蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~   作:サークル『熊の巣穴』

129 / 156
123 操縦課程最終検定「F.N.G.」

央暦1970年3月29日

斗米基地南 果ての海洋上

西国毎朝新聞社

四谷記者

 

 今日の果ての海は、はぐれ雲がずっと遠くの南にそびえ立つだけで、すごく穏やかだった。

 フライト日和とは、こういう日のことを言うんだろう。

 

 葦原連邦空軍付きの従軍記者として、初めての大きな仕事だった。

 

「よーしお前ら! 今日の最終検定では、俺をはじめとした教官陣が相手だ。

叩き落とせば問答無用で合格だ、気張っていけよ!」

 

「はい、ボス!」

 

 周囲を飛ぶ蒼鷹のパイロット達は、揃ってあたしの前に座る人に応答した。

 彼らは葦原内戦が始まってから幕府空軍に志願し、初めて戦闘機乗りとしての資格を得る人々だ。

 

 だから、葦原連邦空軍初の戦闘機乗りって事になると思う。

 

 彼らを鍛えているのは、幕府空軍時代からの教官達に、最近真田藩からやって来た元六文銭の隊員。

 そして───良介から上司と呼ばれていた、この謎の男。

 

 新米達からボスと呼ばれる、戦闘機乗りにしては高齢な男だ。

 

「四谷記者、ご気分はどうでしょう?」

 

「あ、はいっ。すごくいい気分ですっ」

 

 なにせあたしの初めてのフライトの記憶は良介……あの、畏怖の魔王の後席なんだから。

 あいつと比べれば、ボスさんの機動は質の良い寝床のような安楽具合だった。

 

「あいつの後席、死ぬほど大変だったでしょう?」

 

 どうやらあたしの内心なんてお見通しのようで、彼は謝罪してくれた。

 その口調は、どこか楽しげだったけど。

 

「ええ、あれほど最悪な環境は他にないです……」

 

「いや、まったく……

一度、俺もあいつの後席に乗ってしまった事がありましてね。

いつもの仕返しだ! なんて抜かして、いろんな機動やられましたよ」

 

 良介がこちらにやって来て、まだ一年は経っていないはず。

 だというのに、この人はまるで長年苦楽を共にした仲間のような口ぶりで話していた。

 

 やっぱり……ここで、聞いた方がいいかもしれない。

 あたしは意を決して尋ねてみる事にした。

 

「あの……ボスさん。あなたって、もしかして……

神兵なんですか? 良介と同じ」

 

 頭頂部だけ見える彼のヘルメットが、一度こちらの方を向いた気がした。

 しばらくの間が空いて……通信機を操作する音が聞こえた。

 

「間もなくウェイポイントだ。各機、規定のフォーメーションに」

 

 どうやら、何も答えるつもりはないらしい。

 遠くで編隊を組む新米達に視線を向け、ただその時を待っていた。

 

 あたしも、射影機で彼らの飛行を絵に収めていく。

 

 新米達は良介たちペンギン隊の面々と比べると、稚拙で危なっかしかった。

 不思議な事に、良介は彼らの数百倍危なっかしい飛行をしていたはずなのに、新米の方が怖くなってしまう。

 これがやっぱり、腕の違いというやつなんだろう。

 

「ボスって確か、八咫烏に一本取ったんだよな?

ならボスに勝ったら、八咫烏にも勝ったって事だよな」

 

「ああ、やってみろ……と言いたいところだが、今回俺は監督に徹する。

後ろにはお客さんがいるからな。偉そうなことは他の教官がたに勝ってから言え」

 

 訓練生の軽口に、ボスさんも軽口で応えた。

 ただあたしが見る限り……彼らに良介ほどの腕があるようには見えなかった。

 

「よし。まずはオメガ1、それと2。お前らからだ!

軽口叩いた分、無様見せたら容赦なく落とすからな!」

 

「了解、見てて下さいよ!」

 

「僕もなのぉ⁈」

 

 遠く離れたところで蒼鷹2機が上昇し、最終検定が始まった。

 あたしは素人だからよくわからないけど、無作為(ランダム)に選ばれた教官ひとりが相手となり、訓練生2名は協力して教官に撃墜判定を下すという試験らしい。

 

 なんだか、訓練生の方が有利に聞こえるけど……

 

「いいか、索敵の支援はないぞ!

僚機と連携して敵を索敵、協力して撃墜しろ!」

 

「オメガ2、見えるか?」

 

「ネガディブ! 見当たらない!」

 

 蒼鷹は最低限の索敵レーダーしか搭載していない影響で、目で敵を捉えるのが重要になるらしい。

 せっかくだからあたしも探してみるけれど……上も左も右も、多分後ろにもいない。

 

「ボス! 相手役は本当にいるんですか⁈」

 

「ちゃんと見張れ! 上もだが、下もな!」

 

 ボスさんの言葉に乗せられて、あたしは訓練生の下方向に意識を向けた。

 すると……いた!

 

 訓練生達の真下に迫る、銀色の鉛筆のような機影!

 

「ボス! 手を貸すのは禁止ですよ!」

 

「ひよっこ相手にやり口が大人気なかったからな。許せ」

 

「まったく……!」

 

 あれは、ペンギン隊のP-104と同じ機体だけど、尾翼の部隊章が違った。

 6つの銭……真田藩出身の部隊、六文銭だ!

 

 鯉が滝を登るかのように垂直上昇すると、機銃の曳光弾を訓練生達に放った!

 

「真下⁈ ブレイクしろ!」

 

「うわわっ!」

 

 2機は急旋回して攻撃をかわすも、後ろの機体から火花が散った。

 訓練用の模擬弾頭との事だから、被弾しても機体が壊れたりはしない。

 

「オメガ2ヒット! 戦闘続行可能だ、続けろ!」

 

 六文銭の機体は訓練生達の間を抜けるように垂直上昇し、右に旋回したオメガ2を追跡し始めた。

 

「こちらオメガ2、敵機に追跡されてる!」

 

「判断ミスだな、後悔させてやる」

 

 オメガ1が旋回して、六文銭から逃げるオメガ2の支援へ向かう。

 

 ここで、P-104という機体を思い出してみる。

 超高速飛行が可能……というか、それ以外出来ない迎撃機。

 

 そういう機体は格闘戦なんかせずに、一撃離脱……

 撃ったら成功失敗に関わらず一旦逃げるのが定石だったっけ。

 

 なら……今の六文銭って、わざと隙を見せてる?

 実際、オメガ2の動きに六文銭はついていけていないように見える。

 機体に向かない動きをさせているんだから、当然だ。

 

「……あくまで訓練、って事ですか」

 

「その通り。P-104がまともにやり合ったら、蒼鷹に勝ち目はありません。

ま、負けたら必ずしも不合格って事はないんですがね。

こいつは圧倒的優位にある敵が見せた隙をどう突くか、という趣旨の試験です」

 

 あたしの呟きにボスさんは頷いた。

 

 今のタイミングならいいかな……?

 あたしは付け加えた。

 

「良介が乗ってたら、どうなります?」

 

「状況次第、ですね」

 

 勝ち目はないから、状況次第に。

 やっぱり練習機ともなると、腕はあっても性能の差は大きいらしい。

 

 それでも殺意満点の神機隊から逃げ切ったんだから、あいつはおかしい。

 

「だけどこいつらと同じ状況だったら……もう仕留めていた」

 

 最後に、彼は確信を持った声色で答えた。

 

「よしオメガ2、後ろについた! 離脱しろ!」

 

「頼むっ!」

 

 蒼鷹の速度に合わせているのだから、P-104に追いつくのは難しくない。

 背後につかれた六文銭は攻撃を中止して降下。

 オーグメンターの炎を吐きながら、全速力で離脱を始めた。

 

「対応速度と連携は良し。だがタイミングを逸したな」

 

 蒼鷹の速度では、最大出力のP-104に追いつく事はできない。

 あっという間に距離を離され、薄雲に向かっていった。

 

「逃げたっ、追跡する!」

 

「オメガ1待て! 蒼鷹じゃ追いつけない!」

 

 ここでオメガ1は気持ちが逸ったのか、逃げ出すP-104の追跡を始めた。

 遠くで煌めいている機影に機銃を撃つけれど、あんな距離では当たるはずがない。

 

 離脱のために速度を失っていたオメガ2は勇み足の彼に追い付けず、編隊が乱れた。

 

 もし隙を突くとしたら……ここだ。

 

 薄雲に突入したP-104から、光の反射が消えた。

 薄く小さな雲だというのに、陽の光で煌めく機影は一瞬のうちに姿を消してしまった。

 

「見失った! レーダーからも反応消失!」

 

「だから言ったのに! 待ってて!」

 

 下の次は……上!

 エンジンの性能にモノを言わせて、P-104は縦横無尽に空を駆け回る。

 

 位置エネルギーを得た六文銭は、今度は急降下して……

 オメガ1目掛けて急速接近する!

 

「一度ヒントはくれてやったんだ。二度目はない」

 

 上下の警戒を疎かにしてはならない……

 ボスさんは遠回しに、通信回線に乗せずに言った。

 

「正面上っ!」

 

 オメガ1は反応出来たけど、機体の動きは間に合わなかった。

 P-104から猛烈な勢いで曳光弾が吐き出され、主翼で光が迸る。

 

 実戦だったら、翼が真っ二つに折れた事だろう。

 

「オメガ1ダウン。レームダックへ」

 

「くそっ!」

 

 冷静にボスさんは言ってのけた。

 レームダックは、訓練の邪魔にならない高度の空域……

 つまり、敗者の待機場だったっけ。

 

 残ったオメガ2も空戦機動で六文銭に追い縋ろうとするけど……

 機体性能が違い過ぎる。

 

 あっという間に引き離されて、次迫られたらあっさりと撃墜判定をもらっていた。

 

「オメガ2ダウン」

 

「あぁっ……!」

 

 最終検定まで来たとはいえ、これが訓練生と教官……厳密には前線配置の実力差。

 明らかな隙を見せていたにも関わらず、あっさりと全滅してしまった。

 

「オメガ1、オメガ2。見せてもらったぞ。

デブリーフィングを楽しみにしてろ」

 

「……了解っ」

 

 オメガがレームダックへ退避して、次の試験が始まる。

 そう思っていた時だった。

 

 ボスさんの視線が、不意に南の方で固定された。

 あたしもそっちの方を見てみるけど……何も見えない。

 

 東の果てからはぐれてきた、はぐれ雲だけ。

 レーダーですら先を見通せない、人と神の世を隔てる謎の雲だ。

 

「こちらペンギン3。斗米基地へ、索敵支援を要請する。

戦域中央(ブルズアイ)より(180)、はぐれ雲周辺だ」

 

 不意に、ボスさんが基地に支援を要請し始めた。

 蒼鷹にもレーダーはあって、最低限の索敵は出来るらしいけど……

 あたしから見て、レーダーには何も映ってなかった。

 

「了解、お待ちを……! 機影捕捉! 機影捕捉!

フライトプラン提出ありません!」

 

「全機、演習(ミッション)中止(アボート)! 演習中止ッ!

全速で帰還しろ! 斗米基地、至急増援を送れ! スクランブルだ!」

 

「りょっ、了解っ!」

 

「賊軍め、遂に停戦を破る気だな」

 

「賊軍の支配圏はずっと南西だぞっ⁈ どうやってここまで来たんだ!」

 

 ボスさんの報告に、訓練生達に激震が走る。

 

 突然過ぎる出来事で、あたしも飲み込みきれないけど……

 政府軍が何らかの手段で本州の防空網をすり抜けて、ここ夷俘島の南まで来たってこと?

 

「ど、どうやって?」

 

「はぐれ雲だ。

雲の壁に沿って北上して、最後はあの陰に隠れてここまで来たんだ」

 

 ボスさんは短く、そう推測した。

 はぐれ雲の陰に隠れて……?

 

 確かに雲海からはぐれた雲は分厚くて見通せない上に、レーダーの電波すら遮断してしまう。

 不規則なところはあるけど、軌道もある程度読む事はできる。

 

 だけど、はぐれ雲は戦闘機と並んで飛ぶにはあまりにも遅過ぎる。

 自転車並みの速さしかないから、陰に隠れて飛んでいたら燃料がもたない。

 

 最低でも武揚周辺、東国地方からここまでなんて、単独じゃ無理だ。

 

「ペンギン3へ、現在待機中の部隊を離陸させた! 到着まで5分!」

 

「その間に喰らいつかれるな……!」

 

 訓練生と教官機の武装は訓練用の模擬弾だけ。

 この空で実弾を搭載しているのは、ボスさんの操る蒼鷹だけだった。

 

 ボスさんは他の機体を自分より先行させて、自分は最後尾を飛行していた。

 つまり、あたしもこの状況に巻き込まれてしまったのだ。

 

「悪いな、四谷さん。あんまり勝ちの目はない……!

逃げ切るのは無理で、戦えるのは俺らだけだ」

 

「くっ、うううっ……!」

 

 なっ、なんでぇっ……!

 せっかくやばい情報知っちゃって、政府側から狙われる状況から逃げ切ったと思ったのにぃっ!

 

 従軍記者なんて、なるんじゃなかったぁっ……!

 

「……だが。チェイスが来るまで持ち堪えれば、目が出る!」

 

 ボスさんは機体を急旋回させて、あたしをGで押し潰した。

 キツいけど……戦わないと確実に死ぬ!

 

「敵編隊は……えー、高度300から接近中」

 

「300⁈ このボンクラっ、ゼロを2つ間違えてるぞ!」

 

 今あたしたちは、迫ってくる政府軍より少し低い高度を飛行している。

 高度は28000フィート、間違いなく基地が間違っていた。

 

「代われっ! ペンギン3、間もなく誘導弾の射程圏だ!

……済まん、可能な限り支援するっ!」

 

「任せろ、代わりにチェイスを連れて来い!

あいつならやれる!」

 

 良介……畏怖の魔王チェイスなら。

 この状況を、どうにか出来るかもしれない。

 

 だけど、まず間違いなく間に合わない。

 少なくとも、あたしが死ぬまでには。

 

「くっ、くうううっ……」

 

 怖い。

 従軍記者になる、なるしかないってなった時に、覚悟はしていた。

 

 だけれど、実際に直面すると……何もかもが違う!

 

 機体の振動が、エンジンの騒音が、聞き慣れない航空無線が。

 何もかもが、あたしを殺す要因にしか思えない。

 

「ペンギン3、敵編隊が2つに分かれた!

2機、そちらに向かっている!」

 

「練習機1機相手じゃ、半個小隊で十分ってか!」

 

 黒い点々から2つ、分かれるのがあたしの目でも見えた。

 この2つの点が間もなく、あたし達を殺す。

 

 理不尽だ……理不尽過ぎる……

 こうなったら撮って、記録に残してやる!

 

安全装置(マスターアーム)解除(オン)。ペンギン3、交戦。

……四谷さん、堪えろよっ」

 

 計器の安全装置という表示が光った。

 全ての兵装を発射する準備が整ったという合図だ。

 

 あたしは射影機を向けて、ファインダー越しに敵機を睨みつける。

 シャッターを切るたびに黒い点が像を帯びてゆき、やがて白い煙を放った。

 

「この状況じゃ、あいつの真似をするしかないか……!」

 

 世界が回転をはじめ、上下左右に熱囮(フレア)の光が舞う。

 畏怖の魔王のように、バレルロールをしながら敵に接近してるんだ……!

 

「ペンギン3、FOX2!」

 

 右翼のミサイルが機体から離れ、雲を引きながら敵機へと向かっていく。

 ミサイルは一直線に正面へ飛翔して、敵のミサイルの影と重なって……

 

 敵機よりずっと手前で爆発した。

 

「当たってない……⁈」

 

「いやっ、成功だっ!」

 

 爆煙で姿が隠れ、何も見えなくなった直後。

 あたし達のすぐそばを、1発のミサイルが過ぎ去って行った。

 

「……ぁっ⁉︎」

 

 ミサイル同士を正面衝突させて、後続のミサイルを混乱させた……?

 常人では出来ない発想と度胸……!

 

 間違いない。

 この人は、良介の上司だ!

 

 どす黒い爆煙を越えて、あたし達は2機の背中を見た。

 

「もらった。FOX2!」

 

 最後の左翼のミサイルが放たれ、敵機に向かっていく。

 少し間を置いて攻撃に気付いた敵機はフレアを投下するけど……遅かった。

 

 至近距離で爆発を受けた機体は主翼を失い、クルクルと異様な回転をしながら墜落していく。

 その間にも、ボスさんはもう1機を追跡していた。

 

「相手の見せた隙を、逃すべからず……!」

 

 訓練中にした自分の発言を引用して、急旋回して速度の乗っていない敵機を追いかける。

 こっちが撃ったミサイルを見て、背中を向けて振り切ろうとしていたんだ。

 

 戦闘機の機銃は想定していない戦術だけど、速度では勝てないことに変わりはない。

 この隙で攻めきれなければ、やられる!

 

「ガンズガンズガンズ」

 

 短く連射し、曳光弾が敵機に吸い込まれていく。

 その内の数発が火花を散らせ、主翼から部品を撒き散らし……

 補助翼(エルロン)が脱落して、あたしのすぐ右を過ぎ去って行った。

 

 旋回中に重要部品を失った敵機は制御不能になり、錐揉み降下を始めた。

 撃墜だ……!

 

「ふぅっ……! ペンギン3、撃墜(スプラッシュ)2(ツー)

 

「す、凄い……最精鋭のペンギン隊は、伊達じゃないっ……!」

 

 だけど、戦いは終わっていない。

 この2機はあくまで、油断して隙だらけの攻撃をしただけ。

 

 ごく一部であって、本隊はその10倍はいるんだから。

 

「でも。た、助かっ、た……?」

 

 でもボスさんの性格を考えると……

 新米達を逃がすために、追跡はするに違いない。

 すぐには追いつけなくても、空戦状態になった時にすぐ追いつけるんだから。

 

「ペンギン3、敵編隊が転進! 転進したっ!

敵編隊の約半数がお前の方に向かっている!」

 

 は? なんで?

 どうして基地に逃げる、数の多い訓練生達じゃなくて、あたしたちが狙われるの⁈

 

 普通逆だし、だったらなんでさっきは2機で舐めプしてきたの⁈

 

「さてはこいつら、俺をチェイスだと間違えてるな?」

 

「は? え? って事はこいつら、良介個人を狙ってるの⁈」

 

「その通り。前にも一度こういう事があった!」

 

 卓越した戦闘技術を持つパイロット。

 その個人を狙った攻撃。

 

 演習と居合わせたのは想定外で、行きがけの駄賃とばかりに向かってきた機体を攻撃。

 だけどそいつが想定以上の技量を持っていた。

 おお、ならこいつが狙っている魔王なのでは?

 

 みたいなノリで攻撃仕掛けて来てるの⁈

 

「あ、あたし……助かって、ない?」

 

「悪いな、四谷さん。ちょっとやり過ぎたみたいだ……!」

 

 黒い点が旋回して、明らかに大きくなりつつある。

 本当にあいつら、こっちを狙ってるんだ……!

 

「あ、あああっ……」

 

 一度気が緩んでしまった分、感じる恐怖は倍増した。

 さっきの政府軍機みたいに、海面に向けて真っ逆様に落ちていく……

 

「こちら六文銭! 我が隊も敵機と交戦する!」

 

「無茶だ! 貴機らは武装していない!」

 

「模擬弾でも威嚇にはなる!」

 

 ついに、訓練生達に付き添う六文銭の報告も聞こえて来た。

 搭載している武器は、当たったところで光るだけのおもちゃ。

 抜本的な問題の解決には、ならない……

 

「こちら、葦原連邦空軍AWACSフツノミタマ!

これより、電子支援を開始します!」

 

 今さら、電波で支援されたってしょうがない!

 欲しいのはもっと直接的な、助けの手なんだからっ!

 

「……間に合ったか」

 

「え?」

 

 真北、敵機と訓練生達が飛んでいる方向。

 そのさらに向こうから、黒い点が新たに浮かび上がった。

 

 本州と比べてずっと澄んだ蒼穹(青空)を裂くように飛ぶ、畏怖の魔王。

 

「ペンギン1、交戦」

 

 蒼穹(そうきゅう)の魔王。

 あたしの頭に、そんな言葉が飛び込んで来た。




次回の更新は水曜19時です

また『F-2無双(仮)』という仮題から、正式なタイトルに変更予定です
よろしくお願いします。切らないで!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。