蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~   作:サークル『熊の巣穴』

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208 王手作戦1「CheckMate」

観覧対象: PENGUIN 1 | CHASE

北緯35度31分40秒 東経139度50分35秒

葦原国武揚湾

1748

 

「こちら連邦海軍哨戒隊ゴースト。ペンギン隊、レーダーでそちらを捉えた。

久しぶりだな!」

 

 AOに入ってすぐ、南から通信電波が飛ばされて来た。

 智台を解放した時、空対艦ミサイル(ASM)の運用や管制を担当してくれたゴースト隊だ。

 

「よう、ゴースト。今回もミサイルは使える?」

 

「もちろんだ。しばらくはフツノミタマの代理として管制も行う。

彼らも陸で色々大変そうだ、負担を分担しなくちゃな」

 

 データリンクを介して、ゴーストからASM照準プログラムが送られてきた。

 これを利用して、ASMの終末誘導を行うのだ。

 

「ゴースト、大入道の動向は?」

 

「どうやら上空待機をするのは危険だと判断しているらしい。

ずっと葦原湾を周回している」

 

 恐らくこれは、チェイスと交戦して大破した件から得た教訓だろう。

 大型爆弾の直撃を受ければ、兵装換装システムを実装した大入道は大きな被害を受ける。

 しかし移動を続けていれば爆弾の命中率は大きく下がる。

 

「さっき西へ向かったから、その内戻って攻撃位置に到達するはずだ」

 

 彼らが戻って来る前に、艦隊をどうにかしたいところだ。

 

「ヴィクターとランサーはどうなってる?」

 

「ひとまず、敵艦隊の直掩に対処してもらっている。

味方機と近いせいか、三式弾攻撃の兆候はない」

 

「……つまり、敵機が近くにいない俺たちは?」

 

「敵防空艦の索敵範囲に入った瞬間、照準してくるだろう。

無力化(ソフトキル)する手段はない、気を付けてくれ」

 

「簡単に言ってくれるよ……!

ちゃんと警告してよ!」

 

 ピロロ、噂をすればなんとやら。

 レーダー波の検知、方角は西。

 

 その方角は葦原湾、魔界の門消滅の余波で生じた、かつての中葦原。

 敵艦隊が待ち構えている方角だ。

 

「ああ……待て、飛翔体検知!

着弾予想地点をレーダーに表示する!」

 

「ペンギン隊、低空に退避!」

 

CHECK MATE

王手作戦

契約403日目

北緯34度51分04秒 東経139度50分14秒 | 天候:曇天 | 1753

葦原国武揚湾 | 葦原連邦・葦原政府侵入禁止区域

 

「……来る!」

 

 大助の警告の直後、ペンギン隊の頭上で巨大な爆発が起きた。

 まさに火の玉、あるいは地上に降臨した9つの太陽。

 

 衝撃によって機体が下に向かって押しつけられ、チェイスは危うく海面に接触するところだった。

 さらに空気の層によって勢いが落ちた破片がパラパラと、風防を叩いた。

 近ければ爆圧だけでなく、この小さな金属片が機体やパイロットを切り裂くのだ。

 

「敵三式弾、ペンギン隊の至近で炸裂! 大丈夫か⁉︎」

 

「ペンギン隊、全機無事!

それより、発射兆候の報告に集中してくれ!」

 

「チェイス殿っ。味方部隊の支援か、それとも砲撃の阻止か!

どちらですか⁈」

 

 確かに、それをまず決めるのが先決だ。

 

 三式弾には限りがあるはずだが、弾切れに期待するのは危険過ぎる。

 それにヴィクターやランサーの救援へ行くのにぶっちぎっても、いずれ砲撃は受けるのだ。

 なら、まだ誰も手を付けられない砲撃を止めるのが最善策だ。

 

「艦隊!」

 

「相分かった……今度は私も、播磨型を沈めよう」

 

「無茶しないでよ! 最大出力(ゴー・ゲート)!」

 

 オーグメンターを点火し、一直線に葦原湾の敵艦隊へ針路を取る。

 自分へ一直線に向かってくる標的を撃つのは、存外難しいのだ。

 

《目標健在! 敵編隊、真っ直ぐこちらへ接近中!》

 

《幕府軍の対応手順ではない……? 例の魔王とやらか!

防空艦、諸元送れ! 第二射用意! 最優先で仕留めろ!》

 

《了解。本艦も攻撃を開始する》

 

 どうやら1発で我々の所属がバレたらしい。

 果たして三式弾を幕府空軍ではどのように対処するよう教えていたのか。

 それはわからないが───

 

 なんにせよ、敵艦隊はチェイスらペンギン隊を全力で迎え撃つ事に決めたらしい。

 

「参ったね、全員でお出迎えとは……

気を付けろ、ミサイルも来るぞ!」

 

「さっ、三式弾だけじゃない⁈」

 

「竜司! 愚痴を言う暇はないぞ!」

 

 RWRがミサイル発射を警告している。

 本当に敵艦隊の防空艦がSAMを打ち上げたらしい。

 

 幸いにも、標的は先頭を飛ぶチェイスだけ。

 ならばまだ、どうにかなる。

 

「各機左旋回! ミサイルは俺が引き受ける!

砲撃にだけ注意して!」

 

「チェイス殿っ⁈」

 

 SAMの白線が垂直に伸び、続いて白い点になった。

 加速しつつ、こちらに向かっている。

 

「警告! 三式弾発射の兆候あり!」

 

「ペンギンは、低空を維持!」

 

 チェイスは右へ降下しつつ旋回し、ミサイルや艦隊に対して90度の角度を進んだ。

 ビーム機動、あるいはノッチングだ。

 あとはチャフと速度があれば、大半のSAMは回避可能だ。

 

《主砲、打ち方始め!》

 

《発砲!》

 

 特に今回の場合、低空とチャフが効く。

 海面とレーダー波の衝突によって生じるノイズはチャフによって増幅される。

 そしてミサイル、厳密には誘導するレーダーのイルミネーターが機影を見失うのだ。

 

 目論見は成功した。

 チェイスの背後をSAMが横切り、海面に激突。

 

「ペンギン1、ミサイルを回避した!

だが、砲弾も検知……いや大丈夫だ。この軌道なら針路上で炸裂しない!」

 

 直後、三式弾も別れたペンギン隊の間で炸裂した。

 乗り物酔いを起こしそうな振動以外、被害は当然ない。

 

《敵編隊長機、誘導弾を回避!》

 

《蒼穹の魔王は常に先陣を切っていた!

その機体は魔王だ、当該機を高価値目標(HVT)に指定!

他は旧式艦が阻止! 防空艦は攻撃をHVTに集中しろ!》

 

《了解! 全兵装、HVTを照準!》

 

 まったく、まだ直接見てもいないのに命を狙われるとは。

 随分と熱心なファンが増えたものだ。

 

「ペンギン1、どうやら敵艦隊は長距離兵器を全て君に向けているようだ。

注意してくれ!」

 

「報告で今は十分! それより、ASM発射準備を!

すぐに終末誘導を始める!」

 

「本当か? 了解した、合図を確認次第発射する」

 

 ゴースト隊の運用するASMの終末誘導はチェイスが担っている。

 敵の集中攻撃という判断はある意味、正解を突いていた。

 

 左旋回して、再び敵艦隊へ接近するコースへ。

 その間にも別れた竜司と大助は、攻撃可能な距離まで迫っていた。

 そろそろ急上昇して、攻撃を回避しながら急降下爆撃のコースに入る頃だろう。

 

「上昇まで3、2……」

 

《敵機見ゆ! 方位135(南東)!》

 

《迎撃始め! 防空艦をやらせるな!》

 

「上昇!」

 

 旧式駆逐艦が主砲や機銃を竜司と大助に向けて撃ち始めた。

 その直後、彼女らは上空へと駆け上がって曳光弾を背にしていた。

 

《敵機の姿が見えない! 雲に隠れやがった!》

 

《戦闘機が2、3機ばかり。一体何が出来る!》

 

《油断するな、狙いは三式弾の照準を担う防空艦だ!

防空艦は脆い、近付けるな!》

 

 わずかながら浮かんでいる雲の中に、竜司と大助は一時身を隠した。

 次に姿を見せるのは、急降下して爆撃する時。

 

《敵機2、懐に入り込まれました!

防空艦、SAM攻撃不能!》

 

《魔王以外はどうにでもなる!

見張り員に命令! 雲の警戒を厳にせよ!

見つけ次第撃て!》

 

 その間にも、チェイスを狙ったミサイルや三式弾の砲撃は続いている。

 

「そうだよっ、俺の方で手一杯なのに!

他を考えている余裕あるのかぁっ⁈」

 

 では、ペンギン隊のふたりはどうでもいいのか?

 

「いいわけ、ないだろぉっ!」

 

 左旋回し、後方に三式弾の炸裂。

 この炸裂に、発射されたSAMを巻き込む。

 3発のミサイルが鉄片に紛れて海中に没した。

 

《味方誘導弾消失! 我が艦の三式弾に巻き込まれました!》

 

《驚いたな、ここまでやっても生き延びるか……

見事と言う他ないな!》

 

 とはいえ、だ。

 そろそろお前のターシャの真似も板について来たようだ。

 

「ペンギン2、4! 爆撃位置についた!」

 

《敵機直上!》

 

《馬鹿な、戦闘機で播磨型に歯向かうだと⁈

魔王でもないのに図に乗るなっ、対空迎撃!

ハエを撃ち落とせ!》

 

「ペンギン2、爆弾投下!」

 

「4、投下」

 

 雲から飛び出した2つの機影。

 竜司と大助が播磨型の真上に姿を見せた。

 

 竜司がサトリのセンスで敵の思念───位置を特定。

 大助は竜司の誘導で視界のない雲の中でも追従、爆撃コースに入ったのだ。

 

 狙いは間違いなく、最大の脅威播磨型。

 そこまでしろとは言っていないのだが───

 

 ともかく、彼女らは播磨型の撃沈を企図しているらしい。

 狙うとしたら、チェイスが確定させた播磨型の弱点だ。

 煙突、その最奥にある動力源。

 

 ふたりの機体に積まれているのは500ポンド爆弾。

 2000ポンド爆弾の4分の1しかない通常の航空爆弾だ。

 

 威力不足なのは確実。

 しかし同時に2発ずつ、同じ場所に投下すれば?

 

《くっ、被弾!》

 

《被害報告せよ!》

 

《爆弾が数発、煙突内部に……》

 

 爆弾の炸裂は遅発信管によって間を置き、動力源に食い込んでから炸裂した。

 動力炉破損による大爆発、轟沈。

 

 針の穴を通すような精密爆撃を、ふたりが同時に成功させなくてはならない。

 神業というより他ない連携攻撃だった。

 

「ペンギン2と4がやってくれた!

敵播磨型、撃沈!」

 

「よし……!」

 

「や、やった……?」

 

 これで大きな脅威はなくなった。

 少なくとも、大規模なひとつが。

 

 小規模な脅威は未だ、そこら中にいた。

 

《播磨型が……⁈ 全艦、あの2機をやれ!》

 

《播磨型を沈めた魔王の部下、いい手柄首だ!》

 

《魔王は、魔王はどうします⁈》

 

《近い脅威を最優先だ!》

 

 もちろん、敵がただで帰すはずもない。

 低空で散開したふたりを、敵艦隊のSAMや艦砲そして機銃が集中攻撃する。

 

 ただし、彼らは忘れている。

 戦闘機は恐ろしく足が速い。

 目を離していると、あっという間に懐に飛び込んでくるのだ。

 

「ゴースト! ASMを!」

 

「了解! 対艦ミサイルを発射!」

 

 チェイスの障害となるのは、敵艦の主砲だけだった。

 

「終末誘導開始!」

 

「接続、確認した!」

 

 旧式駆逐艦の砲撃を回避しつつ、機首を向け続ける。

 数秒後、視界の隅から猛烈な勢いで飛翔体が飛び込んできた。

 ASM、この世界では実用化されていない兵器だ。

 

 それが一直線に旧式駆逐艦の船体ど真ん中を貫いた。

 内部で炸裂し、煙突や扉、あらゆる開口部から爆炎を吐き出した。

 

《なんだっ⁈ 不明な飛翔体が順風に直撃!

沈没します!》

 

《まさかっ! あの反応、ノイズじゃなかったのか⁈》

 

《報告で読んだぞ、あれは合衆国の秘密兵器だ!》

 

 右舷側へ傾いて沈みゆく駆逐艦を過ぎ去り、敵陣形の内側へ。

 

《直掩部隊、至急艦隊の援護に戻れ!》

 

《無茶言うなっ、こっちだって敵部隊に苦戦してる!

支援不能!》

 

《さっき敵を追い払った味方は何をしてる⁈》

 

 標的は高脅威目標、防空艦だ。

 

 チェイスが持つ戦闘艦に有効な兵装は少ない。

 エースコンバットではないのだから、目につく敵全てを殲滅するわけにはいかないのだ。

 

 チェイスは陣の内側にいる防空駆逐艦に狙いをつけた。

 

《敵機左舷前方、低空で接近!

……あの海に溶け込む迷彩っ、蒼穹の魔王!》

 

《なにっ》

 

 上昇を始めた直後、終末誘導を開始する。

 

「誘導開始!」

 

「確認! データリンク接続!」

 

 レーダーで捕捉させ、ミサイルを導く。

 その間、チェイスは無防備になる。

 

《魔王が攻撃せず、迎撃を避けながらこっちを見ている!

どういうつもりだ⁈》

 

《あの誘導弾! あいつが誘導して……!》

 

 船体の土手っ腹にASMが突っ込み、炸裂した。

 右舷のど真ん中に大きな破孔が生じた防空駆逐艦は、ブリッジ上部のレーダーが動きを止めた。

 電力系統に異常が生じ、センサー類が停止したのだろう。

 

「ペンギン1、敵防空駆逐艦を無力化!」

 

《まずいっ、魔王にも入り込まれた!

赤報隊は何をしている⁈》

 

《赤報隊は補給のため、一時帰還しています!》

 

 敵艦隊の内側にいるため、退避するためには再び敵艦の至近を通らなくてはならない。

 ただ逃げるだけでは、対応する隙を与えるだけだ。

 

 今度は防空巡洋艦をターゲットに決めた。

 が、すぐにやめて遠くの旧式巡洋艦に変えた。

 

《魔王に全火力を……!》

 

《敵機2、後方より接近!》

 

 竜司と大助は官邸を撃沈するため、共同して攻撃すると決めたらしい。

 彼女らは防空巡洋艦の背後から迫り、苦し紛れに打ち上げられたSAMの下をくぐってかわし。

 すぐ真上で爆弾を投下した。

 

 500ポンド爆弾とはいえ、4発まともに喰らえば巡洋艦といえどただでは済まない。

 いや───装甲よりレーダーと速度を重視した現代的巡洋艦だからこそ、被害は酷かった。

 

 彼女らの爆撃は後部艦橋、そして煙突に食い込んだ。

 イルミネーターが四散し、動力源にもダメージを負った。

 

「ペンギン2、4が防空巡洋艦をやった!」

 

《被弾によりイルミネーター停止! 弾薬庫付近に火災発生!》

 

 そして間もなく、チェイスの終末誘導によってASMが旧式巡洋艦に直撃した。

 

《こちら巡洋艦猿投(さなげ)機関長っ、上位者戦死のため代理で発信する。

我が艦は降伏するっ、降伏だ! もう戦うための兵装と人員もいない!》

 

《こちらも降伏するっ、駆逐艦赤潮だ!》

 

「了解した。全機へ、これより登録する艦艇への攻撃を禁じる。

応戦のみだ」

 

「ゴーストへ、敵の残存戦力は⁈」

 

 随分と敵の攻撃は減った。

 同じ感想を抱いたのか、竜司がゴーストに問い掛けた。

 

「敵艦隊、脅威レベルが30%に低下!

いや待て……今、残存艦艇が全て降伏した。

脅威レベルゼロ、敵艦隊は壊滅した!

驚いたな、3機でほぼ壊滅とは!」

 

 やはり、見えないところから飛んでくるASMのインパクトは、敵乗組員の戦意をへし折ってしまったらしい。

 驚くほどあっさりと、海上の戦力は無力化出来てしまった。

 

「ふぅ……

また海軍が来る前にカタをつけてしまったぞ」

 

 しかし───空の戦力はまだ、この海にいた。

 

「そうだ……それよりもゴースト、残弾はまだあるよな!

本番はここからだぞ!」

 

「ああ、わかってる。残弾にはまだ余裕がある、心配無用だ。

……ちょうど、向こうも準備が終わったらしい。

北西より巨大な機影(・・)を探知!」

 

 F-2の索敵レーダー、それにRWRでも探知していた。

 まるで艦艇のような巨大な反応が、レーダー波を発する何かが空にいる。

 この存在を事前に見ていなければ、ノイズか何かだと判断してしまうに違いない。

 

 そこそこ大きな雲、その陰から奴は姿を見せた。

 空を飛ぶ戦艦、大入道だ。

 

《味方艦より通信! 第8艦隊は壊滅状態!

残存艦艇も降伏したとのこと!》

 

《彼か。

やはり、先ほど仕留め損なったのは痛かったな》

 

《神祇官より通達、葦原湾を西に離脱せよ……?》

 

《やはり連中にとって、我々は使える装備という判断らしいな。

……針路そのまま! 我々は葦原に仕える者、神祇官ではない!》

 

 大入道は針路を南東に取ると、チェイス達に向かって来た。

 真っ向から勝負するつもりらしい。

 

「ペンギン隊、大入道が加速している!

仕掛けて来るぞ!」

 

「やる気だな。ペンギン隊、集合!」

 

「はい! ここでケリをつける!」

 

「続くぞ、ちぇいす」

 

 ペンギン隊3機は集合し、北西へ。

 小さな雲の谷間に浮かんでいた黒点───

 大入道のシルエットは瞬く間に大きくなっていく。

 

「敵飛行戦艦、主砲指向中!」

 

 大助からの報告。

 彼女の目にはもう、あのシルエットの中で動く砲塔の動きが見えているらしい。

 

 それでも、主砲のマズルフラッシュはチェイスの目にも見えた。

 

「散開!」

 

 3機は素早く別れ、それぞれの空を進む。

 直後、チェイス達の飛んでいた空間に榴弾が炸裂した。

 

「ここは海上だ、大入道は遠慮なしに撃ってくるぞ」

 

「噴進(ロケット)弾はどうしたんでしょう?

発射の兆候が見られません」

 

「さっきの攻撃で撃ち尽くしたんだろう。

結構デカいロケットだから、あんまり積めなさそうだし」

 

 SAMやロケットはゴライアス級に本来あった3番砲───

 つまり、後部の主砲を撤去して配置したとされている。

 

 大型ロケットはゴライアス級の主砲30センチ砲弾ほど小さくはない。

 恐らく弾薬庫に収まらず、発射器に装填された分しか搭載出来ない。

 

 一方かつての主砲弾薬庫にはSAMの予備弾を格納しているに違いない。

 なので───SAMはじゃんじゃか打ち上げてくる。

 RWRがそう教えてくれた。

 

「ミサイル、来るぞ!」

 

「これでは近付けません!」

 

 大入道はSAM誘導用イルミネーターを推定4基搭載している。

 最大4発同時誘導可能ということだ。

 チェイスに向けて2発、他編隊機に1発ずつミサイルを差し向けてきた。

 

「ぐっ、ペンギン2回避します!」

 

「4、回避!」

 

 竜司と大助はチャフを散布しながらノッチングし、ミサイルの回避を始める。

 

 おい、おいチェイス。

 真っ先に被弾するとしたら、先頭を飛ぶお前だ。

 何をしているっ、早く皆のように行動しなければ死ぬぞっ。

 

「ダメだ、火力じゃ向こうのほうが上だぞ。

これじゃジリ貧になる」

 

 だからといって、ミサイルの直撃を受け入れる気か⁈

 

「いいや……ちょっと賭けをする!」

 

 やめろ、軍事作戦に賭けとかお前はエンデュランスの連中じゃないんだぞ!

 

 チェイスはエルロンロールでくるりと右に一周。

 わずかに高度を落としつつ、直進。

 

 その先には武揚へ向かいつつある、小さくも濃い雨雲があった。

 

「ペンギン1が雲に突入します! チェイス殿、何をっ⁉︎」

 

「雲⁈ そうか、雲にイルミネーターの電波を阻害させるつもりだ!」

 

 エースコンバットでは、7から雲が戦闘に影響を及ぼすようになった。

 ミサイルシーカーが正常に目標を認識しなくなったり、レーダーに映らなくなるなど。

 

 これはマンネリ打破のため編み出されたゲームシステムというわけではない。

 現実においても、雲はレーダーやシーカーに影響を及ぼすのだ。

 

 雲というやつは空気ではなく、厳密には水分の塊だ。

 そのため雲がミサイルの誘導に影響を及ぼす事はあり得る。

 あり得る、のだが───

 

 実戦で試すのはお前くらいのものだ、大馬鹿野郎!

 

「ペンギン1、ミサイル接近!」

 

「ああ、大丈夫!」

 

 雲に突入し、視界がほとんど得られない世界でのバレルロール。

 風防に付着した雨粒が外側下方へ流れる中に、光る白線が過ぎていった。

 

「ペンギン1、ミサイルを回避!

信じられん、カウンターメジャーなしでかわした!」

 

「くぅっ……2、誘導弾回避っ!

……そうか、雲を使えば!」

 

「4、かわしたっ。

ちぇいすめ、どういう頭をしている……!」

 

 チェイスの救世主である雲は、本当に小さなものだった。

 あっという間に雲中から脱し、減速はほぼしないまま大入道への接近を再開する。

 

《目標健在! 魔王が、一直線に向かって来ます!》

 

《見ている! 主砲、信管を最短に設定!

目標、蒼穹の魔王! 対空誘導弾、発射始め!》

 

 彼我の距離、10000(3048)フィート(m)。

 そこまで迫ればチェイスの目でも、大入道の主砲2基が睨んでいるのがわかった。

 ついでに、後部甲板から打ち上げられる白煙にも。

 

「さすがに都合良くいかないか!」

 

 肉薄して懐へ飛び込むにしても、速度と距離が合わない。

 回避機動が必要だぞ、今度こそ!

 

「わかってるよ!」

 

《打ちィ方始め!》

 

 主砲、そして空対空ミサイル(AAM)。

 2種類の対空兵器がチェイスひとりを殺すため狙っている。

 

 最初は主砲。

 急上昇して砲弾の炸裂を回避する。

 

 この世界における、対空砲弾で用いられるのは時限信管だ。

 時限信管は装填する前に、炸裂するタイミングを設定する必要がある。

 設定のためどうしても生じるラグが、狙いを逸らした。

 

 真下、世界から見れば真正面での炸裂。

 破片が機体に叩きつけられるが、被害と呼べるないほどに距離が開いている。

 

 しかし───違う。

 これはあくまで、チェイスを確実に殺すためのチープショットに過ぎない。

 

《貰った!》

 

 本命は打ち上げたAAM。

 目標を追尾し、喰らいつく使い捨ての猟犬だ。

 

 主砲炸裂による面制圧を回避するには、回避機動が必須。

 しかし機動するには、速度を犠牲にする必要がある。

 減速していれば、続くAAMを回避する余力がなくなるという策だ。

 

「やられるかよ……!」

 

 機体をロールさせ、頭上を大入道とAAMを向ける。

 そのまま上昇の要領で水平に、背面飛行状態に入る。

 

 間髪入れず、FCSを制御してロケットの発射モードに切り替える。

 

「ロケット斉射!」

 

 4つ搭載したうちのひとつを、AAMに向けて斉射する。

 大入道のイルミネーターは、突如出現したレーダー反応に意識を向けた。

 

 ひとつがロケット弾に直撃し、爆発。

 もう一発はロケット弾を照準した結果、挙動にブレが生じた。

 小さくバレルロールして、生じたブレの中をすり抜ける。

 

《目標健在っ⁉︎》

 

《馬鹿な、二重の攻撃だぞ⁉︎》

 

《驚く暇はない、防空戦闘はじめ!》

 

 空になったロケットのキャニスターを投棄し、肉薄する。

 

 大入道の上半分の火力は尋常ではない。

 パッと見でも明らかな特徴を踏まえ、チェイスは大入道の下方目掛けて降下する。

 

 そこでようやく、状況を把握する猶予が出来た。

 

「ペンギン隊、状況は!」

 

「4、ちぇいすが作った隙に飛び込ませて貰った!」

 

 低空から接近していた大助は、報告した直後にチェイスの背後についた。

 竜司は───姿が見えない。

 データリンクで送られる情報にも、ペンギン2の反応がなかった。

 

「竜司ちゃん、応答を! 大助、竜司ちゃんは見た⁈」

 

「いや、いないのか⁈」

 

「こちらゴースト、こっちのレーダーでも途中から反応がなくなった!

ミサイルは回避していたはずなのに……!」

 

 まさか、こんなあっさりと?

 いや───殺しているのだから、殺されない道理などない。

 

《今のは……?》

 

《見張り員、報告を!》

 

《西の積乱雲に、機影らしきものを見たとの報告が……》

 

《それは気のせいだ、電探に反応はない。

それよりも、魔王とその部下を見逃すな!》

 

 彼女の事は、ひとまず後回しだ。

 

「ちぇいす、どうする」

 

「やる事は変わらない、大入道を墜とす!」

 

 今回は洋上、真下に民家の類はないため、撤退に追い込む必要はない。

 

 空飛ぶ戦艦という超兵器だが、空を飛ぶという明確な弱点がある。

 前進するためのエンジンこそ積んでいるが、シルエットからして揚力で飛行しているわけではない。

 両脇に6基垂直に設置された、エンジンで無理矢理飛んでいるのだ。

 

「両脇のエンジンを破壊する!」

 

「相分かった」

 

「あっ、待ったペンギン1!」

 

 チェイスは真っ先に見えた左後部エンジンにロケットの照準を合わせ、発射した。

 このような明らかな弱点、対策なしとは考えられないと思っていたが───

 

「大入道のエンジン、1基停止!」

 

 存外あっさりと大爆発を起こし、その蒼い炎を止めた。

 

《被弾っ、5番昇降エンジン機能停止!

損傷抑止機構が作動したため、他の損傷は軽微!》

 

《戦闘継続! 迎撃を続けろ!》

 

「ペンギン1、実はさっき合衆国から連絡があったんだ」

 

 突如、ゴーストが交信を飛ばしてきた。

 そういえば何か言おうとしていた気配はあったが───

 

「い、いきなりなんだよ」

 

「ゴライアス級のエンジンは、浮力源ではないんだ!」

 

「はぁ?」

 

「浮力源は船体中心部にある浮遊石、魔力に反応して浮く物体だ!

昇降用の垂直エンジンは上昇、降下率制御用で、浮遊に直接影響しない!

どころか、離着水においても浮遊石に送る魔力量を調整すればいい。

エンジンは最悪、なくても運用可能なんだ!」

 

 それはつまり、昇降用のエンジンはいくらぶっ壊しても墜落する事はない。

 ポダルゲのように、エンジン全てを破壊しても撃墜は不可能という事だ。

 

 考えてもみろ。

 6基ばかりの垂直エンジンで戦艦を浮かせるとすれば、どんな高出力エンジンだと言うのか。

 魔力とかいうご都合的動力源だとしても、相当な出力が必要だ。

 

 それに揚力を得ていないから、エンジンが停止したら即墜落確定。

 しかもそのエンジンは剥き出しなので、ちょっとミサイルを撃たれただけでぶっ壊れかねない。

 

 そんな6つのエンジン頼みの危ない乗り物、兵器として運用されるはずがない。

 飛行船以上に動かすだけで危険な乗り物ではないか。

 

 そう、ここは魔法やら神様やらが実在する異世界。

 飛行石みてーな謎能力グッズがあっても、不思議ではないのだ。

 

 こいつが飛行戦艦を飛行戦艦たらしめる中枢。

 装甲の内側に守られる浮遊石ある限り、ゴライアス級は墜ちないのだ。

 

「もっ、もっと早く伝えろぉっ!」

 

 直前の報告になったのも、合衆国が持つゴライアス級の情報量がいかほどか。

 それを諸外国に知られるのを嫌がったのだろう。

 

 とはいえ、エンジン破壊が機動力に影響を与えるのは確かだ。

 確かだが───撃墜には直接影響しないのもまた、確かだ。

 

「ちぇいす、案は⁈」

 

 流石の大助も、少々焦った声色で尋ねていた。

 いや、手段はある。

 何のためにASMがあると言うのか。

 

 確かに大入道の装甲は35センチ砲に耐える戦艦並みのそれだ。

 35センチ砲クラスの装甲では、ASMでの貫通は難しいかもしれない。

 しかし───兵装を換装するシステムのために一部薄くなっている。

 

 そこに賭けるしかない。

 まったく、また賭けるのか?

 

「ゴースト、ASMは?」

 

「いつでも行ける!」

 

「なら発射! こっちも終末誘導に入る!」

 

 垂直降下し、迎撃から逃れながら水面付近へ。

 その後、往復するように垂直上昇。

 

「データリンク接続! 誘導開始!」

 

「確認した! ASM誘導中!」

 

 チェイスを狙う底部機銃を大助が撃破し、狙う猶予が出来た。

 目標は船体のど真ん中になるだろう。

 最も装甲の厚い底部よりは、ずっと貫通する可能性が高い。

 

《飛翔体接近中! これは……⁉︎》

 

《いかん、対空迎撃! 1番砲、打ちぃ方始め!》

 

「ミサイル、AOに到着……!」

 

 ゴーストの報告の直後、大入道が最前の主砲を発砲した。

 

「大入道、主砲発砲!」

 

「……ミサイルが制御を失い墜落!

主砲でASMを迎撃した!」

 

「マジか……!」

 

 これは終末誘導どころではない。

 復活した底部機銃の迎撃を避けるため、チェイスは旋回して回避を始めた。

 

《目標破壊! 迎撃成功しました!》

 

《恐らく、噂に聞く空対艦誘導弾だ。

最優先で迎撃しろ、どれほどの威力があるかわからん!》

 

 まずい、これはまずいぞ。

 

 今手持ちの、チェイスだけでなくペンギン隊全ての火力を用いても大入道撃墜は不可能だ。

 頼みの垂直エンジン破壊は、撃墜に何の意味も成さないと来た。

 ましてや、向こうにASMの存在を把握されている現状では。

 

「ちぇいす……!」

 

「……」

 

 至近距離に大きな積乱雲が迫り、突入を避けるため大入道が回頭した。

 風に煽られた雨粒が風防を叩く。

 

 撤退。

 その文字が頭に浮かんだ。

 

 竜司を失って、打つ手がないからと逃げるのか?

 彼女の死が、無駄になるぞ?

 

───だからって、あくりちゃんも巻き込んで死なせるのか?

打つ手がないってわかり切ってるのに?

 

 その場合、北条区で戦う第一戦車隊───

 柳北や第一挺身団はどうなる?

 

 大入道艦長が市街地砲撃を拒否する可能性は高い。

 しかし、頭上へ移動して自衛用の防空火器を用いた攻撃をする可能性はある。

 歩兵には為す術もない攻撃だ、一方的にやられる。

 

 我々が大入道の行動を妨害し、海軍の射程圏に入るのを待つべきだ。

 彼ら、中でも播磨型戦艦信濃の主砲ならば、大入道にも致命打を与えられるはずだ。

 

「……くそっ」

 

 これは命懸けの遅滞戦闘になる。

 指示を発しようとした、その時だった。

 

「ようやく、忍び寄れた……!」

 

「レーダーに新たな反応、大入道直上!

このIFF信号は……ペンギン2だ!」

 

「えっ?」

 

 思わずチェイスは頭上を仰いだ。

 そこにあるのは大入道の底部だけ。

 

 しかしその向こうには───彼女がいた。

 

《敵機直上⁉︎ 機体はオロール!》

 

《馬鹿な、電探と見張り員は何をしていた!》

 

《積乱雲です! そこから……!》

 

「ちぃっ、氷で動きが……でも、当たる!」

 

《迎撃、間に合いません! 衝撃に備えて!》

 

 爆発が大入道の上部で起きた。

 すると、RWRで検知していたレーダー波がひとつ消えた。

 

《各科、被害状況報せ!》

 

《艦橋に被弾! 索敵電探、機能停止!》

 

《この真っ先に目を奪うオロール……艦長!》

 

《ああ、鎮武隊の戦闘機乗りを思い出す……

だが、今回は逃げる為ではない。攻める為の手段だ!》

 

 急降下爆撃を成功させた竜司は、迎撃を避けながら大入道の下部へ退避してきた。

 そこで彼女は速やかにチェイスの背後へと戻った。

 

「チェイス殿! 私、やりました!」

 

「まったく、凄い活躍だよ!

……でも、事前にひとこと言ってくれてもいいんじゃないか?」

 

「すみません。交信していたんですが、雲に遮られたみたいで」

 

 彼女はどこぞの誰かさんのように、妙な言い訳はしないぞ。

 

───うるさい黙れ。

 

 それはさておき、ひとりで全てをこなせる大入道は基本的に単独行動だ。

 故に索敵レーダーを潰された大入道に、接近する反応を探知する術は目視しかない。

 

 つまり、視程距離外(BVR)ミサイルや砲撃はなしだ。

 接近する航空部隊や艦隊、ASMが迎撃される事はない。

 

「こちらランサー、ペンギン隊へ。

野暮用を片付けた、今そっちへ向かう!」

 

「ヴィクターだ、それなりに被害が出たが支援可能だ」

 

「こちら幕府海軍第一艦隊、旗艦信濃。

間もなく、大入道は我が艦の主砲射程圏内に入る」

 

「間に合った……! 聞こえるな、ペンギン隊!

我々ゴースト含め、連邦海軍各部隊が支援する!

大入道を撃墜するぞ!」

 

「了解!」

 

 竜司の活躍により、準備は整った。

 

「今度こそ、反撃の時間(ペイバック・タイム)だ!

ペンギン各機、攻撃を継続!」

 

「了解!」

 

「相分かった」

 

 最大出力で上昇し、大入道の上方へ。

 上部のハリネズミから無数の防空火器が打ち上げて来るが、そこにロケット弾の斉射が浴びせられた。

 

「ランサー到着! この噴進弾はお通しだ!」

 

 翼を畳んだ可変翼機が、攻撃と共に大入道を過ぎ去る。

 70ミリロケットでは砲撃戦を想定した防楯(ぼうじゅん)の貫通こそ無理だが、剥き出しの火器や水兵を殺傷するには十分な威力だ。

 左舷側の迎撃が弱まった。

 

「チェイス、左舷に隙が出来た!

ミサイルをぶち込んでやれ!」

 

「ウィルコ! ゴースト、いいな!」

 

「ああ、ASMは既に発射済みだ! 間もなく着弾!」

 

 大入道の左側を抜け、スプリットSで反対側を向く。

 隙だらけの大入道側面が目前にあった。

 

「データリンク接続、終末誘導開始!」

 

「着弾、今!」

 

 泣きっ面に蜂。

 ロケット弾の斉射で損傷を受けた箇所が、さらにミサイルの直撃を受けた。

 

 巡洋艦程度の装甲ならば容易に貫くASMだ。

 防楯によって生じた空間装甲が、船体内部への被害を食い止めたが───

 針で空いた小さな穴が、さらに押し広げられた。

 

 飛行戦艦は航空機では考えられない装甲を持つが、海に浮く艦艇ほど頑丈には出来ないのだ。

 

「敵飛行戦艦、左舷の防空火器は壊滅!」

 

「いいぞ、大入道の左舷側は安全地帯になった!」

 

《左舷側の第一分隊員が壊滅!

防空戦闘不能……艦長⁉︎》

 

《動揺するな! 信管の安全装置を解除、発射直後に炸裂させろ!》

 

《そんなっ……! それでは、破片で第一分隊員が全滅しますっ!》

 

《我が艦は葦原政府軍の戦略を左右している!

ここで墜ちるわけにはいかん!》

 

 まだロケットの残弾には余裕がある。

 兵装管理画面を一瞥して判断したチェイスは、大入道の後方へ回った。

 

 直後、二重の爆発が起きた。

 最初は主砲の発砲。

 二度目は信管によって砲弾が炸裂した爆発だ。

 

「くそっ、今のはなんだっ⁈」

 

「こちらヴィクター、大入道が主砲発砲!」

 

「ヴィクター、詳細を報告しろ! どちらに向けて発砲した!

我が艦か、それとも武揚か!」

 

「どちらでもない! 懐に飛び込んだ我々を狙った攻撃だ!

発射直後、至近距離で炸裂させている! 信じられん!」

 

「マジか、甲板の要員に被害が出るぞ!」

 

 ランサーの言葉に舷側へと視線をやる。

 破片が猛烈な勢いで撒き散らされ、大入道の船体に突き刺さっていた。

 こんなものを生身の人間が食らったら、切断などというレベルの被害ではない!

 

「甲板にはもう、人がほとんどいないのかもしれん」

 

「なんだっていい!

とにかくこれじゃあ危険すぎて、上面への攻撃が出来ないぞ!」

 

 主砲の炸裂ひとつで、大入道上空はほとんど制圧が可能な破壊力があった。

 故に大入道は主砲を1発ずつ撃つ事で、断続的に上空を制圧していた。

 

 戦艦としては軽装甲だとしても、対空砲弾の破片を確実に防ぐ程度の能力はある。

 その防御能力を活かして、無茶苦茶な防空戦闘をゴリ押ししているのだ。

 

《右急速回頭、機関一杯! 本空域を離脱する!

ここで墜ちれば、政府軍の戦闘能力が大幅に低下する!》

 

《ですが、艦長の遺志は……⁉︎》

 

《葦原の未来と比べろ、どちらが大事だ!》

 

 チェイスすら攻めあぐねていると、突如真上にいる大入道のシルエットが動いた。

 ぐいと船体を右に傾け、旋回している。

 

「大入道、方位290(西北西)へ急速回頭!」

 

「航行用エンジンの出力も増大! 逃げるつもりだ!」

 

「信濃から全航空隊へ! 大入道の離脱を阻止せよ!」

 

 妥当な線だろう。

 どうやら軍の上にいる神祇官は、元々彼らに撤退を命じていたらしい。

 

 艦長はその命令に反して武揚の援護を試みていたが、戦死。

 次の最上位は命令に従う事を決めた、それまでだ。

 

 大入道には、2種類のエンジンがある。

 昇降用の、破壊しても無意味な垂直エンジン。

 もうひとつは推力を得るための航行用ジェットエンジンだ。

 

 航行用エンジンを破壊すれば、大入道は大きく機動力が削がれる。

 これは恐らく、ロケットでも十分達成可能だ。

 ASMは───終末誘導するには、安全な時間が短過ぎた。

 

「危険過ぎる! 後方でも、主砲の破片がそこら中で舞っています!」

 

 大入道の艦長は、敵ながら天晴れという奴だった。

 

 何やら聞こえてくる交信では、彼は攻撃の途中に亡くなってしまったようだが。

 仕方のない話だ、お互いそうなるように戦っているのだから。

 

 それはそれとして、ここで逃せばいずれ味方の死に繋がる。

 だから、彼らを帰すわけにはいかなかった。

 

 主砲が発砲され、至近距離で炸裂。

 その破片が落ち着いた瞬間、チェイスは急上昇して大入道の背後上空に回った。

 

「チェイスが行った!」

 

「ロケット発射!」

 

 降下しつつ、エンジン上部を爆撃する。

 本当の真後ろから攻撃した場合、排気によってロケットが破壊されかねないためだ。

 それくらい馬鹿みてーな量の排気が行われている。

 

 70ミリロケットは船体に食い込まず、装甲に弾かれてから炸裂した。

 どうやらエースコンバットの如く、簡単に破壊とはいかないらしい。

 

 しかし、この攻撃は無駄ではなかった。

 後部甲板には戦術ロケット発射器とSAM発射器があった。

 

 ロケットは既に尽きていたが、SAMは装填中のものがあった。

 それが甲板と弾薬庫で誘爆を起こしたのだ。

 

「なんだっ⁉︎ チェイスの野郎、今何しやがった⁉︎」

 

「誘導弾弾薬庫に誘爆したと思われます!

……敵飛行戦艦の機関出力、低下した模様!」

 

 一部始終を見ていた竜司は報告した。

 出力が落ちたとしてもダメージコントロールが巧みだ、弾薬庫に誘爆してなお飛行を続けられるとは。

 

「なるほど。厚い装甲があれど、兵装越しには通るか。

空では冴えているな、ちぇいす」

 

「……今ものすごく失礼な事を言われた気がするぞ」

 

 ともかく、後甲板の兵装を攻撃すればダメージが通る。

 その理解で間違いはないだろう。

 

「見てたな、ランサー各機。

チェイスのように兵装をぶっ壊して、内部にダメージを蓄積させろ!」

 

「難し過ぎる! 少しでもタイミングが狂えば、エンジンが破片を吸う!」

 

「勘弁してくれっ、一番上に合わせるな!」

 

 ランサー1の言葉に、列機達が抗議した。

 その通り、今でも大入道は主砲の炸裂で上空に近寄らせないようにしている。

 チェイスは僅かな砲撃と破片の切れ目を突いて攻撃したが、ほんの数秒しか安全に上空を飛べる時間は存在しない。

 

 周囲が出来ないなら、チェイスがやるしかないか。

 そう考えながら、上昇の機会を見計らっていると───

 

《後甲板の被害により、航行用エンジンが損傷!

出力、40%より上がりません!》

 

《このままでは足を潰される、潰されれば幕軍の播磨に……!

右回転(ロール)はじめ! 左制御エンジン最大出力!

右制御エンジン最大逆回転(リバース)!》

 

《副長っ⁈ それでは艦がひっくり返ります!》

 

《主砲の破片を下に隠れる連中に浴びせる!

総員、掴まれるものに掴まれ!》

 

 大入道の船体後部に左右生えている、申し訳程度の翼。

 そいつの補助翼(エルロン)が稼働し、チェイスが破壊していなかった左昇降エンジンが猛烈な勢いで噴射を始めた。

 

 ロールしている───飛行戦艦が!

 

「おいおいおいおい、おい……⁉︎」

 

「あのデカブツが背面飛行を⁈」

 

「これは、魂消(たまげ)た……!」

 

 傾いた上甲板から破壊された装甲や兵器の残骸、それに水兵が滑り落ちていく。

 ただでさえ滅茶苦茶な防空戦闘を行った直後だと言うのに、それを超えて来るとは!

 

《な、なんだ……ウ、ウワーッ!》

 

《ふざけんなっ、ふざけんな、ふざけんなぁっ!

なんで大入道がひっくり返ってるんだぁっ⁉︎》

 

 チェイスは見てしまった。

 自艦を巻き込む砲撃、それを生き延びていたのだろう。

 しかし再び、自分の乗る艦は彼を殺しに来た。

 

 舷側の手すりに水兵がしがみ付いていたのだ。

 傾斜90度を超えてもなお、彼は全力を尽くしていた。

 

 だというのに、現実は理不尽だ。

 

 油断したのだろう。

 手すりを掴む手が滑ると、武揚湾へ落ちていった。

 その最期が確定する一瞬間、彼とチェイスの視線は交差していた。

 

「くそ……まともじゃない!」

 

「主砲2基っ、砲塔旋回中!」

 

 大助の報告通り、前甲板の主砲がそれぞれ左右に向いていた。

 目的は決まっている、大入道低空に退避したチェイス達に主砲を浴びせようとしているのだ。

 

「上空に退避!」

 

《何をしているっ……打ちーぃ方はじめぇっ!》

 

《……発砲ーっ!》

 

 2つの衝撃。

 大入道の連装砲が1発ずつ発砲した。

 

「まずいっ……!」

 

 遅れたランサーとヴィクターのメンバーが、その破片をもろに浴びてしまった。

 尋常でない数の破片を浴びた彼らは、機体が原型を留めぬ被害を受けて墜ちていった。

 あの破片の数では当然、脱出は期待出来なかった。

 

「くそっ、ヴィクター5被弾!」

 

「ランサーは4がやられた! パラシュートなし!」

 

《回転と装填を止めるな!

そのままの勢いで、上空へ逃げた連中に攻撃する!》

 

《回りながら砲撃なんて、聞いた事がないっ!》

 

《こちら1番砲塔!

部下が2人、発射薬に押し潰された! 死んでる!》

 

《やっぱり無茶だ! 誰か艦長を止めてくれぇっ!》

 

《幕軍に囚われるよりマシだ!

装填を続けろ! 俺たちの命綱だ!》

 

 上になった底部という訳のわからない状況ながら、機銃が撃って来ることに変わりはなかった。

 チェイスらペンギン隊はその曳光弾を回避したが、ヴィクター2は油断してしまった。

 

 主翼の付け根から黒煙を残していた。

 彼の機体が持つ可変翼の機構を動かすのは、もう危険だろう。

 

「まずいっ、ヴィクター2被弾したっ」

 

「2、離脱しろ。青龍に帰れ」

 

「了解……!」

 

 ヴィクター2が主翼を広げたまま、AOからの離脱コースに入る。

 しかし───再び上部を上に向けた大入道の副砲が火を吹いた。

 

「ぐ、わっ……!」

 

 主翼の損傷から、真っ直ぐ飛ばざるを得なかったのが災いした。

 真後ろに127ミリ砲弾が炸裂し、エンジンを吹き飛ばす。

 被害報告すら発する間もなく、ヴィクター2の機体は爆散した。

 

「ヴィクター2がやられた!」

 

「油断するな、この状況でも副砲は生きてるぞ!」

 

 自分を守るために、爆発のシールドを身にまとい。

 さらに副砲を駆使して攻めの砲撃を続けてくる。

 

 近接防空火器は身を守るために壊滅させてしまった。

 しかし───ある意味、健在状態よりも厄介な敵だ。

 

 まさに、敵味方問わず死を振り撒くデス・ロールだ。

 この回転を止めなくては、被害が広がる。

 

「まずい……第一艦隊! 急いで下さい!

航空隊が壊滅します!」

 

「不可能だ、これでも最大戦速だ!」

 

 ゴーストが艦隊を急かすが、それは難しいだろう。

 

 大入道の最大速度は約100(185)ノット(キロ)。

 播磨型の速力は戦艦として極めて速い分類に入るが、空飛ぶ戦艦とは比較にならない。

 怪我をした足だとしてもだ。

 

 海軍艦艇の援護は期待出来ない。

 この場にいる戦闘機だけで対処しなくては。

 

 まずはこのデス・ロールを止めなくては。

 その手段については、チェイスに心当たりがあった。

 

「ペンギン隊!

まずは大入道のロールを出来なくする!」

 

「で、ですがどうすれば⁈」

 

「昇降用エンジン、それと主翼!

それを破壊すれば、少なくとも機敏なロールは出来なくなる!」

 

 乗組員の諸兄には、大変申し訳ないが───

 こちらも、死ぬわけにはいかないのだ。

 

「そうか! ランサーとヴィクター、ペンギン隊が大入道のロールを潰す!

支援してやってくれ!」

 

「ランサー了解……! 敵副砲を引き付ける!」

 

「ヴィクター、どこまで出来るかわからんがやってみる!」

 

 規格外の敵と想定外の動きに混乱していたが───

 それぞれがやる事を決めれば早い。

 

《ううっ、うゔぉっ……!》

 

《吐くな、ゲボが邪魔だっ!

おい、半平っ! 掴まらないと死ぬぞ!》

 

《さっき首を折って死んだ! 放っておけ!》

 

 ランサー隊は副砲をGUNで掃射していた。

 砲戦を想定した戦艦が持つ副砲、それが相応の装甲を持つのは当然だ。

 

「これでも食らえっ!」

 

 20ミリの曳光弾がまるで火花のように散り、弾き返される。

 貫通弾はないのだろうが───

 砲手の注意を引くには十分な衝撃だった。

 

《何を狙ってるっ、あれは魔王じゃないぞ!》

 

《だが、放っておけばやられる!》

 

 ヴィクターは残っている底部機銃に向けてロケットを撃ち、破壊していた。

 ドーム型の砲塔が砕け散り、残骸を背後へ流していく。

 

「こちらヴィクター1、底部機銃を破壊」

 

 その合間に、チェイスは大入道の船底を這うように旋回し、昇降用エンジンの背後につく。

 先ほど破壊したのだから、今度もそう難しくはない。

 

「ガンズガンズガンズ」

 

 F-2の20ミリは昇降用エンジンの外装を容易く砕くと、続いて内部の部品を撒き散らした。

 脱落するエンジンをかわして、チェイスが報告する。

 

「ペンギン1、昇降用エンジンを破壊!」

 

 ガクンと、大入道のロールが乱れた。

 左側を上へ向かわせる力が消えた事で、制御に異常が生じたのだ。

 

《左制御エンジン沈黙! 魔王の攻撃です!》

 

《まだだ、制御エンジンがやられてもロール自体は続けられる……!

対空戦闘及びロールは継続!

空域を離脱すれば、味方部隊の支援が得られるぞ!》

 

 戦闘は止まる気配がない。

 その間にも、竜司と大助が昇降用エンジンに照準していた。

 

《副長っ! ロールの中止を具申しますっ!

このままでは、制御不能になり墜落します!》

 

《だめだっ、そこら中に破片をばら撒かないと!

魔王を好きに飛ばせたら、それこそ我々は終わる!》

 

 味方が防空火器を引き付けてくれるおかげで、さほど苦労はなかった。

 

「よし、昇降機関破壊!」

 

「こちらも破壊しました!」

 

 逆噴射していた右舷の昇降用エンジンが全て止まり、ロールは補助翼による空力的なものに限られた。

 これで終わりだ。

 

《制御エンジン、全て破壊されました!》

 

《まずい……まずいまずいまずいっ……!》

 

 飛行機とは元来、極めて制御の難しい乗り物だ。

 3次元的な制御が必要になるだけでなく、飛ばすためにあらゆるものを犠牲にしている。

 

 大入道で言うならば、軽さだ。

 その装甲と兵装によってその質量は増し、質量の多い物体は動くために多大なエネルギーを要する。

 

 つまり、だ。

 こんなクソ重い物体をロールさせるのに、空力程度では制御し切れるはずがないのだ。

 

「チェイス殿っ! 敵飛行戦艦のロール、止まりません!

次の手は⁉︎」

 

 まだ竜司は大入道の置かれた状況を理解していないらしい。

 大助はチェイスと合流して静観している辺り、もう察しているのだろう。

 

「いいや、もう終わりだよ。

ランサーとヴィクター、もう攻撃誘引はいいよ。

大入道後方に退避しよう」

 

「了解……あいつら、状況わかってんのか?」

 

「無理だろうな。なにせ、5週くらい休みなしでロールしたんだ。

目が回って、頭も回らん」

 

 大入道はロールを続けたまま、艦首を下に向けていた。

 始まった。

 制御不能が顕(あらわ)になり始めた。

 

《敵編隊が後方にぃっ……SAMで攻撃出来るぞっ。

ロールを止めろ!》

 

《……む、無理ですっ! ロールが、大入道が制御不能ですっ!》

 

《えっ……!

こっ、高度を……!》

 

 これがゲームなら、何とかして制御回復してファイナルラウンド開始なのだろう。

 しかし───忘れるな、戦艦などと言う超重量物を空に飛ばして飛行機としているのだ。

 冗長性確保に必要なエネルギーは莫大で、しかも設計時に想定していない挙動もさせた。

 

 空という、隙あらば死を押し付けてくる世界を綱渡りする乗り物。

 それが飛行機だ。

 何かが欠ければ、空を漂う全ての死神が襲い掛かる。

 

 浮遊石という浮力をもってしても、物理法則を屈服させるに至らなかった。

 

《だから言ったのにぃっ……!

高度、維持、不能っ……! 墜落……!》

 

 既に艦内でどれほどの人員が動けなくなっていたのだろう。

 航行用エンジンの出力を絞る動作さえせず、大入道は艦首から海面へ突っ込んだ。

 

 水中に一部が没した事で抵抗は増し、しかし推力は背中を押し続ける。

 ポキリと船体が真っ二つに折れて、船体後部は遅れて海中に突っ込んだ。

 

「やったぞ! 撃墜! 敵飛行戦艦、大入道の撃墜を確認した!

ペンギン隊、蒼穹の魔王の部隊がやった!

まさか、真っ向勝負でやっちまうとは!」

 

 ランサーが真っ先に発言して、その戦果を周囲に報告した。

 

「こちら乙月……

司令、この戦果をオープンチャンネルで公開しては?」

 

 すると、剛明が素早くこれを具申した。

 相変わらず、抜け目のない男である。

 

「ふむ……こちら幕府海軍第一艦隊司令である。

飛行戦艦大入道は海中に没した。繰り返す、大入道は没した!」

 

 この発信はどの周波数でも捉える事が出来た。

 間違いなく、敵の通信機でも聞こえた事だろう。

 

 それらしい発信は聞き取れなかったが───

 間違いなく、武揚の戦場に響き渡った。

 

 大和幕府軍を打ち破った兵器、大入道撃墜の報せが。

 

「やった……本当に、やったんだ……!」

 

 竜司が言葉を溢した。

 彼女の原隊、新選組隊長山義歳三はこいつに手酷くやられたのだ。

 その恐ろしさも聞いていたという話だ。

 

 まさしく、感無量というやつだろう。

 

「ふぅ……ペンギン隊、被害報告」

 

「4、大助。無傷だ」

 

「っ! 2竜司、問題ありません!」

 

「そっか……」

 

 それでも、無傷というわけではない。

 海軍のランサー隊とヴィクター隊には犠牲者が少なからずいる。

 今回ばかりは、素直に喜ぶ事は出来なかった。

 

「ランサー、ヴィクター。それにゴースト。

おかげで大入道を仕留められた。ありがとうよ」

 

「気色悪いな、チェイス。素直に褒めやがって」

 

「こっちこそ、お前達がいなければ何も出来なかった。

大入道の撃墜どころか、武揚(ここ)まで戻るなんてな」

 

「ランサーとヴィクター。気持ちはわかるが謙遜するべきじゃない。

ペンギンはもちろん、ランサーとヴィクターも居たから大入道に勝てたんだ。

事実はしっかりと誇らないとな……死んだ仲間達の為にも」

 

「ああ……その通りだな」

 

 誰かが欠けていたら、この勝利はなかった。

 間違いなくその通りだ。

 

 そして───この勝利は、武揚湾という戦場のひとつにおける勝利でしかない。

 

「ペンギン隊、残りはこちらで対処する。

貴官は北条区解放を支援せよ」

 

 第一艦隊旗艦にいるという艦隊司令が告げた。

 どうも、あちらからは歓迎されていないという雰囲気だ。

 

「感謝の一言もなし……?

ほとんどチェイス殿が片付けたのに」

 

 竜司の呟きに、普段のチェイスなら同調するところだが───

 北条区解放が作戦の主目標、優先すべきなのは間違いない。

 

「了解。ペンギン隊、方位020(北)に針路を取れ。

残念だけど、まだまだ俺たちは休めないんだ」

 

「了解しました」

 

「了解だ……ちぇいす、気付いたか?」

 

「艦隊司令さんの自認だろ?

……今は、味方だ。将来を考える余裕なんてないよ」

 

「そうだな」

 

 これで武揚湾の制圧した。

 包囲は完了、残るは地上に根差す敵地上戦力のみ。

 

 王手(チェックメイト)は指された。

 しかし将棋と違い、それで対局(たたかい)は終わらない。

 

 武揚最後の戦いに向けて、ペンギン隊の3人は北へ向かった。

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