転生したら織田信広だったので信長(妹)をコマそうと思う。   作:鴉の子

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戦争の話ばっかりだったので、本題の色恋の話。



六話:悪巧みで苦労するの下っ端、諦めるな!やれば出来る!

 

 はぁい、織田信広です。

 

 竹千代をゲットし仲良くなった(主観)翌日。

 

 川の向こうに陣取った武士、全員ブチ切れで即日開戦という感じですが、どうも一応嫡男を攫ったやつが誰かわからないので若干我慢している模様。

 

 まぁ全員皆殺しにしたからそら目撃者いないよネ! 

 

 さて、ふざけるのはともかく。安祥城には織田弾正忠家の手勢が随分と揃っている。大体4000人くらい、どうやら本格的な戦となるらしい。

 

 対する松平と今川の軍はおよそ一万。いや負け戦だろこれ、まあ頑張れば勝てなくはないが。

 

 一応、強みとしては織田の兵士は装備がいい、何故なら超絶金持ちだから。

 

 織田弾正忠家は元は分家なのに親父殿がものすごい勢いで経済をぶん回しているのでありえん金がある。具体的には俺らの個人の小遣いで10貫(現代にて120万円相当)とか言ってくる。

 

 俺も城の整備に3000貫くらい使ったしな、商人との取引とかそういうのはわかりやすいから好きだ。帳簿の数字と相手の表情、あとは損得だけだからわかりやすい。

 

 さて、そうは言っても戦争は人がやるものだ。3倍近い兵力差というものは如何ともし難い。俺だって槍衾の中に飛び込んだら流石にいつかは死ぬだろうし。……多分、きっと、メイビー。

 

「織田家作戦会議〜〜〜!」

 

 総勢3人。親父殿、俺、吉法師。いやいていいの? 膝の上に待機しないで? 

 

「で、竹千代ちゃん攫って来たけど使える?」

 

「同盟の信頼を得るための人質を取られて冷静じゃなかろうよ、幾らでも揺さぶる手段になる」

 

「ん、面子丸潰れじゃしな! 顔真っ赤で暴れてるじゃろ。交渉材料にしたいところじゃけど」

 

 わぁ賢い、流石吉法師。今日はお団子ヘアがかわいいね、ではなく。

 

「松平への脅しにか? それではつまらんなぁ」

 

 にっ、と極悪人フェイスで親父殿が笑う。また悪いこと考えているなこいつ。

 

()()()()()()()()()()()()()、あれを使う」

 

「ん、松平は踏み台ね。おお、戦国の世とは無常じゃな」

 

 相変わらずなんて言葉の足りない家族だ、間に入りそうなセリフ物凄く色々端折ったぞこいつら。

 

「広忠をぶち殺して岡崎城を空にしてから、今川に()()()()ね?」

 

 松平家が消えれば今川といえどあの面倒な三河武士どもの統率を取るのは面倒くさかろう。他の勢力はどうにもパッとしないし、そもそも今川に協力するのかもわからない。織田が目障りなのにさらに敵や面倒を増やすのは嫌がる。

 

「……で合ってる?」

 

 何が言いたいかの正解はわかるが、途中を考えるのは苦手なのでやめて欲しい。

 

「流石兄上じゃの!」

 

「普段からそれくらい考えい」

 

「なんで俺今怒られた?」

 

「褒められとるよ?」

 

 そうか? そうなの? そうらしい。妹の笑みに免じて親父の脛に蹴りを入れるのはやめておく。

 

「今川は強い。が、北は甲斐の武田で手一杯だというのに三河にまで厄介ごとを持ち込みたくはなかろう。それに、この戦で松平を叩けば、少なくとも援軍という体で兵を送り込んでいる今川は一時名分を失う」

 

「少なくとも一時的に撤退はするじゃろうな。三河の武士どもは君主の敵討と抗戦を続けるじゃろうが……まぁ、そこはなんとかするじゃろ」

 

「俺が?」

 

「兄上が」

 

「ですってよ親父殿、期待されてるねぇ俺!」

 

 超嬉しい、お兄ちゃん松平の兵4000人くらいしばいてこようかな。今なら出来る気がする。

 

「吉法師、馬鹿を煽てるな」

 

「えー、面白いんじゃもん」

 

「今馬鹿って言った? あと否定して?」

 

 馬鹿じゃないもん、暗算は得意だぞ。7桁の掛け算までならできる、出来るだけです、

 特に役には立ちません。

 

「つっても嫌がらせにしかならないんじゃねぇの? 今川の兵力だったら、最悪岡崎城なくても桶狭間あたりまで突っ切ってくる可能性はあるだ……あー?」

 

 あ、悪そうじゃない、ガキみたいな笑顔してる。ああいう時が一番怖いんだぞうちの親父殿。

 

「ねぇもしかして、松平家、乗っ取る?」

 

「うむ」

 

 ……無理じゃね? 

 

「美濃は?」

 

 まだ一応名目は喧嘩してるけど? そんなことさせてくれる? 

 

「大垣城を返してやる代わりに嫁を貰う段取りはつけた、あの蝮が息子に寝首をかかれるまでは安泰だろうよ」

 

「えー、利尚ちゃん? まぁ確かにバリバリ仲悪そうだったけど」

 

 一回会ったことある、普通にバリ喧嘩してたし、あれ仲悪いっていうかもう敵同士って感じだったな、多分いつか殺しにかかると思うし蝮ジジイ負けるんじゃないかな。

 

 あの入道みたいな親父、確かに親父殿とか吉法師に似てるけど、ちょっとばかし人に無頓着すぎる。利は確かに人の最大公約数だけど、別にそれだけで動くもんじゃない。

 

 ま、俺が言えるようなことじゃないけどネ! 

 

 その辺親父はしっかりしてるし、しっかりしすぎているからめんどくさそうだ。

 

「ぶんどった岡崎城を実質的にお前に預け、城主を竹千代とする。松平家と今川の同盟関係を丸々こっちに引っ張り込む」

 

「広忠を殺してそれが通るかー?」

 

「通る通る、三河武士も一枚岩じゃなかろう?」

 

「そうだな、桜井松平家も未だに本家を敵視している。機を見ればすぐに本家に襲いかかるだろうさ。そちらも押さえ込めばこちらを認める奴らも増えるだろう」

 

「2連戦じゃないですかヤダ──ッ!」

 

 しかも竹千代ちゃんじゃ無理だから矢面に立つの、俺じゃん! てか今川と事起こす前にそんな戦いしたらやばいでしょ! 俺はともかく兵士が死ぬわ! 

 

「おう、頑張れ」

 

「兄上ならいけるいける、わしもその頃には元服してるじゃろうから手伝うし」

 

「あ、じゃあ任せた」

 

 絶対俺よりサクッと出来るじゃん。

 

「前には出てもらうが?」

 

「しまった、もしかして俺逆らえない?」

 

 あれ? 俺親父殿にも妹にも逆らえないのか? 庶子って悲しいね? 

 

「はい、じゃあわかりましたよ。広忠ぶち殺しにいけばいいのね!?」

 

「お膳立てはする、頼んだぞ」

 

「はぁい!」

 

 最早ヤケクソである。千をゆうに超える三河武士の群れに突っ込んで大将首を取ってこいとか息子にやらせることじゃないだろ。ともあれ、作戦会議は終わった、明日にはもう出陣というところだが……気が重い。

 

「兄上兄上」

 

 とてつもなくでかいため息を吐いていると、膝に乗っていた吉法師が俺の襟元を引っ張る。

 

「どした」

 

「ん、ちょっと部屋にいかんか?」

 

 赫い瞳が、少しだけ色を含んで潤んでいる。少し困って、親父殿の方に目線を向ける。行ってやれ、と言わんばかりにニヤリとわらって首を振った。

 

「ん」

 

 そのまま抱きかかえ、私室へ向かった。まだ時間はある、話したいことも、したいこともあるだろうし。

 

 それはそれとして親父殿の『流石は俺の息子だなぁ』みたいな目線は腹立つ。あんたほど女好きじゃありませ〜〜ん! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────部屋に着くと、わしは兄の首筋に顔を埋めた。

 

「な、兄上、わしもう子供産めるんじゃけど」

 

 そう言うと、目の前の兄が盛大に咳き込んだ。なんともまぁ、間の抜けた男だと思う。

 

「ん、だから今のうちにやっとくんじゃ」

 

「え゛」

 

 何故固まるんじゃこやつ。考えればすぐわかるだろうに。自身の元服までに一年ほど、今やれば十月十日間に合う。 

 

「……いや、いやいや。ダメだダメ」

 

「いやー大丈夫じゃろ、わしら丈夫じゃし」

 

 割と真面目な話、多分それくらいじゃ死なんだろう。父も、母もこの時代にはあり得ないほど丈夫だ。それが、特異な血を持つ故であることも把握している。それにそうでなかったらあんなに兄弟はおらん。単純に父がスケコマシなだけかもしれないが。

 

「心配してくれるのはありがたいんじゃがな?」

 

「今しかないって言うんだろ?」

 

「ん」

 

 その通り、元服して戦場に出るようになれば誤魔化しきれなくなる。少なくとも、自分自身が力をつけ、誤魔化せる立場になるまでは。

 

 その前に、“楔”を作る。

 

 この男が、自分から離れられなくなる様に、鎖は一つでも多い方がいい。別に、子供自体はどうでもいいのだが、一度そうしてしまったという事実がきっとこの男を縛るだろう。

 

 ……まぁ、出来たら出来たで可愛がるような気もするけど。その辺、割り切れると思うほど自分を信じてもいない。

 

「だから、今じゃ」

 

 困ったように、兄が手を虚空に彷徨わせている。なんともまぁ、色々と手を出してはいるが、最後までそういうことはしなかったのはこちらの心配だということはわかっている。

 

「ん」

 

 彷徨う手のひらを掴んで、自分の胸に押し当てて。

 

「ね、いいじゃろ?」

 

 押せば弱いのだ、この男。だってわし、最初それで手出させたもんネ! 

 

「痛いらしいよぉ?」

 

「らしいのう」

 

 がじりと首筋を噛む。硬い、筋肉に歯が食い込んで、塩辛い汗と、肌の味がする。

 

 頭を撫でられる、大きな掌だった。少し節くれだった、大きくて暖かい掌。優しい手つきで、壊れ物を触るように、いつも自分に触れている。

 

 それが、いつだって一番に好きだった。他の誰にもあげられない、唯一のものだと思う。

 

 ……ふと、自分がこの男が好きなのは明らかだけれど、何故この男は自分のことが好きなのだろうかと思う。こんな土壇場で、そんなことにようやく頭が回るなんて、らしくもない。

 

「な、な、嫌か?」

 

 噛みついていた口を離して、兄の瞳を覗き込む。

 

「嫌じゃないよ」

 

「そうか」

 

 嘘は、ついていない。

 

「わしのこと、なんで好きなんじゃ?」

 

 ついぞ、聞かなかったこと。怖い言葉だった。

 

「うーん?」

 

 首を傾げている、そんなに言いづらいのかのう、なんて不安になる。

 

「ん、顔、瞳、唇、声、髪、爪、歯、血、体、心、命。あと……夢?」

 

 一つ答えるたびに指折り数えて、最後の言葉と共に指をこちらの唇に添える。

 

「簡単に言うとだな……この青空の下に、お前がいることに。恋をしたんだ」

 

 金色の瞳が、紅色を映している。見たこともないほど、穏やかに笑っていた。なんともまぁ、嘘のない男だ。

 

「それだけなんだ。俺の幸福の形が、お前なんだよ」

 

「なんじゃ、それ。キザじゃのう」

 

「えーっ、本心なのに」

 

「ええい! だから困るんじゃが!?」

 

 ええい、顔が赤い気がする。このままだと負けた気がするので、押し倒してしまえ。

 

「今日は全部わしの言うこと聞いてもらうからの!」

 

「……言われなくても」

 

 

 

 翌日。

 

「……獣に襲われたか?」

 

「ある意味は?」

 

 全身傷だらけの信広が陣に現れたという。

 

 




Q.なんで好きなの?
A.一目惚れ。(無自覚ニュータイプが“普通”の恋でぶっ壊れた)

なのでカリスマとか効いてるわけではないです。
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