無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
それから。
一日も無駄に出来ないと思った俺は、大猿が暴れた影響で死体が見つからなかったため、精神的な疲労もあったからかテントの中で気絶するように眠りについた。
夢を見ることがないくらい疲れ切っていたみたいで起きると両親の形見に手を合わせて、強くなることを誓った。
そして悟空さんの元へ歩こうとしたとき、違和感を覚えた。
何か一瞬、
「ありゃ? そっか、こっちに来る前になんか
「え? 悟空さん?」
「こっちの話だ。どうやらおめえは”気“に
「ぱ、ぱおず…やま……?」
後ろから歩いてきた悟空さんがそんなことを言っていた。
パオズ山とはどこだろう。
聞いたこともない。
スマホ…つながらない。電波の届かない場所?
山は色んな県も行くから知ってるつもりだったけど。
「もしかすると、ここならあるかもしんねえな……っし、オラに掴まれ!」
「は、はい…! って、え……ええええっ!?う、浮いてる!浮いたあ!?」
言われてしゃがまれたので背に掴まると、なんと体が宙に浮いた。
”個性“がある世界で驚くものでは無いが、明らかに違うものだ。
驚く俺を気にせず、悟空さんは移動を開始した。
俺は必死に掴まって、その光景に、美しさに、ただただ魅力された。
とても、今まで見たことないくらい豊かな場所だったから。
綺麗な場所だったから。
そうしてるうちに、ひとつの小屋が見つかった。
迷いない悟空さんについていきながら、扉を開ける姿に焦りを覚える。
「だ、だいじょうぶ…ですか?」
「心配ねえさ。どうやら本当に再現されてるみてえだな。ここはオラがじいちゃんと暮らしてた小屋なんだ」
「おじいさん…?」
「そっ。といっても血は繋がってねえけんど。それでもオラにとっては親はじいちゃんだ。それに拳法を教えてくれた初めての師でもある。温厚で心優しく…よくふかふかキンタマクラしてもらってたっけなぁ」
「……悟空さんにとって、俺の両親みたいなものなんですね」
昔を懐かしむ目を見て、悟空さんがそのじいちゃんという人が大好きだったというのは伝わってくる。
凄い人だと思ってたけど、この人もちゃんと、俺みたいに親が大好きなんだ。
「へへ、まあな。けれどもしかしたらオラがいたパオズ山と変わんねえかもしれねえな……なら」
「おわ、ご、悟空さん?」
急に抱えられて驚くと、また空を飛んでどこかに行く。
すぐ近くに、別の家があった。
今度は小屋では無いけど、なんだか独特な家の形。
「オラたちが暮らしてた家もあるみてえだ…。ただ
「???」
「ま、いいか!」
いいんだ……。と思ったが、あまり物事を深くは考えない、能天気で軽い性格から来るものなのだろう。
これも強さの秘訣なのかな…うん、悟空さんのことは全部学んで吸収しよう。
「そんじゃ、まずは体作りから---」
ぐうう〜
ぐーっ
朝起きた時に心の準備を出来たことを伝えていたため、早速修行。
と思ったのだが、見事二人ともお腹が鳴ってしまった。
「…腹ごしらえからだな!」
「はい…!」
「し、しにますしにますしにます!! い、イノシシ!?で、でがすぎ…!?」
「お、”気“は感じてたけど本当に居たなぁ」
「ご、悟空さんー!?」
ムシャムシャムシャムシャ
「む、むう……味付けしたい……と、というかすごい食べますね……」
「ほうか? ふぇんふぇん足んねえぞ?」
「ええ……? つ、次からはおれ、味付けしたり料理しますね…!たしょうなら、できるので!」
「ほうか! そりゃ楽しみだな!」
「い、いや。ちゃんと噛んでください…」
「まず体作りから始めっぞ! 体が出来上がってからじゃなきゃ何も出来ねえからな!」
「はい!」
「とりあえず、腕立て伏せ1000回くらいからやってみっか!なれたら桁増やすからな!」
「はい!…え?」
「う、うでが……ぷる、ぷる……」
「まだ150回ほどじゃねえか。がんばれ!」
「う、うぉおおー!」
「ぜえ、ぜえ……」
「次は腹筋だ!」
「はい……!!」
背筋。スクワット。プランク。走り込みなどなど。
半分意識飛んでたし限界を超えてやったせいで動けなくなり、その次の日、普通に筋肉痛で動けなかった。
全身を襲う筋肉痛の痛みを必死に我慢しながら、俺は料理をしていた。
両親と一緒にやってたから、少しは出来る。
人差し指一本で余裕で逆立ちしている悟空さんを見つつ、ふと思った質問をする。
「そういえば…悟空さんって”個性“なんですか?」
「”個性“ってなんだ?」
「え?」
「へ?」
「えっと…”個性“ですよ?」
「んん? そういやおめえ、自分のこと”無個性“とか言ってたな…それと関係あるんか?」
どうやら本当に知らないらしく、俺は”個性“について簡単に説明した。
現在だと世界総人口の約八割が特異体質の”個性“に目覚めていること。その中の二割として存在し、若い世代には絶滅危惧種レベルで珍しい何の力もない”無個性“がいること。
自分がその”無個性“で幼馴染にも一人いること。
「へえ〜つまり超能力みてえなもんか。確かに山に居た時はそこら中で妙な”気“ばかりだった。オラ達が扱う”気“とは随分違ぇようだ」
「あの…”気“って?」
「ああ、言ってなかったな。これは体が出来上がったら教えるつもりだったやつだけど」
”気“とはいわゆる誰もが持つ潜在的な力。
体内エネルギー、精神エネルギー、生命エネルギーとでも言えるもので、それをコントロールして自分の身体能力を上げたり破壊力をあげたり気配を読んだり、空を飛んだり、体外に放出してエネルギーとして撃ち出したりと色々出来るらしい。
「もう”個性“じゃ……?」
「ん〜そうはいっても、この世界のヤツらにも”気“はあるしな。”個性“と違ってそれぞれが持つ特異な力ってわけじゃねえんだ。界も自覚してねえだけで、あん時に使ってっぞ?」
「え? おれが……?」
「ああ、オラが
「もしかしてあの男が吹き飛んだのって、それ…?…え?というか世界って…?」
「オラはこの世界……いや、この宇宙、次元? とにかく別んとこから来たんだ。正確には、
頭が混乱しかけたが、悟空さんは説明してくれた。
本来自分がいる世界はもう自分の役割が終わったこと。
さっき説明された”気“というものを使って長く戦い、地球を守ってきたこと。
他の宇宙の存在。
俺を襲った正体が戦闘民族”サイヤ人“であり、地球人に酷似するが尻尾が生えているという違いがある種族であること。地球人より若い姿のままいる期間が長く、寿命が少し長いこと。凄まじい大食いで、最低でも地球人の数倍以上は食べること。
”戦闘力“、”気“の総量によって変わるが、分かりやすく言うとその人のことを現す強さの平均が高いこと。
満月を見たらブルーツ波なるものを吸収し、”戦闘力“が10倍になる大猿に変身すること。
星を売ることを生業とする他に好戦的で子供だろうが仲間であろうが、たとえ同族でも殺すような存在であること。
”サイヤ人“だけでも情報がとんでもなく多いが、悟空さんも”サイヤ人“であること。
「今更だけど、オラはおめえの両親を殺したやつの同族だ。地球育ちの”サイヤ人”とはいえ、嫌なら嫌と言っていいんだからな?」
「いえ……その、確かに両親を殺した”サイヤ人“は好きじゃないですけど……悟空さんは、べつなので…。最初に見た時から、この人は信じていいって…おもいましたし。全員が悪いわけじゃ、ないとおもいますし…」
「そっか…界はきっと優しくて強いやつに育つぞ」
母と同じことを言われ、また涙が出そうになったが何とか堪えて、心配してくれる悟空さんに続きを促す。
それから、なんでも願いが叶う不思議なボール、ドラゴンボールのこと。
「ほれ、これがドラゴンボールだ」
「わ……綺麗なボール。星…四つある……」
「四星球ってんだ。オラにとってじいちゃんの形見だった大切なもんだ」
「か、形見…! そんなだいじなもの…お、おかえしします…! でも、なんでもって…何かありそうでこわいかも…」
「おっ、よく分かったな。あんまり願いを叶えすぎちまうとまた”マイナスエネルギー“が貯まっちまって”邪悪龍“ってのが出てくるんだ。今のオラならともかく、この世界のやつらじゃでんで太刀打ち出来ねえだろうさ」
「それは……なんというか、やばいですね……」
「ああ、本当に強かったぞ。あん時のオラじゃ悔しいけど一人だと勝てなかった」
「えっ、悟空さんでも…?
あの、おれ、悟空さんのこと、もっとしりたいです。もう情報がいっぱいいっぱいだけど……きになりますし」
「おう、いいぞ。ただオラも結構たくさんのやつらと戦ってきたからな。あんまり一気に教えたりしちまうとパンクすっからちょっとずつ記憶に送り込むようにする。それに……今は気を紛らわせた方が寝れるだろうしな」
悟空さんの気遣いは、有難かった。
正直寝不足だ。
もちろん、理由は両親が殺されたことが夢に出てきたから。
一日目と違って整理出来てしまったから、余計に夢に見たのだろう。
そうして、一年の月日が経った。
俺の体は初めて会った時よりも筋力がついて、身長はあんまり伸びてない。
筋トレやらパオズ山の岩山に放置されたり巨大な魚やサメが泳いでいる場所に連れていかれたり猿と何故か競走したり恐竜に殺されかけたり、精神の修行にも俺のためにもならないとのことで悟空さんは見守ってただけだった。多分、やばかったら助けてくれたと思うけど。
でも、俺は信じてやり続けた。
悟空さんは俺よりも、いやこの世界の誰よりも強いから。
夢で見せられた。
世界征服を狙う悪の軍団とドラゴンボールを奪い合った話。
その殺し屋や幹部。
地球の神から分離した世界征服を企む”魔族“の存在。
永遠の命を手に入れ、世界征服を狙った魔族の存在。
悟空さんの肉体を手に入れようとした悪魔の科学者。
自分の本来の兄だった”サイヤ人“や他の”サイヤ人“。そして
まだまだ居るけど、悟空さんの世界狙われすぎじゃ…?と思った俺は悪くないと思う。
しかもどれも悟空さんと仲間たちが戦ってる。
敵が強大すぎて、死ぬことも。
”ドラゴンボール“に頼って、生き返らせることが出来たらしいけど。
これだけでも十分というか、間違いなくオールマイトを超えてる。
流石に平和の象徴でもここまでの偉業は達してない。
だって、この時点で悟空さん最低でも既に世界を五回も救ってるし…。
こんなの見せたら夢で魘され続ける俺がいつまでも前に進めてないようで。
俺を命を賭して救ってくれた両親に顔向けも出来ないから、気合いで悪夢を消し去った。
俺は二人のためにも強くならなくちゃならないから。これ以上、同じ人を生み出さないために。
やっと肉体が出来上がってきたから、本格的に武術に入るらしい。
”気“なるものはまだ先とのこと。
ちなみに実は、必殺技みたいなのを見せて貰ったことがある。
すごかった、色々と。
両手に凝縮された”圧“がすごくて、驚いた。
気功波の一種らしい。
練習しようかと思ったけど、危ないからやめた。
やり方は覚えてるけど、何かあってからじゃ遅い。
「だいぶよくなってきてるな。正直オラはもう少し時間をかけてやるつもりだったけど…界はオラの想像以上に成長が早え。
これなら戦い方を教えられそうだ。まずはオラに一発当ててみることから考えてみろ。オラの動きをよく見て、よく学び、それをものとするんだ。実践しながら基礎を叩き込んでいくぞ!」
「はい…!」
「じゃ、始めっか!」
まあ、あんなに凄い者たちと戦ってきた悟空さんに初心者でようやく肉体が出来てきた俺なんかが一発すら与えられるはずなく。
全然当たらないので諦めないように粘りつつ、俺はひたすら悟空さんの体の動きを見逃さないように観察し続けた。
次の日。
日課となった筋トレを終え、悟空さんと対峙する。
地面をかけ、拳を突き出すとあっさりと止められる。
「攻撃の動作が見えちまってるし狙いがあからさまだ。そんなんじゃ通じるのは格下くれえだぞ。もっと鋭く素早く強く、全身を使って打ち込んでこい!」
「そ、そう言われても……!」
両足と両腕が、すごく重い。
それぞれ5kgの重りを着けることになっていて、いくら鍛えたとはいえまだ7歳の肉体。
流石に20kgは十分重い。自分の体重よりちょっと少ないかなレベルなのだ。
リストバンドとブーツ、これで20。
日常生活でやる分には慣れてきたが、実践となれば別だった。
「いいか、動きにムダが多すぎたらすぐ息を切らしちまう。だからクセがつかねえようにしなきゃダメだ」
「む、むだ……はい!」
半年後。
重りが増えた。
慣れてきたので普通に攻撃を仕掛けるが、足や腕を使っても片手で全部防がれてしまう。
半年経って思ったが、どうやら俺には戦いの才能はないのかもしれない。
たまに飛んでくる攻撃を必死に避け、距離を開けるように後ろへ下がる。
すぐに詰められ、同じく詰めると即座に腕、と思わせて蹴り。
フェイントすら簡単に気づかれてしまった。
「お、今のは良かったぞ。けど、防がれたら次の動作に入らなきゃこうなる」
「ぶべっ!?」
デコピンを受けて転がる。
木にぶつかって止まったが、額を抑えながら息を整える。
ぽたぽたと落ちていく滴を拭う。
やっぱり全然届かない。体を鍛えても、弱いままだ。良かったと言ってたけど、悟空さんなら簡単に止められるだろう。
どうすればいい…? 身体の動かし方、避け方、攻撃の仕方、全部教えられても上手くいかない。
「っ、ふうう……」
落ち着け。
冷静にならないとダメだ。
戦いにおいて熱くなりすぎると周りが見えなくなる。
教えられたことは全部吸収するんだろ!
強くなるには、俺は弱いから。
だから吸収して……。
吸収……して……?
「…今日はここまでにすっか。界の体力も残り少ねえ。まだまだ時間はあるし、あまり焦っても仕方ねえさ」
ああ、そうだ。
何を勘違いしてたんだろう。
根本的な部分は同じだ。
そう、俺は弱い。
弱いから守れなかったんだ。その部分を決して忘れちゃならない。
誤解してた。
俺はきっと、強くなるには人の何倍も努力しなくちゃならない。”無個性“だから。力がないから。
そんな弱い俺が強い俺であろうとしても、タカが知れてる。
なら、俺は
悟空さんも言ってた。
よく動きを見て、よく学べと。
だったら俺がやることは、ただひとつ―――
「……?なんだ…? 雰囲気が……」
「ッ!」
「……!!」
悟空さんにとっては遅い動きだろう。
しかし俺は何度も何度も攻撃を仕掛ける。
今までの動きを捨て、父や悟空さんの教えでもなく。
その動きは。
「っ、だァ!」
「おっ!?」
初めて、俺の拳が掠った。
髪の毛。
ほんの一部。
全然ヒットしてないけど。
あ、やばい。
親指を曲げ伸ばした手のひらを外側にした悟空さんの手が刀のように迫ってくる。
着地した俺は、そのまま手刀を。
「あで」
コン、と軽く叩かれた。
てっきりちょっと強い一撃が来るかと覚悟していた俺は、意外にも弱い威力に目をぱちくりさせる。
「驚いたぞ。おめえ、オラの動きをそのまんま自分に組み込んだんか。まるで昔のオラとぶつかり合ってるように感じたぞ」
「……あ。はい。その、俺の中で強い人物…悟空さんの動きを真似て…でもそれじゃ通じないから、悟空さんの動きを自分の体に再現しつつ自分と混ぜる…みたいな感じで。夢で見てたので」
「なるほどな……ただ真似るんじゃなくて自分なりに変えたってことか。確かに界には合ってるかもしんねえな……さっきよりも動きが別もんだった。よし、じゃあ後はその感覚を体に馴染ませるとすっか!」
「…!はい!」
それから、俺は悟空さんの流派とも合ってるらしく習った。
よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む 人生を面白おかしく張り切って過ごせ。
それが悟空さんの師匠の言葉らしい。
それが”亀仙流“。
確かに実践してた。
それに俺は0を1にして新しく生み出すようなタイプではなく、1を2に、次々と拡張するタイプらしい。
前者が天才型として組み込むなら、俺は秀才型寄りというべきか。分かりやすく言うなら天才は感覚。秀才は理屈。
だからこそ亀仙流の独学で学び取る方針は応用向きの俺には合っているのかもしれない。
結局悟空さんに教えられたものよりも自分でスタイルを確立させたわけだし。
まぁ教えられたのは基礎でしかないというのもあるが……。
こうして俺は、ようやく戦士として、武道家としての一歩を進むことが出来たのだった―――
懐かしい夢を見ていた気がする。
俺が初めて師匠と出会った時のこと。
武術を教わった日の日々。自分なりの戦い方を見つけた日のこと。両親を喪って、俺にとってもう一人の親であり、師が出来た人のこと。
この時の俺はまだ、師匠を師匠と呼んでなかった。
もう少ししたら、呼ぶことになるけど……夢は醒めてしまったらしい。
もうちょっと思い出したかったな、とは思ったが重たい瞼を俺は開いた。
「……知らない天井だ」
天井なんていちいち覚えてないが、基本的に使ってるのは師匠が暮らしていた家か自分の家だ。
そのふたつとも違う天井なので、どこか知らない場所なのだろう。
電子音。そして自分の体を覆う包帯。ベッド。
病院か。
ひとまずナースコール用と思わしきボタン…押せない。
見事両腕が塞がってる。
頭突きで何とかした。
なんというか”気“が上手く練られなくなっている気がする。師匠が言ってた病気とはちょっと違う…多分ボロボロな肉体で無理しすぎた影響か。
ま、いいか。
待つ合間、暇だったので筋トレした。
すぐにやってきた看護師と医師の人に怒られてしまった。
それからすぐ包帯ぐるぐる巻きのミイラマン、もとい相澤先生がやってきた。
医者の人が筋トレしてたことをチクってきたせいで、先生にこいつマジかみたいな目を向けられた時は目を逸らした。
だって師匠もしてたし……。
「先生が無事みたいでよかったです。てっきり妖怪かミイラマンかと」
「お前よりかは軽傷だよ。そんな冗談言えるようなら問題なさそうだな」
「体は。”気“が練りづらいので、数日は上手く戦えないと思いますけど」
「そうか……」
「みんなは?」
「緑谷は両腕が”個性“による反動があっただけでリカバリーガールの治癒で間に合っている。他の面々もな」
「そうですか、よかった」
懸念していたことがなくなった俺は安堵の息を吐く。
俺はなんとか守れたようだ。ただの脳無ならまだしも、あの急激な進化は一体なんだったんだろう。
「…拳王技。はっきり言ってよくやったと言ってやりたいが、俺は立場上お前の行動を褒めることは出来ない。プロヒーローとして教師として叱ってやらねばならん」
「はい」
「だが助けられたことは事実だ。あの場でお前がいなければ全滅していたかもしれない…いや、確実にしていた。だからこれはプロヒーローの
ありがとう。みんなを救ってくれて。お前はあの場で誰よりも立派なヒーローだったよ
「あ、相澤先生……変なものでも食べました?」
「ここは素直に受け取れ」
「い、いやちょっと流石にそんな真面目にされると…えっと、照れるので……やめてください。そ、それより学校は? もしかして一週間くらい経ちました?」
「まだ一日だ。今日は休校だったからそれほど心配する必要は無い。むしろお前の回復速度が異常なんだ。全身の骨が折れていたっていうのに…普通ならまだ目覚めてないぞ」
「まぁ死にかけるのは慣れてますし…」
「慣れるものじゃないんだが……」
胸貫通したこともあるから割と骨が折れるくらいはマシというか…師匠に注意されてたのに”界王拳“の限界を超えるために無理してやったときなんて全身の骨が折れるどころか全身から血が吹き出てあの世に召されかけたし。
回復が早いのは”気“の影響もあるかもしれないけど。
何よりあの人の一撃に比べればマシだ。めちゃくちゃ加減されて一撃で半分死んだんだぞ。
なんて考えたら、足音が聞こえた。
「わーたーしーがー……静かにお見舞いに来た…!」
「やあ」
「オールマイト……と校長先生? あと…」
病院だからか流石に小声のオールマイトとその肩に乗る校長先生。
そして小柄な体に一つにまとめたお団子髪。それをまとめる注射器型の簪を身につけている知らない老女が居た。
「彼女はリカバリーガールさ。”個性“は”癒し“。色んな”個性“がある中、珍しい治癒能力の”個性“だね」
「ああ…そういう」
わざわざ連れてきた意味を理解する。
「私の”個性“は体力を使うんだよ。ここに運ばれた時や寝てるあんたに使うことは危なくて出来なかったからね。今なら問題ないだろう?」
「大丈夫です。筋トレするくらいには有り余ってるんで」
「え…拳王技少年…その体で筋トレしていたのかい…?」
「やべ……」
自ら墓穴を掘ってしまうと、オールマイトとリカバリーガールから呆れたような目を向けられた。
というか、ドン引きされてる気がする。
「全く。その体で無理するもんじゃないよ。ただまあそんだけ元気があるなら問題なさそうだね。早速治すよ」
「お願いします」
ご年配の方なのでゆっくり歩いてくる彼女に頭を下げる。
正直回復するなら有難いものだ。
多分、師匠の記憶にあったメディカルマシーンだっけ。それみたいな感じなのだろう。
『チユ――――!』
なんて思ったら突き出た口がギブスに覆われた手に触れた。
まさかの方法にびっくりしたが、それよりも体に変化が訪れる。
「お、おおお……治ったァ!!」
ぴょん、とベッドの上で跳び上がった俺は全身に力を込めるとギブスが外れる。
オールマイトだけじゃなく、相澤先生も校長先生もリカバリーガールも驚いているように見える。
しかし、急速に体が重たくなった。
なんだ?”気“が滅茶苦茶減ったんだけど……最大まであったのにもう半分も残ってない。たぶん、かめはめ波数発分くらいだ。
「驚いた……どういう体力してんだい、あんた。私の”個性“は治癒力を活性化させるもの。本来ここまでの怪我なら休む必要あるし完治なんてしないんだけどね…まさか回復しきるなんて」
「あー……えーと…」
「それも”気“ってやつかい?」
「あ、はい。まあそんなものです。俺の場合は”気“の総量が多いので」
”気“を知っていることには驚いたが、まぁ彼女の立場なら教えるべきものだから文句はない。
保健の先生だし、”個性“や”力“を知らないと大変なことになる可能性もあるからな。俺の場合だと”界王拳“だが、”個性“が体力を大きく使うものなら体力のない状態でさらに体力を使うと死ぬ危険性がある。
しかし”気“が大きく減ったのはこういうとこか。
もしかしたら総量を上げる裏技としてはありかもしれない…が、多分怒られるな。
「とりあえず今日は無理せず寝てるんだよ」
「はい。それで…どうして校長先生やオールマイトが?」
体力はまだあるので問題ないが、今は話す時間だ。
ちょこん、と言われた通りにその場に座りつつ俺は本題へと入る。
「君にお礼を言いに来たのさ。ありがとう、拳王技くん。そしてすまなかった」
「私からも謝罪させて欲しい。すまなかった、拳王技少年」
「え、急になんですか…あの、なんのことか…」
急に頭を下げられて、困惑する。
学校のトップとヒーローの頂点がただの学生に頭を下げてるんだ。意味が分からない。
「マスコミ騒動のことは覚えてるかい? 相澤くんにヴィランの仕業だと聞いていた。君が自分の”力“の秘密まで教えて伝えてくれたというのに。だからこそ、こうなることも予想すべきだった。慢心が招いた結果だ。君が居なければ他の生徒たちも先生方も最悪を迎えていたかもしれない。その謝罪と感謝さ」
「私も同様だ。私がもっと早くに駆けつけていれば、君がこれほど怪我をすることもなかった。もしかしたら手遅れになっていたかもしれない。平和の象徴など持て囃されているが、生徒一人守れないとはなんと不甲斐ないことか……!!」
理由は分かった。
確かに俺は伝えたが、こうなるとは予想外だろう。
俺だってあの脳無が急に強くなるなんて思わなかった。
オールマイトは拳を強く握っている。力みすぎて震えるほどに。彼は神様でもないんだ。全てを守れるわけじゃない。
そもそもオールマイトに頼りすぎるのは違うだろう。
本当はオールマイトに代わって別の誰かがやらなくちゃならない。いつまでもオールマイトは永遠のヒーローとして居られるわけじゃないし。
「いえ、気にしないでください。俺が守りたいからしただけですし、本来生徒がしてはいけない行動だというのは理解してます。むしろ怒られる方だ。オールマイトも…意識を失う前だけど来てくれましたよね。もしあのタイミングで来てくれなければ俺は落下死してました。オールマイトはちゃんと一人の生徒の
「拳王技少年……」
「それに体の件については自分のせいなんで。本来俺が使った技はボロボロの体で使っていいものじゃないですし」
そう、俺の体の件については自業自得だ。
あの場を打開する方法として可能性の高い方を選んだが、”界王拳“とは万全な状態でも肉体に多大な負荷を与える。
俺も一定の倍率以上にすれば体が持たない。3倍やら4倍は体力が通常以上に消耗する以外はいつもなら余裕だが。
「とにかく!そういうことなので謝るのはやめてください。体も治りましたしね」
「分かった……なら!謝罪ではなくこう言うべきだな。ありがとう、君のおかげで皆無事だ」
かっこいいぜ、ヒーロー!
「……はい」
別にオールマイトのファンというわけではないのだが、NO.1ヒーローにこうも真正面から褒められるのはなんともまあ、むず痒くなるものだ。
俺より凄い人なのに。
有名人に褒められてる一般人の図だからな、これ。
この後は、リカバリーガールの”個性“で”気“が減ってるのもあり、事件に深く関わっているのもあって何があったのか詳細を話したら今日一日はここで安静にするように念を押された。
ついでに筋トレも禁止された。
明日退院して問題ないなら教室へ。無理なら保健室に行くことになったが、これなら問題なさそうである。
問題は”気“のコントロールがやっぱり上手くいかないことくらいか。こればかりは時間が解決するのを待つしかないため、仕方が無いのでイメージトレーニングで我慢した。
割と言われがちなので、とりあえず現在の戦闘力表示します。
ただ次回以降全キャラインフレ加速祭りなので、ぶっちゃけ飾りですし出さないと思います。
そもそも原作が”戦闘力“出てきたのって未来トランクス出てきた時がラストですし、公式自ら”戦闘力“消してますからね。あと超見たら分かるけど”戦闘力“を気にしたらパワーバランスがどう考えても仕事してないので。
DB基準で普通に”戦闘力“を考えたら、差がありすぎると視認すら出来ないし気を溜めただけで吹っ飛ぶので真面目に考えない方がいいと思います。特にフリーザ編以降は考察するならまだしも真面目に考えない方がいいってよく言われてる(地球硬すぎるし油断してるとはいえ光線銃に負けるし)
何より”戦闘力“だけが全てじゃないというのは一応公式設定(ムキンクスはパワーだけは超ベジータ以上だが、実際に戦えば超ベジータの方が上)
そのため、どう足掻いてもヒロアカが不利なのでヒロアカ世界の住人は本作において”気“と”個性“が別々なので”個性“は”戦闘力に依存しない強さ“と解釈。(例として気円斬、太陽拳、気功砲など格上にも通じる技と同じ)。
増強型や異形型なども同じく、”気ではない力“として補正。
既に拳王技界>プロヒーローなのはヒロアカ原作でも初期轟、爆豪などはプロヒーロー並とされてるのでまあ妥当。
ただしそうなるとプロヒーローが存在意義なくなるので、ある程度補正つくことになりそう。
主人公はDB同様に設定出来るため、”気“=”戦闘力“。”戦闘力“=”気“の総量(多ければ多いほど込められるエネルギーが増えるため)
”地力“+”気“=”戦闘力“の計算となります。多分公式的にはこれであってるはず。
6歳拳王技くん→1.2。プッツンした際、潜在能力が一瞬だけ(体が持つギリギリの)完全解放されてるため、瞬間最大戦闘力→2022
なんかきた野良サイヤ人→約2000。大猿→約20000。
第一話→340近く。
入試前→400近く。重り脱いで500未満。
脳無戦、本気出して650。潜在能力の高さとトラウマ刺激の怒りで上昇→1000。
進化脳無→4000。(”気“を得てるため、その補正有り)
戦闘力が継続的に低下していたため、界王拳4倍→5000。
現在→弱体化中なので300近く。重り脱いで何とか600。回復すれば復活後同様2000(通常)。
孫悟空→めっちゃつよい
主人公の最終目標が目標なので、既にインフレしてるけどそんな気にせず。原作でも消したってことは元から先生もあんま考えてなかっただろうし。
実際サイヤ人編の時点でギャリック砲が地球壊せる(粉々に出来る)のに魔人ブウ編の彼らが戦っても余波で地球壊れないのはおかしいってなる。
ちなみにお前サイヤ人レベルで強いやん!ってなるけど拳王技くんは師匠が戦ってきたやつらと比べて自分の価値観もバグってるだけです。
宇宙の帝王とかと比べたらそりゃそうなる。
あと本っ当に真面目に考えなくていいです、なんなら作者もぶっちゃけ大きく考えてない。強いもんは強いって思ってたらいいかと。
ただ主人公は悟空が認めてるだけあってバケモノですね、ホンマに地球人かこいつ
雄英体育祭本戦トーナメント
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VS心操
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VS切島
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VS常闇