蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~ 作:サークル『熊の巣穴』
央暦1970年6月19日
鳴田藩 千里基地
葦原連邦空軍第1航空団『彰義隊』第1中隊『ペンギン』
志村“Chase”良介二等空尉
「さっきは悪かったからさぁ、ゆきちゃん……」
「……ふんっ」
何やら、古臭い怒りの表明だが───
ともあれ、怒鳴られない辺り本気の怒りではないだろう。
などと、良介は勝手に事態を矮小化して自分を慰めた。
言っては悪いがそれよりも、今は集中すべき事がある。
これから行われる作戦、そのブリーフィングだ。
昨日良介が行ったのは、作戦の決定だ。
内容そのものは昨日のうちにあくりをアドバイザーとして、護衛目標の選定が行われている。
吉宗もあくりも、あの後すぐに休めてなどいない。
今の待ち時間は、その最終調整といったところだろう。
扉を開く気配がこの待ち時間の終了を告げた。
「皆、揃っているな!」
ブリーフが済み次第、すぐに出撃だ。
挨拶もそこそこに、吉宗とあくりが壇上で並んだ。
「これより我々は、真田藩に散った賊軍を排除する!
作戦目標は大きく分けて3つだ!」
赫助がスライドを挿入し、真田藩の地図を表示させた。
吉宗の言葉通り、3ヶ所に丸印が描かれている。
「西街道を見下ろす山城、真田城!
川口藩へ続く藩道144号線と、西街道の交差点にほど近い真田藩学校!
そして最大の護衛目標は真田空軍基地だ!」
真田城、言わずと知れた真田藩守りの
古い時代から続く街道を監視するのに最適な立地条件にあり、遠くから迫る軍勢を事前に察知出来る。
現代戦においては通信が発達しているため、察知自体は大した優位ではない。
しかし、通過を目論む軍勢にとって目の上のたんこぶなのは間違いない。
真田藩学校。
この地域における学校だが、葦原で学校に通える子供は少ない。
特に藩学校というものは武士、藩軍の性質が強い。
言い換えれば地方軍の兵士養成施設だ。
もちろん、通っているのは前線に立つべきではない少年少女達なのは事実である。
というわけで、学校という名に反して軍事施設ではある。
一晩経った今でも抵抗を続けている可能性は高い。
真田空軍基地。
かつて彰義隊も詰めていた空軍基地だ。
こいつもまた、説明不要だろう。
「真田城及び真田藩学校はその
一晩経った現在でも抵抗を続けている可能性が高く、
また民間人の避難施設として機能している可能性も高い!」
「ああ。取り決めではそうなっている」
民間人の避難施設。
武揚では混乱から機能していなかったが、真田藩では機能している。
民間人の避難が進んでいる可能性が高いのだ。
「空軍基地については言わずもがなだ。
まず我々はこの基地を奪還し、前線補給基地として運用する!
その任務は、ペンギン隊! 貴官らに任せる!
一番槍として現地に赴き、真田空軍基地を奪還せよ!」
「オッケー」
「りょうか……良介さん⁉︎」
すると、良介はすぐさま立ち上がった。
いやまあ、お前の言いたい事はわかるが───
「まず俺たちが空軍基地を奪還する!
その後は、臨機応変にやるのが任務。だろ?
なら、早く行かなきゃな!」
「まったく……」
吉宗は叱責するでもなく、笑みを漏らすと。
「その通りだ、行ってこい!
しくじるんじゃないぞ!」
「おう! 行こう、ふたりとも!」
「相分かった!」
「了解っ!」
駆け足で作戦室を出ると、3人は格納庫へ向かった。
たとえ空が、暗い雲に覆われていたとしても。
その向こうにある青空を掴むために。