蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~   作:サークル『熊の巣穴』

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36 酉作戦:甲「The Demon of the IFu」

観覧対象:PENGUIN1 | CHASE

北緯42度47分40秒 東経141度39分59秒

葦原国夷俘島斗米幕府空軍基地

0910

 

 時が来た。

 先立って、幕府空軍と合衆国の傭兵で組んだ部隊が離陸し、奥葦原の飛行場を攻撃するため飛び立った。

 

 良介はF-2の最終点検を整備隊と共に行なっていた。

 そこに彼女がやって来た。

 

「シムラ・リョースケ!」

 

 彼女からフルネームを呼ばれるのは初めてだ。

 とはいえこれは、怒りを表明する際に行う欧米チックなそれだ。

 必ずしも好意的なものではない。

 

 F-2のコクピットから降り立つと、肩を怒らせたエラ・アーロンが歩み寄ってきた。

 

「聞いたよ、あなたの作戦」

 

「あれれ? 軍機だと思うんだけど?」

 

「甘く見ないで。合衆国の目と耳は至る所にあるの……」

 

 彼女は最近、先ほど飛び立った傭兵部隊や、新しい兵器の納入などで葦原を離れていた。

 

 恐らく斗米に着いて間もないのだろう。

 整備の場で着る作業着ではなく、いつものドレスのような普段着姿であった。

 

「合衆国の人達はビックリしてるだろうな」

 

「ええ!

こんな作戦通す非人道っぷりと、やる気満々なイカれパイロットにね!」

 

 ひとしきり叫んでから息を整えると───エラは続けた。

 

「いい? 聞いて。予定通り飛び立ったら全速力で、

何があっても西へ向かいなさい。合衆国の機体にエスコートさせるから」

 

「亡命しろってこと?」

 

「当たり前よ。

安心して、あなたの上司は合衆国がどんな手を使っても安全を確保するから」

 

「……いいの?

合衆国は多分、政府側に嫌われてるだろうし、幕府側とも険悪になるよ?」

 

「あなたを失う方が大きな損失よ」

 

「果ての雲を超える人間とF-2を逃すのは、確かに大きな損失だね」

 

「私を見損なわないでくれる? ……私は死の商人だけど、恩知らずじゃない。

これは助けられた恩返し、打算じゃないの」

 

 もし何の見込みもなければ、頷いていたかも知れない。

 しかし、問題がある。

 

「で、合衆国は俺達を元の世界に帰す見込みはあるの?」

 

「正直に言うわ、皆目見当がつかない。第一合衆国は管理者……

神を殺した側だから、奴らからの援助は期待できない」

 

「一応、葦原にはあるわけだ」

 

「奴らの根拠だって、嘘くさい昔話じゃない! 断言は絶対出来ないけど、

まだ私達の技術でどうにかなる可能性に賭けた方がいい……

こんな野蛮で恩知らずな連中のために、あなた死ぬの⁈」

 

「俺、殺しても死なないんじゃなかったの?」

 

「冗談は抜き。真面目に話して」

 

 確かに。幕府側が提示した帰還手段は、極めて怪しいものだった。

 正直、良介は今でもあまり期待していない。

 

 それでも。引けない理由ができてしまった。

 

「確かに、幕府の連中にはムカつかされてばっかりだよ。

崇めてるフリしてる将軍や帝候補に実権なんかなくて、

軍のお偉方はそんな建前も全く気にしないで軽んじてる。

偉そうに高潔ぶってるくせに、筋なんて通しやしない。

そんで、俺みたいなよそ者を脅迫で従わせてる。野蛮だよ、本当に」

 

「だったら……!」

 

「でもさ。ここの人達のこと知っちゃったからさ。

なんとかしたいなって、情が移っちゃったんだ」

 

 政府側への怨嗟で凝り固まっている竜司。

 彼女は新米ながら見込みがあって、良介の命の恩人であって。

 出自に似通うところのある彼女には、もっと良い人生を送って欲しくて。

 

 なにやら、とんでもなく大きな潮流に飲まれているらしい現公(ありさと)

 その幼い年齢にはとても耐えきれないであろう重責に耐え、それでも懸命に葦原を思うその気持ち。

 彼女のその気持ちを助けたくて、報われて欲しくて。

 

 千代。元は良介を殺すために派遣された暗殺者。

 人の心を読む超能力者、サトリである彼女がなぜ良介の心を読めないのかは謎だ。

 しかし彼女は元の仲間を裏切ってまで寝返り、今は命懸けで敵地に潜入してくれている。

 

 なんとかその奉仕に報いたかった。

 

 最近知り合ったばかりのゆかり管制兵だってそうだ。

 自身の研究を完成させるため、人の役に立つ輸送網を完成させるため。

 大学生よりずっと危険な、軍人の道を選んだ女性。

 

 他にも、幕府側にも政府側にも。

 ロクでもない葦原人がいれば、尊敬に値する葦原人がいた。

 関わり合いになりたくないような葦原人も、この内戦で歪んだ結果なのかも知れない。

 

 だとすれば。

 この悍ましい内戦を、なんとか終結させたい。

 良介の中には、そんな欲求が生まれていた。

 

「女でしょ。情が移った相手」

 

「……そうだな。エラちゃんに会えなくなるのは、悲しいな」

 

 時計を確認すると───そろそろ機体を飛ばさなくてはならない。

 タラップをよじ登り、コクピットに入った。

 

「それじゃ、エラちゃん。また会おう! ……俺に何かあったら、ボスをお願い」

 

「馬鹿! アホ! 全身下半身! ……任せなさい」

 

 JFSを起動させ、エンジンにエアーを吹き込む。

 

「志村。俺はお前が何をやるのか、具体的には聞いてねえ」

 

 最終確認のために、機付長が良介と顔を合わせた。

 この人にも、何だかんだとても世話になった。

 

「ま、いつも通り全力を尽くすよ」

 

「いいか。機体をちゃんと、無事に持って帰れよ。壊すんじゃねえぞ」

 

「それは保証出来ないな」

 

「なら機体だけでも持ち帰れ。いくらでも直してやる。いいな?」

 

「死ぬ前提で話すなよ。まだまだ、俺は死ぬつもりはないよ」

 

 拳を突き合わせ、最終確認は終了した。

 

 エンジンが作動し、電気系統が起動。

 全システムオールグリーン。つまり、機体は万全の状態だった。

 

「こちら彰義隊第一中隊。ペンギン1、チェイス。ATC、タキシー許可求む」

 

「こちら斗米基地ATC、移動を許可。待機位置、“あ”の88へ」

 

 誘導路を移動中、出撃準備中の彰義隊の面々が目に入った。

 まだ機体に火を入れていない彼らは一列に並ぶと、一斉に挙手敬礼を始めた。

 

 まったくもって、全員が死ぬ前提で事を進めていた。

 

「こちらペンギン1。みんなに死ぬと決まった訳じゃないって伝えてくれない?」

 

「こちらATC、伝えておく」

 

「どうも」

 

 移動が終わり、滑走路へと出る。

 動翼のチェックよし、電気系統よし。

 

「ペンギン1、離陸を許可する……管制隊を代表して通達する。

死んだら殴る。以上」

 

「ペンギン1了解。順番に殴り返すよ……離陸する」

 

 スロットルレバーを最前まで押し込み、オーグメンターを起動。

 最大出力で大地を離れると、西南西へ進路を取る。

 

 松屋隧道は真っ直ぐに夷俘海峡を縦断するトンネル。

 少しでも角度を誤れば激突する。

 

 そうならないためにも線をなぞるように、頭に叩き込んだ航路を進む。

 離陸して15分もしないうちに、目的のトンネルの入り口が見えてきた。

 果たして、残るのは勝利か。あるいは壁面のシミか。

 

 反転し、高度を下げてトンネルの暗闇に機体が進んでいる方向、速度(ベロシティ・)方位(ベクトル)を示すHUDのフライ(F)パス(P)マーカー(M)の表示を合わせる。

 

 さあ、もう引き返せない。

 天地を正しく合わせて、暗闇を睨む。

 

 真っ黒な綱渡り(タイトロープ)が始まる。

 この無謀を伝えるコードを口にした。

 

「レッド・ライト!」

 

夷俘の魔物

OPERATION BIRD - PHASE:ALPHA

契約42日目

北緯41度35分44秒 東経140度10分57 | 天候:晴れ| 1030(現地時間)

夷俘島-松後藩境界線下 | 松屋隧道 |交戦地帯

 

 ホーカー・ハンターのパイロットが行った以上の無茶を始めた瞬間。

 チェイスはF-2が出来る最大限の電子戦攻撃(ECM)を行い、政府側が使う無線通信の周波数帯とレーダー索敵を妨害した。

 

「警告! 上昇せよ(プルアップ)! 警告! 降下せよ(プルダウン)!」

 

「正常なのはお前だけだ……!」

 

 機体が発した警報(マスターコーション)を止めると、チェイスは地形に沿って飛ぶ匍匐飛行(NOE)に全神経を注ぎ込んだ。

 

 この妨害電波を夷俘島側及び松後城周辺から探知出来なくなれば、自動的に作戦は失敗したと判断される。

 先湊攻撃を行う幕府三軍は撤退し、延命のための温存が始まる。

 

 そうなればチェイスとF-2を失った哲也は完全に帰還の術を失い。

 エラがやってくれるであろう保護によって、どれほど安全が保証されるかという状況になる。

 

「……俺はまだ、諦めてないぞ」

 

 たとえフライ・バイ・ワイヤシステムが操縦を自動補正するといっても、それは常識的な(・・・・)空での話。

 一切の失敗が許されない、巨大トンネルでの飛行データなど、どの世界にも存在するはずがない。

 従来では考えられない挙動を可能にするシステムだとしても、限度がある。

 

 ほんのわずかな気流で機体の動きが乱れれば、その瞬間に全てが崩れかねない。

 

 視界にトンネルを照らす照明が映ったそばから、猛烈な勢いで過ぎ去っていく。

 

 最初の関門、ここはあまり問題にはならない。

 敵に捕捉されている可能性が低いので、今は速度を出す必要がないためだ。

 そう、今は(・・)

 

 わずかに降下して加速している分をエアブレーキで減速、相殺しつつ上昇して水平飛行に。

 高度は-800(240)フィート(m)

 

 この時、再びF-2がマスターコーション(MC)を鳴らした。

 

「エラー! エラー! エラー! 海抜高度を下回っています!」

 

「こんなMCあったんだ……」

 

 再び鳴り響いたMCを止めると、今度は出力を最大に。

 松屋隧道は幕府だけでなく政府側も兵力を置いて睨み合っている最前線だ。

 

 万が一政府側にこの作戦が見抜かれれば、出口を塞ぐのなど簡単。

 門を閉ざせばいいし、門がダメでも重機を使って土嚢か何かを積み上げれば、それで詰みだ。

 

 敵の不意を突き、なおかつ思考と行動させる隙すら与えてはならない。

 そのためにも、じっくり攻略している猶予などないのだ。

 

 さあ、地獄の水平飛行(厳密にはわずかに降下している)の始まりだ。

 道中に置かれた全てのものを吹き飛ばしながら、チェイスは史上類を見ない飛行を続ける。

 

 速度は見る見るうちに上昇し───バゴォッ! という音と共に、機体がベイパーコーンをまとった。

 チェイスはこの瞬間、初めて戦闘機でトンネルを飛行したという前代未聞の猟奇的称号に加えて、この世で最も低い高度で音速を超えた人間にもなったわけだ。

 

「とりあえず、マーヴは超えたかな?」

 

 調子に乗るな、トリガーには勝てていない。

 

「垂直トンネルはさすがにないな」

 

 お前の操るF-2は高速飛行状態となることで、さらに不安定になっていく。

 ミスはさらに許されなくなっていくのだ。

 

「……」

 

 なんとか言ってみたらどうだ?

 

「……言えるわけないだろ、馬鹿っ」

 

 それもそうか。

 さて。この弾丸旅行は210秒、2分30秒になると推測されていた。

 

 既に行程の半分以上を過ぎていた。

 もちろん油断してはいけない。ここから先は政府軍の支配圏となる。

 

 松屋隧道の崩壊はどの勢力も望んでいない。

 そのため、対戦車兵器の類は配備されていないという。

 

 しかし当然、小銃で武装した歩兵はいる。

 

 至近距離を飛ぶだけで歩兵など無力化出来てしまうが、一方で小銃で応戦される危険はある。

 30口径、7.62ミリの小銃弾が数発、ボディに当たっても問題はない。

 

 しかしそれがエア・インテークを通り抜けて、エンジンを破損しようものなら。

 瞬く間に床に突っ込んでしまうだろう。

 

 先に挙げた通報の恐れもある。

 連絡手段は無線だけでなく、電波妨害に影響されない有線通信というものもあるのだ。

 

 こればかりは、最善を尽くして祈るしかなかった。

 

「……そういえば、千代ちゃんはどうしてるんだろう?」

 

 女の心配か、余裕だな。

 しかしわからんでもない。

 彼女はどうにかすると言い残して、姿を消したのだから。

 

 もし彼女が、何らかの援助をしてくれるというのならば心強いが───

 忘れるな。彼女は良介、お前を殺すために派遣された元暗殺者なのだ。

 自分の殺害が任務だった人間を、果たしてなぜ信用出来るのか?

 

「ふん。だったらあんな意味不明な事をせず、俺を殺せばよかったんだ。

それでも、俺を信じて行動してくれたんだぞ?

……根拠はないが、彼女の冒険心は信じられる」

 

 どうだか。お前は何度も女の子から一方的に別れを告げられてきた人間だ。

 それで、超能力暗殺者だから、例外だと?

 夢を見過ぎではないのか?

 

「……かもな」

 

 さあ、今まで世界一危険な水平飛行を成功させてきたが、今度は世界一危険な上昇だ。

 この坂は人間の都合に合わせた作りをしていないため、急に25度の勾配が生じる。

 

 馬鹿正直に上昇すれば、機体が坂に突っ込む。

 あるいはコクピットが中身ごと天井にすり下ろされる。

 

 言うまでもなく、どちらでも死ぬ。

 航空機はゲームのように鋭角なカーブを曲がれないのだ。

 

「出力10%、エアブレーキ展開!」

 

 坂が見えるよりずっと手前で急減速。

 見る見る速度は低下し、やがて機体は下方向へと落ちていこうとする。

 ここで、フライ・バイ・ワイヤが真価を発揮する。

 

 どんな航空機にも失速───

 進行方向への速度を失って飛行に必要な揚力が消失、制御不能になる速度が存在する。

 しかし、速度0と制御不能は厳密にはイコールで結びついていない。

 

 ラダー、エレベーター、エルロン、エンジン出力の調整。

 動翼を使って機体制御を完璧に行えば、理論上どんな機体でも前にも後ろにも右にも左にも上にも下にもいかない、滞空(ホバリング)に近い飛行は可能なのだ。

 

 F-2の、厳密に言えばF-16のフライ・バイ・ワイヤ制御システムはこれを可能としていた。

 チェイスも人の目がない洋上で試したことがあった。

 当然、機体に無茶をさせ過ぎだとド叱られていた。

 

 まさか活用する機会が巡ってくるとは。

 ましてや、トンネル内部でやる羽目になるとは!

 

 松屋隧道は全高20メートルのトンネル。

 F-2の全長は16メートル。

 理論上では、90度の真上を向いた飛行すら可能だった。

 

 今回はそこまでする必要はない。

 ピッチ70度の上を向いて、チェイスは速度5(10)ノット(キロ)の状態を実現してみせた。

 

 ただし、フライ・バイ・ワイヤが制御するのは動翼のみ。

 エンジン出力の調整には、パイロットの腕が要求された。

 

 目前をトンネル天井の照明がゆっくりと過ぎ去り、器具を支える梁がF-2の鼻先をかすめる。

 見えない背後ではエンジンノズルが積もった(ほこり)を撒き散らしているに違いない。

 

 このような高ピッチ状態では、本来主翼にあるべき揚力は剥離している。

 機体を宙に浮かせているのは、胴体でわずかに発生している揚力とエンジンの推力だけ。

 

 エンジン出力を上げ過ぎても、下げ過ぎても、強い状態が続き過ぎても、弱い状態が続き過ぎても。

 何かがわずかでも過ぎれば死ぬ。間違いなく、常人には耐えられないプレッシャーであった。

 

「まだか、よ……」

 

 まだだ、まだ坂を過ぎていない。

 もう少し、もうちょっと───

 

 その時、コクピットの計器の脇から明かりが差した。

 

 エンジン出力を上げ、ピッチを下げ、光の少し上を向くように機体を制御する。

 速度が乗り、HUDにフライ・パス・マーカーが表れた。

 少なくとも真っ直ぐ進み出したと機体は判断したのだ。

 

「よし、いける……」

 

 本当に、いけるのか?

 間違いなく機体は坂に沿って上昇を始め、加速し続けていた。

 

「しゃあっ」

 

 勝利を確信したチェイスはオーグメンターを起動し、即座に脱出せんと加速した。

 しかし、わずかに行動が遅かった。

 

 光が小さくなり始めたのだ。

 閉すように、左右から闇が伸び始める。

 

 間に合わなかった。

 恐らくトンネル内部に展開していた部隊が有線で通報し、出入り口の門を閉ざし始めたのだ。

 

「くそっ」

 

 光が消えていく。

 その光景を見て、終わりを悟るしかなかった。

 

「まだだ……」

 

 兵装システムを操作し、主翼に提げたロケットポッドを選択する。

 木製の古臭い門程度ならば、破壊するくらいは出来るはず。

 

 照準の融通の効かないロケットでは、通れるほどに破壊出来ない。

 その可能性を頭に残しながら。

 

 最後の悪あがきのために、機体を制御すると───

 突如、暗闇に光がもたらされた。

 

 爆発、チェイスの手によるものではない。

 幕府軍の作戦が実行されたとは思えない。

 ならば、答えはひとつだった。

 

「俺は夢を見過ぎか?」

 

 夢想家も、たまには役に立つわけだ。いいものをご馳走しなくてはな。

 

 完全破壊には至らずとも、斜めに入った亀裂は理論上(・・・)、通過可能と見えた。

 最後にもう一度、理論上可能を成功させるしかない。

 

「絶対不可能と比べれば、楽勝!」

 

 門に生まれた傷跡をすり抜け、チェイスは不可能な作戦を実現させた。

 

 F-2が通り抜けた衝撃波によって半壊していた門は完全に吹き飛び、城の敷地中に飛び散った。

 求めていた広々とした空が、チェイスの眼前に広がる。

 

 しかし、もう一仕事必要だ。

 宙返りして再び地上を睨むと、松後城の天守閣に取り付けられた捜索レーダーにロケットの照準を合わせる。

 

「その髪飾りは似合わないな」

 

 2発のロケット弾が基部の天守閣とアンテナ部分に直撃し、城の一角ごと崩壊させた。

 先湊海軍基地を守る防空システムは、その能力の大部分を失った。

 

「グリーン・ライト!」

 

 不可能の先にある、作戦開始の合図。

 

「やっぱしむすけって……最ッ高にブッ飛んでる!」

 

 どこかで少女の歓声が聞こえた気がした。

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