無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
ふつーに気力が力尽きてました。実は貯めてたのってプロローグ〜3話くらいで、意外と上の方に二次創作日間ランキング入ってたので入ってる間は頑張るかーって感じで残りは全部一日で書いてました。評価低けりゃ全然書くつもり無かったし。
…ただいつの間にか書いてるうちにプロットが設定以外あの世に逝ったけど。
勝手にキャラ達が動くせいで、まるで最終回みたいな展開になってるけど全然違います。
突然現れた師匠。
ただでさえよく分からない空間に居て、自分が死んだんだと思い込んでいた俺はもう既に頭がパニックになり。
「し……師匠ぉぉおおおお!」
「おっと……ハハ、随分会わねぇうちに
「な、ないて、ないです……」
全力で師匠に飛びついていた。
そんな俺を軽々受け止めては、背中を軽く叩いてくれる。
嬉しさのあまり泣きそうになってはいたが、何とか堪えた俺は師匠の温もりに心から安心しきっていた。
落ち着く。
久しぶりの師匠の匂いだ。師匠の温もりだ。師匠の感触だ。
だいたい一年と23日12時間59分ぶりだ。
…いや、堪能してる場合じゃない。
気合いで状況を思い出し、名残惜しく離れた俺は質問する。
「そ、それよりどうして師匠が?それにここは? 俺が死んでないってどういうことですか?」
「順を追って説明すっさ。まずここは界、おめえの夢の中なんだ」
「夢の中……?」
「ああ、
師匠の言葉をすぐに理解する。
どうやら現実世界の俺は脳無の一撃で死んだのではなく気絶してしまったらしい。
夢の中と言われた瞬間には答えに行き着いていたが、仲間…というともしかして出久たちが?
あいつら、無茶を…。
「その状態だと現実世界じゃ話せねぇだろ?」
「はい。だから師匠が俺を呼んだんですね。流石師匠です!」
「ん〜正確にはオラが入り込んだんだけど……まぁ意味は変わんねぇしいっか!」
キラキラ、と尊敬の眼差しを向ける俺に師匠は苦笑したかと思えば、すぐに笑う。
やっぱり師匠は凄い。俺の意識を夢の中に呼び込み、なおかつ自分も他人の夢の中に入るなんて。
というか俺の夢の中って真っ白なのか。何も無いんだが。
「そりゃあ界に穢れがねぇからそうなってんだと思うぞ」
「!!ありがとうございます!」
思わず90度のお辞儀。
むしろ昔ならまだしも今の俺に穢れがあったら普通にビビるが。そんときは精神修行で邪気を祓わなくちゃならない。
そんなことはないので安心できるが、師匠からの褒め言葉は俺にとって最高の賞賛だ。
「にしても……」
「?」
「随分強くなったみてぇだな! 最後に見た時よりうーんと強くなってんぞ?」
「師匠……いえ、俺は全然です。あの脳無に負けて……あっさりやられて、何も出来ずに今ここに居ますから。そんな俺なんて全然---」
「ほれっ」
「フギャッ!?」
誰にも吐いたことのない弱音を師匠の前では吐いてしまう俺は、デコピンを受けて吹っ飛んだ。
まるでギャグ漫画のようにぐるぐるとローリングして止まると、師匠はゆっくりと歩いてくる。
間違いなく赤くなってるであろう額を抑えながら立ち上がると、理解出来ないまま師匠を見つめる。
多分、痛みで涙も出てる。
「し、師匠……すげー痛いです……」
「はは、悪い悪い。でも、今”気“を纏ってなかったろ?」
「え? ま、まぁ…師匠の前ですし…」
「以前の界なら今のでそんな簡単に立ち上がれなかったさ。オラもけっこー力を入れたってのに。十分強くなってる。それにさ、おめえはまだ”本当の力“を出し切ってねぇ」
「……? そんなこと。だって俺、脳無には自分が出せる本気で……確かに”アレ“は使ってませんけど…」
「いいや。そういった意味じゃねぇよ。こればかりは
どういうことだろうか。
師匠の言いたいことが分からない。
俺は確かに本気だった。それに下と思うのは当然だろう。
俺にとって出久や爆豪との組手は場所と”個性“の許可的にも本気でやれないから別として、修行相手が圧倒的に格上だったんだ。
「オラは知ってる。おめえはもっともっと強くなれる。あん時、怒りで”気“が上昇したのはそれが理由だ。感情が爆発し、隠された力がほんのちょっと表に出たんだ」
「隠された、力…?」
「そうだ。もう少し、自分を信じてみろ。そうすりゃ、あっさり壁なんて乗り越えられる。界の中にはオラですら見えないほどまだまだ底知れねえ力が眠ってんだ。
自分を信じろ。
いくら師匠の言葉でも、俺にはそれが出来なかった。
俺が信じてきたのは、あくまで師匠との修行の成果のみ。自分の力なんて信じたことは無い。
信じているなら、俺は俺自身を”強い存在“だと認識してる。それが出来ないから、俺はどれだけ修行しても”弱い“と思っているんだ。
そんな弱さなんて見せられないから…誰にも、表にすら出したことないけど。
あの時、俺が強かったら。あの時、俺が弱くなかったら。あの時、俺に力があれば。
何も無かった自分に、未だに囚われ続けている俺に自分を信じることは出来ない。師匠に救われても、なお。
俺はずっと、弱い。
「それでも…どうしても無理なら、オラを信じてくれ。大丈夫だ。おめえはオラの”弟子“だろ? 界ならやれるさ、オラが一番すげえってこと知ってからよ!」
「師匠……」
くしゃくしゃ、と乱雑に頭を撫でられる。
手から感じる温もりに、思いやりを感じられる。
ああ…本当に……。
この人はずるいなぁ。
これを本気で言ってくれてるんだ。
狙ってじゃなくて、本気でそう思って言ってくれてる。
この人にはずっと勝てる気がしない。いつも俺の心を救いあげるのはこの人だ。
だから修行を乗り越えられた。だから目標にした。憧れた。
その強さに。優しさに。純粋さに。その在り方に。
自分は信じられない。それはきっと、これから先も乗り越えるのは難しい。俺自身が、師匠に。”あの人たち“に。それでもいつか、あのステージへと登り詰める時には、きっと。
だから今は自分を信じられないけれど……師匠なら、信じられる。
「…もう大丈夫そうだな。戻ってやれ、おめえのために戦ってくれている
---”気“が送り込まれ、頭の中に映像のようなものが流れた。
『絶対に通させない……!!』
両腕の骨が折れてもなお、フルカウルを纏いながら脳無を足止めする出久の姿。
『あいつばっかり見てんじゃねェよクソ脳みそヴィランがァ!!』
動きが鈍くなる脳無に爆破を休む暇もなく与え続ける爆豪の姿。
『くそ……”個性“の限界が……調整する暇が、ねぇ…っ!!』
一個じゃ防ぎれず、体に霜が降りようとも何重にも氷結を何度も何度も生み出し、強引に脳無の速度を落として間違いなく脳無を抑える中核となっているであろう轟の姿。
意識のない俺の傍に守る形でいる相澤先生や切島くん、葉隠さんの姿。
俺が意識をなくしてからの
「行ってきます、師匠」
「おう! 頑張れよ、界!」
「はいっ!!」
本当はもっと、師匠には話したいことがあったけれど。
師匠に声援を貰った俺は急速に意識が遠のいていった。
「よっと……いや〜すまねぇな、オラのわがまま聞いてもらって」
「まったく、本当よ! ただでさえどうなるか分からない世界なのにあんな
「わ、分かってるって、
「とっっっても重大なことなの!! 歴史どころか宇宙が消える可能性があるの!」
「何度も聞いたってば〜。けどよ、界なら問題ねぇはずだ。そうだろ? あいつにとってこの戦いは今の自分の限界を超えるために必要なもんなんだ。だからオラは時の界王神様んとこに来た」
「む……だけど失敗したらあの世界が消滅する可能性が……」
「心配ねぇさ。あいつは絶対勝つ。オラはそう確信してる」
「…はあぁ〜〜〜っ。……まぁ悟空くんの弟子だものね……。それに
「ああ、別のオラたちに感謝しねぇとな。お礼にオラが戦って」
「絶ッッッ対。ぜーったいダメ!! というか悟空くんが戦いたいだけでしょ!!」
「ちぇっ」
「貴方はもう
大人しく弟子が頑張る姿を見てなさい! 彼もその方が嬉しいでしょうから」
「ああ、そうすっか!」
「はぁ、本当にどうしてどの歴史でも悟空くんは悟空くんなのよ……まぁ違ったら変な感じするけど…」
「時の界王神様、何のこと言ってんだ?」
「別に、こっちの話よ。ほら、見ましょう! 私も悟空くんや”あの方たち“ですら認めた彼の潜在能力…本気、気になるしね!」
轟くんと一緒に土砂ゾーンにワープした私は、自分なりに戦おうと決めていた。
最初に誰よりも早く飛び出した、拳王技くん。
みんなを守るために、ヴィラン相手に怖気付くことなく立ち向かった彼を見たとき、私は心から安堵しちゃった。
みんな恐怖心はあったはずなのに、その行動に勇気が貰えて。
だから気がついたら土砂ゾーンにとき、迷いなく行動出来ていた。
初歩的だから気をつけて、と教えられた気配の隠し方。
それを利用して行けそうなら数を減らして、無理そうなら一緒に来た人と逃げる。
そう思ってたんだけど……轟くん、強すぎてあっさり無力化しちゃった。
今回で三回目だから私も避けられたけど、せっかく教えてもらったのに無駄になった気配を隠す方法をやめて話しかけたら、少し驚いてた。
私に気づいてなかったのかな? だったら成功かも。
ちょっとは物にできたよ!と今はいない拳王技くんに報告しつつ、私は話を聞き出すといっていた轟くんの後ろや横を警戒するようにした。
するとまだ巻き込まれてなかった人がいたみたいで、手袋を取ると近くに投げる。
突然何かが落ちてきたからか、その人が近づいた瞬間。
私はその人の顎をジャンプの勢いと共に全力で打った。
なんでも脳震盪を起こせるだとかで、今の私でも
心の準備が出来てないからこそ、相手に有効だって。
それはその通りみたいで、目の前にいた人はゆっくりと後ろに倒れてた。
怖いくらいに上手くいって、轟くんに心配ないよ、とアピールするように手袋を付けてVサインすると、目を見開いてる気がした。
その後は、一応との事ですぐに凍らせてたけど。
ふふん、このことは拳王技くんに自慢しなくちゃ。私も戦えるんだよーって。どんな反応するかな?
いつまでも守られる私じゃないんだよ! 私もヒーロー科に入学した生徒の一人だし!
それから轟くんはちょっと怖いほどに脅して目的を聞き出してた。
オールマイト先生を確実に殺す算段があると聞いたから協力しただけと。
それ以外は知らないようで、気絶させた後に私はどうするか聞こうとして。
「轟くん、あれ……!」
「あれは……拳王技?」
土砂ゾーンから見えたのは、宙に浮く拳王技くんが黄色い、確か”気功波“を地面に向かって撃ってるところだった。
「あいつはもう広場に行ってる見てぇだな。そりゃそうか…俺は行く。葉隠は入口に戻って皆と合流を……」
轟くんの言葉が聞こえず、私はもう既に走っていた。
どうしてか分からないけど、戻ったら後悔しそうで。
遠くて分かりづらいけど、あんな顔見たことない。私の知る拳王技くんはいつも笑顔で、何処か幼い子供のような楽しそうな顔をしてた。
でも今は、全く余裕のない感じで…。
凄く、嫌な予感がする。
「葉隠……!」
「私も行く! お願い、力になれるか分からないけど何かあったら助けることは出来るかもだし…!」
「…分かった。なら急ぐぞ。オールマイトを殺す算段…あいつなら心配ねぇだろうが、何かあってからじゃ遅い」
「うん!!」
ちょっと遠いのと足場が悪いのもあり、時間がかかった私たちは何とか辿り着くと、よく分からない状態になっていた。
倒れている拳王技くん。両腕が折れて意識が朦朧としている相澤先生。体を起こそうとしている切島くん。必死に爆破しながら動いている爆豪くん。
そして、右腕が折れている緑谷くんに迫る脳みそヴィランの拳。
「葉隠! 拳王技を頼む!」
あまりに悲惨ともいえる光景にショックのあまり愕然とする私と違い、既に氷結を形成していた轟くんの手によって巨大な氷が生み出され、全員の体が浮いていた。
そのお陰でギリギリ救出され、私はハッとするとすぐに滑る拳王技くんの体を抱きしめるように受け止めた。
「悪い。遅れた」
「キャッチ……!って…うそ……すごい怪我……!?」
けれど。
受け止めた拳王技くんの体は、信じられないくらいに酷かった。
左腕は折れて頭からは血は流れて止まることなく出血して、口が切れたり鼻が折れてたり。
生きているのが不思議なほどにボロボロで。
とても、信じられなかった。
あんなに強い拳王技くんが。間違いなくプロヒーローレベルの彼が。
こうもあっさり死にかけている状態になってるなんて、嘘だと思いたかった。錯覚だと思いたかった。
でも現実で。
「っ、道理で拳王技がやられてるわけだ…! そいつは大丈夫なのか!?」
「う、うん! 大丈夫、まだ生きてるよ! でも意識がないみたいで……」
すぐに心臓が動いてるか確認した私は反射的に返事したけど、ほとんど頭に入っていなかった。
頭が真っ白になって、手を握って、少しずつ、冷たくなってる気がして。
「は、葉隠……」
「せん…せい……?」
緑谷くんや爆豪くん、轟くん。
界くんを除けばトップスリーの実力を持つ三人が足止めしてくれてるみたいだけど、信じたくない現実を目の当たりにして、
先生自身も意識を保つのがやっとなのか、たどたどしい喋り方で何も出来ない私に指示してくれた。
何も考えず、考えられず、先生の捕縛布やマント、拳王技くんのコスチューム---特別製じゃなかったのが救いで簡単に破けたため、手伝うように言ってくれた切島くんと一緒に必死に先生の指示の元、応急処置をこなす。
血は止まらない。時間が無い。
それは素人目から見ても分かることで。
「ちく、しょう……俺が……強けりゃ……! あいつらみてぇに……」
隣で両膝を突いてる切島くんが悔しそうにそう言っていた。
切島くんも怪我をしている。多分、私たちが来る前に彼を守って。
そのことに気づいて何かしようと思ったけど、彼はいらないと言っていた。
---同じだ。
無力感に苛まれる。
数分前の私は守られるだけじゃないって思ってたのに、何も出来てない。何も出来ないんだ。
私じゃ邪魔になっちゃうから、彼の傍に居るくらいしかできない。相澤先生が居なければ、何も出来ずにいただけ。
あのヴィランの狙いは拳王技くんらしいから、抱えて逃げることも出来ない。そうしたら間違いなく突破してこっちに来る。
緑谷くんはいつの間にか両腕が折れて、爆豪くんは籠手が壊れて、轟くんは凍りかけていて。
三人とも必死で限界で、私だけが何も出来ていない。
このままじゃ、死ぬ。拳王技くんも、みんなも、あの脳みそヴィランの手で。
私、やっぱり何も出来ないのかな…。見てるだけじゃ嫌だから強くなりたいって。そう思ったんだ。
入試の時助けられて、戦闘訓練では拳王技くんのお陰で勝利して、マスコミ騒動の時も守ってくれて。
私自身は何も変われてない。もらってばかりで、役に立たない自分に涙が出てくる。
「ぐぁ……や、ばい……!!」
「がふ……。ろ……逃げろ、てめぇら!!」
「っ、だめだ…もう氷が……」
「くっ…そぉおおおお!!」
均衡が崩れて、三人が地面に伏せていた。
そんな中、切島くんが”個性“を使いながら足止めするように脳みそヴィランに突撃する。
でも、そんな勇敢な行動ですらヴィランは簡単に踏みにじって、蚊を払うように腕を軽く動かすだけで切島くんが吹き飛んでいく。
邪魔者が居なくなったからか、ゆっくりと歩いてくる。
そんな知能は感じさせないのに、恐怖心を煽るかのように。
みんな、もう動けない。
動けるのは私だけだ。
私がやらないと。私が動かないと。
体が震える。怖い。こんな相手にみんな立ち向かうなんて。戦ってたなんて。
死の恐怖を感じる恐ろしさを、身をもって知る。
体が動かなくて、涙が溢れて。
「め、ろ……。れ…のとに…手を、出すな……ッ!!」
相澤先生は、脳みそヴィランの前に立っていた。
私たちを守るように。
そして力の入ってない体で押し止めようとして、振り払われた。
障害がなくなり、脳みそヴィランはギロリとした目を向けてくる。
何も感じられない目。殺意も悪意も、感情がないような。
その目は私を見てなくて、ずっとずっと拳王技くんだけを見ている。多分、最初からずっと。
見られてないのに、凄く怖くて。
でも、でも。
何も出来ないのは、もっと嫌!!
「こ…ここは……ここは絶対に通さないから!!」
震える脚で立ち上がって、両腕を広げる。精一杯自分の存在をアピールするために、大声で。
私が立ち向かっても、意味無いのは自分がよく分かってる。怖くて震えてるし涙は出てるし、死ぬのは嫌。
まだヒーローとして歩み始めたばかりだし、友達が出来たばかりだし、誰かを好きになったり、恋愛もしてないし、もっともっと生きて青春もしたい。
でも彼は、彼はヒーローとして活躍出来る将来がある。きっといつかトップヒーローたちのような、すごいヒーローに。
私の犠牲で助かる可能性が0.1%でもあるなら。
1秒でも、2秒でも、そんな一瞬でいいから妨害出来たらよかった。
脅威と思われてない私に対して、脳みそヴィランはゆっくりと、ゆっくりと拳を引く。
分からない。
もしくは死を前にして、私の体感がゆっくりに感じられてるだけかもしれない。
かもしれないじゃなくて、そうなんだ。
今までの人生が思い返されていく。
とても戦闘向きじゃない”透明化“。
私の顔を自分と家族は知ってる。
両親を恨んだこともない。優しくて温かい、大切な家族。
誰かを救う姿に憧れてヒーローになりたいと思った自分。
危険だからと心配はしてくれたけど、どうしても受験したいと言ったらなんだかんだ、応援してくれた家族。
入試の時に、助けてくれた拳王技くん。
雄英に入ることが出来て、家族と一緒に喜んだ。すごいと褒められた。
個性把握テストで拳王技くんが”無個性“なのにとっても強いと知った。
すぐに新しく、友達が出来た。
戦闘訓練では間近で見たからこそ、本当の強さを知って、彼に守れるだけじゃ嫌だと思った。
マスコミ騒動のとき、守るためとはいえ、本当は騒動が収まったあとドキドキとしてたことを悟られないようにした。
今日ここで、死にかけている拳王技くんの姿が、自分が死ぬよりも嫌で怖くなった。
もう誰とも会えなくなるんだと思う。死んだらどこにいくのか、昔考えたことはあるけど。
死ぬ。多分、一撃で。
痛いのも死ぬのも嫌だけど…最後に、最後くらいは私も守られる側じゃなくて、ヒーローで居させてね、拳王技くん。私の精一杯のお返し。
そして私の一生のお願い。
神様がいるなら、どうか拳王技くんを守ってください---
『ああ、心配すんな。その願いは、ちっと違う形で叶うからな』
頭の中で、男の人のそんな声が聞こえた気がして。
どれだけ経っても、痛みが来なかった。
自然と閉じられていた目が開かれる。
強く目を閉じていたのと涙を流した影響かボヤける視野が回復した先には---
「もう、大丈夫だよ、葉隠さん」
さっきまで意識もなく死にかけていた拳王技くんが、脳みそヴィランの攻撃を
掌で、倍以上はある拳を。
安心させるためにか、私に笑顔を向けて。
「遅くなって悪かった。出久。爆豪。轟。切島くん。相澤先生。そして葉隠さん。お陰で……死なずに戻ってこられた」
状況は夢の中で見た。あとは俺がなんとかする
何処かここに来る前と違うような、自信があるような言い方ともに。
私は腰が抜けたようにその場で座り込んでしまい、安心感からかそれとも死の恐怖から解放されたからか、恐怖と違った形で涙を流しながら呆然と脳みそヴィランを吹き飛ばしていた拳王技くんを見ていた。