蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~   作:サークル『熊の巣穴』

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165 中洲作戦「Death from Above」

央暦1970年4月28日

真田藩 真田空軍基地

葦原連邦空軍第1航空団『彰義隊』第1中隊『ペンギン』

志村“Chase”良介二等空尉

 

 大入道の撃退。

 その戦果はどこかから漏れ出たらしく。

 

 真田基地に帰還した良介達ペンギン隊を待ち構える人混みがあった。

 オメガ隊の予備人員やイグルベ隊、その他様々な顔ぶれが見受けられるが───

 

「チェイスっ、よく戻ったっ!」

 

 中でも人混みの中から一歩前に出たのは、新選組隊長の山義歳三であった。

 彼をはじめとして、新選組は総勢ではないかと思えるほどこの場に揃っていた。

 

「これはまた、随分な歓迎だけど……どうかした?」

 

「はっ……ああ、そうだな。何もないが、祝いたくなった。それだけだ」

 

 作戦の決行とその結果は、連邦軍または連邦政府が公開するまでは機密である。

 なのでこの集まりは非公式、ただ仲間の帰還を喜んでいる。

 そういう体にしなければ、機密漏洩だ。

 

「で、良介。大入道はどうだった⁈」

 

 興奮した様子の鉄之助は、この諸々の配慮をぶち壊しながら尋ねた。

 建前は建前として、敵の最強戦力を撃退した証言は聞いておきたい。

 これは戦闘機乗りとして、我慢出来ないほどの秘密に違いない。

 

「そうだな。まずは……」

 

 ちょうどその時、駐機場に竜司のオロールが戻って来た。

 そう、彼らペンギン隊は帰還した直後。

 まだやるべき事があった。

 

「デブリーフィングを済ませて来ても?

口出さないなら、聞いててもいいからさ」

 

「あっ、わり……そうだったな」

 

「そうだ鉄之助、焦り過ぎだぞ!」

 

「気持ちはわかるけどよ!」

 

 ははは。

 新選組の面々は大笑いした。

 

 彼ら新選組が大入道との戦いに執心する理由は明らかだ。

 隊長、山義歳三は新選組の前身組織である鎮武隊の副長を務めていた。

 その鎮武隊は武揚陥落の折に、歳三ひとりを残して全滅した。

 

 今は壊滅した神機隊、そして大入道の攻撃によって。

 

 敬愛する隊長をコテンパンに伸した超兵器を撃退したのだ。

 そのような巨人殺し(ジャイアント・キリング)、興味を持って当然だ。

 

「良介さん、それとみんな……」

 

「竜司か。此度はよくやったな……!」

 

「ぅぇっ……はっ、はいっ! 恐縮です!」

 

 歳三はゆきの姿を見ると、両肩を掴んで激励した。

 普段クールで厳しい態度を見せる男が、これほどまでに嬉しいという感情を表しているのだ。

 良介が思っていた以上に、歳三は感激しているようだった。

 

「歳三よ。随分と嬉しそうじゃねぇか」

 

 この内心をそのまま言葉にしたのは、今さっき駐機場に戻ったボスであった。

 義足を器用に操ってタラップを降りると、この集団に歩み寄った。

 

「ふっ、まあな……」

 

「言っておくが、頭叩いて蹴り返しただけで、叩き落としたわけじゃねぇ。

そこは間違えないようにな」

 

「ああ、わかっている……鎮武隊の仇は、俺が討つ」

 

 静かな決意が、歳三の口から漏れた。

 

 ふと気付くと、あくりが機体から降りて良介の隣にいた。

 視線をやると、鋭い目つきで歳三を睨んでいる。

 

「危ういな……」

 

「え?」

 

 その呟きの意図を問うと、彼女は良介へ視線を向けた。

 

「歳三という男。将の才あれど将器にあらず」

 

「……リーダーの才能はあるけど、性格は向いてないって事?」

 

「将たる者は目的のため、執着を捨てなくてはならない事もある。

だが、あの者には強い執着があり、それを捨てられていない。

いずれ、判断を誤る」

 

 確かに、歳三が神機隊や大入道───そして、武士という地位に見せる執着は強い。

 それで判断を誤るかどうかは、良介には判断出来なかった。

 

 しかし執着という話になると、少し問題がある。

 

「俺、そういう意味じゃ執着が強いぜ?」

 

「? どういうことだ?」

 

「い、いや……俺みたいなナンパ野郎って、

女の子に対する執着が強いじゃないか」

 

「……良介。私はお前に執着を見た記憶はない」

 

「そ、そう……?」

 

 あくりの目は確かで頼りになるが───過信は禁物だ。

 弘法(こうぼう)にも(ふで)(あやま)り、あくりとて目利きをしくじる事もある。

 良介が持つ女の子に対する執着を見つけられないのは、灯台(とうだい)(もと)(くら)しというやつだ。

 

「ともかく、ペンギン隊が全員揃ったんだ。

作戦室でデブリーフィングだ」

 

「はいっ」

 

「ああ」

 

「うむ」

 

 ペンギン隊の面々は頷くと、本部の作戦室へ向かった。

 10人以上のお供を連れながら───

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