転生したら織田信広だったので信長(妹)をコマそうと思う。 作:鴉の子
日間ランキング一位に入っていてひっくり返りました。
いやマジで驚きすぎてイスから物理的にひっくり返ったんですけど何事??????
皆様ありがとうございます………!!!!!!!!!!
どうも、今日も今日とて武将ライフ、織田信広です。
最近また情勢がきな臭くて困る、具体的には俺の城もう攻め込まれそう。いやー怖いね、海道一の弓取り、そりゃ取ったばっかの城とか手薄だもんな。
とはいえ、攻め込んでくるとしたら三河の松平の連中。いや面倒だな、三河武士苦手なんだよな……この前戦ってわかった、しつこいあいつら。
頭かち割ったのに噛みついてくるのって怖いね! まぁ口に手突っ込んで縦に裂いてやったが……
それはともかく、多分三ヶ月くらいしたら攻めてくるよねぇという話を城に呼び出された俺が親父殿と、吉法師に話しているところだ。
……何でいるの? まぁいっか。
「親父殿よぉ、先に殴っちゃだめか?」
「勝手に殴りかかってくるなら待ったほうがよかろうよ」
「そんなもんじゃよ!」
「どうせ戦になるのは変わらん、川を挟んで迎え撃ったほうが楽だろうて」
「なるほど!」
流石俺より賢い家族二人である。確かにあの城川あったな近くに。
「で、それよりもだ」
「うん」
「おぬし、吉法師に手を出したか」
「ブッ」
飲んでいたお茶を吹き出す。勿体無い、この時代めちゃくちゃ高いのに、そんなの気にするほど織田家は困ってないけどそれはそれ。
と、現実逃避するが……無情にも目の前の親父殿は見たことないほど楽しそうな顔でこちらを眺めている。なんなら吉法師も楽しそうに見ている、なんだこいつら、笑顔そっくりだな。
「まさかお前がのう……」
「いや、その〜〜〜」
まさか家族会議とは思わなかった、しかも議題、俺。このままでは親父殿に笑顔のまま斬り殺される可能性すらある。
「なんだ、やはり欲しかったのか? 織田家が」
「ん? なんで?」
そう返すと、親父殿もきょとんとした顔でこちらを見返す。そうして、少しの間をもって、親父殿がデカい声で笑い始めた。
「ふ、はははははは! なんで、なんでと来たか。まぁ、それならよい、大事にしてやれ」
「えっ」
いいんだ……まぁいいならありがたく仲良くさせてもらうが。
「吉法師に嫁は取らせるが、お前は気にするな。お前の立場なら嫁の話を気にする必要もあるまい。体裁が悪ければ、偽装で用意してやる。お前らに子が生まれ吉法師が元服すれば、養女として身分を割り振る」
「ブッ」
お茶を吹き出す、これで2度目である、天丼芸やらせるんじゃないよ。目の前でなんてこと言いやがるこの親父。吉法師はキラキラした目を向けるんじゃありませんよ、そんなに嬉しいのか。
「普通に嬉しいんじゃが?」
「さいですか……」
何処でこんな好感度を稼いだのか、これがわからない。可愛いからいいけどネ!
「……吉法師の嫁って言うけど、何処と?」
「美濃の蝮よ、後のことを考えれば、一番良い」
「ん、そうか。美濃とくっつくなら家督も心配ないか」
「清洲の連中は従わんだろうがな。ま、それはなんとかしろ」
親父殿のどでかい宿題である、まぁ、その辺は吉法師ならなんとかなるだろう。自力でなんとか出来るだろうし、手伝ってやりゃすぐよ。
「で、吉法師よ」
「ん」
「こいつのことは好いているか」
「そりゃそうじゃろー、じゃなかったら親父殿には言わんし」
「そうか、なら俺はもう言わん。手前でどうにかしろ。出来るだろう?」
「ん、是非もなし! 面倒じゃがそこはほれ、わし天才じゃから」
「自分で言うな、クソガキめ」
くく、と心底楽しげに笑っている親父の姿は、一大名というよりはただの父親だ。なんだ、要するに心配だったから様子見せに来いってだけの話だったか。なんともまぁ、妹に似て身内に甘い人である。勿論甘いだけで全然殺しにかかってくるタイプだから怖いんだけどネ!
さて、恙無く家族会議が終わり、一日暇になった所で。久しぶりに吉法師の軍学話とか聞いて行こうかなと、部屋に戻ろうとする。
「ああ、声は抑えろよ。下女下男が話題にしてるぞ」
「しばくぞジジイ!」
「あん?」
「ごめんなさい」
やっぱ怖いよこの人! 目線だけで人殺せるよ!
なるほど、なんでと来たか。
織田信秀は、乱世の雄ではある。
無数の敗北と、無数の勝利を積み重ね尾張を支配するに至った怪物であった。
が、そんな怪物といえど、子は可愛いものだ。政治の道具にし、戦で槍衾の前へ突っ込ませたとしてもだ。武士とは、そういう生き物だった。
そんな男の目下の悩みは、怪物の子は、怪物であることだった。
織田信広、恐ろしいほど母親の血を色濃く受け継いだ男だった。両の眼の黄金色の瞳、何もかもを見透かすようなそれを見た時、あの子は鬼子を産んだということを理解した。
土田御前、尾張の豪族の娘を正室に取った時、ともに連れられたのがアレの母だった。
山に住み、一族を繋げ、ただ生きることを望まれた混血の一族。右眼にだけ輝く黄金の光を厭われて、俺のところにやってきた。娶ったのは気まぐれだったが、美しい娘だった。
いつも、遠くを見つめていた。怪物の混じり物だというのに、仏道の教えを好み、この俺をすら慈しむ、そんな女だった。
故に、その息子が、あのように育ったのには少しも疑問はない。虎と鬼の子が、化け物になるのは当然である。
問題は、もう一人だ。
吉法師、未だ元服前だが俺と似ている娘だった。伶俐、酷薄、だが、甘い女だ。
そう、子供ではない、女だ。アレは、生まれた時から本来は、もう二つの足で立っているはずの生き物だった。
齢5つで、その赫い瞳が、遥か先を見据えていた。故に、アレは俺以外と意思が伝わらん。
故に、このままでは何も為せずに死ぬ。そう、思っていたのだが……
「まさかなぁ」
息子と娘が
「しかも……く、くく……『なんで?』とは」
弁明の一つでもすればいいものを、そもそも考えてもいなかったとは。バカなのかあいつは、いや、“敢えて”か?
「ふ、どうなるかはわからんが、どうあれ安泰だなこれは」
こんな時代でも、いや、こんな時代だからこそか。
「惚れた女の為に走る、か。羨ましいことだ」
夜、月と火の灯りだけが僅かに灯る部屋の中。窓、といっても木枠があるだけのそこから差し込む光だけが、目の前の男を照らしていた。
瞳の黄金は閉じられて、僅かな寝息を立てている。その肌には僅かな傷跡、戦場を駆け抜けたにしては、綺麗な肌を吉法師は撫でる。
まだ、冬の空気が残っている、そんな季節だったから、お互いの温もりだけが寒さを紛らわす。
「ん、寝とるな?」
頬を突く、信広がしばしば自分にするように。
「ふふふ」
「なぁ、兄上。わしはな、別に子がいようがいまいがどうでもいいんじゃが」
身体の上に寝そべって、心臓に耳を当てる。心地の良い、鼓動だけが聞こえる。
「兄上が嫁を取らんと聞いたのに喜んだだけなんじゃな、これが。いまいちわかっとらんようだけど」
「ん、ふ、ふふふ。是非もないよね、わしのものじゃもん」
こうしていると、自分をおぶって、連れて帰ってくれた日のことを思い出す。疲れていたことを、顔に出した覚えもないのに気づいてくれた、夕暮れの時間。
思えば、そう、あの時間はこの男を自分だけのモノにできる僅かな時間だった。
だが、今はもう違う。
左胸、心臓がある場所に口づけをして、赤い痕が残る。
「誰にも、渡さんからな」
吉法師は人間が好きだ。
何を言っているかわからんし、何を言っても伝わらんが、好きなもんは好きなのである。
だから、この男も好きだ。
自分より化け物なのに、自分より人間らしい男だ。ずっと先が見えているはずなのに、何も変わらない変な男だ。
「ま、でも次の戦で死なんようにな」
この痕はそのおまじないだ。神頼みではなく、“お呪い”。
「これで死んだらまぁ……是非もなし」
それはそれで自分の見込み違いなので。その辺、流石に未来の魔王である。でも多分泣くと思う、死んだら。もし泣いたら、そこが最後の涙なのだろうなとも思うけれど。
────半月後。
「伝令────ッ! 矢作川対岸に軍の動きあり!」
「で、あるか」
「ウワ──────ッ嫌だ!! むさ苦しい! 凄い数の三河武士の群れ!!! 助けて!!!」
後の、小豆坂の戦い。
織田信広という男が、夜摩と呼ばれるようになった最初の戦いが始まった。
小豆坂まで入らなかったよ……(次回予告風)
多分助けて欲しいのは相手なんだよね。