無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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レクリエーションと雄英体育祭:最終種目①

 

昼飯を食べ終わってある程度の回復が済んだため、無事に本戦やれそうだった。だいたい5割か。

やはりご飯は偉大。

俺の最大倍率で持って5分くらいってところだな…もう少し時間があれば完全回復を果たすはず。

 

『さぁ!昼休憩も終わっていよいよ最終種目発表…とその前に、予選落ちのみんなに朗報だ!あくまでこれは体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

 

そして午後の部が始まり、競技場に再び全生徒が集合した。

最終種目までいくつかのレクリエーション競技挟むため、暫くは箸休めの時間といったところだろう。

まぁ活躍出来なかった生徒の家族からクレーム来る可能性あるもんな。

俺はいないけど。

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んでいっそう盛り上げて---ありゃ?』

『ん?』

 

怪訝な声を上げる実況解説の二人。

アメリカからわざわざ呼んだのかよ…とは思ったが、何かあったのか?

 

『どうしたA組!どんなサービスだそりゃ!』

『何やってんだアイツら…』

 

言われて視線を変えると、確かに何故かチアリーダーの人たちと同じ衣装に身を包んだA組女子の姿があった。

ありゃ。みんな似合ってるな、うん。なんでやってんの?

 

「「うひょー!」」

「峰田さん、上鳴さん騙しましたね!!」

 

お前らかよ。

なんでこいつらそんな無駄なことで頭を使ってんだ。

 

「なぜこうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…衣装まで”創造“で創って…」

 

膝から崩れ落ちて己に落胆する八百万さん。

それを慰める麗日さんだった。

うーん、お嬢様だっけ。仕方がないと思う。

 

「アホだろコイツら!」

「まぁまぁ、本戦まで時間あるし、張り詰めてても仕方ないしさ。いいじゃんやったろ!」

「透ちゃん、好きね」

 

ポンポンを投げ捨てる耳郎さんと違い、葉隠さんは気合を入れるように体を動かしていた。

やっぱり体柔らかいよなぁ、あれを活かした戦い方を教えてあげたいけど俺は全然違うしな…。

 

 

『さあさあ皆楽しく競えよレクリエーション!!これが終われば最終種目進出!!4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだァ!!!』

 

お、今年はスポーツチャンバラじゃないのか。

()()は使えるけど基本スタイルは徒手空拳だから武器ない方が助かる。

そういえばスポーツチャンバラで思い出したけど師匠の武器、発目さんなら作れるかな?

 

ちなみに全員参加だが、本戦参加者だけは自由参加だ。

まぁ消耗を避けたい人はいるだろう。俺は参加せずに見るだけかな。

 

「組み合わせはクジで決めるわ!1位のチームからクジを…」

「あの、すいません……俺、辞退します」

 

ミッドナイト先生の説明を遮り、最終種目の参加辞退をする者が現れる。

プロにも見てもらえるこの最終種目は、謂わば体育祭のメインイベント。

何よりその声に聞き覚えのある俺は驚いて声をかけた。

その顔は、どこか苦しそうな顔だ。

 

「尾白?」

「せっかくプロに見てもらえる場なのだぞ!?」

「終盤まで記憶が無いんだ。その状態でトーナメントに参加するなんて嫌なんだよ。愚かなことだってわかってる。けどさ!みんな本気で挑んでる場なんだよ。こんな訳わかんないままここに並ぶなんて、俺にはできない」

「尾白……俺はお前とようやく本気で戦えると思ったんだが……」

「ごめん、拳王技。本当はUSJの時の約束はここで果たしたかった。でも俺のプライドが許さないんだ……」

 

プライド。

プライドか。

組んでたのは、確かあの心操くんだな。見た感じ体付きは前回見た時よりほんのちょっとマシになってるが、素の身体能力で勝てるかと言われたら厳しいと思う。

”個性“か。記憶が無いってことは精神に干渉するモノ?確か師匠のライバルの人が掛かった…そう、魔術に近いか? 確か洗脳だっけ?

でもまぁ……。

 

「分かった。俺も武闘家だ。俺も尾白の立場なら同じことをした。

気にすんなって、体育祭が終わったらやろうぜ。俺もみんなも本調子を出せない相手と戦って勝っても嬉しくない。本気でやれるお前と戦いたいからさ」

「…ああ。ありがとう」

 

涙を隠すように目を手で覆う尾白の肩をポンッと叩くと、真っ直ぐに見つめる。

すると少し驚いたように目を見開いたあと、安心したように表情が柔いだ。

大丈夫だ、その代わり勝手だけど俺がお前の分も背負うから。

格闘家としての誇り、ちょっと分けてもらうぜ。俺が優勝という形で、連れてってやる。

 

そう、目で伝えて。

 

「B組の庄田二連撃です。僕も同様の理由で辞退したい。このような理由で種目に参加するのは、趣旨に相反するのではないか」

 

あの人はB組の庄田くんか。

そうか、彼もなのか。

 

「クッ…なんだこいつら。男らしいな…!」

 

 

 

「…そういう青臭い話はさァ」

 

 

 

 

 

 

好み!!棄権を認めます!!!

 

 

 

 

 

好みかよ!?

多分、そうA組B組も似たようなことを思ってた。

 

その結果、繰り上がりで芦戸さんたちのチームが上がることになった。

まぁ持ちポイントでは鉄哲チームに負けてたけどポイント奪ってたから妥当か。

人数もきっちりしてるし。

 

そうして最終種目通過者16人が全員くじを引いていった結果。

 

 

 

ブロック1

第一試合:緑谷VS心操

第二試合:轟VS瀬呂

第三試合:拳王技VS切島

第四試合:常闇VS葉隠

 

ブロック2

第五試合:上鳴VS八百万

第六試合:飯田VS発目

第七試合:芦戸VS小森

第八試合:麗日VS爆豪

 

こうなった。

 

「…!俺の相手は拳王技か……!」

「切島くんか……」

 

見事同タイミングで目が合った。

ギラギラ、とした戦意に満ちた熱い目だ。なんだか、嬉しそうな気がする。

練習ではやったけど、こうして真正面から本気でぶつかりあったことはない。

あん時はフィジカルを鍛えるために縛ってたから、”個性“はなしだった。つーか二週間で自分にかめはめ波を当てて”戦闘力“がさらに上がったけど、弱体化してた時は今の1割の力もなかったしな。

しかし順調にいけば出久か轟とぶつかるか。もし出久が負けても俺が切島くんに勝てばぶつかる。

どちらにせよ、勝たなくちゃな…。

欲を言えば全員と戦いたいからいっそ俺が四人くらいに分身して追加で入ったらダメ? ダメか、力を分けたら出久と爆豪のバグ組二人には負ける気しかしない。

 

「丸顔か」

「ば、爆豪くんか……」

「加減はしねぇぞ」

「…もちろん!」

 

仲のいい二人が唯一最初にぶつかりあう対戦の方を気になって見れば、どちらもやる気満々といった感じ。

ただ爆豪相手となると、麗日さんはキツそうなんだが……客観的に見ても、そう感じてしまう。爆豪は昔から俺と出久と修行してきた。

中学の時から並のプロヒーロー以上の実力だぞ。なんなら今はあの時より数十倍、もしかしたらもっと強くなってるからトップを超えてるだろう。

 

『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

 

とにかくまあ、次はレクリエーションだ。

何人かは精神統一やら休むために抜けていくが、俺も不参加。

観戦はするけど、葉隠さんがこっちに来る。

 

「葉隠さん」

「拳王技くん。切島くんとだよね?」

「うん。そっちは常闇くんか……」

「…勝てると思う?」

 

そう言われて、どう答えるべきか考えあぐねる。

嘘でも言ってあげるべきか励ますべきか、それとも濁すべきか。

いや……。

 

「正直、確率は低い。でも俺の予想だと()()というルールがあると思うから0%ではないのは確かだよ」

「やっぱりそうだよね……私も分かってるんだ」

「葉隠さん……」

 

そう、0ではない。

最終戦はガチンコ勝負。

つまり生徒同士の一対一での戦闘力を競い合うシンプルなものだ。

学生ということを考えてルールを推測すると、相手をステージから落とす、或いは戦闘不能状態へと持っていくというものだろう。もしくは『まいった』等の降参を示す言葉を言わせる事でも勝利となる可能性が高い。

あとは常識的に考えて大怪我・致死になりかねない攻撃は禁止ってとこか。

師匠がかつて参加したことのある”天下一武道会“を彷彿とさせるものだろう。というかそのイメージしかない。

だから合ってるはず。

だからこそ、それを前提で考えるなら場外負けがある以上事故だろうがなんだろうが場外に出せば勝てる。

客観的に見ても、本当に低いが。

 

「でも…諦めないから。見てて!」

 

そういう彼女は、きっと強い目をしていたんだと思う。

なら俺から言えることはもうない。

頑張れ、だの負けるな、だの必要ないだろう。

そんなのは逆に失礼だ。

なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チアの葉隠さんを?」

「へっ!? ち、違うから! もー!本戦の私のことだからね!」

「わ、わかってるわかってる」

 

きっと”いつも通り“接するのがいいんだと、俺は思った。

軽く叩いてくる彼女を微笑ましく感じながら。

あと葉隠さんの見た目が分からないから似合ってるとかも言えないからな…。

俺は条件反射では答えないのだ。たまにするけど。

 

 

 

 

 

 

 

最初のレクリエーションは借り物競争。

普通に学校らしくて驚いた。

麗日さんと八百万さん、葉隠さんは参加メンバーだけどチアガールとして応援していた。

麗日さんと葉隠さんは元気一杯だな。八百万さんは控えめ。ただ責任感からか、投げ出さずにやってた。

真面目だなあ。

ところで借り物競争。

カバンとかは分かるんだけど、猫ってなかなか連れてくる人居なくない?”個性“とか異形型も対象なのかなぁ。

背脂は可哀想。どんまい、峰田くん。普段の行いじゃないかな…よく分からんけど、セクハラ紛いの発言してるらしいし。

 

「拳王技サン!」

「ん?」

「イマお時間いいデスか?」

「ああ、いいよ」

 

入口のところで壁に背中を預けながら見ていると、俺の存在に気づいた角取さんが来た。

多分お題だろう。

そのまんま手を引かれて、ミッドナイト先生の元へ連れて行かれる。

 

「試しに何か喋ってくれる?」

「えっ。急に言われても……」

 

お題が合ってるか確認なんだろうが、なにか言えって言われても困る。

まぁここで角取さんを褒めるようなことを言っても仕方がない。会ってあまり経ってない俺に口説き文句とか言われても嫌だろう。

普通にこれでいいかと言えばいいか。

ってことで。

 

Is this okay to confirm the theme?(テーマの確認はこれでいいですか?) Or should I still talk about something?(それともまだ何か話すべきですか?)

「OK!」

 

やったぜ。

 

「拳王技サン!アリガトー!」

 

喜びを表現するように手を掴まれてブンブンと振られたので、微笑ましくなった。嬉しそうでなにより。喜ぶ姿を見れて俺も嬉しい。

ちなみにお題は『英会話が出来る人』。

まさか何となく英語で返した時のことを活かす時が来るとは。

 

「拳王技ィィイイイ……!!ゆ、ゆるさねえ……!」

「なんだあいつ」

 

血涙を流しながらこっちを睨んでくる峰田くん。

こいつサイヤ人ならこんなしょうもないことでスーパーサイヤ人になりそうな勢いなんだが。もっと別んとこでその怒りを使えよ。

ところで背脂見つかった? 見つかるわけないわな、誰か持ってきてたりしない?

頑張れ、峰田くん。

まだ最下位じゃないぞ!

 

「ひねくれ者ね、拳藤さんもOKよ!」

「よし!

「よしじゃないけどねぇ!?」

 

なんか騒がしい声が聞こえた気がした。

拳藤さんも問題なかったらしい。

俺は角取さんと戻っていったが、どうしたA組、頑張れA組。

早く背脂持ってきた方がいいぞ。

 

次は大玉転がし。

障子くんに誘われたけど、大玉吹っ飛ぶからと遠慮したら喋ったことの無い口田くんとやってた。

すまん、障子くん。俺がもっと強ければ…!

そうしたら最初に一発殴って曲がる必要がある際にボールの軌道が勝手に曲がるような方法でゴール出来たのに…!!

…自分で言ってて意味分からなかった。

ちなみに最後は三角ベースだった。

懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

『ヘェエエエエイガイズ!!!アーユーレディ!?最後はこれだぜ!ガチンコ勝負!!心・技・体!知恵、知識!持ってる全部を使って勝ち上がりやがれ!!』

 

 

 

 

レクリエーションを終え、ついに僕の番がやってきた。

一回目って相手もそうだと思うけど何に対しても凄い緊張するよね…。出席番号一番の人からってよくあるやつ、『あ』や『い』から始まる人はほぼ毎回最初からだから凄いなって思う。僕と界くんとかっちゃんは真ん中と後ろ辺りだから全然経験したことないし。

 

それとレクリエーション中に尾白くんから心操くんの”個性“について教えてもらったけど、界くんは多分顔的に気付いたんだろうな…。聞かなかったから答えなかったって返ってくるのがオチだから何も僕から言えることはないけど。

ただ条件はなんとなく理解した。

初見殺しって感じの”個性“だ。逆に言えばそれは、とてもヒーロー向きとも言える。

 

「…ふぅ」

「やぁ。遅れちまったけど、間に合ったな」

「オールマイト」

 

そんな中、オールマイトが来てくれた。

 

「言ってた通り、”OFA“や複数の”個性“をちゃんと扱えてるね。それどころか拳王技少年から1本取るとは」

「はい。感覚として残ってますから。まだ”黒鞭“がないと100%は使えないみたいですけど…」

「十分さ。20%〜30%だったって考えたら補強して100%を扱えてるわけだからね。それにあの拳王技少年から爆豪少年と協力したとはいえ、1000万を奪い取った。君はもう、最初に会った時より何十倍も強くなってるよ」

「オールマイト……」

「だからこそ、私から一つ。そういう時こそ、決して油断せず頑張れ!」

「はい!」

 

長い言葉は必要ないということだろう。

一言の激励に僕は目一杯の笑顔で返すと、オールマイトに背を向けて歩いていく。

 

『顔は地味だが、障害物競走では三位!騎馬戦では一位と好成績を収めたヒーロー科、緑谷出久!!』

 

『対して、ゴメン!ここまで目立つ成績なし!普通科、心操人使!!!』

 

 

『ルールは簡単!場外か行動不能!!!もしくは降参宣言な!! 怪我はリカバリーガールが待機してるから上等! ただ!命に関わるのはクソだぜ!ヒーローは“敵を捕まえるため”に拳を振るうのだ!』

 

 

「これは心の強さを問われる戦い。強く思う将来があるならなりふりかまっちゃダメなんだ。()()()はプライドがどうとか言ってたけど」

 

『レディイイイイ!!?スタート!!』

 

「チャンスをドブに捨てるなんて、バカだと思わないか?」

 

あからさま過ぎるよ、心操くん。

界くんに鍛えられる前の僕だったら、その挑発に乗ってただろうね。

でも知ってるんだ。こういう時こそ、冷静で居なくちゃいけないって。

何か言いたいことがあるなら、終わってから話せばいい。

第一、”個性“だけにかまけて動かないのはダメじゃないかな!

 

「猿知恵でも掴まされたか? 応えろよ腰抜け!!」」

 

歩き出す。

“個性”は使わない。

彼に対しては強すぎるというのもあるけど、()()()()で戦う必要があると思うから。

 

「っ… 誂え向きの”個性“に生まれて、望む場所に行けるやつらには、恵まれなかった人間の気持ちが分からないだろ!」

 

そうだよ。恵まれた。

僕は人に恵まれた。

”個性“には恵まれなかったけど、幼い頃から近くにヒーローが居てくれた。

そこから始まった!

だけど、だけどこれだけは言える!

生まれた時から()()()()()()()()()人を僕は知ってるから! 

大切な人を目の前で喪って!僕の、僕たちの想像もつかないほどの努力を重ねて!それでもなお、前を向いてヒーロー科の首席になって!誰かを守るヒーローになろうとする強い人を知ってるから!

 

「このっ!」

 

頑として口を開かない僕に無駄だと思ったのか、ようやく動き始めた。

 

 

『なぁ、心操はともかく緑谷も“個性”使ってなくねぇか?』

『当たり前だろ。もしあのような一撃を使おうものなら“クソ”判定を受けかねん。ちゃんと力量の差を理解している証拠だ。ヒーローってのは常に殺さない程度に力を振るわなくちゃならん』

 

掴みかかってくる。

それに対して、僕は受け入れた。

()()()()

当たり前だ。僕は小学生の頃から界くんに鍛えられてきた。だから”OFA“をすぐ受け継ぐことが出来た。

少し鍛えた程度の彼に押し負けるほどヤワじゃない。

手を掴み。

力を入れて強引に背負い投げる。

本当は掴み掛ってきたときの勢いを活かした方がいいのは知ってるから、界くんに言われるかもしれないけど。

 

『ここで一本背負いぃ!!』

『強引かつ綺麗に投げたな。勢いすら利用していない。明確な肉体の”差“が出たってとこか』

 

「っあ……!」

 

背中を強打した彼を掴み上げて、僕は歩き出す。

それに対して当然、暴れる。

でも気にせずに歩き続けた。

 

「おい離せ!離せよ!!さっきから何も答えず、だんまりか!?」

 

そうして僕は、言われた通り()()()()()()

当然、掴み上げられて暴れても、僕が落とすことがなかった彼が耐えることも戻ることも出来るわけがなく、そのまま場外に落ちた。

 

『試合終了ーーー!緑谷出久!なんと“個性”を使わず使わせず!勝利ィ!!!正直一試合目にしてはあまりに地味だ!』

『まぁ、心操の“洗脳”くらったらタイマンじゃあ負けが確定するからな。フィジカルで勝ってる分、駆け引きなんてする必要がない。フィジカルの押しつけをするだけでいいってことだ。”個性“を使わずに勝てるという確証があったのもあるだろうな』

『まァそーだろうけどよ。厳しくないか?』

『逆だ。”個性“を使えばワンパン出来た試合を()()使()()()()ことで同じ土俵に立った上で長引かせたんだぞ。”個性“だけじゃヒーローはやっていけんっていう証だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

その通りだと思った。

やろうと思えば、一撃で勝つことが出来たはずだ。勝負にすらならない。相手は増強型で障害物競走と騎馬戦で一位と渡り合ってたやつだ。

 

ヒーローになりたかった。憧れたから。でも。それで。

俺は何をしてきただろう。

ヴィラン向きだと言われたことを気にして、犯罪者向きとか悪いことし放題だとか羨ましいだとか陰口を気にして結局俺は”個性“にかまけていたんだろう。

身体を鍛えた?所詮付け焼き刃だ。その程度で今まで努力してきたやつらに通じるはずもない。

俺はその実何も積み重ねなどしてなかった。

対面してわかった。掴まれた時、勝てないと理解させられた。

純粋な筋力差。()()もあったがそれ以前に、ただの力の差で負けた。

こいつが今まで積上げてきた、“証”と努力という形が現れていた”差“。本気で”夢“を追い求め、辿り着かんとする強い志。

 

 

 

ああ、そうだ。そうだよ。

俺は、俺は。

 

 

 

どうして、もっと早く本気になれなかったのだろうか。

 

『ハッ。さっきから聞いてりゃ、テメェらはなんか努力してきたのかよ?』

 

その通りだ。

何もしてなかった。してこなかった。

結果が、これ。

 

『こいつの体を見ろ、そして自分と比べてみろ』

 

見ていた。

会場が同じだったから、”個性“を使わずにロボットを破壊していた一人の男の姿を。

あいつのように鍛えてたら、ヒーロー科になれたはずだった。

 

『直接狙うより接続部を狙った方がいいよ。その身体だと真正面からは厳しいだろ?』

 

試験中だってのに、わざわざ助けに来たかと思えばアドバイスしてきたお節介の姿を。

今思えば、試験中だろうと助けようとするのは、まさしくヒーローとしての行動だったのだろう。

 

遅かった。

気付いた時にはもう、出遅れて、追いつけなくて。

でも憧れを捨てきれなくて---。

 

「心操くん。”個性“だけが全てじゃない。僕はそれを証明した幼馴染を知ってる。ヒーローになりたいんでしょ?」

「ああ…こんな”個性“でも憧れちまった。ヒーローになりたいって思った!そう思ったらもう目指したかったんだ!仕方がないだろ!!」

「だったら大丈夫。”個性“も”体“も”技“も…そして、”心“を鍛えよう。その気持ちがあるなら心操くんはきっと」

 

 

 

 

ヒーローになれる

 

 

 

「っ……!ちく、しょう……ほんとに……!」

 

分かってるよ!お前に言われなくても!

どいつもこいつもお節介ばかり焼きやがって……!

なってやる、絶対なってやる!ヒーローに…!

 

そして……!

 

 

「いつかお前より。いや、お前らよりも凄いヒーローになってやる……!」

「……待ってる!」

 

不思議と不快な思いはなく、ごく自然と笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

カッコよかったぞ!!!心操ォ!!!!

 

 

 

その言葉に目を向けると出入口の上に生徒が数名、おそらく普通科の人達が心操くんに声をかけていた。

 

「普通科なのに最終戦まで残ったんだろ!?すげえよ!!!」

 

「ここまでトップのやつに“個性”ガチ警戒されるとかヤバすぎだろ!!!」

 

「俺ら普通科の星だな!!!」

 

 

それだけじゃない。

 

 

「…使用範囲は分かってないが、答えるだけで敵鎮圧可能なのは凄まじいな」

 

「雄英も馬鹿だなぁ。あれ普通科かよ」

「まァ受験人数ハンパないからな、仕方ない部分はあるけどな」

「戦闘経験の差はなー……どうしても出ちまうもんな……もったいねえ」

 

「聞こえるか?心操…!お前すげえぞ!!!」

「…………」

 

観客席からは心操くんを評価するプロヒーローの声が聞こえてくる。

試合では負けたけど、この評価は心操くんが今日まで頑張ってきて勝ち取ったものだ。

例えそれが付け焼き刃でも、努力が認められた結果だ。

 

「…結果によっちゃヒーロー科に編入できる。覚えてろよ!お前らに勝って、絶対ヒーローになってやる!」

「……うん!」

 

きっと彼なら立派なヒーローになれると思って、返事したら。

 

「ったく、少しは警戒してくれよな」

 

頭の中がモヤにかかったような感覚と共にすぐに意識が戻った。

もしかして洗脳された!?

こんな感じになるのか。すごい”個性“だ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

出久が勝ったか。

壁に背中を預けて出入口で待っていると、紫髪の男が見える。

どこか吹っ切れたような顔で、きっと彼は強くなれるだろう。

 

「お前……」

「心操くん、だろ? 余計なお世話だってのは分かってるけど、これ渡すよ」

「……?」

「簡単な修行メニューってとこかな。ついでに連絡先。本気でそうなりたいって思ってるなら、これをこなして、より鍛錬を積んだら、必ずヒーロー科に来れるさ。”無個性“の俺がここまで来たからな。連絡先は随時追加出来るようにだ」

「修行メニュー…って、なんでそこまで……てか……は?”無個性“? お前が? ……嘘だろ?」

 

”気“のことを簡単に説明すると、愕然とする姿に苦笑いする。

誰しもが持ってる力を使ってここまで来た人物がいるのだから、そりゃそうなるか。

俺だって同じ立場だったらそうなる。

 

「俺にも出来るのか…?」

「さぁ。ただ努力次第じゃないかな。少なくとも……さっきより”気“は高まってるぞ。いつか扱えるようになるかもな」

「…そうか。お前、拳王技ってやつだろ」

「名前覚えてたか」

「ああ…その…入試ん時はありがとう」

 

今更なことに目を瞬きさせる。

アドバイスをしたことなんだろうが、照れ臭そうに首に手を当てていた。

 

「気にしなくていいって。放っておけなくてつい言っただけだし」

「そうか。結局活かすことは出来なかった。でもいつかお前も超えるぞ。そんでヒーローになる。これは有難く頂くよ、何もお礼は出来ないけどな」

「別にお礼はいらないよ。さっきの答えだ。俺は”縁“を大切にしてる。成長したのは、それがあったから。だからこそメニューを渡した理由を強いて言うなら、次に会う時は戦ってくれ。俺は強いヤツと戦うのが好きだからな」

「…わかった。次に会った時は絶対に勝つぞ、お前に」

「おう!」

 

…ん?

なんだ今の。一瞬意識が飛んだような。

 

「…ハッ、”洗脳“を無力化するって。やっぱりとんでもないなお前」

「ああ、これが”洗脳“か。心操くんが鍛えてたら無理だったと思うけどな。すごく()()()()()()()()()だ。この感じ、簡単に無力化出来る上に傷付けずに済む…()()()”個性“だと俺は思うぞ」

 

こればかりは俺が常時”気“を纏ってるから出来たことでもあるかもしれない。

体は動かなかったから効かないわけじゃないし。意識があったから”気“を操作出来ただけ。

衝撃で戻ったから、軽い衝撃で無力化出来るのだろう。

にしても今の心操くんでこれなら、彼がもっと”個性“を使って鍛えたら。

今の俺でも洗脳されるぞ、これ。

とんでもないなぁ。これだから”個性“は油断ならない。

 

「優しい、か……そう言われたのは初めてだな……」

「?」

「待ってろよ、ヒーロー科に編入して必ず追いつく」

 

そう言って、心操くんは堂々と歩いていった。

これは返事じゃない。

独り言だ。

だから。

 

「悪いけど待つことは出来ないな。俺たちはみんな、もっと上へ行く。追いつくんじゃなくて、追い抜くの間違いだろ?」

 

そう、彼の背中に語りかけると僅かに口角が上がっていた気がした。

 

 

 

 

 

ああ、追い抜いてみせる。

 

 

 

 

 

俺には彼がそういったように思えた。

 

 

エンデヴァー

  • とりあえず殴っとくか
  • (問題解決のため)轟のために殴り込む
  • 何もしない(勝手に曇る)
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