こんにちは、こんばんは。
IS学園の山田です。
特に名前もつけられていない、険しく聳え立つ山。
私は今、上司と二人で共にその山を登っています。
「ま、まだですかぁ?」
「教えられた居住区はまだまだ先だな……もとより、他人が侵入することを想定していない道の整理の仕方だ。これは降りるのにも骨が折れるぞ」
「そんなぁ……」
私が引き、上司が下から持ち上げている台車にくくりつけられているのは、無骨な鉄の塊。
IS……正式名称を『インフィニット・ストラトス』。
宇宙進出を目的とした強化スーツ……ということになっています。
すくなくとも発明者はそのつもりで作ったようで。
今現在宇宙開発云々の話をまるで聞かないのは実に滑稽と言うか、皮肉な話ですね……
理論や装備の提唱者の『篠ノ之 束』博士は、この理論を一人で完成させたそう。天才、というやつですね。
アニメや小説、漫画などでお馴染みのパワード・スーツ。人間の身長ほどもある大きなブレードや、生身では反動やサイズの問題で使うことのできない大口径の銃弾がぶつかるそれは、まさしく浪漫の塊でした。
ただ、問題点がひとつ。
このIS、女性しか乗れないんです。
頑丈で、機動力もあり、火力もある。
でも、一機で軍隊一つにも及ぶとされるそれが、女性しか搭乗できない。
女性が調子に乗り、男性を退け、女尊男卑の社会になるのに、そう時間は要りませんでした。
同性の私からしても滑稽極まりない絵面ではあるんですが。
ISを動かすための核になるISコアは世界に4桁も存在しません。
件の博士が400と少しだけ生産したあと姿を眩ませてしまったんですね。
なのに乗れもしないような女性が素の力で勝る男性を下に見れる理由なんてないと思うんですけどね……
まあそんな世の中になってからしばらくして、とうとう男性操縦者が見つかりました。
そう、1人だけですが男性でもISを動かせる人が見つかったんです。
そんなこんなで世界は大騒ぎ。
一人残らず検査しろということで戸籍に乗っ取った一斉検査が始まりました。
しかしここで問題が発生。
これを知らない人達にも、知らせた上で検査をして貰わなければならないのですが……
知らなければ来て貰いようがない、でも知らせるのにも手間がかかる……
そんな人達の下には、ISを運んで直接出向いて検査して貰うことになってしまいました。
政府も一人でも多く男性操縦者を確保したい以上、妥協できなかったようです。(流石に検査対象者は30歳までに制限したようですが)
気持ちはわからなくもないですが、お陰で面倒極まりないことになってしまいました……
「なんでこんな山の中に10代の男の子が住んでるんですかー!?」
「そう言うな真耶。私も同じ気持ちだ」
ついにヤケクソ気味に叫んだ私の声に応じて、心底うんざりした声が台車の下から返ってきます。
山道はISを運んできた車両がギリギリ通れない道だったため、台車を引き出して来てそれに乗せて運搬するという方法しか取れず……
山田真耶20歳、そろそろ心が折れそうです……
「……!?なんだ、こいつらは!?」
「え、先輩どうしまし……うわっ!?」
急に後ろから押す力が強く……!?
前を見ると、宙に小さい……青い飛行機のようなロボット?が浮いていました。
後から聞いた話、後ろからも人形のロボットが押し出し、推進力を生んでくれていたそうです。
──────数分後──────
その後、私達はロボット達の協力を得て、無事に居住区にたどり着くことができました。
居住区とはいえど、そこにあるのは一軒の家といくつかの作業場のような小屋のみで。
結局人が住んでいるのは一番大きな家のみのようです。
荷台に座り、少し休んでいると。
ガラガラガラガラッ
家の中から誰かが出てきました。
家主でしょうか?立ち上がって振り返ると、そこには10代後半……ちょうど16歳くらいの男の子が驚いたような顔をして立っていました。
「………」
……?何か言っているようですが、よく聞き取れませんでした。
そのまま先輩……上司が挨拶に行きます。
私はちょっと動く力がありませんでした……
「……山道が長くてお疲れでしょう。
とりあえず、入ってください。お茶くらいなら出せますよ」
しばらく上司が会話をしていると、その子が難しい顔を一度解いて私達にそう提案してくれました。
ここは大人しく上がらせて貰うことにします。
疲れた……
はじめまして、俺は
山で暮らす……まあ所謂転生者、というやつである。
魂の総量がうんちゃら、という話であったが正直覚えていない。
特典は
《0から高性能ロボットの開発ができる頭脳》
《作りたかったロボット達の設計図》
《素材生成装置》*1
の三つである。
施設なんかはないけどそこはそれ。
運良く親戚の持つ山を譲り受けることができ、そこにコツコツと地道に施設を作りあげた。
課程は割愛。
そして特典の枠を一つ割いてでも欲しかった設計図と言うのが……
Little Battlers eXperience……通称LBXである。
もといた世界では《ダンボール戦機》というタイトルの創作物で親しまれたロボット達。
空を飛ぶやつ、変形するやつ、キャノンを撃つやつに合体するやつ……
どの機体を取っても俺を魅了して止まない彼らが、俺はどうしても欲しかった……
ので、俺は義務教育の中学校さえ中退し、あとは山に籠りひたすらLBXの開発に全霊を捧げ続けた。
大体……6年くらい?義務教育の内容は覚えてるし。
原作がある世界だろうが知ったことかと。
自分だけ幸せなら人に迷惑かけなきゃ別によくない?というスタンスで過ごしてきた。
まぁ引き込もってたせいで身長は160からまるで伸びず、筋肉なんて微塵もつかなかったんだけど。
まぁそんなある日。
山奥で暮らしていた俺の下になにやらゴッツいアーマーを荷台に乗せた二人の女性が訪ねてきた。
それなりにウチの山険しいし高いんだけど!?
結局見ていられずにLBXを使って手助けをしてしまった……それでもここまで押してこれたことは驚きなんだけどね!
で、まぁお疲れ様、という意味も込めて二人を家に上げた。どうにも俺に話があるらしい。
「んで、俺にお話があるってことではるばるいらっしゃったみたいなんすけど……ご用件は?」
織斑と名乗った方の女性に問いかける。
なんでも、今現在ISとか言う女性専用アーマードスーツに乗れる男性が見つかったから、他に例外がいないか検査して回っているのだと言う。
はぁー……え、そんなことで態々あのクソ重たそうな鉄の塊を運んでこんな山まで?
それはまぁなんというか……お疲れさまです……
あ、二人揃ってクソデカため息。苦労してるなぁ……
で、まぁ検査する流れになりました。
「で、ここに触れればいいんですか?」
「はい、適正があればそのまま起動できます!」
まあ無理でしょうねー、ご飯食べていきます?
いいんですか!?
と、そんな雑談も交えながら俺がそっとISに手を触れる。
すると急に目の前に光りと情報が溢れだし……
「……え?今どうなってます?」
なんか視界が高くなっていた。
さっき触ってたISどこ?山田さんと織斑さんはなんでそんな目を真ん丸にして口を開けてるの?何、どうなったの?
少しの間わちゃわちゃして、全員が落ち着くと現状が見えてきた。
「乗れちゃってますよねぇ……」
「「乗れちゃってますねぇ……」」
3人揃って頭を抱える。
いや、まさか乗れるとは思わないじゃん!?
嫌だよ!?俺目立ちたくねぇ!どうにかなりません!?
と悪あがきしてみるも結果は結果。
覆すこともできないので諦めて妥協することにした。
屈辱か、大騒ぎか、モルモットか。
なら俺はこうする!と二人に告げる。
二人は大層驚いたようだったがそれを承諾。
そうして俺はこの春からIS学園に通うことになったのだった。
なんでだよちくしょー……
好評なら続きます(多分)