欲を沸き立たせる匂いが発せられている。
そんな家庭的そのものと言った部屋に、似つかわしくないものが存在していた。
寝具から少し離れ、窓から差し込む日差しが直撃している部屋の中央。
そこには、到底人間とは思えない"怪物"がいた。
2メートルを越えた黒い巨体からは、体を突き破るように結晶が飛び出ている。
頭部に位置するのは顔ではなくブラックホールのようなコア。
それはエーテリアスと呼ばれる存在だった。
ここはホロウの中ではない為、本来であればエーテリアスは活動できないはずなのだが、床にへたり込んでいるのは紛れもないエーテリアスそのものだった。
そのエーテリアスは少しの動きも見せず、一切の揺れすらなく只々そこにいるだけの物置のようであり、生命活動の有無すら判明できない。
やがて、日は落ちてカラスの鳴き声が鮮明に聞こえてくる。
ガチャっ、と扉が開かれる音が聞こえ部屋の主人と思わしき人物が入室して来た。
「ただいま、なのです」
開口一番、エーテリアスに向かって帰宅の旨を伝える少女。
宝石の様に綺麗な真っ赤な瞳、丁寧に手入れが施された薄紫色の縦ロール。
横から乳が見えている、露出の多い白黒ツートンで纏められたゴシック調のドレス。
まるで何処かのお嬢様の様に思える風貌の彼女は、ビビアン・バンシー。
「良い子にしていましたか?…って、またご飯を残してしまったのですね」
傘であり、槍を兼ねる日傘を壁に立てかけながら、ビビアンはテーブルに放置されている作り置きの朝食へ目を向けた。
ビビアンは、エーテリアスである筈の存在にご飯を作り、生活を共にし、それを異常とも思っていない。
「昨日も食べていなかったのに……ビビアンは心配です。明日は少な目に作るので、ちゃんと残さず食べるのですよ」
そう言ってエーテリアスに語りかけたビビアンは、徐に台所へ足を運び夕食を作り始めた。
テキパキと食材を取り出し、慣れた手つきで調理を行っていく。
「今日は貴方の好きなハンバーグです。楽しみに待っててください」
物言わぬと言った様子で、エーテリアスからは返答が返ってこない。
だが、ビビアンは全く気にしておらず鼻歌交じりに調理続けていた。
十分後には料理が完成し、ダイニングテーブルには、二人分の食事が用意されていた。
片方に腰を掛けて、未だ動く気配すら見せないエーテリアスに向けて、手を合わせている。
「いただきます、なのです」
自らが腕によりをかけて作った料理を食べるビビアン。
そんな彼女とは反対に、エーテリアスはピクリとも反応していなかった。
ビビアンは呆れたようにため息をつき、ハンバーグの皿を持って席を立ちエーテリアスの方へと足を進める。
「全く……貴方は本当に甘えん坊ですね。毎日私に食べさせてほしいなんて……困ったさんなのです」
溢れんばかりの肉汁が溢れぬ様に、慎重にハンバーグを持ち上げ、火傷しないように温度を冷ますため息を吹きかける。
丁度いい温度になったと感じたのか、ビビアンはエーテリアスのコアに向けてハンバーグを差し出した。
「流石の食べっぷりですね。そんなに私の作ったハンバーグが美味しかったのですか?…ふふん」
肉の塊はコアに吸収され、跡形もなく消えて無くなった。
そんな様子を、まるで食べ盛りの子供を眺める母の様な表情で見届けたビビアンは、誇らしげに胸を張っている。
そのまま、彼女は全ての皿を平らげるまでエーテリアスに料理を与え続けた。
そして、ビビアンは入浴を済ませ寝間着に着替えた後エーテリアスの巨体を濡れたタオルで拭き始める。
体が重くて私では運べないから、自分で風呂に入ってくれと愚痴をこぼしながら、隅々まで汚れを落としていく。
その献身ぶりは、さながら新妻のようであり、旦那のサポートをするかの如く。
「聞いて驚きなさい。今日はパエトーン様と直々に対面したのですよ!」
体を一通り吹き終えた後、ビビアンはエーテリアスに自分の体を預け尊敬する最推しの方と出会えた、と頰に手を当てながらへ語りかける。
これまで、一度たりとも返答は返ってこないのに、延々と彼女は語り続けていた。
それは何処からどう見ても歪で、可笑しく、異常そのもの。
「そうです!今度、パエトーン様に貴方を紹介いたしましょう!あの方も貴方の事をきっと気に入るのです!」
それでも、ビビアンの瞳には愛しい人物しか映っていなかった。
そんな嬉々として今日の出来事を語るビビアン。
彼女が愛するエーテリアスは、少しだけ、体を震わせた。
たった一言だけ、発せられたその言葉を聞いた少女は彼の体を抱きしめた。
「大丈夫なのです。ビビアンが、ずっと愛してあげますから」
目元から溢れ出る涙に、気づかないふりをしながら
やっとビビアン書けたよぉん
今回の独自設定として、エーテリアス関連で色々設定がありますので、ガバガバ設定ですが。
以下ご覧ください
エーテリアスくん
ビビアンの小さい頃からの幼馴染。
うっかりぽっかりホロウに迷い込んでしまいました。
エーテル適正皆無なので、エーテリアスになってしまったが生きたいという強い意志によってホロウ内外にて活動可能に。
見た目はデュラハンと似てるけど、剣も盾も無い。
ただちょっとおおきいだけ
中途半端にエーテリアス化してしまった為、生前の自我が多少残っているが、手足を動かす機関が存在しないので動けない。
死んではないけど早く氏にたいとずっと思ってる。
ビビアン
パエトーンに対しては尊敬の念であり、恋愛感情には至っていない。
とある日、ホロウ内にて一切動かないエーテリアスを発見してしまい、エーテリアスが虚ろげに己の名を口にしているのと辺りに幼馴染くんの持ち物が散乱していたので気づいた。
それからは、エーテリアスくんを自宅へ連れて帰り現実逃避する様に生活をしている。
あ、後でエーテリアスくんがまだ人間だった頃の話も書きます