無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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二週間の修行

 

次の日の放課後。

早速俺は葉隠さんを鍛えつつ自分も強くなろうと計画を立てたので、とりあえず紙にまとめた。

ひとまずやるのは筋力を付ける…必要はない。というか二週間程度じゃ大した効力はない。

(服を見た感じ)華奢だし。

何より、なんというかすげぇ柔らかい。いやマジで尋常じゃない軟体っぷりだ。

なので全体的にバランスよく鍛えるとして、筋肉を付けさせるのではなく持久力と速度を優先させる。

正面戦闘向きなら筋肉は必要だが、彼女の場合は力を流せる程度あれば十分だ。

むしろ余計な筋肉をつけると、体の柔らかさという利点を殺してしまう。これは一種の才能ともいえる。とりあえず師匠を目指して体を鍛えればいい精神だった素人の俺が適当に口を出して取り返しがつかなくなったら困るし。

 

その後は、俺と組み手。

正確には動きを教える。

 

「まず予想出来る筋力から俺と違って殴り合うスタイルじゃないからね。葉隠さんの奇襲は成功すれば強いけどそればかりだとそれ以外弱いって思われる。だからこそ、葉隠さんには()を学んでもらう」

「技?」

「そう、受け流す力。いなし、流し、崩し、投げる。

他者の力を利用する技だ。多分というか、だいたいの女性にはこっちの方が合ってると思う。元から筋肉が凄かったり力が強い女性とかは例外だけど、 葉隠さんのかr…身体能力を見る限り()()()()()()()()()柔軟な技の方がいいだろうから」

 

注意点として”相手を倒すこと“以上に”相手を制する“ことに重点が置かれてること。

 

「まあ、試してみるから見ててくれ」

「う、うん。でも試すって言ってもここには……」

 

説明するにも見た方が早い。

そのため、コントロールしづらい”気“を何とか操作。

ちょっとした時間は掛かったものの、俺の体から()()が出てくる。

 

「ぶ、分身したーっ!?」

「うん、まあ分身だ。これは実体のある分身。意識が共有されるから目が増えるメリットはあるけど、その分力が落ちる。つまりこの場合、十割の力と想定し、五分五分になる小技のひとつ」

「な、なんでもできるね…拳王技くん」

「なんでもは出来ないけど、”気“の応用なんだ。これに関しては才能に依るらしいけど、まぁこういう時は役に立つね」

 

やろうと思えば数百人でも行けるんじゃないかって思われるだろうが、そうしたら多分ほとんどワンパン、もしくはただの衝撃で分身が消えるし本体の俺も防御力が低下するので、物量には向かない。

やったことはないけど本体が下手したら即死する。

 

「とにかく俺が俺で試す。分からない動きとかあったら一緒にやるから、この二週間で葉隠さんにはせめて攻撃を防ぐ手段を覚えてもらう。ただ結局防ぐ方法があっても動きが分からなければ意味が無いし動体視力は鍛えるしかないから、そこもメインでやる感じ。まぁ出久も動体視力は結構鍛えれたし、葉隠さんも大丈夫なはずだ。だから基本的に流れとしてはこの3つをやっていく」

「うん……分かった、がんばる!」

「…ああ、じゃ早速やっていくか」

 

”亀仙流“による独学、師匠の戦い方のコピー、経験。

そこから最適解を見つけ出しつつ、俺は葉隠さんに教えていく。

といっても俺は師匠の戦い方とほぼ同じなので、決まった型はない。

今教えてるのは確か”合気道“と呼ばれるものだったような。

”少林寺拳法“やら”カンフー“やら空手とかなんやら色々複合させたり独学が含まれてるせいで俺自身というか、師匠も含めて武術としか分類出来ないし、プロからすれば全く別物に見えるだろう。

結局”気“を使った我流だし。

どちらにせよ、一通り教えて終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、問題が起きた。

 

「頼む!俺達も鍛えてくれ!」

「どんな特訓をすればいいかだけでもいい!教えてくれ!」

「無茶なのは承知の上」

「少しでもお前に追いつきたい」

「すまない、拳王技くん。君にお願いするのは違うと分かっている……だが、どうしても強くなりたいんだ」

「私たち見てるだけしか出来なかったから。相澤先生も緑谷くんも爆豪くんも轟くんも切島くんも、あの脳無に立ち向かったのに…」

「難しいってわかってるけど、お願い」

「間違いなくこのクラスで一番強いのは拳王技さんですわ。ですから私達も何か指導をいただきたく…」

 

まさかのA組総出なのだ。

出久、爆豪、轟はいないから18人。

ちなみに今言ってきたのは切島くん。上鳴くん。常闇くん。障子くん。飯田くん。芦戸さん。耳郎さん。八百万さんだ。

他は聞き取れなかった。聖徳太子じゃないんだぞ。せめて順番に頼む。特徴と声の大きさがわかりやすいメンバーしか聞こえなかった。

はっきり言わせて貰うと、無理。

いくら分身を使っても、”気“のコントロールがブレブレな今ひとつ生み出すので精一杯だし、めちゃめちゃ疲れる。それに組手をしようにも1/3とか1/10しか出ない分身だとただのサンドバッグになるだけだ。

しかし、この場の全員に目を向ける。

誰も彼も真剣な顔で、本当に強くなりたいんだと伝わってくる。

 

「ちなみに出久や爆豪は?」

「デクくんは知り合いの人と試したいことがあるから、拳王技くんにって」

「爆豪ちゃんも似たような理由ね。それに拳王技ちゃんの方がいいって」

「ああ、うん出久はだいたい予想出来た」

 

多分八木って人のところだろう。

俺はフルカウル完成した時にはもう行かなくなったけど、公園綺麗になってたし。

未だに繋がりあるのか。なんかこう、秘密にしたいって感じだったもんな。

だからといって全員押し付けるな。

そもそも”個性“はお前らの分野だろ。

…まぁ俺も強くなれるしWinWinか……。

それに強くなりたいと本気の目をしているやつらに無理だとか言えないし、絶対あいつら分かってたな。

何より、ライバルだろうと相手が強くなるなら良いという俺の性格を理解してやがる…流石幼馴染。

 

「とりあえずみんなの得意なこと教えてくれるか? 明日までには出久から話聞きつつノートにまとめておくから。ひとまず今日のところは”個性“を伸ばすチームと”地力“をあげるやつと分ける。まあだいたい自分でもどっちに分かれるか分かってるだろうけど」

 

ということで、”個性“とその使い方を詳しく聞いて分けた。

”出力“を伸ばすチーム。

肉体を鍛えるチーム。

 

「俺は向こう側ではないのか?」

「ああ、お前のそのダークシャドウってやつは強いけど、どんなやつにも大半弱点はあるし戻すのに間に合わなければ、生身ががら空きだ。俺なら狙う。

で、疑問に思ってそうな障子くんは体は俺から見ても出来上がってるから”複製腕“の数を増やす、速度強化、コントロール優先。ただでさえ540kgなんて記録出してたんだし、増やせばその分威力も上がるだろ。こっから肉体より”個性“優先した方が合理的」

「成程。やはり聞いて正解だった」

「私は私は〜?」

「芦戸さんは、”酸“だろ?正直当たればクソ強いし精密性重視かなあ。狙いを定めたりとかはありかもな。あと細かくpH調整して自分の感覚と実数値のズレがないか試して、ズレを極限まで減らすってやった方がいいと思うからそっち。あと十分フィジカルありそう」

「オイラは?」

「お前は限界までもげ」

「マジ?」

「ごめんそれくらいしか浮かばない。でも”個性“も身体能力の一部だ。投げれる数を増やせば十分だろ。小さい体を活かすためにもな」

「やってやるー!」

「僕は?」

「レーザー撃って腹壊せ」

「雑すぎっ☆」

「俺は俺は?」

「お前はぶっぱやめろ。せっかく電気系の”個性“なのに非効率。なんならヒーローとしてやるにもアホすぎる。誰も彼もが絶縁体とか持ってるわけじゃないからな? 救助者居たらどうする気だよ。サポートアイテムにせよ壊れたら?あと肉体鍛えろ」

「え、俺だけめちゃくちゃ言うじゃん……」

「いや事実だし。今の俺を余裕で一撃で殺せるレベルの技を使うやつだっていたぞ」

「なにそれこわい」

 

俺は戦ってないけど、と心の中で付け加えた。

”邪悪龍“を倒した師匠が本当に凄すぎる。流石師匠。最初に会った時から尊敬してます。

 

とまあ、こんな感じで、ひとまずの課題を全員に叩きつけてみた。

全員を見ることが出来ないが多分合ってるだろう。もっと強くなりたいなら体育祭後時間くれて分析させてくれたら課題叩きつけるくらいは出来るけどさ。

肉体チームは俺の分身とやってもらう。

まぁ全力は出すが、所詮今の五割しかないため大して強くないから技で何とか凌いでメンバーを鍛えさせる。消されたらまた気合いで生み出せばいいだろう。

うーん…でも俺、鍛える時間なくない?

ま…みんなが強くなるならいいか。師匠にも言われたし。

もっと色んなやつと戦えって。俺が強くなるには今はレベルの合ったやつらと戦った方がいいと。

だから小学生の頃人気のない路地裏とか行って喧嘩売りに行ってたんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから一週間。

何とか捌いてたけど、流石に1対6はきつい。

途中から分身消して俺が入ったし。特に尾白、やっぱすげぇわ。普通に強い。ちゃんと戦いたいのに弱体化してるのが悔やまれる。

と、それよりも。

 

「葉隠さん、明日時間ある?」

「うん、大丈夫だよ!」

「じゃあ明日出掛けようか」

「……へ?」

 

試したいことがあるので、学校が休みだし誘った。

休みの日にまで修行は嫌かもしれないが、弱体化中の俺の”気“は回復速度も遅いらしく、日を開ける必要があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その、はずだったんだけど。

俺、なにか間違えただろうか。いや、本当は山に連れていくはずだったんだ。

だって気功技を使うにはちゃんとした場所、もしくは修行場所じゃなければ破壊してしまうし、クレーター作る可能性もある。

流石にいつも使ってるパオズ山は無理だけど。

なんでこんなこと思ったかと言うと。

 

「えっ…と……ごめん。遅くなった?」

「あ、拳王技くん。大丈夫、私もさっき来たばかりだから!」

 

―――目の前には明らかに修行に向かない可愛いらしい服やスカートを着た葉隠さんがいるわけで。

どうして、こうなった。師匠、俺何か間違えたんでしょうか。

流石の俺もこんな格好をしてる彼女に修行に行こう、なんて言えない。汚れちゃうし。

いや俺も普通に私服だけど。

大丈夫だ、よし予定を変えよう。

柔軟に考えるべし。

休息も大切だ、うん。四日修行したし休むことは大切。体育祭まで残り短い。

だから”個性“の許容範囲を試したかった…んだけどな。

 

「そっか、ならよかった」

 

そしてちょっと沈黙の時間が生まれた。

指で数えられる程度の人数しか女子と関わりのない俺。幼馴染の親はカウントするものとする。

しかし、こればかりは全く慣れる気がしないし、頭の中でどうするか考えるので精一杯だ。

出久とか爆豪なら気にせずに行きたいところ行くんだけど……。

 

「ど……どこに行く?」

「あー、と……確か葉隠さんって雄英には電車だっけ」

「うん、雄英には電車で来てるよ」

 

雄英高校は静岡県にある。

俺や出久たちも電車で行く距離だが、だいたい走ってるので参考にならない。

今回も俺が走ってきたが、ここ東京都。というか彼女の出身地は東京都らしい。

俺は地元ではないのだ。有名どころ、例えば浅草には行ったことあるけど。

 

「んー、まあ……何とかするか」

「拳王技くん?」

「いや葉隠さん修行頑張ってるだろ?」

「そのつもりだけど、まだまだ全然物にできてないんだよね……うー、せっかく拳王技くんが時間をくれてるのに、ごめんね」

「いやいやそんな簡単に出来るのってマジモンの天才くらいだから。葉隠さんは基礎を習ってたわけでもないし。そう考えたら結構やれてるよ。それに俺なんか半年かけてようやく戦う技術身につけたし」

「え!?拳王技くんが?」

「そうそう。基礎は学んでも戦い方が上手く噛み合ってなかったみたいでさ、自分に合うスタイルを身につけたのが半年。そこから鍛錬をし続けて、今に至る」

 

意外、といった感じで聞いてきた彼女に俺は思い出しながら答える。

慰めるためでなく、本当の事実。

表情は見えないからどう思ってるか分からないけど、彼女は優しげな声音で口を開いていた。

 

「本当に凄いね、拳王技くん。なんかね、こう努力してきた!って感じがよく分かるよ。教え方も上手だし!」

「そこは自信なかったけど……そう言って貰えると嬉しいよ。で、話は戻るけど、修行を頑張る葉隠さんに何かしてあげたいなと思って、一緒に甘いものでもどうかなと思ったんだ。苦手じゃなければだけど」

 

誰かに教えたことなんて数えれる程度しかない。

ただあまり褒められると、慣れてないので照れるから早々に話を戻す。

ついさっき思いついたことだが、やはりイメージとしては女性=甘いもの好きというのがある。

修行ばかりで友達すら少ないやつのイメージだ、後悔は無いけど言ってて悲しくなる。

 

「そうだったんだ……だから今日誘ってくれたんだ。大丈夫だよ、甘いのは好きだから!」

「そっ、そっか…じゃあそうしよう」

 

多分笑顔で言ってくれた彼女に俺はちょっとした罪悪感を感じた。

最初の予定とは違ったからだ。

まぁでも…ここから挽回しよう。大丈夫だ、葉隠さんなら知り合いに比べれば比較的問題ない。緊張せずにやれるだろう。

とりあえず歩きつつ、前来たことある店にでも行く。

あの喫茶店のケーキ美味かったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

もう一週間以上見てもらってるけど、自分ではあまり出来てる気がしていない。

そりゃあもちろん私だって真剣ですけど。ただね、ちょーっと恥ずかしいというか。

拳王技くんは私のためにやってくれてるってのは分かってる。

肌を触られる程度なら私も触っちゃう時あるからいいけど。その、密着しながらどう体を動かすのか教えられると、頭に入らなくなるというか。

こう、本当に男の子らしいというか頼りになる体付きをしてるというか…そういえばあの時は状況が状況だったから考えすらしなかったけど、上半身の道着を脱いだ時、凄い筋肉だったなぁ…なんて。

 

そんな風に、変なこと考えちゃったからすぐに思考を切り替えて何とか頭には入れたけど、彼は全然気にしてない様子なのだ。

峰田くんみたいに邪な感情を抱いてないって分かるから安心出来るけど、それはそれでちょっとへこむというか…乙女心は複雑なの。

友達だとは思ってるけど、女の子としては意識してなさそうというか…うん、多分姿が見えないってのもあると思うけど。

でも、彼にお願いしたのは私だ。そんなことを気にしてられない。

だから頑張ってる。頑張ってるけど……本当に出来てるのか心配になる。

拳王技くんは変わらず分身を使って修正場所を教えてくれたりしてるし、少しずつ出来てるようになってるとは言ってた。

それに最初に比べたら受け流す、ってことは出来るようになってきたと思うし。

ただ拳王技くんが相手だから、成功したら次は二回。二回出来たら三回といった感じで次々攻撃飛んでくる。

それでも私に当てないようにしてるのは、彼の優しさなんだろうなとも思ってる。

それに他のみんな、緑谷くんと爆豪くんと轟くん以外も拳王技くんに修行をお願いして強くなろうとしてる。

私も負けてられないって改めて気合いを入れて今日もまた一日の練習を終えたら。

拳王技くんがこっちに来た。他のみんなも解散させてたし、終わりってことを伝えに来たんだと思う。

差し出してくれたタオルと飲み物をもらって、お礼を言いつつ水分補給してから汗を拭ってると。

 

『葉隠さん、明日時間ある?』

『うん、大丈夫だよ!』

『じゃあ明日出掛けようか』

『……へ?』

 

二人っきりという状態。

そしてあまりに唐突な誘いに私は滅茶苦茶驚いた。

休日。しかも何処かに出掛けようか、という言葉。

頭が真っ白になって、曖昧な返事ばかりになっちゃったけど、家に帰った私は冷静になってすぐに混乱した。

 

どういうこと!?え?出掛けるって…そのまんまの意味? 休日に…それにあの言い方からして二人っきり?

い、いやいや落ち着いて私。拳王技くんには多分拳王技くんなりの考えがあるはず…!

だって拳王技くん結構考えてるし、全然無意味なことはしないタイプ。私に”技“を教えてる時もみんなに対しても有効的なことばかりで、必要なければバッサリ切ってたし。

だから多分、何かあるはず。

で、でも、プライベートで会うのは初めてなわけで。

タンスを開けた私は服を取り出してあーだこーだ言いながら悩みまくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもより寝る時間が遅くなって、見えないって分かってても女の子としてはオシャレに気を遣うわけで、寝る前に決めたコーディネートを着用して集合時間前に出る。

通勤ラッシュの時間帯は過ぎてるからか、学校に行く時よりは人は少ない。

思ってたより早めについた私は、待っていた。

意味無く髪先を弄ったり、周囲を見たり、そうして数分も関わらず拳王技くんが走ってきた。

多分、本当に家から走ってきたんだと思う。普段から修行してるって考えたら、拳王技くんの強さもそこから来るものなのかも。

全然息も乱れてないし汗すら搔いてないのは凄いけど。

 

それで。

さっき来たばかりだなんて、デートみたいなありたきりの会話をしちゃったけど、拳王技くんは私服だ。

特にセンスが悪いわけでもなく、普通って感じ。

むしろキザな感じもなく、かっこつけるようなものでもなく自然体で居られるような動きやすさ重視って感じで、彼らしい服。

なんだか気合いを入れたように選んだ私が恥ずかしい。

 

それを表に出さないようにしつつ、ちょっと話すと拳王技くんですら半年くらいかけて戦えるようになったって聞いた時は驚いた。

今じゃ物凄く強いのに、本当に努力を…それこそ首席になるくらいだから、人の何倍もしてきたんだと思う。

そういえば10歳の頃にはあの爆豪くんを完封したとか言ってたっけ……だからそれよりも前から努力を続けて鍛錬してきたんだ。

すごいな。”個性“がないって知っててもヒーローになるために続けて、本当に成し遂げちゃうなんて。

とっても凄い。だから、私も頑張らないと。前日は休むように言われてるから、その前にちょっとでも上手く、強く。

 

そして私を誘ってくれた理由は、どうやら頑張ってるから甘いものでもどうかって理由だったらしい。

休息という意味もあったんだと思う。

甘いものは好きだから、少し不安そうにしてる彼を安心させるように告げると、私たちは他愛もない話をしながら拳王技くんおすすめの喫茶店に向かっていった。

”技“に関する話は、休みだから考えないでいいと言われたので一切話題に出さなかった。

ちなみに行った喫茶店はとっても美味しくて、人は少なかったから知る人ぞ知るって感じのところだった。

確かにちょっと場所は外れてたし、あんまり寄り付かないところだったもんね。拳王技くんと一緒じゃなければ私も行かないと思う。

それからは普通に歩いたり、景色を見たり、遊んだり、と本当に友達と出掛けるのと全く変わらない日だったけど凄く楽しかった。

それに帰りが暗くなる前とはいえ、家まで送ってくれたし。

ほんと前も思ったけど拳王技くんって誤解されそうというか…人たらしの才能がありそうだよね。無意識に作ってそうで、ちょっと心配になった。

一緒に居た時もおばあちゃんとか小さい子とか困ってる人に手を差し伸べてたし。

 

けど、気分転換になった。

もしかして気づいて誘ってくれたのかな…なんて思いながら、改めて残り日数で頑張ろうと強く思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

と、まあ何故か葉隠さんと出掛けることになってしまって喫茶店行ったあとは一切考えてなかったので頑張って行く場所を決めたりと頑張った。

お金は俺が遠慮する彼女に誘ったのは俺だからと言って払ったけど。

 

ちょっとした予想外のことはあったが、”個性“は無理だったので諦めて”技“を優先させたり他の人の様子を見たりなどしていたらやっぱり時間が無く。

結局空いた時間に自分にかめはめ波を放ってボロボロになりつつ寝るを繰り返してるうちに”気“も安定してきた。

自分が思ってるよりも上昇してたし、地力を上げる効果はあったようだ。これならまださらに上げれそうだな。

まぁ、一度ガチで死にかけてリカバリーガール先生に治療された時はしこたま怒られて一日禁止されてしまったが。

ちなみに、ちゃんとみんなには当日前の一日は絶対に休めって念を押した。鍛えすぎても意味無い。

コンディションが悪くなって上手いこと力出せなくなっていいなら特訓してもいいぞ、と脅しといた。

これは出久にも爆豪にも昔さんざん言ったからあいつらも守ってる。

なんなら俺は二日前には(二人の親に許可もらって)引っ張ってキャンプに行った。

そして帰宅後、俺も明日に備えてちゃんと寝ようとベッドに入り込んだら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだ、界。言い忘れちまったけどオラもその体育祭っての観に行くかんな!』

「……へ?」

 

い、いやいや急に声が聞こえたと思ったら……え?

師匠が…観に来る…?え?今の俺を……?

 

『おめえが競い合うやつらのことも気になるし、どうやら相当腕ぇあげたやつらが居るみてぇだからな。界もあん時よりまた強くなってる。

へへ、わくわくしてくるな!じゃ、ちゃんと休めよ!』

 

い、いや待ってください師匠。

待って、まだ話が……切れた!

う、嘘だろ…油断してた……ど、どうしようめちゃくちゃ緊張してきた。

こんなの寝r

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通に寝た。

昔から師匠から言われてたし、習慣化してたからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして雄英体育祭本番までの2週間はみんな各々の課題に向けて邁進したわけで。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

ついに迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの努力の成果と今の実力をぶつけあう日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭、当日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その、控え室。

A組生徒が全員待機しており、本番に向けた準備を行っている。

身体を解したり、緊張を解したり深呼吸を繰り返したり友達と喋って気を紛らわせたり、調子を確かめたり。

ちなみに公平を期するために全員体操服だ。戦闘服(コスチューム)だと分かりやすいのだと爆豪の籠手とか明らかに差が出てしまうのもあるだろう。

俺?そもそもコスチュームがない。誰だ俺のコスチューム破ったやつ。*1

ちなみに俺は---

 

 

「だ、大丈夫かい?拳王技くん。その、今まで見たことがないくらい凄いが」

「珍しいね……界くんが緊張してるなんて」

「意外かも……」

「だねー」

 

もう俺の体だけ振動してるんじゃないかレベルで緊張で震えていた。

仲良し四人がそんなこと言ってきたが、馬鹿野郎!師匠が見に来るんだぞ!!緊張せずしていられるか! 俺にとって師匠はお前にとってのオールマイトだよ!!

親みたいな人だから大好きだけど、それとは別で憧れであり超えたい人なんだ!

 

「つか拳王技に緊張って感覚あったんだな」

「意外ね」

「俺を人外かなんかだと思ってる? 無理矢理ビリビリさせて限界迎えさせてやろうか」

「ひぃっ、お前が言うと本当に出来そうでシャレになんねぇよぉ!!」

 

失礼な、いくら”気“のコントロールが優れてるらしい俺とはいえ、さすがにそんな能力はない。

師匠が小さい頃に受けた萬国驚天掌(ばんこくびっくりしょう)っていう感電させる技があるらしいけど、あれは俺もよく分かんなくて未だに使えないし。ドラゴンサンダーは無理。

気円斬とかは思いついたから自分で作っただけで---後に師匠の仲間が使ってたことを知ったが。

 

「と、とととととりあえずめめめし食うか…」

「え、どこから取り出した?」

「たまに拳王技さんはよく分からなくなりますわね…」

「いや元々持ってきてたやつを高速で取り出しただけ」

「全然見えなかったよ!?」

「こいつはたまによく分からんから気にすんな」

「爆豪でも分からないのかよ」

「緊張したらむしろ飯通らなくね?」

 

ムシャムシャとコッペパンを食す。

瀬呂くん、お腹空いたら力は出ないんだよ。

 

「拳王技。緑谷」

 

そんな中、不意に声が響く。

騒がしい中で、妙に通った声だ。

視線を向けると轟がそこに居た。

 

「轟くん……何?」

「…むぐ?」

「…客観的に見ても緑谷はともかく、拳王技は俺より実力が上だと思う。だからこそお前には絶対に勝たなきゃならねぇ。NO.1になるにはお前は超えなくちゃならない壁だ」

 

何を言うかと思えば、変なことを言い出すやつだ。そう言うならお前の本気を見せてもらいたいところだが。

そうでもないのに俺の方が強いとか言われても。

それこそ”界王拳“や出久の”個性“のような反動がある力なら仕方がないが、こいつは違うだろう。

前も言ったが、”力“は”力“だ。自分の”個性“は自分のもんでしかない。

自分で気づいて欲しいんだけどな…そうじゃなきゃ前に進めないだろ。

 

「ただ緑谷。おまえはオールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねえが……お前にも勝つぞ」

「おお…二人に宣戦布告か!」

「轟くん……確かにそう見えるかもしれないね。でも君にだけじゃない。かっちゃんにもみんなにも、何より界くんにも。今回は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が勝つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真正面から言い返す出久の宣言は、強い意思を感じた。重みってやつを。

以前までなら言い返せなかったと思う。

成長、している。

本気で一位を、優勝を獲りに行くとも言いたげな様子だ。

()()()。出久の中で何かが変わった。そんな気がする。

これほどの自信。そして強い感情。

緊張なんか吹っ飛んで自然と笑みが浮かぶのは、本当に師匠の癖を受け継いでしまったのだろう。

つまり、わくわくする。

 

「何人を差し置いてテメェらで盛り上がってんじゃ!俺は眼中に無いってか、ああ!? だったら俺が全員ぶちのめしてトップに立ったるわ!」

「いやお前、俺すら黙ってんだからここは空気読む場面だろ」

「読んだ上で言ってんだよ!」

「いやいやここは拳王技の言う通りだって」

「そーだそーだ!」

「男同士の宣言に茶々入れるってのは野暮だぜー」

「うるせぇ!! 結果で示してやらぁ!!」

 

すごいな、A組。

あの爆豪を弄るとは…なんて適応力の速さ…!これが雄英か…!

恐ろしいぜ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
だからお前。

雄英体育祭本戦トーナメント二戦目

  • VS飯田
  • VS常闇
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