転生したら織田信広だったので信長(妹)をコマそうと思う。   作:鴉の子

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うおおおリアル生活がめちゃ大変になってしまい投稿が遅れました!!!!!!予想外だった……
今回は竹千代ズ回、またの名を女子会と男子会。


十一話:女性陣だけの話は割と怖い、男からすると。男だけだと?そらもう、アレよ。

 

 岡崎城ではなく、清洲城の彼女の兄の私室……というには、殆ど二人で使う場所。

 

「のう、竹千代……じゃなくて千夜よ」

 

 千夜姫(ちよひめ)と名を変えた女が、信長の側に立つ。姫と名を変え、一人の男の妻となった竹千代だった。

 

「はい、信長様」

 

「化け物ってなんじゃと思う〜?」

 

「貴女や、信広様のような方かと」

 

「おう、追加でサルな。それはともかく、もっと具体的な話じゃな」

 

 ケタケタと笑う信長に、千夜は無言で酒を注ぐ。すでに、子は産まれていた。とはいえ、半月ほど前の話だ。ある程度落ち着いてはいるものの、生死を賭けた営みである。怪物の血を引くとはいえ、ゆっくりと身体を休めている最中だった。

 

「おぬし、自分を化け物だと思うか?」

 

「いいえ」

 

「そう、無理なんじゃよな、無理。どんなに自信家でも、『自分は他人より優れた“人間”』だと思う。じゃあ、自認がバケモンならバケモンか?」

 

「いいえ、哀れな獣かもしれません」

 

「そうじゃな」

 

 信長は、クスクスと笑う千夜姫の顔を見て目を細める。なるほど、この女、兄上やサルとは違うが、それなりに妙な生き物らしい。言うなれば、人間よりも人間らしい、(かげ)の匂いの塊のような女だった。

 

 兄上が面倒を見る理由もわかる、これは放っておけば面倒なことになるか、死ぬかしていたのだろう。そういう()()を持つ女だとわかる。

 

「わしらはな、一歩間違えればそういうものじゃ。いつ、何処で、死んでもおかしくない濡れ鼠になっているかわからん」

 

「ですが、貴方達はそこにいます。それは、力故でしょう」

 

「おう、そうじゃな。だがの、お前さんも思ってもないこと言うのが得意じゃなマジ、知らんと気づかんくらい上手いから許すけど」

 

「うふふふふふふふふ」

 

「笑い怖……ともかく、おぬしもわかっとるじゃろ。運じゃよ、運。生き残ってしまった、世界の外っ側にいる奴らが化け物って呼ばれるんじゃな」

 

「……それならば」

 

「おん?」

 

()()()も、そうでしょうね」

 

「……で、あるか」

 

「えぇ、あの子は、私とずっと一緒に生きて来ましたから知っています。気弱で、おどおどとしたように見えるでしょうが……撓んだ木に込められた力と言いましょうか」

 

「ふむ、そこまでか。兄上の元に置いておくにはちょうど良いか」

 

「ええ、きっと」

 

 少しだけ、笑みが翳る。ただ、信広の為になるからというわけでもないらしい。まるで京の伏魔殿の政治屋のような暗い知性を見せていた女だったが、どうやら少し読み違えたかと信長は笑った。

 

「なんじゃ、男二人が大事か。我儘な女じゃの! うわははは!」

 

 信長は千夜姫の頭を撫で回す。

 

「やめてくださ……やめっ……ちょっと」

 

「え〜いいじゃろ。兄上の嫁ならわしの姉上だし……うん? 姉かつ嫁友達か?」

 

「絶妙に嫌です」

 

「なんじゃ! いいじゃろ別に! ところで、兄上とはもう寝たんか?」

 

「はい」

 

「うわっ、あいつ手が早いんじゃが」

 

「いえ、夜這いしました」

 

「ウケる。めちゃびっくりしてたじゃろ。兄上相手から来られるとビビるから」

 

「それはもう、びっくりしていましたよ。私があの人の手を私の首に……」

 

「うひゃ〜〜〜」

 

 ……後の天下人とはいえ、なんやかんや、恋バナというのは楽しいのである。

 

 そういえば、会話が出来ているな。と信長は思う。兄と出会ってからは、少しずつ他人の言葉を理解できるようになったが、千夜姫の言葉はそういうわけでもない。

 

 共感、というものを理解した気がした。多分、おんなじ男のことが好きだからだろう。なるほど、常人はこうやって会話をするのか。

 

 共感、相手のことをわかるというわけではない。わからないことが多くても、同じ事を思っていると信じるということ。見えない闇に、希望を放ること。

 

 また一つ、兄から貰ったものが増えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、一方男性陣。何故か信広は自室を追い出されて台所近くの囲炉裏のある広間にいた。手前で料理をしながら知り合いと鍋を突いているのである。こんなんでも城主のくせに部下との距離が近すぎる。

 

「嫁くれでござる。信広殿」

 

「準備中」

 

「え〜〜〜!」

 

「え〜〜〜〜じゃねぇ、あと様つけろ様」

 

「いやでござる」

 

「殺すぞ」

 

 と、ありえないほど気楽なやりとりをしている藤吉郎と信広の間に、プルプルと震えたまま正座しているのが竹千代。そしてその横には何故か心配そうな顔の信勝。

 

「兄上、竹千代殿が今にもぶっ倒れそう」

 

「えっなんで」

 

 怯えた兎みたいにプルプルしている、何故に。

 

「あの……なんで僕がここにいるんでしょう……」

 

「実質弟分みたいなもんだから……」

 

 嫁にした女が片割れみたいに思ってる子なんだからそりゃ大事にするでしょ。もう実質弟よ。

 

「ええ……」

 

「兄上はこういう人ですよ」

 

 信勝とは随分仲良くしているらしい、あ、信勝は阿弥陀寺に行って玉誉清玉とかいう高僧身分をゲットしました。あと普通にめちゃ賢いので仏典とか覚えまくってるので問題なし。

 

「気にせずこのアホのサルくらい気楽に来ていいんだぞ、このアホくらい」

 

「何故二度もアホと言ったのでござるか?」

 

「アホだから」

 

「はははは! クソムカつくでござるな!」

 

「ピィ…………」

 

 足軽大将と城持ちがカスみたいな言い合いをしていることへのストレスで泣きそうになってる……なんて気を遣う男なんだ……

 

 だからこそ“怖い”んだけど。キレたら怖いぞーこの子。暴力へ撃発したときが恐ろしい。だって、怯えの中に本人も認識できない殺気が混じっている。

 

 おそらく、サルもわかっているだろう。無意識に、己を脅かす者への怒りと敵意が溜め込まれているのだとアレの冷徹な思考回路は確実に看破する。

 

「ふむ、信広殿」

 

「なんだサル」

 

(我慢が得意で、いざという時に全員ぶち殺せるタイプでござるな)

 

 聞こえないように小声で、サルが話しかけてくる。

 

(おう、いいやつだなこいつ)

 

(何がどうしてその感想になるのか意味不明すぎて怖いでござるが……)

 

 いやだって、機を見れるやつってなかなかいないし。凄いんじゃないか多分、俺も吉法師もサルも機を見たら走り出しちゃうタイプだから。

 

「よし、竹千代」

 

「は、はい……」

 

「好きな子いる?」

 

「はい???」

 

「せっかく男同士だし」

 

「はいはい! ねね殿!!」

 

「あっお前まさか紹介する前に仲良くなったのか、というかお前じゃねぇ!」

 

「姉上」

 

「信勝! お前でもねぇ!」

 

 人の話を聞く気がねぇ奴らばっかりか? 

 

「……ええと……昔、駿府にいた頃に仲良くしていた……瀬名という子が……」

 

「泣けてきた……まともだ……」

 

「そんなに……?」

 

 アホに囲まれているとこんなにまともな純情聞かないから……えっ? 俺もどちらかというとアホ寄り? そうだよ? 

 

「でもごめんな……多分今川は滅ぶから……いや滅ぼすから……お前の恋路は実らないかも……」

 

「今しれっと重大情報と共に僕の初恋が最悪の形で破れそうなんですけど」

 

「仕方ないだろ、いつか織田とは殺し合いになるんだから」

 

「それはそうですけども……」

 

 納得が早い。理不尽に耐えるのに慣れているのか、ある意味では悲しいことだ。

 

「よし竹千代」

 

「はい?」

 

「言っておくとお前には多分な、人殺しの才能がある。ああ、俺みたいな意味じゃないぞ。どっちかというとそこのうるさいサルと、妹みたいな政治の才能」

 

「────」

 

(まつりごと)は、この世で一番命を粗末に扱う行いだ、誰がなんと言おうとな。本人の意思とか、行いの善悪とかじゃない。それそのものが持つ性質だ。上に立てば、人は数字に変わる。俺たちが声を上げれば、兵士は死ぬし、人は飢えて死ぬ。そんなもんに頓着しないで、鼻ほじりながらやんなきゃいけねぇ。そういう才能がある」

 

「僕に、ですか? ただの影武者なのに」

 

「もう違う、お前は松平家当主で、三河を手にする資格がある。だから」

 

「……だから?」

 

 ────この、目の前の怪物が言う理不尽に耐えろというのか? 

 

 そう思っているのがわかる、だから、笑って答えてやる。目の前の男は化け物なのだから同情もしてやらないし、悲しそうな顔もしてやらんのだ。

 

「そういうの全部“クソ喰らえ”で、好きにやれ」

 

「え?」

 

「お前は俺が拾ったけど、お前は好きに生きろ。松平なんぞどうでもいいし、最悪無くなったって俺んとこくりゃいい。取り敢えず当面の目標はだ、俺らが今川と喧嘩することになっても、好きな女は拾ってこい」

 

「……はい?????」

 

「出来るよ、お前は。間違いない」

 

 だって、俺にこっそり殺意向けられるんだもん。偉いよ。ヒグマの目の前で戦えるみたいなもんだからね。俺はヒグマ素手で殺せるけど。

 

「出来る、でしょうか?」

 

「おう、やればきっとここの誰よりも偉くなるさ」

 

 だって俺も含めてこいつらどっかで致命的にやらかしそうだし、是非もないよネ! 

 

「そうですかね……」

 

「おう、いけるいける。ところで瀬名ちゃんのどの辺が好き? 俺の妹の好きなところは昔シュッとしてたけど最近背伸びて結構肉つきが良くなってきたところが……」

 

「「ミ゜」」

 

 しまった、気さくな恋バナとシモの話に移行しようとしたらまた信勝とサルの2人の脳が壊れた。いや、もう慣れろよ。あとサルはもういいだろ。

 

「それはそれでござるよ……!」

 

「兄上は配慮がないですよ……!」

 

「なんのだよ。俺もう娘もいるんですけど」

 

「「ギィィィィィィィ……!!!」」

 

「血の涙を流すな」

 

「もしかしてなんですけど本当に結構失礼でも許される感じですね?」

 

 お、慣れてきたな、いいぞ。

 

「もうすでに奥方がいるのに嫉妬するのは見苦しいのでは……」

 

「あっ正論で2人とも倒れた」

 

 どうやらもう馴染んだようである、よし! 人間関係地雷解体! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────何もかも、嫌いだ。

 

 影武者という立場も、己の理想を押し付ける家臣たちも。

 

 唯一人、自分と同じように全てに耐える己の君主たる女以外は。

 

 だから、“竹千代”の短い半生は殆どが怒りで占められていた。何かへの怒り、理不尽への怒り、戦いへの怒り、乱世への怒り。

 

 だから、目の前の化け物たちにも、怒っていた。

 

 全てを焼き滅ぼした、恐ろしいもの。

 

 彼女は、彼に光を見た。それは理解できる、だって、ずっと一緒にいたのだから。

 

 だからこそ、僕は怒っていた。何もかも押し付けておいて、苦難さえも、何もかもを勝手に奪い去っていくのかと。

 

 でも、耐える。耐えねば死ぬのだから、耐えた、耐えて、耐えて。

 

 

 耐えて。耐えて。虫唾が走る。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。ぶっ殺してやる。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。耐えて。

 

「なんで?」

 

 声が聞こえた。少し低いけど優しい、もう死んだ母と似た声だった。

 

 は? 

 

 なんで。なんでだろう。

 

 お前たちのような奴らがいるから。

 

 ふと、怒りのままにそう考えて、何か違うなと思う。

 

 目の前の化け物は、優しげな瞳でこちらを見つめていたから。

 

 僕ではない。

 

 この、怒りを。

 

「好きにやれよ、多分、お前なら出来るからさ」

 

 この感情のままに、動いていいのだろうか。

 

「いやまぁ、たまにはいいんじゃない? だって、どうせ我慢しちゃいそうだし、それくらいの気持ちでいけば?」

 

 この野郎、人が気にしていることを。とは思ったが、不思議とそんなに怒る気はしなかった。

 

 出来る、かな。

 

「出来るよ、きっと。もしかしたら俺らの中で一番偉くなるかもな」

 

 それは無理な気がしますけど……まぁ、でも、そうですね。

 

 できれば、貴方をぶん殴れるくらいには、頑張ってみようかと思います。

 

 ────そうしたら、褒めてください。

 




次回 イマガワファイナルウォーズ 改造されたメカイマガワがチェーンソーとか持って襲撃してくる(嘘)

そろそろ桶狭間シーズン。お市と帰蝶も出したいね。
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