無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
二戦目もお願いします。ただトーナメント出場者原作と異なりそうです、主人公のせいで。慌てて考えたプロット全部破壊し尽くされました。轟くんは出久くんに任せることになりそう。
放課後。
「うおおお……何ごとだあ!!!?」
いくら”気“が不調でいつもの精度で探知することが出来ないとはいえ、流石の俺でもこの状況が異常なのはわかる。
人の波というものが形成されている。
多分、一年の生徒だろう。
「出れねーじゃん。何しに来たんだよ」
「敵情視察だろチビ」
「……!……!!」
「これでもマシになった方だぞ」
声にならない声でこっちの方を見てくる峰田くんに俺はフォロー(?)を入れる。
殴り会う前の爆豪なら間違いなくカスだの言ってたと思う。
「
意味ねえから退け。アホども
「誰がアホだって?」
「どう考えてもお前じゃねェよ!『ドモ』つってンだろーが!耳カス詰まってんのか!」
いやごめん。
違うのか。
てっきりいつものように喧嘩売ってきたのかと思った。
「どんなもんかと見に来たら随分と偉そうだな」
人垣の中から一人、前に出てくる。
この”気“どこかで感じたような…どこだっけ?
「ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「ああ?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
紫髪で前髪を上げた少年がいた。
うーん……どこだっけ?思い出せない。
うーん…うーん……。
「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだ。知ってた?」
「?」
「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科への編入を考えてくれるらしいよ」
逆も然り。だってさ。
「敵情視察?少なくとも
調子乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー-ー
宣戦布告しに来たつもり
俺が今も考えていると、爆豪はすごい無関心そうな顔をしていた。
なんかもう、だいたい言いたいことは分かる気がする。
目の前の紫色の男の子、なんというかこう、体が出来上がってないんだ。ずっと昔からしてきた!って感じがない。
「隣のB組のモンだけどよぅ!! 敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってんだがよぅ!! エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしいことになんぞ!」
今度は騒がしい人が来た。
この人は強そうだ。
”個性“は”気“と違って”戦闘力“に関与しないという利点はあるから”気“と”戦闘力“で全部分かるってわけではないが…どっちにしても今の俺って上手く感じれないから見てそう感じただけだし。
そもそも師匠や俺と違って、この世界の人たちは”個性“と”気“が別物なのだ。
俺や師匠は”気“の量=”戦闘力“になるからそのままの強さの目安としてわかりやすい。
例えば昔の師匠。”戦闘力“が8000だったらしい。
俺は多分、回復したら平常時が2000くらい。
明らかに昔の師匠にも勝てない。それほど”気“の量に差があるってことだ。戦略である程度カバーは出来るけど。
そして理論上は”界王拳“を4倍で使用すれば互角になる。そこから気を解放すれば超えるくらいだ。
とまあ、俺や師匠は”気“を高めるとその分強くなるけど、”個性“はまた別の話になる。
残念ながら”個性“持ちは素の実力が分かる”戦闘力“はあんま参考にはならない。
簡単に言えば、別々として存在するから俺や師匠みたいに無理矢理組み込んでみると、”個性“=”気“にならず、地力+”気“×”個性“の練度=”戦闘力“という図式が正しいのかな。
自分が”無個性“だから分からないけど。
なんとなくだけどこいつは強いなってのは分かる。
例えばオールマイト。
あの人の”気“はとんでもない。まぁ精神力とかも含まれるしトップヒーローとなれば凄まじいんだろう。
ただ峰田くんみたいな”戦闘力“が関係ない”個性“なら話は変わるけど、それでも肉体は少しは鍛えてないと咄嗟の動きについていけないだろうし。
相澤先生みたいにある程度の身体能力は必要だ。
なんて思わず分析するように考えてしまったわけだが―――そろそろ話に入るべきか?
なんかさっきからぐっちゃぐちゃ言ってるし。
そろそろ爆豪が口を開きそうだし。
「ハッ。さっきから聞いてりゃ、テメェらはなんか努力してきたのかよ?」
「は…?」
あー。
やっぱりこうなるか。
もう鼻で笑ったぞ、こいつ。いや…正直俺も思ったけど。
目の前の紫色の生徒だけに絞って”気“を不安定ながら探ったけど、少ない。
”無個性“だから俺は体を鍛えた。師匠が居たし”潜在能力“や”気“に優れてたとはいえ、どれもこれも俺は天才じゃなかった。
特に”潜在能力“は”可能性“というだけで、自分でコントロール出来ない。
”気“に関してはコントロール技術を身につけるのに苦労した。
だからこそ、本当に努力したかどうかなんて簡単に分かる。
「そこの紫髪。テメェは見るに戦闘向きの“個性”じゃねえな?」
「ああ。そうだよ。だから入試の---」
あ、なんか思い出した。
この紫色の人、俺がアドバイスした人だ。
そうか、落ちたのか…。
さすがにフォロー出来ないな。だって、戦闘向けの”個性“じゃないのにヒーロー科受かってる生徒もいるわけで…。
「ロボが壊せませんでした、か? 別に戦闘向きじゃなかろうがヒーロー科に入ってる奴ァここにも居るんだよ。そこのチビとか、そこの透明女とかな」
「……生物じゃなきゃ何の意味も無い“個性”はどうするんだよ」
「同じだろうが。プロになりゃ嫌でも”個性“が使えない場面に直面する。だからってテメェは何もせず見てるだけになるつもりか? ”個性“を使わず
峰田くんにドンマイと心の中で告げつつ近くでぼけーっとしてたらがし、と腕を掴まれた。
無性に嫌な予感がした。
こいつ、俺を巻き込む気か!!
「こいつは“個性”無しで入試ロボをぶっ壊した」
「……」
「お前は……」
「入試ぶり」
「知ってんなら話は早え。どう動いてたのか知ってんだろ。それにこいつの体を見ろ、そして自分と比べてみろ」
強制的に腕を巻かれたが、巻かれても見えるのは鍛えられた腕だ。ついでと言わんばかりに腹も捲られたけど、割れてる腹筋しかないぞ。
ただ体質的な問題と年齢もあるんだろうが、師匠みたいに肉体に大きくは出てないので力を入れなければそこまで腕は太く無いけど。
マッチョじゃない。俺もまだまだか……。
いっそここは”気“でムキムキにすべきか?スピードが極端に落ちるからあれ、好きじゃないんだよな。”戦闘力“は俺の全力を超えるほど跳ね上がるけど。だからこそオールマイトを見てるとこの人どうなってんだって思う時ある。
まぁそんなことせずも、目の前の紫色の生徒と比べたら天と地くらい違う。
俺の場合は師匠に鍛えられたというのもあるが、努力の成果だ。
幼少から筋トレの桁が違いすぎたし…。
1000回できるようになったら1万に増えたからな?
「こいつほどとは言わねえ。あまりに例外だ」
「じゃあなんで俺を巻き込んだ?」
「とはいえ、雄英は
やっぱり爆豪って俺に対して扱い酷くないか。
お前が見せる出久に対する優しさを俺にも向けて欲しいってたまに思う。
いや、確かに俺は死に物狂いというか半分死にかけながら鍛えたけど。
その末に”気“のコントロールを身につけたり”界王拳“を習得したりしたし。
「っ、俺は別に諦めたわけでも逃げたわけでも……」
「その
何人か思い当たるところがあったのだろう。
別に手遅れってわけじゃない。今からでもやろうと思えばある程度の段階まではいける。
ただしその中に、死ぬ気でやればという言葉が入ってしまうが。
”個性“を伸ばし、地力を引き上げたら”気“も一気に上昇するだろう。
「調子づいてんだの偉そうだの言ってやがったが、そんなくだらねえプライドで言ってんじゃねェ。これは
そうやって
誰であろうと真正面から虐殺してやらァ
あれだけ騒がしかった空気が、爆豪の言葉で静まり返っている。
正確には、圧倒されて声が出なかったというべきか。
やっぱり俺を巻き込む必要なかったよな、とは思うが、なんというか幼馴染の成長は素直に嬉しく思うな。
流石オールマイトの”勝利する姿“に憧れて追い続けてきたというべきか。
まぁ相変わらず口が悪いところは直ってないけど。
うーん…ここは俺も一芝居する必要あるみたいだな。正直思ってもない事も含まれるから言いたくない部分はあるが…俺自身まだまだ師匠に及ばないし。
ただ、それでも続いてやらないと。
こんなところで挫かれると俺の楽しみが減るし成長も止まるかもしれない。
「まぁ、正直爆豪の言葉は尤もだ。大した努力せずヒーローになれるようなら苦労はしない。世の中、滅茶苦茶強いやつなんてごまんといる。さっき言ってたけど、俺は”個性“を
本当は”無個性“だからなんだが、使えないという意味は間違っては無い。
実際使えないし。
首席に関しては、救助ポイントなければ無理だったけど。
「だからこそ、今から死に物狂いで努力しろって発破をかけてる。厳しさでもあるし、優しさでもある。その事実を呑み込んで、前に進めるやつこそ先に進めるんだと俺は思うな。なんたって俺が努力だけで伸し上がったんだ。
なにより体育祭は全員がライバルだ。誰が相手だろうと俺たちは加減なんてしない。その全てを、今日からの努力を全部ぶつけて
”気“を解放して、圧を掛ける。
”戦闘力“を引き上がることで発せられる圧力を高める。
正直、脅してるみたいで好きじゃないが気圧されたのか、何人か後退していた。
やべっ、やっぱりコントロール乱れた。
オーラが一気に天井まで噴き出てぐねぐねした。多分、脳無の時以上に出たぞ今。
内心で慌てながら頑張って戻す。
やっぱりこういうのは向いてないなぁ、と思いながら、俺はいたたまれなくなったので勝手に開いた道を走って逃げた。
偉そうに言えることじゃないんだ。まだまだ未熟な俺がもっとやれだなんて。
けど、折れないで立ち向かえるやつは間違いなく強くなれるはずだ。何故なら継続出来るから。
俺はそう信じてるから、諦めないで居て欲しい。
――――
否定出来なかった。
なにより、圧倒された。気圧された。
敵わないとすら思った。天地がひっくり返っても、無理だと。
あの逆立った髪の男に。
俺でも分かる。あのオーラのようなもの。
あれは
あれに当てられて、動けなくなってしまうほどに。圧倒的な実力の差。努力の差。
文字通り、死に物狂いでやってきたのだろうと理解させられてしまうほどに。
それに俺はあいつにアドバイスまでされた。
それを活かせなかったのは俺の落ち度だ。ただこの気持ちを、八つ当たりのようにぶつけただけ。
俺が鍛えたのは入試の後。
そうだ、もっと早くにするべきだったんだ。”個性“が、だなんて言い訳にすぎない。
何をしていた…本当に、何をしていたんだ。
なのに。それだというのに。
敵に塩を送るような真似をして……いや、同じだ。
試験の時も、今日も、あいつは同じことをしていた。
まるでライバルが増えることを待ち望んでいるように。対等に見ようとしてくれてるようにも感じて。
ああ……そんなの見せられたら。
言われたら。
本当にヒーローを目指してるなら。
帰ることをせず、俺は試すために訓練場を借りて、早速行動していた。
両手にエネルギーを貯め、放出するが。
「かめはめ―――波ァアアアアア!?」
真っ直ぐに飛んだかめはめ波はコントロールから外れたようにギュイーンと曲がり、跳ね返って顔面に直撃しながら吹っ飛んだ。
自分の”気“がそのまんま返ってきたせいで意識が一瞬飛んでしまった。
「い……ててて……やっぱダメか…」
”気“のコントロールがブレるということはかめはめ波を放出したとして操作が出来ない。
放出することすら失敗する時もある。無理矢理コントロールして調整をすることは出来るだろう。
しかしそれに慣れるのはよくない。
さて、どうするべきだろう。
あんなこと言っておいてあっさり敗退しましたなんて笑い話にもならない。
雄英体育祭の時には回復してるとは思うが、逆に言えば俺はそれまで成長が止まるということだ。
みんな2週間で必ず今まで以上に仕上げてくる。
”界王拳“を見せた以上、油断なんてしていたら簡単に追い越されるだろう。俺は皆より努力し続けなくちゃダメなんだ。
もっともっと強くならないと師匠を超えられない。
だからこそ、頑張らないと。
ただ服の耐久値が心配だ。
俺の服はあの脳無との戦いで破れた*1ため、コスチュームがない。
今は体操着だが既に怪しくなってきた。
誰も居ないしいっそ半裸でいいのでは。
しかしかめはめ波を自分に当てるってことはある意味訓練にも繋がるか。
よし、コントロール出来ないしかめはめ波を受け止める修行に変更して地力を鍛えよう。そうしよう。
「か…め、は…め……」
「あ、拳王技くん見つけたーっ!」
「ぶっ!?」
見事に暴発。
小規模な爆発なのでそれほど問題ないが、ぶんぶんと頭を振る。
いつもなら分かるのに、今は全く気付けずにびっくりしてしまった。
こう考えると、やっぱり俺って”気“を頼りにしすぎてるな…。
「ご、ごめんね。大丈夫?」
「あ、ああうん。どうしてここに?」
声が聞こえる方向に視線を向ける。
そこには体操着が浮いてるので、葉隠さんなのは人目で分かる。
しかしてっきり帰っていると思ってた。
「その、えっと、あの……お願いがあるといいますか…」
「お願い?」
検討がつかない俺は首を傾げると、彼女はもじもじと躊躇った様子を見せ、緊張を解すように深呼吸を入れていた。
姿が見えないから分からないけど胸が上下してたから、多分。
そして。
「拳王技くん!私を鍛えてください!!」
「……へ?」
そのようなことを、言ってきた。
動きからして頭を下げてるんだと思う。
確かに誰かに師事することは大切だ。俺が戦うことが出来るようになったのは師匠のお陰だし。
ただ。
「葉隠さん……理由、聞いてもいい?」
「理由…?」
「そう、強くなりたい気持ちは大切だよ。でもそう思ったのはそこに理由があるからでしょ? 別に話せないことなら、いいけど」
鍛えるにせよ、教えるにせよ、そこは大切だと思った。
俺はもう大切な人を喪いたくないと思って、憧れである師匠を超えたいと思った。
だからまだまだ強くなる。今はやっと昔の師匠に並べるほど。まだまだ弱い。
「そうだよね、拳王技くんに言うのはちょっと恥ずかしいけど……私、自分では戦えるようになってたって思ってたんだ」
ぽつぽつと語り始める葉隠さんの言葉に耳を傾ける。
邪魔をしないように、聞き手に徹する。
恐らく、USJの時だろう。
「この感じならでも守られるだけじゃなくて戦えるんだよって言えるって…調子づいちゃったんだ。
でも脳無ってヴィランと対峙したとき、私何も出来なかった。緑谷くんも爆豪くんも轟くんも、切島くんも相澤先生も戦ったのに……」
「うん…」
「私は結局守られてばかりで見てることしか出来なくて……頭の中が真っ白になって動けなくて…だからね、思ったんだ。もう何も出来ない自分は嫌だ。見てるだけは嫌だ。何も守れないのは嫌だ。このままじゃ私は自分も、誰かも、守ることなんて絶対に出来ない。私はもっと強くなりたい。でも私一人だと強くなれない。何より私、拳王技くんを―――」
支えられるくらい強くなりたいんだ
そう告げる彼女の”目“は本気だった。
見えなくても分かる。
その覚悟の中にある強い思いが、偽りでないことを伝えてくる。
なら。
「分かった。俺でいいなら教えるよ」
「ほ、本当っ!?」
「うん、ただ俺や増強型と違って葉隠さんは直接戦闘向きじゃないからサポートという形に落ち着くと思う。脳無のように圧倒的な力がある相手には正面からぶつかってもまず勝てないし。あいつは”超再生“っていう常時リジェネ持ちだから例外だけどね。けど爆豪も言ってた通り、プロになったら勝てないからと言って何もしないのは違う。時間稼ぎや相手の虚をついたりとか色々出来るし、何も真正面から勝つことが全てじゃない」
”負けない“ことが大切なんだ
「負けない、こと……」
「そう。特に一番は根性論になるけど、”心“がね。けど結局それらをやるために必要なのは地力。葉隠さんの能力を底上げしよう」
俺も本気で応える。
ひとまずやることは彼女の身体能力を知ることからだ。
肉体を鍛えるには結局限界がある。
だからこそ”気“を増大させる必要がある。
端的に言ってしまえば、結局は感情やら強い思いなのだ。元気・勇気・正気なども含まれてるしな。
当然雄英生となれば勇気に関しては高い。
それにうちに秘める”潜在能力“はかなりあるはずだ。
「”個性“の限界も試す必要があると思う。特に完全に気配を殺せたら葉隠さんは奇襲において
多分俺と違って”個性“持ちは身体能力に関してはバフが掛かってると見ていい。
ならば、リミッターを一時的に無理矢理外させるのもありだろう。つまり人間が無意識にセーブしてる力、火事場の馬鹿力を自ら引き出せるようにするということ。
これをすれば擬似的に増強型と同じように出来る。というかやってる人いる。
俺の”界王拳“が近いが、あっちはどちらかというと火事場の馬鹿力だけど
ただまあ、これは後のステップ。二週間では到底出来ない。
肉体と技術が最優先。
と、思考を巡らせていると静かなことに気づく。
「どうかした?」
「あ……う、ううん。その、拳王技くん凄い考えてくれて驚いちゃって…私、そんな強くなれるのかな」
「なれるよ。”無個性“が雄英受かるほどだぜ。それに分からないことが多いからこそ、葉隠さんの”可能性“ はまだまだあるってこと」
「そっか…うん……。拳王技くんが言うなら説得力すごいや。私、頑張るから! だからお願いします!」
「よし、じゃあまずは葉隠さんの基礎能力を試そうか。”個性“把握テストから日付は経ってるし、今の葉隠さんの力がみたい。そこから俺が考えたことをやっていこうと思う。とりあえず今日は今の身体能力を見せてくれ。明日までに考えるから」
「うん!」
そうして身体能力テストのように紙とペンを持ち、道具を借りてきて彼女の身体能力を確かめた。
以前と違って平均的ではなくなり、ほんの少し基礎能力が上昇している。
恐らく彼女は密かに努力していたのだろう。
ますます本気で応えてあげないとな……。
爆豪くんの言葉も拳王技くんの言葉も、深く刺さった。
あの時、脳無っていうヴィランに私は何も出来なかった。
”個性“を言い訳になんてしない。
拳王技くんを見ていたら、そんなのよく分かる。
でも私は自分で強くなるには、と考えても分からない。
どうすればいいのか、何からやればいいのか。
筋トレ? 筋肉つけたらいいのかな…なんてそんなので簡単に強くなったら困らない。
だからこそ、私はみんなと帰らずにどこかに行く拳王技くんの背中を追った。
辿り着いた私は扉を開けると、覗くように中を見る。
誰も使ってないようで、拳王技くん一人しかいない。
けど彼は目を瞑りながら動いていて、まるで誰かと戦っているかのようだった。
数分もせず目を開いた拳王技くんは悩んでいたけど、今度はかめはめ波を放っていた―――自分に向かって。
吹っ飛ぶ姿にびっくりして、扉が開く。
でも気づいてないみたいで、邪魔しちゃうのは心苦しいけど、私は駆け出して彼に話しかけた。
―――タイミングが悪くて、暴発させちゃったけど。
それから私は、鍛えて欲しいと頼み込んで、その理由も話した。
見ていることしか出来なかった自分。
みんなが戦っても、私は守られてばかりで何も出来なかった。
もうまた、繰り返したくないから。
せめて彼を守ることが出来るくらいには。
ううん、そんな甘い覚悟なんてしてない。
もっと先。
支えたいって、思ったんだ。近くで守ったり、逃したり、それくらいなら出来るんじゃないかって。ただ置いていかれるのは嫌。
そう心からの言葉を伝えたら、拳王技くんはびっくりするくらいにあっさりと承諾してくれて、私のことを考えてくれた。
やるべきこと、可能性のこと、考えもしなかったこと。
戦闘向きの”個性“じゃないとは分かってたけど、そんなの関係ないと言うように彼は様々なことを考えてて。
自分の”個性“でもないのに私以上に考えてくれて。
はっきり言って、言葉が出なかった。
それと同時に、胸が熱くなった。
「あ……う、ううん。その、拳王技くん凄い考えてくれて驚いちゃって…私、そんな強くなれるのかな」
「なれるよ。”無個性“が雄英受かるほどだぜ? それに分からないことが多いからこそ、葉隠さんの”可能性“ はまだまだあるってこと」
そう、言われた時。
嬉しかった。
凄く強い彼が、私を認めてくれてるということが。
迷うことなく、肯定してくれたことが。
可能性がある、だなんて言ってくれたことが。
「そっか…うん……。拳王技くんが言うなら説得力すごいや。私、頑張るから! だからお願いします!」
「よし、じゃあまずは葉隠さんの基礎能力を試そうか。”個性“把握テストから日付は経ってるし、今の葉隠さんの力がみたい。そこから俺が考えたことをやっていこうと思う。とりあえず今日は今の身体能力を見せてくれ。明日までに考えるから」
「うん!」
だから私も、全力で頑張ろう。
彼の言葉に応えられるように。強くなったと言えるように。
いつか、彼を守れるように。隣で手を引いてあげられるように。
そう、心から思えたのはきっと、拳王技くんのお陰だと思う。
だからもっと。
もっと強くなりたい。
そう、考えて。
―――心に炎が点った気がした。
雄英体育祭本戦トーナメント二戦目
-
VS飯田
-
VS常闇