転生したら織田信広だったので信長(妹)をコマそうと思う。 作:鴉の子
ちょっと事前準備回になっちゃった。本格的にバトルは次回から。
ウワ──────ッ!!!! イマガワ!?! イマガワナンデ!?!?
どうも、織田信広です。助けてください!!! 公家化粧の怪物がこちらに向かっています!!
嫌よ──────ッ!!!
はい、現実逃避終わり。
いやー、そりゃそうよね、あんだけ三河で好き放題してりゃ来ますわ。ぶっちゃけ国境付近で何回も軍は殴り合いしてるから今更なんですけど、沓掛取られるのは話が違うぞ〜〜〜〜!
お金! お金無くなっちゃう! 海運が終わる!
嫌だ〜〜〜なーにが悲しくてあんなバケモンと喧嘩しなきゃならねぇんだマジ、政治も公家との折衝、保護、文化人もやれる上にはちゃめちゃに強いおっさんだぞあれ、何? 関羽?
「吉法師〜〜〜〜〜〜!」
「なんじゃアホの兄上、今丹桂あやすのに忙しいんじゃが」
「一ミリも泣いてないんだけど」
「わしのほっぺをずっともちもちしとる。可愛いのう!」
「かわいい〜じゃなくて」
横にいるお団子ヘアーの帰蝶ちゃん(最近会ってくれるようになった)が凄い目で俺を見ています。俺の隣にいる千夜はまあ困った顔をしている。
「無理よ無理、今から沓掛まで兵を動かしても兵站が間に合わん。動かせる範囲まで待つしかなかろうよ」
「その間にも兵死ぬの嫌なんだけど……」
「兄上らしいのう、まぁ、わしらが生きてりゃ大方帰ってくるじゃろ。こんだけ早く落城したってことは大勢逃げ出しとるだろうしな」
「む、むむむ……」
大体こうなったのはあのクソ親父が、蝮爺と同盟結んで孫もできたからって早々に隠居して愛人と嫁さん連れて伊勢参りに行きやがったからだ。家督をスムーズに移行したせいであいつ死んだとか噂されてるぞ!
『おう、俺もう飽きたから信長に任せる。第二の人生としてあれやるわ、武田がやっとる歩き巫女。最近だと忍者っていうらしいなアレ。というわけでさらば!』
『クソ親父──────ーッ!!!!!』
記憶に新しい親子喧嘩の記憶が蘇る。……まぁ飽きたとかなんとか言っているが、自分が死んでゴタゴタするとせっかく生き延びた信勝が担ぎ上げられるかもしれんからってことだろう。尾張の大名としての立場を盤石にさせてからどっか行きやがった。本当は自分でやりてぇことも沢山あるだろうに。
……いや、やりたいことはやってるなあいつ? そういえば城から女の子の気配がごっそり減ってたぞマジ、本気で歩き巫女養成するつもりだな? やりたいことってアイドル⚪︎スターか?
閑話休題。
「親父殿が消えて、当主はうつけ。って油断して攻めてきたわけじゃねぇだろうな、アレは」
「そりゃそうじゃ。海道一の弓取がそんな甘い見立てをするわけあるまい。わしら、兵数で負けてはおらんが、純粋な練度では織田の兵では追いつけん。じゃが、時間をかければ三河の武士達を取り込み、そして尾張の兵自体もより強くなっていくのを見越して、今じゃ」
「今攻め込まないといずれ死ぬ、そして今なら勝率は五分以上どころかほぼ確実、か?」
「うむ! ぶっちゃけ予想してたよネ!」
「言ってよ〜〜〜〜」
「分かっとると思ってたんじゃけど」
「はい」
まぁ薄々来るよなーとは思ってました。はい。でもこんな数日で沓掛取られるとは思いませんでした。
「じゃあ作戦会議〜おいサル! 元康呼んでこい!」
「了解でござるよ!」
廊下で待機していた……いや障子の隙間からうちの妹を見ていたアホを蹴り出して頭脳担当を呼び出す。家老'sは一旦置いておく。
あ、竹千代は元康と名乗るようになりました。まぁ俺は誰もいないとこなら竹千代って呼ぶけど。弟分みたいなもんだし。
さて、すぐに皆集まり……軍議……とするには家老を追い出しているので身内会議を開催。
「どうやって今川に勝つ?」
「無理じゃないかのう」
「泣き言言ってないで僕ら無理やりひっ捕まえたんですから責任とってくださいよ!!!」
「わはは、不遜!」
テンパって頭をガリガリしている竹千代の、引き裂いたような悲鳴が響く。こいつやっぱキレると勢いがいいな。
「迎撃に出るとして……すぐに動かして十全に動かせるのは桶狭間まででしょうかねぇ」
地図の上に置いた駒を動かしながら、千夜がため息混じりに言葉を洩らす。その言葉に、この場にいる全員は同意する。
「……ふむ」
吉法師が扇子をぱしん、と手元で叩く。考えが纏まったようだ。ああ成程、らしい手を考えつくなとその中身を視ていると、コツンとおでこを突かれる。
「分かったなら解説せい」
「自分でやれよ」
「兄上がやった方が空気良くなるんじゃ、ほれみろ、お前の嫁がなんかじっとりした目線向けて来て鬱陶しいんじゃ」
「千夜や? やめてね?」
「はぁい♡」
では、と咳払いをして。
「今川は少し焦りがある。三河への影響力を削がれた挙句、同盟までされたとなっちゃ面目丸潰れだ。というかぶっちゃけ攻め込むのも本来なら数年は後にやるつもりだったんだろうよ」
「うむ、兵の精強さと本人の軍才に担保された強行軍よ。その結果が破竹の快進撃じゃが……」
「…………破竹の快進撃なんて、しちゃダメってことですか?」
「おっ、竹千代、正解」
そうそう、砦を落として、城を落として、地図に塗り絵をしながら走り抜ける。戦上手の手本だが……
「人ん家に押し込むなら、やり方があるもんさ。家主をとっ捕まえるだけじゃ取るもんも取れねぇ」
「つまり、城を保持する余裕がないということですね」
「うむ、これだけの進軍速度、城主の首はともかく、相当の取りこぼしがあるじゃろうな」
「そんだけ急ぐのも三河の連中と連携を取られたくないからだろうさ、そもそも、織田だって身内のゴタゴタを始末したのは最近だ。豪族どもは静観だろう、織田が動かせる軍が少ないうちに俺たちだけを始末して事を納めたいと考えているだろうさ」
「……わかりました、僕のやるべきことは?」
「松平で動かせる兵隊を集めて、引きつける」
「耐えるだけ、ですね」
「耐える必要もなかろうよ、迎え打つフリして待ってるだけでいい」
「……わしも全軍出した後は先陣切るしかなかろう。士気を上げるにはそれしかあるまい」
「そんで、俺は単身で逃げた兵を拾って後ろから今川をどつく」
落武者全員拾って軍勢に戻すなんて無茶が出来るかって? 出来るんだなこれが。飢えた獣を追い立ててぶつけるなんて犬でも出来るぜ!
「どうやって見つける?」
「鼻」
「犬か」
失敬な、犬は落武者狩りから逃げながら兵が歩き回りそうな場所を重点的に探すとかできんぞ。
「挟み撃ちの形になるわけじゃが……ぶっちゃけそれで勝てる気がせんのう……」
「まぁ〜そこまで行ったらあとは天運だろうな」
「わしが死ぬか兄上が死ぬか、わしが殺すか兄上が殺すかという感じかのう!」
「おお、五分五分!」
いやまぁ、俺が生きている限りこいつが死ぬことなんてないが。
「あなた方どっちが死んでも困るのでやめてくださいね本当に……本当に」
「私としては信長様がくたばる分には……」
「千夜?」
「いいえ、何でも♡」
この子怖い。いや自分から言ってくれる分には可愛いか…………外で話聞いてるサルとかの方が怖い。
「よぉし、軍議と出陣の準備じゃな! 早速存亡の危機ですまんのう!」
「まぁ……慣れます……」
苦労人の気配がどんどん濃くなっていくな竹千代……哀れな……
────さて、兵隊拾いの準備だ。
森の中を駆けるのならば、馬より信じられるのは己の足だけ。何里走ることになるのかてんでわからないが……なぁに、熊と野犬が遊び相手だった俺だ、何とかなるだろう。
野犬はすごい、無尽蔵のスタミナでどこまでも追っかけてくるから大体最終的にぶん殴ることになるからな。
「信広様?」
「ん? どしたの千夜」
「死んだら殺しますので死なないでくださいね」
「お前に殺されるまでは死ねないってこと?」
「はい」
「いいよ」
「いいのですか?」
「殺されないように頑張るから」
だって妹置いて死ぬわけにはいかんし……
「…………信長様のためですよね?」
「うん」
俺が一番優先するものって、それだけだし。うん、あの子が幸福になれるように頑張っているわけだから。
「……わかりました、では、こちらを」
手渡されたのは、紅で染められた紐で編まれた水引。髪を結うときに、普段使うものだ。
「血と少しの花で染めました、多少なりとも呪いになればと。水引は、元は航海の無事と帰還を祈ったものだそうです」
何とも、まぁ。
優しい子だ、我々兄妹のような者には得られないだろう心だ。まぁでも。
「折角だから俺だけじゃなくて、あいつの無事も祈ってくれよ」
「嫌です」
「だよね!」
「へくちっ……どっかでわしに呪いをかけてる奴がいる気がするんじゃが! じゃが!」
突然軍議の途中でそんな事を言い出して怪訝な顔をされる信長がいたとか、いないとか。
戦術とかに関して細かいことは……気にするな!!!