蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~   作:サークル『熊の巣穴』

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145 天下分け目の戦い 13日昼「BATTLE of ASHIHARA」

央暦1970年4月13日

葦原海 AFS翔龍(しょうりゅう)

葦原連邦空軍第1航空団『彰義隊』第1中隊『ペンギン』

志村“Chase”良介二等空尉

 

 想定されていない空軍機と比べて、ソフトウェアも完備された海軍機の着艦ときたら。

 さらにチェイスはドッスンを意識してナーガを葦原(A)連邦(F)(S)翔龍の飛行甲板に降ろし、フックをワイヤーに引っ掛けた。

 

「ペンギン1の着艦を確認! 凄いな、とても空軍とは思えん」

 

「それって褒めてる?」

 

「さてな。ペンギン1、誘導に従って昇降機に向かえ」

 

 翔龍の誘導員に睨みを利かせると、誘導に従いエレベーターへと向かわせた。

 このまま収容されるのではない。

 

 エレベーターで飛行甲板を降って格納庫へ向かうと───

 待ち受けるのは、翔龍航空科の皆様。

 彼らの傍らには台車に乗せられた兵装の数々。

 

 このまま最低限の点検を受け、問題がなければ燃料と兵装の補充を受けるのだ。

 

「精兵隊、陸平の着艦確認!」

 

 航空科の点検を受けている最中、レシプロエンジンの唸り声とギアブレーキの金切り声が響いた。

 どうやら精兵隊も少し遅れて翔龍に到着したらしい。

 

 彼ら精兵隊が運用する颶風(ぐふう)は30年前の旧式機を改修した機体だ。

 我々で言うWW2時代のものが原型機であり、第2・3世代ジェット戦闘機と比べればとても小柄だ。

 

 故に、チェイスのような扱いを受けずとも甲板上で補給を済ませることが出来るのだ。

 

「坊主、もう降りておるな?」

 

 通信機を介して、陸平が語り掛けてきた。

 その声色から先ほどの一件を気にしているのだろう。

 

「一足先にお風呂を頂いてるよ」

 

「ハッ、ここは儂らのではないがの……」

 

「点検完了! 兵装搭載に移ります!」

 

 タラップを駆け上った航空科員に、チェイスは親指を立てて応じた。

 どうやらサムズアップの習慣がないためか、彼には怪訝な表情を浮かべられてしまったが───

 サムズアップを返してくれた辺り、意図は伝わったらしい。

 

「気に病めば死ぬが、かといって目を逸らせば人の道を外れる。

何度も言うようぢゃが、仲間を頼り、話せよ。

心の傷は癒えることはないが、流れる血を減らすくらいは出来る」

 

 心の内をさらけ出し、口に出す。

 チェイスが恐らく、死ぬほど苦手なことである。

 なにせ、ナンパで日常的に心にもない事を言っているのだから。

 

「難しいな」

 

「……じゃろうな」

 

「俺は人見知りするきらいがあるからさ」

 

「ハッハッハ! 冗談も大概にせいクソバカめ」

 

 互いに笑い合い、陸平の言う仲間を頼って話すという効果のほどを実感していたその時。

 格納庫から警報が鳴り響いた。

 

「対水上電探に感あり! 魚雷艇複数、巌流(がんりゅう)藩より接近!」

 

 魚雷艇のみでの攻撃。

 図体が大きく小回りが利かない空母との相性はいいかもしれないが、空母が単独で行動するわけがない。

 

 AFS翔龍の周辺にはミサイル巡洋艦1隻と駆逐艦が展開している。

 近づく前に、駆逐艦の艦砲射撃で対処されるだろう。

 それが駆逐艦の本来の役目だ。

 

 それに───

 

「ようし! 精兵隊、お役目の前に腹ごなしが来たぞ! 全機出撃ぢゃ!」

 

「応!」

 

「死兵どもに、相応しい最期をくれてやらぁ!」

 

 チェイスはもちろん、空母の護衛が手を出す前に精兵隊が対処してくれそうだ。

 安心して補給を受けられるというものである。

 

「精兵隊へ、連中の対処は頼んだぜ」

 

「おうよ! 主は安心して次のお役目に備えよ!

それっ、全機出撃じゃあっ! 道を開けろ!」

 

「相変わらず、元気なヂヂイだぜ……」

 

 航空科から受け取った栄養補給ゼリーを吸いながら、チェイスは呟くのだった。

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