無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

10 / 62
誤字報告感謝です。
ヒーロー目指す理由は完全にオリジナルです。
調べまくっても不明すぎたので許してください。
オリジン組以外あんまり明かされてないんですよ、ヒロアカ





葉隠透:オリジン

 

「だ、大丈夫!?」

「な、何とか。普通に油断して直撃したから結構痛かったけど…動くから問題ないよ」

「そ、そうなの? でも右腕焦げてるんじゃ……」

「大丈夫大丈夫。それ、よりっ!」

「わっ!?」

「らァ!!」

 

心配してくれる気持ちはとても嬉しいが、腕が動くなら問題ない。

それはそうと、咄嗟に葉隠さんを抱きしめるようにして跳躍。その場から離れつつ葉隠さんを上にするように自ら背中に地面を打つ。

すぐに立ち上がって起こすと。

 

「なーに透明女とイチャイチャしてやがんだ、アァ!?」

「いっ、イチャ……!?」

「馬鹿野郎!それだと葉隠さんに失礼だろ!!」

「否定するとこ普通は違ぇだろ!!」

 

何の合図もない。

いつものノリで、会話しながらも俺は”気“を纏い、爆豪は爆破の勢いを乗せた蹴りがぶつかり合う。

連鎖的に爆破する爆豪と”舞空術“に寄る加速でせめぎ合っていると、顔面が爆発した。

 

「あっつっ!!」

「どーだ!特性手榴弾のお味はよォ!?」

「やっぱり配役逆だこれ!!ちなみに全然美味くないぞ!!」

「本気で味は聞いてねェよ!!」

「聞かれたから答えたんだろうが!」

「真面目に答えんなバカ! つーか食おうとしてんじゃねぇっての!」

「流石に俺でも食えるか!」

「なんであいつら…言い合いしながら戦ってんだ……?」

「な、なんでだろう…?」

 

口撃とは裏腹に、俺の拳は爆豪の機動力に避けられ、逆に爆豪の爆破は俺が当たらないように逸らし、互い互いに攻撃の直撃を避けるような攻防を繰り広げていた。

一旦退く!

 

「逃がすかよ!」

「逃げるかよ!」

 

考えることが同じだったようで、互いに頭突きした。

痛みに思わず怯むが、額を抑えつつ後方回転。

爆破を回避し、片手で地面に手を着きながらスライディング。

普通にジャンプされて避けられたが、脚を掴んで地面に叩きつける。

 

「こいつで…どう、ちょ」

 

追撃の拳を叩きつけようとしたら、掌が向けられていて顔面に直撃した。

こいつ食らうこと前提でやりやがった!!

 

「これなら避けられねぇよなァ!閃光弾(スタングレネード)ッ!」

「いいっっ!?」

 

三歩ほど下がってしまった隙に背中だけ起こした爆豪が起こした眩い光を直接見てしまい、目が痛くなる。

目が!目がぁ!近接戦において数少ない”気“の弱点!!

 

「見えなけりゃこっちのもんだ!」

「そいつは…どうかなァ!!」

 

目の痛みで両目を閉じる羽目になったが、”気“の動きを読んで懐へ潜り込む。頭上で爆破する音が聞こえた。

拳を握りしめ、背中を抑えながら鳩尾を打つ。

 

「がぁっ……!」

「ごふっ…!」

 

ただで済んだわけじゃなく、俺の横腹にもダメージがあり、蹴り飛ばされる俺とその場で蹲る爆豪が居た。

離れた隙に目を擦り、キーンとするが少しずつ視野が戻っていく。

思わずブリッジからの頭突き。

手榴弾らしきものが天井付近で爆発し、爆豪に向かって片手で気弾を連射。

ボヤけててよく見えないが、爆発音が聞こえる。

ちょっと動いたことから、恐らく横に転がって汗を飛ばして爆発させたと見るべきか。

というか衝撃を逃さないように打ったのに普通に対処するのタフすぎる…!

 

「まだまだァ!!」

「くっ……!」

 

視界が回復していない。

ひたすら”気“の動きを読んで戦うしかないか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

「不意打ちをまともに受けても無事とは…!」

「やるねー! あの感じ透ちゃんを守ったよね!」

「爆豪のやつ、あの拳王技に食らいついてらぁ」

「首席一位とはいえ、やはり凄いな君は…!負けてない爆豪くんも流石だ!」

「いやいや、あいつ目を瞑りながら戦ってないか!?」

「ここまで来るともう凄いとしか感想が出ないなぁ…」

「というか、轟と戦ったあとでこれだよね? 体力ありすぎない!?」

「でも爆豪も負けてねぇぜ!」

「最初は轟くんの氷結で本調子じゃなかったんだよ。今のかっちゃんの”個性“は一番いい状態なんだ。戻ってくる前に汗をかいたから爆発力が高まってる…!」

「となるとここからが本番ってことなんだ…」

「(いやいやみんな。確かに爆豪少年も凄いが、目を瞑りながら戦って、互角以上に繰り広げてる拳王技少年がおかしいだけだからね!!普通にスルーされてるけど!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------

 

「ぉおおおおおおお!」

「おりゃああああああ!!」

 

爆破の連撃と連続エネルギー弾のぶつかり合い。

互い互いに相殺出来ているが、このままじゃビルが危うい。

連射をやめ、上空に飛んで回避する。

よし、これで。

 

「そうするのを待ってたぜ、逆立ち野郎!!」

「どういう……やべっ!?」

 

ボヤけているが視界は回復しているので、思わず二度見。

壊れた天井。

手榴弾をモチーフとしたであろう籠手のピンに指をかける爆豪。

あいつの”個性“から考えると---

 

「死ねェエエエエ!!」

 

瞬間、爆豪の最大火力とも言える爆破が向かってきた。

天井にはもう穴が空いている。

既に十分すぎる隙間が空いている今、ビルに被害はない。

これが狙いか!! 俺が天井を壊すのも頭に入れるとは…ヴィラン側の俺が壊すのは普通。ヒーローが壊したら減点だが、俺が壊すなら話は別ってことか!

 

「なら来い!! う、ぐぐぐぐ……!」

 

両手に”気“を集中した俺は爆破を受け止める。

勢いに押されてビルを突き抜けてしまうが、体内の”気“を爆発的に引き上げてオーラを纏うことで押されないようにする。

しかし最大火力というのもあって、かなりの威力だ。

でもビルがないからこのまま逸らせば---

 

「もう一発あんだよォッ!!」

「あ、無理」

 

側面からもう一発放たれてしまった俺は、交差されるようにして放たれた爆炎に呑み込まれ、そのまま落ちていき---。

 

 

 

 

 

 

 

「っと。あぶねぇ、あぶねぇ……遅れてたら意識が持っていかれてたぞ」

 

咄嗟に気功波を下方に撃ちながら超速降下で難を逃れた。

ダメージはあったが、減らせた。

だからといって安心できるものでもなく、体を横に逸らしながら落下してきた爆豪の籠手を掴み、一気に投げる。

すぐに爆破で勢いを減らし、着地して推進力として爆破を使って接近して来たかと思えば、眼前に鋭く尖ったモノが飛んできたので手のひらで弾く。

---轟の氷?

 

次々と爆破の勢い活かして投げられてくるものを避けていくと、最後に飛んできたバスケットボールくらいの大きさの氷を拳で破壊する。

居ない。

”気“の位置から予測し、向かってきた手を落とし、蹴りを入れ、拳を握って突き出すと、腕を蹴られて逸らされる。

最後の手榴弾。

バックステップで避け、高速移動で背面へ移動した俺は、振り向きざまに向けてくる腕を掴んで爆豪の力を利用し、そのまま勢いを活かして回転させた。

 

「な……っ」

「さっきより痛いからな!」

 

回転する爆豪の腹にめり込む一撃は、凄まじい勢いで吹き飛ばしていく。

すぐに両手から連続エネルギー弾で追撃し、トドメと言わんばかりの巨大な気弾を煙の中に投げた。

そこに”気“はない。

つまり。

 

「上だよな!」

「チィッ!」

 

地面を両足で蹴り、上空から振りかざしてきた一撃を避ける。

さっきいた地面が爆発し、俺は追撃させないために少し大きめの気弾を放出。

追撃を断念したようで、着地した爆豪は息が荒く結構な汗をかいている。

 

「ふぅ……爆豪」

「はぁ、ハァ……あ?」

「時間も残りわずかだ。最後にやり返して終わらせてもらうぞ!」

「ンだとォ…!?」

 

彼女の”気“を探り、目を向けると移動を始めた。

あらかじめアイコンタクトすると伝えていたのだ。

というか残り時間はもう3分しかない。

ちゃんと決着をつけるべく、俺は爆豪の周りを高速で走った。

まるで分身でも出来たかのように錯覚するほどの速さだろう。

実際に爆豪は周囲を忙しなく見ている。

重りがない今、俺の速度はかなりのものだ。

 

「うらァァ!」

 

しゃがみこんで両掌を地面に着いた爆豪は範囲攻撃に出たらしく、自分を中心に大きな爆発を起こす。

そう、時間がもう僅かならそうするしかない。

煙によって視界が遮られたからこそ、この技を使える。

お前に避けられるものなら避けてみろ!

 

「食らえ爆豪!」

「……!まさか、テメェ…!?」

 

煙が晴れた瞬間、俺は既に爆豪の正面で両足を広げ、自分の目を閉じながら両方の手を開いた形で、手のひらを自分側に向けて左右から額にかざしていた。

俺の『お返し』という言葉の意味を理解したであろう爆豪が背を向けようとしていた。

俺のことをよく分かっているな。今更遅い!

 

「太陽拳!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

自分の”個性“が”透明化“で戦闘向きではないことはずっと分かっていた。それでもヒーローになりたいという夢のために頑張ってきた。両親は危ないから、と別の学校を勧めたけど、心配しているということはよく分かっていた。

でも私がヒーローになりたいという決意を強く伝えると、折れて応援してくれた。

色んなヒーローが居て、みんながヒーローになりたいと言ってた。私もまた人々を助ける姿を見たとき、私もそうしたいと思っていた。

私の”個性“は透明人間になれるから。何も無かったわけじゃない。周りから見えなくなるってことは、発見されなくなること。他の子と遊ぼうと思っても”個性“が原因で遊べなかったこともあった。

見えないから怖い、と言われたことも。顔のことを言われたことも。ふと女の子同士の会話で私のことを悪く言ってることを聞いたことも。

遊びだって断られたとき、寂しいと思っても顔が見えないことから明るく振る舞って、気にしてないよと伝えて一人で遊ぶことも多かった。

本当は、誰かと遊びたかったのに。

我慢すればいいだけだから、我慢した。

 

ある日。

川に溺れそうになったことがあった。泳げないわけじゃないから一人だったら問題ないけど、子供が居たから。

自分の”個性“じゃ助けることは出来ない。

それでもその子だけは何とか助けられて、まぁ透明化だから誰も気づかれることはなく流される---より早く誰かに助けられた。

その人はやけにボロボロで大丈夫かと聞かれて答えたら、そのまますぐ去っていったから名前も知らない。

どうして私に気づいたんだろう。制服でも体が沈んでるから簡単に見えるはずない。

”透視“とか音とかそういったものを探知する”個性“なのかなと思いつつもみんなが騒いだり気づかなかったり、ヒーローが来てくれる…と言う中で颯爽と人のために行動する姿は、やっぱりかっこいいなぁと思った。

その人は、同年代くらいの男の子だったということしか知らない。

でもヒーローみたいで、この歳になって思うのは恥ずかしいけれど颯爽と助けて去る姿は御伽噺の王子様みたいだなんて。

 

それ以降は成長に連れて友達も出来たし何も無く、事故もなかったけれど、ニュースや活躍を見てると、日に日に思いは強くなる。

---私の”個性“でも誰かの力になれるかもしれない、と。誰かを助けたい、と。

索敵や情報収集に向いてると思うし、見えないということは不意をついて助けることも出来る。

勉強を頑張って、友達と息抜きして、やれることをやって。

そう思って受験した。

 

勉強はあまり自信がないけど、問題は入試試験だった。

身体能力テストでは見事平均を出した私には、仮想敵とはいえまともに戦える力は無い。戦闘向けの”個性“なら話は別だけど…。

唯一の救いは認識されないという利点を活かせたため、ヴィランポイントを稼げたこと。

繰り返してると、たまたま攻撃が当たりかけたとき急にその部分だけ爆発したのは驚いたけど。

後に知ったけど、救助ポイントのお陰でもあった。

ただそれでも、その時は何も知らなくて。

0Pの巨大ロボが現れたとき、ただでさえ攻撃力がないと分かってた私は他のみんなと同様逃げようとしてたけど運悪く足を挫いて、周りの悲鳴で私の声は聞こえなかった。

”透明化“という個性の都合上、何かを身につけたらその部分だけが浮いてしまう。そのせいで身につけたらロボットに位置がバレるから何も身につけてなかった。

だから置いて行かれちゃって、動こうにも足の痛みで動けないでいたとき、一人の男の子が()()()()()()()()()()一直線に来てくれた。

 

『キミ、大丈夫か!?』

 

きっと本人は全然気にしてないというか気にしてなかったけど、この時の私は誰も気づいてくれない中で純粋に助けにきてくれたということだけが嬉しかった。

逆立った黒髪に私より10cm以上は高い背に真っ直ぐな黒い瞳。

記憶に残ってる、私を助けてくれた子に似てるな、と状況に反して思っちゃったけれど、人生で一番驚いた。

”透明化“の私を家族でも知り合いでもないのにちゃんと認識したのは助けてくれた子と彼だけだから。

でもほとんどの人が居なくなってるのに、私のところに来て、逃げてる人たちがいたのに”透明化“の私に気づくのなんて普通は無理だ。そして、その行動力も。

 

ただ実際には見えてないらしく、色々聞きたいことはあっても理由を聞く余裕がなくて逃げるように伝えたのに、彼は誰もが逃げた0Pに勇敢と立ち向かっていった。

私が怪我をしてるというだけで。たった、それだけの理由で。

そうして彼は言っていたように0Pを倒し、破片のひとつも落とさず壊していた。

宙に浮いたりビームを打ったり、それの応用っぽい弾を撃ったりしてたので何らかの”エネルギー“を元に操作する”個性“ということくらいしか分からなったけど、私に気づけた理由が、ますます分からない。

でもその後ろ姿はまるで、ヒーローそのものだと思った。

その後は、知り合ったばかりで助けてくれたとはいえ同年代の男の子にお姫様抱っこされて彼の体操着を着てたのもあって他の人にも注目されたのはすっごい恥ずかしかったけど、見た目に反して頼もしい体付きをしていた。

そんな体が大きいわけでもないのに、まるで人が辿り着ける限界まで鍛え抜かれたような。

それに声の質も力の入れ方も、そういった動きに無駄が少なく、優しい人なんだろうなぁと心から思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が言ってたように結局は軽い足の捻挫で数日もあれば治ると言われたけど、私は私を助けてくれた分、ロスしたであろうポイントのことを考えて教員室に直談判しにいった。

ポイントを分けられないか、と。

ただ私の心配は必要なかったみたいで、内密に合格しているということを伝えられた時は自分のことでもないのに心の底からほっとして、嬉しくなって。

数日後の結果では、そんなつもりはなかったのに直談判の分まで点数に入ったらしく、10位以内に入っていた。

それがなくてもギリギリ合格みたいだったけど。

そして入学して、教室に入って再会した時は物凄くテンションが上がっちゃった。

それに制服を着ているとはいえ入学試験同様彼はすぐに私を”認識“したみたいで。覚えてくれていたことは嬉しくて、直談判したことを本人に知られてたのはちょっと恥ずかしかった。

これからクラスメイトになるのもあって互いに自己紹介すると、助けてくれた彼の名前は、『拳王技界』くん。かっこいい名前だな、とは知り合って間もないので口には出来なかった。

 

ただせっかく再会したのに顔を合わせてという訳では無いことに申し訳なくて謝ったら、彼は私の”個性“を分析して褒めてくれた。

そのことで照れてしまって顔が見られてたら赤面してたのがバレてただろうなーと思いながらも、ちょっと変わってる彼に自然と笑みがこぼれる。

 

その後は私に気づいてたことについて聞こうとしたけど、先生が来てそんなタイミングでもなくなってしまい、『個性把握テスト』では平均的な身体能力しか持たない私とは違って、彼は測定不能という見たこともない記録を叩き出していて、入試の姿を見ていた私は彼のことを目で追いつつ、自分の中で精一杯記録を出してると。

ボール投げの時、本気でやるように言われた拳王技くんは入試で見せたエネルギーのビームを撃って測定不能の記録を叩き出した。

その時やっぱり拳王技くんは凄いんだ、と純粋に思って関心したら、彼は自分を”無個性“だと言っていた。

異形型でもなければ、変形型でも発動型でもない。

 

相澤先生の”個性“は”抹消“で目視した”個性“を消す。

流石の私でも、それが彼が”無個性“だと証明する材料となったのは分かった。

”無個性“が同年代にいるなんて想像もしてなかった。しかもそれが、”個性“ある人たちよりも凄い記録を出して、宙に浮いて、エネルギーを放って、あの0Pを破壊した彼がそうだなんて。

 

 

 

 

『騙すようになったのは悪いと思っている。みんな思うところがあるかもしれないけど、”無個性“の俺と雄英に居るのが嫌ならば俺は雄英を---』

 

 

 

 

そしてその言葉を聞いた私は。

 

 

 

 

 

その時の私は。

 

 

 

 

 

 

考えるより先に体が動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

反射的に、無意識に。

彼の手を掴んで、考えが定まらない頭では慰めの言葉も何も伝えられない。

それにどんな”個性“であれ、持っている私が同情するのは彼を傷つけちゃう。

それは今だから分かるだけで、この時の私は純粋に思っていたことを口から全部出して、みんなに呼びかけていた。

私だけが肯定しても効果は薄いし、考えがまとまってなかったのもあるけど、みんな彼の活躍を見ていたからか好意的な意見ばかりで。

誰も”無個性“だからと彼を否定することはなく。

 

「ああ、それと…ありがとうな、葉隠さん」

 

そういって彼は、穏やかでありながら純粋さを感じさせるような、優しい表情で笑いかけてきてくれたけど、頭が真っ白になっていた私は何も答えられなかった。

 

 

 

----戦闘訓練では轟くんに尾白くんと一緒にあっさり負けちゃった私は悔しく思いながら戻ってくると心配してくれる彼に、愚痴を言うように寒かったと本気で思ったことを伝えつつ見えないけど笑顔で返事をしたら、手を翳された。

昨日の個性把握テストのビームの応用らしく、あんなに寒かったのに、まるで彼に優しく包み込まれているかのように身体がぽかぽかする。

口には出せない恥ずかしいことを考えてたことを悟られないようにしつつ、試合結果のことを話すと近距離を覚えるべきと言われた。

 

うーん、そう言われても当ては無いしな〜と考えた私は、色々凄い目の前の拳王技くんなら問題ないんじゃないかと思って、教えを乞った。

予想通り彼は私でも出来る技を知ってるみたいだけど、『口では』という単語に少しして意味を理解した。

つまり、体を使って覚えるということ。動作など教える際に密着したりする必要も出てくるということが分かってしまい、流石に友達になったとはいえまだ二日目。

私は間違いなく顔が真っ赤になったことを自覚しながら少しの間、話せなかった。

これでも私、恋に飢える乙女だもん。

ただでさえ彼には、ほぼ素肌の状態でお姫様抱っこをされてるわけで……あーダメダメ。考えないようにしなきゃ!

 

 

 

 

 

それから拳王技くんの隣で解説を聞きながら雑談してると、ついに彼の番。

相手は私と尾白くんを瞬殺した轟くんと緑谷くんと互角に渡り合っていた爆豪くん。

正直、ものすごく強いチーム。というか一番強い?

なんて考えてたら、ペアを決めるように言われたとき、彼は強い”個性“を持つ緑谷くんや機動力に優れる飯田くん。相手を浮かせられるお茶子ちゃんじゃなくて私を真っ先に見たことに驚いた。

どうして? 私は正直、戦闘向きではないのに。

 

『はい!』

『って、葉隠さん!?』

 

気がつけば挙げていた。

”個性“が無くても色々と凄い彼が一番に選ぼうとしてくれた事実に嬉しくて舞い上がっちゃったのかも。

 

 

『いやぁ、凍らされたのが嫌になってるかなと…』

『もー大丈夫だよ! それにリベンジしたかったんだよねー私!』

 

選ぼうとして選ばなかった理由を聞いたら、私のことを気遣ってくれてただけだったみたい。

 

『まぁ葉隠さんを勝たせるよ』

『葉隠さんにとって些細なことでも当人にとっては違うってこと』

 

それだけじゃなく、悔しいという私の気持ちを汲んでたみたい。

それに自分のことを棚に上げつつも、人によっては誤解を招く言葉を告げる拳王技くん。

まったくもう、勘違いしたらどうするの。

 

『やっぱり葉隠さん、いい”個性“だ』

『へ?』

『この戦い、間違いなく葉隠さんが鍵になる。だからこそ俺は君が欲しかったんだ』

 

なんて思ったら。

告白にも捉えれるような言い方をしてきた拳王技くんが作戦に必要と言った瞬間、彼の胸をポカポカ叩いた私は悪くないと思う。

彼は理解してなかったけど、乙女の純情を弄んだ罰だよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”作戦“を伝えられて、試した。

成功したので私の出番はどちらかというと轟くんではなく、爆豪くんに対してらしい。

結局はどちらも支援に徹するだけだけど、彼は”私“にちゃんと役割をくれた。

ヴィラン側なので、制限時間までに”核“を守る。もしくは捕縛が勝利条件。私の”透明化“を上手く使うため、意識から外させると言っていた。

初見殺しとも言える轟くんの最初の一撃。

私と尾白くんが文字通り手も足も出なかったのに、拳王技くんはただ衝撃だけで防いじゃった。

おんぶされてたからほんのちょっと恥ずかしかったけど、 寒さに関してはモニタールームの時と同じくぽかぽかするやつをしてくれたので、寒くない。

 

それから奇襲してきた爆豪くんから私を守ってくれて、彼はあっさりと排除していた。

私はあらかじめ言われていたので、折を見て窓を開けて閉めるということのみ。

思っていた以上に上手くいってたので、ハイタッチしちゃった。

 

『無理しないで。葉隠さんが怪我する方が大変だ』

 

どうやって爆豪くんと轟くんが来ることを察知してるのだろう?と思っても、ここで聞けるタイミングじゃない。

それに…本当に素でやってるんだよね、拳王技くん。あまり女の子にそんなこと言っちゃダメだからね? 

 

 

 

 

 

 

クールって感じの轟くんだったけど、遠くで隠れていた私は会話は聞こえてない。

ただ急に拳王技くんの体にある白いオーラの勢いが強くなって、凄い衝撃に吹き飛ばされそうになった。

すぐに収まったけど、ちょっと怒ってた…とか?

 

轟くんの氷をいとも簡単に破壊したり氷壁とも言える壁を受け止めたり、驚かされることばかりことをしてたけど、私は自分の役割を果たすために、動きが完全に止まった時、死角から接近して予め決めていたように全力で顎にアッパーカットした。

なんでも突然脳を揺さぶられる攻撃は有効打になるとのことで。

実際、捕縛テープを巻き付けられた。

本当に私を忘れてたようで、簡単に上手くいった。

終わった拳王技くんは右側まで凍りかけている轟くんにマントを被せると、窓が壊れる音ともに私の前に立ち、吹き飛ばされていた。

すぐに駆け寄ると、右腕が焦げていた。

こんなこと出来るのは、一人しかいない。

探そうと見渡した私は、突然抱きしめられたことに驚き、事情を聞くまでもなく助けてくれたのだと理解する。

しかも私が背中をぶつけないように、自分が下敷きになって。

 

『なーに透明女とイチャイチャしてやがんだ、アァ!?』

『いっ、イチャ……!?』

 

手を貸してくれる彼にお礼を伝えると、すぐに現れた爆豪くんは変なことを言ってきた。

し、してない!してないよ!

 

『馬鹿野郎!それだと葉隠さんに失礼だろ!!』

『否定するとこ普通は違ぇだろ!!』

 

これに関しては私も爆豪くんに同意してたけど。

 

 

 

 

 

 

次々と凄い攻防が続く中、見ていることしか出来なかった。

役割は理解していても、自然と力が入る。

拳王技くんの中では私は守るべき対象でしかないのが嫌でもわかったから。

時折私の位置を確認してること、分かってるんだよ。轟くんの時も気にしてた。

君が強いのも、こうしてみていたらよくわかる。

でも私だってヒーローを目指してここに来てる。ここにいる。

守られるだけじゃ、嫌だ。

でも今の私だと、何も出来ないから。

 

 

『時間も残りわずかだ。最後にやり返して終わらせてもらうぞ!』

『ンだとォ…!?』

 

だから私は。

 

『食らえ爆豪!』

『……!まさか、テメェ…!?』

「太陽拳!!」

 

 

今私に出来ることをやるんだっ!

 

「あぶっ……!」

 

眩い光が拳王技くんを中心に発せられる。

爆豪くんは光から逃れるために腕で顔を覆い、拳王技くんを見ないように顔を横に向けている。

()()()()だった。

 

『問題は爆豪だ。俺には”太陽拳“って技があるんだけど、あいつは間違いなく直撃を避ける。正直そのまま時間稼いでもいいけど、勝つなら勝ちたいだろ? だからこそ、葉隠さんの出番なんだ。葉隠さんがいるから俺たちは勝てる! 葉隠さんが鍵の理由、それは---』

 

 

 

 

 

 

名付けるなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「集光屈折---太陽拳!」

「ぐああっ!?」

 

私の()()を利用することで、拳王技くんの光を集め、回避不可の目眩を放つ。

”透明化“による不可視の目眩し!! 意識外からの目眩しは爆豪にも避けられなかった。

後は!

 

「拳王技くん!」

 

私に向かって頼りになる笑みを浮かべ、私が声を掛ける頃には彼は既に走り出していた。

それは、私が()()()()()()と信じていたように思えて---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

太陽光すら屈折できることから俺の太陽拳が効かないと予想していたが、案の定そうだったようで。

”気“によって索敵せず彼女の位置が分かる俺。

性質上無効化出来る葉隠さん。

それによって起こせる、回避不可の太陽拳だ!

正直これは俺がお前の立場でも避けられないから安心しろよ爆豪! なんなら実験で試して自分で太陽拳を受けたからな!

 

「ぁぁあああああアァァァ!!」

 

最後に見たであろう位置に、爆豪は強い爆破を放つ。

掠って若干のダメージを受けるが、俺は既に潜り込んでいて、地面を滑りながら捕縛テープを爆豪に巻き付ける。

 

『ヴィランチーム WIN!!』

 

そして、オールマイトが俺たちの勝利を確かに宣言してくれた。

 

「だぁああああああ!!クソがァアアアアア!!」

 

爆豪の叫び声が木霊した。

相当悔しがっているが、そっとしておこう。勝者の俺が口を出したらキレられそう。そもそも目が見えずにダメージ与えてきた時点でおかしいだろ。

それよりも葉隠さんだ。

俺が彼女に声をかけようとすると。

 

「拳王技くん!勝ったね!」

 

彼女の方から向かって言ってきたため、笑みを浮かべながら優しく声を掛ける。

 

「葉隠さんのお陰だよ」

「そんなことないよぉ〜拳王技くんの力じゃん、やっぱすごいなー!」

 

このこの〜、と恐らく肘で突いてくる彼女に苦笑いしながら、俺は彼女の言葉を否定する。

俺だけの力では無い。

 

「いやいやそんなことないって。作戦の時も言ったけど俺はあの技を使う際に目を瞑るし、確実に当てられたのは葉隠さんのお陰だ。でもまぁ…ここは()()()()()の勝利ってことで」

 

そう言って俺は、葉隠さんに拳を突き出した。

すると少しして、こつんと合わせられる感触があって。

 

「…だね!!」

 

顔は見えないと言うのに、目の前の彼女が満面の笑みを浮かべたような、そんな気がした。

 

「でもでも、拳王技くんの方が比率は上だから。そこは譲らないからね!」

「う、うん。俺からしたら葉隠さんのお陰で勝ったんだけどなぁ…」

 

妙なところで頑固な彼女に俺は小さく呟いたが、なんでもないと言いつつ彼女の手袋とブーツを取ってきて渡して着用を待つと一緒にモニタールームへと戻っていく。

にしても、もしかして彼女って俺のかめはめ波も曲げられるのではないだろうか。

ダメージはあるだろうから防御を固めるか俺が”気“を付与する必要性はあるけど、そうなると戦略幅が大きく広がる。

後は許容範囲が心配だな…太陽拳は問題なかったけど。

 

それからモニタールームに戻ると頭が冷えたのか冷静になっていた轟が目の前に来た。

ちょっと言いすぎたので、身構える。

 

「拳王技。悪かった……」

「……へ?」

「冷静さをかいた。もしお前じゃなければ……葉隠を巻き込んで怪我をさせていたかもしれなかった」

「…いや、俺も悪かったな。俺からしたらいい”個性“があるからと熱くなった。それにいい攻撃だったぜ? 両手痛かったし」

 

マントを返しながら謝罪してきた。

どうやら冷静になって色々と思うところがあるのだろう。

あの時の攻撃は俺でも巻き込まれたら相当なダメージだ。凍らせるという以上、支障が出るしな。

 

「いい”個性“か……」

「ま、クラスメイトなんだしこれからも一緒に過ごすわけだ。これで仲直りってことで」

「ああ。けど…なんにも聞かねぇんだな」

「そりゃそうだろ? お前にはお前なりの事情がある。お前が言いたいならいいけど、今は話したくないんだろ。それに誰にだって話したくないことがひとつふたつある。俺にもあるんだ、別に話したくないなら今すぐ話す必要ないだろ。話す覚悟が出来た時にでも話してくれよ」

「悪い。助かる」

 

”個性“という単語に暗い顔をしたのは気になったが、追及するつもりはない。

人には事情がある。踏み込んでいい領域とダメな領域。

だいたい長くいるわけでもなく対して関わりがないんだから話す必要なんて皆無だ。

俺にだってあるしな。

そうこうしてるうちに、オールマイトが口を開いていた。

そうだ。講評の時間---と思ったらオールマイトがなんかやけに巻きながら今日の授業が終わってしまった。

何か事件でも起きたのだろうか。

にしてはオールマイトの”気“が一気に弱くなったような……まさか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトも俺と同じく戦闘力をコントロール出来るのか…!!

流石No.1ヒーローなだけある。今のオールマイトは一般人より強い程度の”気“で普段見るような凄まじいものではない。

確かに戦闘力を最大限まで引き上げて維持し続けるのは体力の消耗が激しいもんな…。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。