無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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追いつき、追い抜くための力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くなりたい、と思った。

今でも記憶に深く刻まれている。

意識が失う前に見た、ヒーロー(界くん)の姿。

どんなにボロボロでも人を安心させる笑顔を作って、強大な敵に打ち勝つ、その姿。

まるでオールマイトみたいだなと。

力が欲しい。

彼の隣に並び、支えられるほどの力。

守れる、力を。

 

ボウ…と灯火のような()()()()が目の前に浮かび上がる。

それは、人の形を象っていた。

今の僕よりも大きな火。

けれど不思議とその火を危険だとは思わなかった。

 

 

”君はどんなヒーローになりたい?“

 

 

声が頭の中に響く。

どこかノイズ混じりで声の判別がつかないような声。

答えなくちゃ、いけない気がした。

 

オールマイトのような、どんなに困っている人でも笑顔で救ける最高のヒーローに。

 

界くんのように、どんな相手にも立ち向かって勝つ、強くて誰かを守れるヒーローに。

 

 

”それを忘れちゃいけない。忘れず、抱き続け、歩むんだ。多くは語れない。それが出来ない。ただ言えるのは、特異点は過ぎ去った。これから君には”6つ“の“個性”が発現する。それをどう使い、扱い、理想を目指すのかは君が決めることなのだから“

 

言っている意味が、分からなかった。

言葉の意味も、節々の発言も、このような状況も。

貴方は一体、誰なんですか…と。

 

 

”これから君に訪れる未来は、途方もなく困難で多くの人と関わり、辛いことがあるかもしれない。挫けることがあるかもしれない。それでも次は、今度こそは。皆を救うんだ。本当の意味で、助けるんだ。この力で---“

 

会話が成立せず、まるで一方通行な話の内容。

そうして、火が広がり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには豪華な椅子に座した8人の人---いや、1人はエネルギーが形になったようなものだ。

それはまるで円卓の場を思わせる。

 

 

 

“そう。特異点は過ぎ去った”

 

“君には今OFAに加え歴代6つの“個性”が発現している”

 

 

1人の男はそう言った。

どこか虚弱な印象を抱かせる両目が隠れた白髪と緑の瞳を持つ男性。

 

 

そこから、始まりが見えた。

 

 

 

2人の男が相対している。

 

 

1人は先程の男。もう1人は顔の上半分が見えないが、貼り付けたような笑顔が印象的だった。

 

 

 

そこから真実が語られる---

 

 

 

聖火の始まり。

無理矢理与えられた”力をストックする個性(ちから)“と単体では役に立たない”個性を与える個性(ちから)“によって偶然にも生み出された力。

それが、ワン・フォー・オールの秘密。

 

 

そして魔王の弟として生まれ、しかし正義の心を忘れず抱き続けた男と、それに手を差し伸べた男。

 

 

 

 

そう、だったんだ。

この力は---

 

 

 

()()()()()()()()()()()()始まったものだったのだ。

 

 

 

 

 

そういう、力だったんだ。

 

 

 

 

 

砕く力なんてただの手段なのだ。本懐は違う。

打ち砕く力などではなく。

 

 

 

この力の本懐は、本当は---

 

 

 

()()なのだ。

止めるための、力だったんだ。

 

 

 

それを、忘れちゃダメなんだ。

 

 

 

緑色の()がまた僕の前に現れ、僕に宿った。

同化。

ひとつになる。

 

 

 

瞬間、理解する。

 

 

6つの“個性”の全て。力の使い方に至るまで。

そして”OFA“や戦い方。

()()すらも。

その全部が、”理解“する。

 

 

 

まるで、長年使用して戦ってきたかのように身体全体に馴染む。

何故わかったのか、何故理解出来るようになったのか分からない。

違う。

そうだ。

そうだったんだ。

この声は、この光は()()()()()だったのだと。

その中に宿る想いが、僕の中に流れてくる。

 

 

『この力は、(だれか)を助けるために存在する力』なのだと。

(だれか)を守る力』なのだと。

だけど違うことは、ひとつ。

この”僕“と違って、僕が目指すのはもうひとつあるんだ。

守るだけじゃない。

強い、ヒーローになる。

この力は助け、守り、より高みへと登り詰めるための力。

 

 

 

これで、守る。

これで、救ける。

これで---追いつく。追い抜く。

僕の目指す最高のヒーロー(オールマイトと界くん)のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

界の姿を見た時、まだまだ勝てねえと思った。

だから強く、もっと強くなりたいと思って、力がいると思って。

夢を見た。

光を見た。

オレンジ色の火のような光。

それは、人の形を作る。

 

”弱さを知ったなら俯くな。踏み止まるな。進み続けろ。決して諦めるな。進むべき道は、一つだ“

 

 

そして解る。力の使い方、“溜めて”、放つ。

より強い爆破。その力を。

()()()すらその身に。

そして、光の正体も。

 

自分(てめえ)に言われるまでもねェ。挫折を知った時から、目指す場所は同じだ。

 

これで、勝つ。

 

これで、追いつく。

 

これで、追い抜く。

 

理想(オールマイト)()最強()を超えるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

話が通っていたからか普通に退院出来た。

とりあえず心配させてしまったため、バイト先からやけに来てたメールを返しつつ先輩とその友人にも伝えると、安心したらしい。

先輩とその友人が迎えに行こうかと言ってきたので全力で断った。クラスどころか学年違うので勘弁してほしい。

皆には悪いが、クラスメイトと早く顔を合わせて安心させてやりたいと言い訳に使ったが。

しかしまあ、流石の俺も無理はするなと先生や先輩たちに言われてしまった。

そもそも一日経ったが、”気“が不安定なのでぶっちゃけ今の俺は身体能力がちょっと高いだけになってしまっている。

以前までのような超スピードを出すことは出来ない。

だいたい全力の3割出せるかどうかって感じだな。この状態だと”界王拳“を使用したらコントロールをミスって自壊するし。下手したら本当に死ぬかも。

はぁ……弱い自分に逆戻りだ。ただでさえ俺はまだまだ弱いのに。

いやいや、またネガティブになるな俺。

治ったらまた修行だ。

師匠も言ってただろ、休むのも大事だ。

無理して強くなるより程よく休まないと強くなれない。

 

ということで。

ガンッ!と勢いよくドアを開けて口を開い

 

「おh」

「「「あーッ!!」」」

「拳王技!?」

「もう大丈夫なのかよ!?」

「あんな酷い怪我してたのに治ったのか!?」

「回復早くない!?」

「予断を許さない状態だと聞かされていたがまだ二日目だぞ!?平気なのか拳王技くん!!」

「もう大丈夫なの!?本当に?どこも怪我してないよね?本当の本当に心配したんだよ!?嘘じゃないよね!?」

「お、おおおおちちつい」

「は、葉隠さん落ち着いて!拳王技がやばいから!」

「あ、ぶぶ……」

 

扉を開けて入った瞬間に雪崩のように向かってきたクラスメイトに囲まれ、気づかなかったので流石にびっくりしたが葉隠さんが全力で揺らしてくるので若干気持ち悪くなっていた。

尾白が止めてくれなかったらやばかったかもしれない。今の俺は防御力に関しては鍛えた肉体だけだぞ。つまり身体能力に対して防御力は本当にない。

まあ、流石にステンレスよりかは余裕で硬いが。

 

 

とりあえず皆には謝ったし話した。

数時間で目覚めてリカバリーガールの”個性“で一日で治ったこと。怪我は問題ないこと。登校する許可は貰ったこと。

心配させたことに対しての謝罪。

 

「無事でよかったよぉー!!」

「うんうん、というか怪我ないね!?」

「みんな、拳王技ちゃんのことを心配してたのよ」

「あれ、結構体力使った気が…」

「本当規格外だな!!」

「みんなも無事でよかったよ」

「お前よりかは無事だって!」

「しっかしマジで強すぎな!」

「あのクソ強いヴィランを倒しちまったもんなぁ」

「嗚呼……負けてられない。まだ及ばぬが必ず追いつく」

「そんなことないと思うが、戦えるのは楽しみにしとく」

「皆ァアアアアアア!色々話したい気持ちは分かる!しかし朝のHRがもうすぐ始まるぞ!私語を慎んで席に着け!!」

『はーい!』

 

俺のせいで皆を立たせてしまったが、最後に心配したんだということを勢いを増して言われてしまったが、俺も含めて次々と席に戻っていく。

委員長が委員長らしい行動をしてくれてよかった。

しかし爆豪はともかく、出久も席に座ったままなのは意外だったな。信頼されてたのか、はたまたなにか思う所があったのか。

うーん”界王拳“の件については出来る限り見せたくない切り札だったしな…これ以上強くなる技を持ち合わせていないからだ。最大倍率がまだまだ低いし。

ひとまず目指すは50か100くらいか。その後は400を目標としたいが、”気“のコントロールをもっと極めないと無理だろう。あと肉体面が鍛えられる限界だから、本当に重力室とか用意してもらわないと。

”あの人たち“なら可能なんだけど、来るのって気まぐれだしなぁ…。俺の通常時の実力が()()()の師匠くらいになったら絶対来るだろうけど。

まあ、小技はまだまだ持ってるから暫くは実力をそれで補うしかないか……。

 

 

 

 

 

 

チャイムが鳴り、入ってきたのはミイラマン(相澤先生)だった。

 

『相澤先生復帰早ッ!!!』

「まだ治ってないんすね」

「お前がおかしいだけだからな、拳王技。それはいい」

 

普通なのにおかしいと言われてしまったが、相澤先生の雰囲気が変化する。

不思議とクラスに緊張感が走り。

 

「お前ら、まだ戦いは終わってないぞ」

「戦い……?」

「まさか」

「まだ(ヴィラン)が…!?」

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭が迫っている……!

 

 

 

 

 

クソ学校っぽいの来たぁああああああ!!!

 

 

 

 

 

不安から一転して歓喜の声で沸き立つ一同。

やっぱりこのクラスの団結力ナンバーワンだと思ったが、気持ちは分かる。

入学から除籍がかかったテストだの戦闘訓練、からのマスコミ騒動やUSJ襲撃。

おおよそ普通の高校どころか普通のヒーロー校でも経験することじゃないからな、後者二つ。

かく言う俺でも、雄英体育祭というのは見ていたから知っている。なぜならバイト先の先輩が雄英生だからだ。

あの人、何故か強さバグったけど。”個性“の使い方も体の使い方も上手くなりすぎなんだよなぁ。最初は普通に勝てたのに…。というか今年は見れないな。どうせ録画あるだろうし、それで見よう。

……あれ?待って、というか俺この状態だと詰むんだけど。

”気“を上手く使えないからほぼ生身でやれと…!? い、いや大丈夫だ、数日あるしきっと回復する。そう信じてる。いざとなれば師匠に渡された()()を使うしか……でも別に死ぬわけじゃないしこの程度で使うもんじゃないからなぁ…。あれは貴重すぎて。

こうしてゲームでいうラストエリクサー症候群が出来上がるんだな…。

 

「待って待って!」

「敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す……って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ。何より雄英(ウチ)の体育祭は最大のチャンス。ヴィランごときで中止していい催しじゃねぇ」

「いや、そこは中止しよう……?体育の祭りだよ……?」

「え?峰田くん体育祭見たことないの……?」

「あるに決まってんだろ!そういう事じゃなくてよ」

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントのひとつ。かつてのオリンピックにとって変わったイベントな訳だ」

「全国のトップヒーローだってみますのよ……? スカウト目的でね」

「知ってるって」

「卒業後は事務所に入って、そっから自立ってのがセオリーだしな」

「何人かは独立しそびれてそのまま万年サイドキックになっちゃうけどね……上鳴。あんたそうなりそう」

 

 

 

アホだし

 

 

「!?」

 

”個性“が発現したこの世界で今更”個性“のないスポーツははっきり言って見劣りしてしまう。好きな人は好きだが、派手な方を好む人たちが多いということ。

というか上鳴くんと耳郎さんあんな軽口叩けるなんて結構仲良くなってるな。何かと組むこと多いからかな。

 

 

「当然、名のあるとこに入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに認められれば、道が大きく開ける訳だ。年1回。計3回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ」

 

 

 

その気があるなら準備は怠るな……!!!

 

 

『はい!!』

「HRは以上だ」

 

準備かぁ…”気“の制御が治らないこと前提で動くべきか。

コントロールがブレるだけだから、慣れてしまうのは良くないことだ。そしたら感覚がズレたままになって軌道修正にまた時間がかかる。

つまり、肉体をさらに鍛えるしかないな。”界王拳“の倍率をまだまだ引き上げないとダメだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

界くんが無事なことには嬉しかったし喜ばしいことだった。

たったの一日で復帰するのは流石だとは思ったけど、僕は夢の内容が忘れられないでいた。

それに、自分の中で一気に強くなった、という感覚にまだ慣れてなくて困惑しているのもある。

OFAを出せる出力が、間違いなく跳ね上がった。他にも”6つの個性“が自分の中に宿っているのも分かる。”地力“も同様に。

そういった考え事が多すぎて、自分のことで精一杯だった。

とりあえずこのことは、オールマイトにも話さなくちゃ。オールマイトなら知ってるかもしれない。

今はそれより、授業に集中だ。

 

 

 

 

そして、昼休み。

いつもは何人か食堂にすぐ向かうけど、今日はHRで聞いた雄英体育祭の話で持ちきりだった。

あの界くんですら食堂に行かずみんなと……なんか物凄くでかい弁当持ってきてた。

ブレないなあ。というかマンガ肉を本当に出す人なんて初めて見たよ、僕。

 

「皆……すっごいノリノリだね」

「君は違うのか……?ヒーローを志しているなら、燃えるのは当然だろう」

「飯田ちゃん、独特な燃え方ね。変」

 

ダンスロボットみたいな独特な動きをしている。

どうやら変だと思ったのは僕だけじゃないみたい。

 

「まぁ、まともに学校らしいことしてないしな。浮ひあひだふのもしふぁむぐむぐ」

「うん、何言いたいかはわかるけど食べてから喋ってね界くん」

「俺には分からないぞ…!?」

「むふー」

 

器用に弁当箱を頭に乗せつつマンガ肉を食す界くんに対して僕はそう言うと、食べることを優先したらしい。よく噛んでね。

あと飯田くん。本人には言ってないけど、僕にとっては憧れの存在だからね。界くんのことならだいたい分かるんだよ。

 

「デクくん、拳王技くん、飯田くん……頑張ろうね……!!体育祭……!!!」

「お、おふ……ふごらかふぁないふ……」

「か、顔がアレだよ麗日さん……!」

「どうしたの?全然麗らかじゃないよ麗日?」

「生r」

 

ビシン!バンッ!

明らかなセクハラ発言に蛙s…梅雨ちゃんのベロが炸裂し、界くんが投げたマンガ肉の骨が直撃して峰田くんは倒れてた。

多分、というか絶対界くんは発言の意味を理解せず、何となく喋らせてはいけないって感じだけど。

 

「皆ァ……!私頑張る……!!」

「「「おぉー……」」」

「私頑張るゥー……!!」

「「「「おぉー……」」」」

 

けど、どうした。キャラがふわふわしてんぞ。

 

 

握り拳を高々と突き上げて宣言する麗日さんについノリで僕らも拳を挙げていた。

界くんや周囲に居たみんなすら。

結構力が入ってるみたいで、こんな麗日さん初めてだ。

そういえば聞いてなかったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね。麗日さん。麗日さんはどうして雄英に……ヒーローになろうとしてるの……?」

「あっ、確かに!私も気になるな〜」

 

いつものメンバー。

今回は誘ったけど今日はいいと言ってたかっちゃんは居ないけど、僕を入れた四人は一緒に食堂を目指す。

というか界くんはさっき食べたのにまだ食べるんだ。なんか胃袋前より強くなってない?

いつか人の域を超えそうだよ。

 

「そ、それは……」

「お金……!?お金欲しいからヒーロー目指してるの?」

「き、究極的には……」

「なんかごめんね……!不純で。飯田くんとか立派な動機なのに……私恥ずかしい」

「どうして!? 生活の為に目標を掲げることの、何が立派じゃないんだ……!?」

「別にお金が欲しいって思うのは悪いことじゃないと思うぞ。俺だってお金が必要だからやってることあるし。ヒーローも人間だ、お金がなければまずやっていけない。コスチュームや人員、それから治療費やら修繕費、生活費、考えれば考えるほどあるし、どれもこれもヒーローをやる上で必要だしな」

「うん。その通りだよ麗日さん。でも、なんだか意外だね」

 

界くんの言う通り、ヒーロー活動をやるにしても資金のやりくりは大切になる。

世知辛い話になっちゃうけど、お金がないと活動に支障が出るのだ。

だから別にお金が欲しいからという理由も悪くない。

 

「ウチの実家、建設会社やってるんだけど……全然儲からなくて、素寒貧なの。あ、こういうのあんま言わん方がいいんだけど」

「建設……」

「あ、麗日さんの“個性”なら許可取れば重機要らずだね」

「どんな資材でも浮かせることが出来る。重機要らずだ」

「それに機械と違って事故が減るしな」

「でしょ!?それ昔父に言ったんだよ……!そしたら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

---ウチに就職する?

 

 

幼い日の自分は、涙ながらに言っていた。

 

---うん!大きくなったら父ちゃんと母ちゃんのお手伝いする。

 

すると、父は少し笑って

 

---気持ちは嬉しいけどな。お茶子。

親としては、お茶子が夢叶えてくれる方が、何倍も嬉しいわ

 

 

そしたらお茶子にハワイ連れてって貰えるしな!!

 

 

 

そうして、父は笑った。

 

 

---父ちゃん……

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

そうして、スカートの裾を握りしめて。

力強く、言葉を紡いだ。

 

「私は絶対ヒーローになる。そんで、お金稼いで父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」

「ブラーボー!!!!」

「ううう……お茶子ちゃん家族のためにだなんて…いい話じゃん…!がんばろうね!!」

「…ああ、そうだな。親としてはきっと……その方が嬉しいと思う。夢を叶えて、そのうえでお返ししてくれるってさ。ヒーローになるには、十分過ぎるほど立派な理由だよ」

「てへへ……」

 

憧れだけじゃなくて、現実を加味してヒーローを……。

 

 

「HAーHAHAHA!!緑谷少年が---居たァ!!」

 

 

 

-----ご飯、一緒に食べよ?

 

 

「乙女や!!」

「絶対その画風の人がやるべきことじゃないと思う」

 

皆に視線を向けると、頷いてくれたので僕はオールマイトの元へ向かう。

僕も話したかったことがあった。

あの夢のこと、何よりワン・フォー・オールの中で見えた()()()()()()の人について。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

「デクくんなんだろうね?」

「うーんなんだろう?」

「二人の超絶パワーは似てるからオールマイトに気に入られてるのかもな。流石だよ、緑谷くん…!」

「まあ似てるっちゃ似てるか。それに出久はまだ完全に制御出来てないみたいだしな」

「確かに!デクくん両腕が反動で怪我してたもんね」

「そうだ! 怪我と言えば本当に大丈夫なの?拳王技くん治ったって言ってたけど本当はどこかまだ痛んだりとかは!?」

 

出久がオールマイトと一緒にご飯食べるとのことで分かれたが、こっちに飛び火した。

心配してくれる気持ちは嬉しいんだけど、みんなちょっと過保護すぎないだろうか。

 

「ああ、もしまだ痛むようなら俺たちが運ぶが……」

「だ、大丈夫だって。朝言ったけど治してもらったし。普通に生活する分には全然。ま、まぁあんな怪我した俺自身が言うと説得力ないかもだけど…」

「ほんと!心臓止まるかと何度も思ったんだよ!」

「無事でよかったよね…!みんな心配してた!」

「そうだぞ拳王技くん!」

「うーん…本当に大丈夫だって。なんならここで演武しようか?」

「演武!?ちょっと見てみたい!」

「そんなのまで出来るんやね!」

「ここでは大勢の方々に迷惑をかけてしまう!気にはなるが、流石にダメだ!」

「流石に分かってるって。それくらい出来るほど体は大丈夫ってこと」

 

ここは食事処だ。

もし演武を披露しようものなら他の人に迷惑かかるからな。食事を大人しく食べたい人もいるだろう。

あと何よりご飯がある中でやったらご飯が食べれなくなるしゴミ入るかもしれないしな。

どうしても見たいならまたどっかでやる、と約束しつつ俺たちは話しながら順番を守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

「2時間……ですか」

「うん。もしあの時戦闘してたらもっと少なくなってたかもしれない。マッスルフォーム維持だけなら3時間以上は持つかな。君たちや拳王技少年のおかげだ」

 

オールマイトはそう言ってくれるけど、間違いなく界くんのお陰だ。

僕たちは何とか時間を稼いだだけで、彼が居なければ全滅していた。

 

「さて、本題に移ろう。ぶっちゃけ、私が“平和の象徴”として立っていられる時間って、あんまり長くない」

「そんな……」

「悪意を蓄えてる奴らの中に、それに気づいてる奴がいる」

 

オールマイトの活動限界が短くなっていってることから予想は出来ていた。でもやっぱり本人の口から言われると、心に来る。

悪意を蓄えてるやつら。誰かなんて聞く必要はない。

(ヴィラン)連合……!

先日襲撃までしてきたんだ。彼らに違いない。

 

「君に力を授けたのは“平和の象徴(わたし)”を受け継いで欲しいからだ。……あの時の君の思いは、今も紡がれているはずだろう……!?」

「……はい!」

「……ならば、それを示すときだ」

「えっ……?」

「雄英体育祭……プロヒーローが……いや、全国が注目しているビッグイベント。

今こうして話しているのは他でもない、次世代のオールマイト……!“平和の象徴”の卵、緑谷出久が……

 

 

 

“君が来た”って事を世の中に知らしめて欲しい……!!

 

 

 

 

言葉を咀嚼する。

きっと前までの僕なら気圧されていたかもしれない。

だけど、だけど今は。

 

「はいッ!!!」

 

僕にはそれを答えることが出来る覚悟が定まっていた。

 

「いい返事だ、緑谷少年! 私が発破をかける必要はなかったかな?」

「いえ、そんな……多分、前の僕なら分からなかったと思うんです」

「…前、とは?」

「オールマイト。僕からも話したいことがありまして、”OFA“に関わる…夢を見たんです」

「夢…!どんな内容だった?」

 

食いつくように前のめりになるオールマイトを見ながら、ぽつぽつと今日見た夢の内容を僕は語った。

”OFA“の秘密。

”6つの個性“

”OFA“の中の人たち。

そして、”ワン・フォー・オール“の原点(オリジン)

それらを包み隠すことなく告げた。

するとオールマイトは難しい顔をして。

 

「そうか……」

 

身を戻して深く座り込みながら考え込んでいた。

もしかしてオールマイトも知らないのだろうか?

 

「緑谷少年。もしかしてその中に女性が居なかったかい?」

「女性……?はい、一人だけですけど」

「!やはりか……”6つの個性“。そこにいた人物。それは”OFA“の中に存在する意思なのかもしれない」

「”OFA“の意思…?」

 

その女性の人物がいたことを伝えると、どこか確信を持ったようにオールマイトは言っていた。

この”個性“は普通の”個性“とは違う。

わざわざ()()という形で受け継がれてきたものだから、強い意思が残留思念として宿った…?

 

「おそらく私を含め、歴代の”OFA“継承者たち。だが、私の時は似たようなものを見たことはあるが明瞭ではなかった…緑谷少年はその夢の中で何か思ったりはしたか?」

「ええっと…あの時の、USJの時の界くんを思い浮かべたら夢の中で変化が起きて……強くなりたいと強く思って…」

「ふむ……緑谷少年の強い思いに”OFA“が応えたのかもしれないな…。もしくは拳王技少年の”強さ“に呼応したのかもしれない。とにかく、理由はどうあれ発現したということに変わりはない。どこか不調は?痛んだりとかはないのか?」

 

オールマイトに言われて自分の体の不調がないか自分でも確かめる。

手を握ったり、動かしたり。

特に痛むことはなかった。

 

「大丈夫です。それどころか”OFA“も30%じゃなくもっと引き出せるような感じがあって……”6つの個性“もどう使うのか、どんな力があるのかこう、感覚として残ってると言いますか」

「なるほど…私も歴代の”個性“を知っている訳ではないからね。情報共有したい。どんなものが?」

「そう言われると思いまして、ノートにまとめておきました!」

「用意がいいな!」

 

吐血しながら突っ込むオールマイト。

対して僕は予めまとめていたノートを出して開く。

”個性“の名前とどういった力なのか。

時間が少なくてあまり書けなかったけど、名前と能力だけは書いている。

 

「”浮遊“……間違いない。私のお師匠様の”個性“だ。緑谷少年、もしいいならこれを借りても? 私も自分の出来る中で歴代のことを調べてみようと思う。そうすれば何らかの力になるかもしれないしな」

「あ、はい。それはぜひ! 僕も知るべきだと思いますし……でもやっぱり、夢の通りってことなんですね…」

「そうなるね。しかし、問題はひとつ。”個性“、どうしよっか」

「あっ」

 

申請を出した時は”無個性“から”超パワー“に変えたけど、超パワーで説明出来るのはだいたい4つほど。”危機感知“は問題ないけど、ちょっとした強引な解釈になるわけで…。

でも”OFA“を秘密にしなければならない。

となると…やっぱり。

 

「界くんを参考にして、”エネルギー“として出力する…みたいな感じならどうでしょうか。”危機感知“はバレる心配はありませんけど”変速“、”発勁“、”黒鞭“、”煙幕“、”浮遊“をエネルギーとして分類させれば何とかいけるかも…」

「そう来たか!確かにそれなら大丈夫かもしれないね。彼がそもそも浮いたりエネルギーを放ったり高速で動いたり光を発したりと色々してるし。それにしても…本当に緑谷少年は拳王技少年に影響されているな」

「そ、そうですか? あまり自覚が……」

「悪いことじゃないさ。目標とする存在がいるということは己を高められることにも繋がる。君にとってはかけがえのない人物なのだろう」

 

昔からずっと、彼に助けられてきた。

だから強さの象徴が僕にとって界くんになってしまっている。

だいたい一番先に浮かんでしまうほどに。

ヒーローでもあって、大切な人だ。だから強く、何よりも強く追いつきたいと思った。

彼に置いていかれないように、強くなりたいと思った。

 

「拳王技少年は間違いなくトップヒーローたちと実力だけならば遜色ない、もしかしたら超えているほどの実力者だ。それに他の皆も強くなっていく。厳しい戦いになると思うが、頑張れよ。緑谷少年!」

「はい…!」

 

界くんだけじゃない。

かっちゃんや他のみんなも、全力で来る。

だからこそ僕も油断せず、発現した”個性“たちを確かめていかなくちゃならない。

わかっていても経験することが大事だって、界くんに教えられたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

”歴代“の力。

そして夢で見た”巨悪“。

私が討ち取ったはずの存在。

緑谷少年に”オール・フォー・ワン“のことは話せなかった。

抽象的に知ってしまったとはいえ、余計な心配をかけさせたくないのもあったが……。

しかし、そうか。

そうだったのか…。

お師匠様はずっと私や…緑谷少年の中に居てくださったのですね……。

”歴代“の皆様も私たちの力になってくれていた。

だからこそ、彼らのことを私は調べなければならない。

”個性“からある程度調べることは出来るはずだ。

それにしても突然目覚めた理由は分からないな。

拳王技少年の”気“に当てられたのか強さか、それとも他に何かがあるのか…。

 

拳王技少年……。

君は一体、何者なんだ?

あの若さであれほどの実力。

”気“というものを習得するほど彼が努力家というのは分かるのだが…まだまだ伸び代を感じさせるどころか、全然底が見えない。私も長年ヴィランたちと交戦して来たからある程度そういった感覚は身についてるんだけどね。

いや何者であろうと関係ない。

間違いなくあのクラスは彼が中心となっていっている。彼には、人を惹きつけるような”ナニカ“があるのだろう。

もしかしたら彼なら、このクラスなら。

私をも超える”最高のヒーロー“になるかもしれない。

いや、そんな予感を私は確かに感じ取っている。

だが……私も負けていられないな。

彼もまだ子供だ。いくら強いからと言って、任せる訳にはいかない。

彼ですら脳無と交戦し、ボロボロな体になってしまったのだ。

成長するまでは我々が守らなくちゃならない。大人として、教師として、ヒーローとして。

何より制限時間が短くなったとはいえ---まだ私は、オールマイトなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲渡し、僅かに残っている聖火の()()()がより強く再点火する---。

 

 

 

 

 

 






まだ先だけどトーナメント戦心読まれてる?
一番最初に浮かんだのはVS切島くんです。
問題はやはりオリジン組三人か…出久か爆豪か轟か。

雄英体育祭本戦トーナメント

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