無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
あかん雄英体育祭終わらん。長すぎるそりゃみんな弛れるわ。こっからインフレばっかです。
それはそうと相変わらず何やってんだこの主人公。(*編集前の誤って予約投稿してたので一度消して再投稿してます。残業続きでつかれてた、ゆるして)
一戦目は出久の勝利。
新しくできるであろうライバルを心待ちしつつ、二戦目が終わったらすぐのため俺は出口で見ることにしたのだが。
うん、瀬呂くんがテープで先手必勝で落とそうとしたのはいいが、観客席にまで届かんとする轟の渾身の氷結攻撃に行動不能にされ、観客席からのドンマイコールを聞きながら敗北してしまった。
ドンマイ。
あれは同情するしかないな…瀬呂くんは火力がないからなぁ。
こっちに来たので。
「ドンマイ」
「もう聞きたくねぇ!」
「いやあ…どんま……ごめん、ほかに言えない」
「分かってたよちくしょう! 拳王技なら問題ないだろうけど頑張れよ!」
「瀬呂くん、いいやつ」
「急にどした!?」
「今度はフィジカル特訓しような!」
「お、おお…よく分からんけど拳王技なら助かるわ。緑谷が教えてもらってたもんな」
自分が負けたのに応援してくれる彼に手を振りつつ、見送るとステージの方へ歩いていく。
次は俺の番だ。
切島くん。個性は”硬化“。
硬い上に斬撃にも打撃にもなるものだ。
言うならば、最強の盾と矛を持つ”個性“。
負ける気はしないが、油断をするつもりはない。
『続いて第三試合!全身カチカチ!頑丈さが取り柄!ヒーロー科、切島鋭児郎!!』
準備運動をする中、切島くんが俺を見てくる。
不思議に思いつつも、準備運動優先。
『VS!!』
『色々規格外すぎるだろ!むしろ何が出来ない!?成績トップクラス!!ヒーロー科、拳王技界!』
解し終えた俺は首を回して肩を動かし、深呼吸する。
うん、”気“はだいたい回復しているか。
『スタートォ!』
開始の合図が響き、俺は構える---のではなく、手を前に突き出した。
「ストップ、切島」
「え?お、おう」
「悪い。こうやって顔を合わせてする
そう言ってから俺は姿勢を正すと、両手を合わせてぺこりと一礼した。
師匠からの言いつけの一つ。
試合前には戦う相手に挨拶が必要だ。
今から闘いで向かい合う相手をないがしろにしないっていう思いがあり、相手への敬意を示すものだ。
それを終えると、左手の人差し指と中指を曲げ、右手を腰部に添えて構えを取る。
「待たせて悪かったな。やろうぜ、切島くん!」
「ああ!行くぜ!!」
”個性“を発動させて全身を硬化した切島くんが俺に向かって走ってくる。
俺は自ら動くことはせず、じっと構えながら動作を見逃さないよう見ていた。
距離が縮まり、射程範囲内。
腕が動く。
右腕を引き絞り、そして。
「オラァ!!」
「ぐ…っ!!」
顔面に向けて放たれた右ストレートを俺は
間違いなく全力で放たれた一撃に強制的に視線が僅かに後ろへ行く。
足は一歩も動かず、拳は顔に付けられている。
『切島の右ストレート!モロに入ったーっ! これはかなりでかい!』
『あいつ、まさか……』
「お前、なんで……。っ!?」
ギギギ、と首を動かして押し返す。
気づいた切島くんは力を入れようとするが、押し返す俺の方が強く、左拳に力を入れる。
そして。
「だりゃあっ!!」
「ぐっ……!?」
左ストレートで頬を殴り、さらに踏み込んで殴り飛ばす。
俺の一撃に耐えようとしたからか地面が削れ、一気に元の位置へ戻っていた。
俺は殴られた頬に触れて笑みを浮かべる。
「いい一撃だな。お前の性格上、真正面から来ると思ってた。でも足んねぇ。だからこそ最初に言っておくぞ、切島くん。今回、小細工なんて俺はしない。真正面から殴り合ってやる!!」
「……! そうかよ、だったら遠慮なくやるからな!」
「来い!」
舐めプじゃなく、武闘家として戦うために”気弾“系統を使わないことを宣言すると、切島くんはまた真っ直ぐに向かってきた。
今度は腕を動かし、左腕を立てて防御。すぐに右側が狙われるが右手で逸らし、右腕を掴みながら体を回すようにして背を向けると背負い投げる。
受け身を取った切島くんだが、地面にヒビが入る。
すぐに起き上がって向かってくるが、俺は拳のラッシュを全て最小限の動きで避けて突き出された拳をキャッチした。
力を流した訳でもない為、手には直接衝撃が走る。
もう一発。
同じように受け止め、両手を塞いだ。
「だったらァ!!」
「ふんっ…!」
アゴを引き、足のバネを使って顔面を突き上げてきたので鼻や顎を避けるために大きく後ろへ頭を振りかぶって頭突きを返す。
俺の方がやり方としては間違ってる上に威力こそないが、額同士がぶつかり合うだけで血が出ることも怯むこともない。
両手を引っ張るように引き寄せ、容赦なく俺は腹部に膝蹴りした。
「がっ……!?」
腹部を抑えて数歩下がる切島くんを見ながら、俺はその場で佇む。
切島くんは同年代に比べれば強い方だろう。近接戦において、恐らく勝てるのは数人程度。
頑丈さを破れるものなんて出久や爆豪、轟くらいだろう。もしくは尾白のような格闘技術。障子くんといったパワー型ならやれるか。
しかし脳無の超再生を上から破った俺なら、こういってはアレだがこの程度脆いのだ。やろうと思えば上から潰すことなんて容易になる。
まだまだ自分が強くないのは知っている。でも俺は自惚れじゃなければこの世界においては相当な位置に居るはずだ。
だからこそ。
「どうした!諦めてんじゃねえぞ!その程度の力じゃねぇだろ! お前の本当の力を見せてみろ!!お前はまだまだ、出し切れてねぇ!!」
今から俺がやるのは、ただの自己満足だ。
俺のために。俺が強くなるために。もっと上へ行くために。
俺はこいつを強くさせる。
こいつの殻を、破らせる…!!
「だぁああああ!!」
「もっとだ! もっと鋭く!踏み込め!その程度の速さじゃ俺には当たらねぇぞ!!」
諦めず向かってくる。
それに対して逸らし、避け、一切攻撃が当たらないように回避する。
まだ足りない。
「そうだ、そしてもっと速く!闇雲に打ち込むな!狙って打て!フェイントを使え!軸足の踏み込みと体幹の捻り、腕や足の動きを連動させろ!!腕だけで打ち込んでも発揮出来るのは腕だけの力だ!!体重と勢いをもっと乗せろ!」
今度は防御する。
ただただ受け止めるのではなく、体を動かして衝撃を逃がす方法。ダメージを最小限に抑える方法。攻撃の勢いを殺す方法。吸収して流して方法。
防御だけでも様々なものがある。
『お、おいおい。これはどういう状況だ!?』
『あのバカ……この場で修行をさせてどうするんだ』
「回旋動作を伴うパンチは回旋力が大事になる!股関節の回転運動である外旋と内旋を意識しろ!そして牽制を忘れんな!”個性“によるゴリ押しをしても当たらなければどんな強い力だってダメージにはならないぞ!どいつもこいつも”個性“を意識しすぎてる!今は忘れろ!重心移動を意識して心掛けろ!体の各部位の動きを意識するんだ!!そして流れを止めるな!!」
明らかに弱まっている牽制目的の拳を軽々避け、反撃に出る。
両腕で防御する切島くんに、あえて防御の上から足技なしの拳だけを叩きつける。
体の使い方は、こうやるんだと。
「”個性“に深く潜り込め!それが限界か!違うだろっ!!もっともっと硬く鋭く堅牢になってみせろ!お前はここで立ち止まるようなやつか!? イメージしてみろ!実力が足りねえからって目の前で誰かの命を奪われそうになったら、どうする!?無力感に押し潰されるか!?何も出来ない自分を正当化するか!?踏み止まるのか!?違ぇだろ!! 立ち向かえ!足りねえなら自分に対してもっと
爆発させろ!自分の中にある
最初見た時は、すげぇやつが入ってきたと思っていた。
どんな”個性“かも分からず、同じ学生だって思えないほどの成績を残した拳王技。
”無個性“だと知った時なんて、正直信じられなかった。
でも言ってることは嘘じゃないってのは相澤先生や本人の口、幼馴染の緑谷たちが証明していた。
あん時は、まだ出会ってちょっとしか経ってなかったが拳王技は嘘を言わない男らしいやつだという印象を抱いていたからだ。
努力。
言葉にするだけじゃとっても簡単なもんだってのに、”無個性“であれほどの力を得るには一体どれほどの苦悩を重ね、一体どれほどの覚悟で鍛錬をしたのか想像がつかない。
俺も鍛錬はした。じゃあなんでここまで差が出来た?
違うんだ。その努力の数が。
俺の、俺たちの努力の数倍、数十倍は重ねたはずだ。いや数百倍だろう。
だからこそ”個性“ある俺らと違い、鍛錬の末に身につけた
”個性“なぞ関係ない。それを地に行くやつだ。
同じ男として、クラスメイトとして、俺は十分拳王技を尊敬できる存在と認識していた。
戦闘訓練じゃ轟や爆豪にすら勝ち、人当たりも良く、純粋でヒーローの精神が染み付いているような人間。
でもそんな拳王技は無敵じゃなかった。
正直、プロヒーローよりも強いと思っていたんだ。
間違いなくクラスメイトの中で最強だった拳王技がUSJの時、脳無にやられた。
俺には何も出来なかった。
緑谷や爆豪、轟の三人は精一杯時間を稼いだってのに俺はただ置いてかれて、何も力になってやれなくて。
唯一、最後に向かって行けたことだけが救いだった。もしあのとき動けなかったら、俺は今度こそヒーローを目指せなかった。
『もっと派手で強力な"個性"があれば』なんて言えない。言えるわけが無い。
じゃあ、あいつはどうなるんだよ。”無個性“でここまで来て、なんにもなかったあいつに言えんのかよ。
言えるわけねぇよ…!
俺は
意識を取り戻した時の拳王技を見たとき、あの姿は
凶悪なヴィランに恐れず立ち向かい、俺らが歯が立たなかったやつに勝利して!
凄かった。強かった。
あいつらみたいになりてぇと思った。俺も、俺ももっと強くなりたい。
だから。
だからこそ、嬉しかった。
本戦トーナメント、自分でも実力差なんて分かってる。俺、いいや拳王技は俺たちとは遥か先の世界にいる人間だ。
それでも俺は、戦いたかったんだ。
一番強えからこそ、それを超えたいと思ったから。
それに拳王技は俺を真っ直ぐに見てくれた。本人も自覚してるはずだ。
俺じゃ相手にならないって。それでも対等に見てくれた。
全力でぶつかった。
最初から”硬化“を全身に纏って拳を叩きつけた。
動かなかった。倒せるなんて思っちゃいない。
でもノーダメージかよ……!!
立ってるステージが違う。反撃の拳は、俺の拳が軽く思えるほどとっても重く、硬化してなければ一撃でやられていた。
『いい一撃だな。お前の性格上、真正面から来ると思ってた。でも足んねぇ。だからこそ最初に言っておくぞ、切島くん。今回、小細工なんて俺はしない。真正面から殴り合ってやる!! 』
そうは言うけどよ。
通じてないやつに言われても説得力ないぜ。
そうは分かってても、なんでだろうな。
すっげえ嬉しかった。
自覚してないんだろうけど、お前は本当にすごいやつなんだ拳王技。
そんなお前が認めてくれたこと。
人に依ったら手加減にしか見えないだろうけど同じ土俵で戦ってくれることが。
卑怯な手なんて使わず、男らしく殴り合いしてくれると言われて心が熱くなった。
対峙してわかる。
俺は拳王技に絶対勝てねえ。それくらいの差。実力差。
だからといって、心まで負けてたまるかよ! せっかくできたチャンスを無駄にしたくねえ!
ちょっとでもいい、この戦いで強くなるために全力で立ち向かった。
拳が当たらねぇ。速すぎる。
全然手が動かねぇ。力が強すぎる。
一撃がハンパねぇ。重すぎる。
そして足を踏ん張ってもあっさりと引き寄せられて、腹にダメージを受けた。
ああ、これがこいつの攻撃か。とんでもねえ。オールマイトかよ。
あの時より強くなってないか。
”挑戦“したい。
その心がなければもう、折れて倒れていた。
勝てない。
それでも、このまま一撃をもらって俺は負ける……。
ここまでか……ハハ。俺は結局何にも変わってねぇ。あの時決別したはずなのに、弱いまま---
『どうした!諦めてんじゃねえぞ!その程度の力じゃねぇだろ! お前の本当の力を見せてみろ!!お前はまだまだ、出し切れてねぇ!!』
ハッと目が覚めた。
俺は何をしようとしていた…?
諦めようとしてたのか……?
実力差なんて分かりきってたのに、また
情けねえ、男らしくねぇだろ!!
叱咤されて気づいた俺は、再び立ち向かった。
『だぁああああ!!』
『もっとだ! もっと鋭く!踏み込め!その程度の速さじゃ俺には当たらねぇぞ!!』
そうしたらなんでか知らねえけど。
何が目的か分からないけど。
いや、顔を見れば分かった。
こいつは俺に、
お前は本当に、無自覚なんだな…拳王技。
俺より遥かに強えのに。
ちゃんと俺を
そんな風に見られたら、俺も応えたくなるだろうが!!
その場で修行を付けてくれることに驚きはあったが、ひとつも聞き逃すことはしなかった。
塩を送ってどうするんだって考えはあったが、今は全部を忘れた。
考えるのは一つだけでいい、言葉を逃さず、一つ一つ修正していけ!!
学んで、吸収していけ!!
反撃がきた。
一撃一撃が地面に指をスパイクの如く地面に突き立てても押されるほどの一撃。
でも、これでも本気じゃないってのは分かっていた。
体の動きを見る。俺が見えるギリギリの速度を調整している。
にしても、重すぎんだろ……!
”武“を使わないステゴロスタイルの俺とは違ぇ。
体の使い方を変えるだけでここまで威力が変わるものなのか!
くそ、硬化が持たねえ……!!
『”個性“に深く潜り込め!それが限界か!違うだろっ!!もっともっと硬く鋭く堅牢になってみせろ!お前はここで立ち止まるようなやつか!? イメージしてみろ!実力が足りねえからって目の前で誰かの命を奪われそうになったら、どうする!?無力感に押し潰されるか!?何も出来ない自分を正当化するか!?踏み止まるのか!?違ぇだろ!! 立ち向かえ!足りねえな自分に対してもっと
爆発させろ!自分の中にある
そんな俺の心を読んだかのように拳王技はそう言った。
思い出せる。
あの日のことなんて、”動けなかった日“なんて忘れたこともねぇ!!
知ってんだよ、俺。お前、緑谷も爆豪も拳王技もヘドロヴィランの時に飛び込んだよな! オールマイトの活躍ってなってたけどお前らだよな!
かっけぇと思ったよ。一歩踏み出せる人間こそ、ヒーローだと思った!
同時に自己嫌悪した!
俺はヒーローになっていいのかって!
でも自分の
だから決めたんだ!ただ後悔のねェ生き方をするってよ…!
だから、だから俺はァッ!!
「だああァァァっ!!」
「しまっ……」
持続時間が切れた俺は反応するより早く強烈なアッパーカットを顎に受け、一気に意識が遠のく。
ああ、クソ! 俺はなんにも出来ず負けるのか…!こんな期待してくれて、一番強えやつが教えてくれて、ライバルとして見てくれて!それだってのに俺は、俺は----
「切島ぁっ!!!」
最後に会場から、芦戸の声が聞こえた気がした。
俺は、負けたのか。
何にも見えねぇ。真っ黒だ。
やっぱ強え、強すぎるぜ拳王技。
強くなりてえ。負けたくねえ。けど心でそう思っても、届かねえのか…。
もっと、もっと強え力がありゃ……もう見てるだけじゃなく、あん時みたいなことがあったら、守れるように、前を進むお前を、追い抜けるように。お前らに追いつけるように…!!
そんな俺の前に、灯火のような
暗闇の世界に唯一の光。
その光は、人型を象って。
”
その光が体内へと入り込んできて。
一つになる。
そして、理解した。
硬化を”もっと硬く“極シンプルな方法を。
何より、その使い方と。光の正体。
経験が、全部。
これで守れる、ヒーローになる。
そうか、この力は
『顎に強烈な一撃ーッ!これは決まったか!?』
『綺麗に入ったな。硬化が切れた以上、おそらくは……』
芦戸さんの声が聞こえて客席を見ると、席を立っていた。
しかし切島くんの体が背後へ倒れていく。
その通りだ。
意識はもう、ない。
頑張ったよ、十分。少しずつ硬くなっていた。攻撃も防御も学習していた。
ただ体力がなくなって、俺の一撃が入った。それだけに過ぎない。
もう休むべきだ。リカバリーガールが治してくれるけど、俺は痛めつける趣味は無い。
だからこそ、意識を奪う一撃を放ったわけで。
切島くんはまだまだ伸び代を感じさせてくれた。いずれもっと強くなれるだろう。
あとはもう、”個性“と”地力“を上げていくしかないから時間が解決してくれるのを待つしかない。
未熟な身で教えるなんてことしちゃったけど、いつかまた、次にやる時にはわくわくするような戦い方が出来ればいいな。
そんな考えとは裏腹に心が冷めていく感覚と共に、俺の中には満たされないような感覚があった。
俺と同レベルの相手が居ない。師匠は差が大きすぎて修行しても俺の成長速度は低くなってしまうらしい。俺の”潜在能力“がいくら高くても差があまりに大きいから肉体が持たずに成長が滞ると。”気“が高まらないのだ。
そりゃ師匠の一割にも満たない”戦闘力“しかないからな。
それでも今の俺ならあの強くなった脳無すら”気“を最大解放すれば通常時で互角に渡り合えてしまうだろう。
ああ、そうか。
強くなる代償ってのは、こういうこともあるのか。今まではずっと”気“を使っても苦戦する相手が居たから感じなかった。
でも、いつか。いずれ。きっと、切島くんや他のみんなが追い付いてくるって。
そう、思って。
「頑張れぇ!切島ぁぁぁ!!」
ざわつく観客に紛れ、彼と同じ中学だった芦戸さんが声援を送ったのが聞こえた気がした。
芦戸さんだけじゃない。他の観客も声援を送っている。
彼のガッツに、みんなが応援したくなったのか。
でも終わりは終わりだ。
切島くんの意識は、もう。
………だ。
……ま、だ……。
まだまだァアアアアアア!!
「ッ!?」
その、瞬間。
背中が倒れる直前で体を起こした切島くんの”気“が爆発的に上昇した。
”気“を獲得したんじゃない!
もっと別の、ナニカ!!
見覚えのあるこれは……こいつ、まさか土壇場で
「ゥ、オォオオオオオオオ!!!」
「ぐ、……ぅう!?」
踏み込み。
”硬化“がさらに刺々しい形状へと変形し、放たれた右拳を咄嗟に両腕をクロスして受け止める。
体が僅かに浮き、地面を削りながらほんの5mほど後退させられた。
「…はっ」
腕に伝わる痛み。
そして切島くんの姿。
正に全身凶器とも言うべき見た目に変わっていて、軋むような重低音が耳に入る。
「ははは…はははははっ!!」
なんだよ、それ。
こんなところでバグるなんて、応援で強くなるって、主人公かよお前!!
しかもこの攻撃力、さっきの数倍以上だ!
防御したってのに痛みが残ってる。
ああ、本当に……
わくわく、と心が弾む感覚が再発する。
『切島、ここで復活&反撃!!よく耐えたな!!いいぞ、そのままやっちまえーッ!』
『おい。しかしまあ……殻を破ったようだな』
「俺は守れる、ヒーローに……なるんだ……!」
「すげぇよ…切島くん。いや、切島。正直俺は終わったって思っていた。んなもん引っ提げて戻ってくるなんて、”切り札“ってやつか?」
”気“の上昇量がさっきまでとは比にならない。
好敵手として目を向けつつ、問いかける。
「…感謝してるぜ、拳王技。お陰で現時点の最高硬度を引き出せた。お前が居なかったら俺は今はまだ辿り着けなかった。これはその力だ」
「そうか。本来なら、まだ先の地点にあったはずの力ってわけだ。力になれたんならよかったよ。…で、その力で、どうする?」
「決まってんだろ!」
勝つ!!
同時に。
背を低めに一気に駆けてきた。
拳を握りしめ、容赦なく顔面に拳を突き出す。
頬を穿ち、そのまま---
「効、くかああぁ!!」
「!!」
押し返された!!
肩を掴まれ、ボディブロー。
体がくの字に曲がり、衝撃が突き抜ける。
ちゃんと捻りを活かしている。
なるほど、”個性“だけじゃない。”気“で分かっていたが、総合的に一気に上がったか!
そのことに気づくと笑みが止まらず、切島の拳が俺の顎を打った。
体が浮く。
そこに、中段蹴りが突き刺さり、俺の体は吹き飛ばされる。
すぐに地面に両足を着き、軽く蹴るようにして宙返りしつつ着地。
頭を下げる。
拳が頭上を過ぎ、ハイキック。
片腕を立てて防御する切島は流すようにして反撃してきた。
拳が頬に突き刺さり、たたらを踏んで後退する。
「く、くく……さっきとは別格だな切島」
「これでもダメなのかよ」
「いいや、強えやつと戦うとき、笑っちまうのは癖なんだ。十分効いている。本当に、心から思うよ。切島、お前はすげえやつだ」
今の俺がわくわくするってことは、切島のレベルは数段一気に跳ね上がったと言える。それこそ数ヶ月、もしくは年単位で。
普通なら一気に強くなるなんて、俺みたいな”奥義“がなけりゃ無理だ。
だからこそ、主人公みたいだと思った。だからこそ、俺はこういった現象をバグと呼んでいる。切島が初めてじゃないからな。
故に。
「こんなんじゃフェアにならねぇよな。だから切島、俺はお前に敬意を表すよ」
「敬意……?」
「そうだ。本当は切島には出すつもりはなかった。こう言っちゃあれだが、使う必要がなかったからな。けど今のお前は違う」
息を深く吸い込み、腰部に両拳を添えて腰を落とし、足を開く。
”気“を全開放すれば、こんなことせずに時間さえ掛ければ倒すことは可能だ。
でも。認めた。
認めたなら、それを示してやろう。
「俺の全力を出す価値が、今のお前にはあるってことだ! だから見せてやる、俺の”本気“を!」
「……! そうか。そうか……ッ!!
だったら見せてくれ、お前の”本気“!」
USJや今まで見せた実力よりさらに上があると言っているようなものなのに、切島はやけに嬉しそうだ。
それはつまり、勝てない可能性が高まるってことだ。というか、ぶっちゃけ今の切島でも勝てない力だ。
なのに嬉しそうなのは、何でかは分からない。
しかし出すと決めた以上、俺は嘘は言わない。
今の俺の”本気“を引き出す。
「ハァァァアアアアアアア……!!」
”気“を全開放し、そこへ今持つ”気“とは別の流れを生み出して上乗せしていく。
白から赤へと変化し、体が赤く染まる。
「す、すげぇ……地面が揺れてる…!まるで地震みたいに……これが本気か……!?」
二倍、三倍、四倍、五倍。
跳ね上がる度に”気“が上昇していき、目を見開くの同時に背中を僅かに反るように一気に解放し、最高倍率へと一気に引き上げる---
10倍界王拳!!
”気“が一気に吹き荒れ、その際の衝撃で切島の体が浮いて吹き飛ぶ。それどころかステージの地面一帯が砕けて吹き飛んでいた。
切島は咄嗟に体重をかけて地面に両足を突き刺したことで耐えたようだ。
「待たせて悪かったな。これが今の俺が立っている
「ああ…こっちも全力だ!!」
一撃で決める。
それはきっと、切島も考えたのだろう。
静けさがやってくる。
一秒か、二秒か。それとももっとか。
ただ風が吹き、そして。
「拳王技ィイイイイイ!!」
「切島ァアアアアア!!」
拳を引き絞りながら駆けてくる切島に俺は敢えて乗り、タイミングを合わせる。
同時に踏み込み。
捻り。
そして勢いよく突き出す。
拳と拳が交差し、拳が顔面に直撃する。
クロスカウンター。
結果---
ああ、まだまだ届かねぇか……けど、次は、絶対---
『……切島くん戦闘不能!拳王技くんの勝利!!!!』
轟音と共にステージの壁に叩きつけられ、埋まったまま気絶した切島とダメージもなく拳を突き出した体勢の俺を見れば、一目瞭然だった。
ゆっくりとした動作で拳を解き、”界王拳“を解除すると一礼する。
そして近づき、気絶している切島を引き抜く。
気絶前、目が死んでいなかった。それどころか、超えてやると言いたそうな
それだけじゃない。こいつは最後まで
「いい拳だったぜ、切島。ナイスファイトだ」
ミッドナイト先生に俺が連れていくことを伝え、肩を貸しながら会場から出ていく。
それにしても”界王拳“を使用した際に一気に壊しちゃったが、大丈夫だろうか。
何よりあの場面でバグったのは俺も想定外だったな。今の切島は恐らく轟以上、本気の爆豪、出久未満と行ったところか。
くうぅ、これからが楽しみになる。もっともっと強くなるはずだ。そんなこいつと戦いてえな。
「拳王技!切島は!?」
そう思ってたら、芦戸さんが走ってきたようで乱れた息を整えながら声をかけてきた。
そういや、同じ中学とか言ってたっけ。
心配になるのは当然か、声聞こえたし。
「この顔見たら、分かるだろ?」
「……ホントだ。満足って感じ」
そう、切島は気絶しているが満足そうな顔だった。
悔しさや苦しそうでもなく、今の戦いに後悔がないと言うような。
「強かった。俺が保証する。切島は強かったよ、芦戸さん。俺が本気を出す決断するほどに」
「そっか……そっか! それはきっと、切島が喜ぶ言葉だと思うよ!」
「……そうだな。ああ、それと」
芦戸さんに近づいた俺は、肩を貸していた切島を支えつつ、彼女に押し付ける。
気絶してるせいで前に倒れかかる切島を咄嗟に抱きしめるように受け止める姿を見て、口を開いた。
「俺が連れていくより芦戸さんの方がいいだろ。連れてってあげてくれ。それに俺はすぐ行かなくちゃいけないから」
「え、えぇっ!? ちょ、ちょっと拳王技!?」
「ごめん!頼んだ!」
「まっ、はやっ!?」
次の戦いは誰かなんて言うまでもない。
試合が始まる前にせめて一言、何か伝えてあげたい。
芦戸さんなら任せても問題ないだろう。
同中だし。
ちなみに投稿サボってた時に拳王技くんの速度何となく求めてみるかって色々調べたんで少しお時間お借りしますわ。ちょっと長いよ。
興味ない人は別に失踪だとか内容に関わるもんでもないのでそのまんまブラウザーバックでもどうぞ。
他の人の小説読んだ方が時間が有意義だと思います。ワイは調べるのに無意義な時間使ったぜ。
興味ある人は付き合ってね。
―――――――
ドラゴンボールもヒロアカも速度明かされてるところが少なすぎて参考にならないのでわかる範囲で。
そもそもフィクションで求めるもんじゃないと言われたらそれまでですけど。あと長距離と短距離で変わるしカタログスペック的にはこんなもんじゃねって感じ。
同じ条件にしたら体力的な問題とかで直線とかうんぬんで変わるし。
それこそキャラ同士で並んで直線数百キロくらいを動いてもらわんと無理。
ヴィジランテで明かされてる全盛期オールマイト、東京→大阪(約550km)を14秒で駆けた話(正確には明示されてなかったはず)
なんか飛んでたし。あれ気では? アニメ化が待ち遠しいところ。
それはともかく、上記を参考に計算したら約141000km/h、つまりマッハ115です。間違いか?と思ったレベル。ドラゴンボールやんけ。移動の際オーラ纏ってたしマジでドラゴンボールかもしれん。実際数十人制圧したり消火したり救出したりファンサを含めて3秒で終わらせたからそれくらい出ててもおかしくはない。
というかモチーフとなったであろうスーパーマンの速度考えたらオールマイトもマッハ115あってもおかしくは無いような。サノスぶっ飛ばしてるし。
ぶっちゃけソニックブームで死ぬと思う。そこは現実で考えちゃダメなのだろう。フィクション世界だし。
でもあの金玉がその見開き1ページの部分に対して3秒稼いだとか言って喜んでたからなぁ。移動も分もかかってないんやろうな…。あん時って全国を飛び回ってたし。つーかオールマイトが72時間労働しても(撮影とかインタビューとかが多くあったんだろうけど)なお終わってないってあの世界マジで治安終わってる。
弱体化が5kmを30秒未満なため、脳無振り払ったり喋ったりしてたことから時速600キロ以上。音速〜超音速クラス(?)。
これから60倍以上と推測するならマッハ30ほどになる。ただブックによると全盛期は走る速度は最高マッハ10とのことらしいが。
ちなみに悟空さ死亡時、6ヶ月で計算すると蛇の道(片道100万キロ)出発時点では228kmくらい。
蛇の道帰る際には時速41666なので、マッハ33、もしくは34。この時点で分かりやすいマッハ20の殺せんせー超えてる(このことから殺せんせーはナッパ未満と思われ)
少なくとも30以上ある(この時点で悟空さは界王拳使って蛇の道から帰ってなかったので戦闘力が5000、もしくは8000)なので、それ未満である拳王技くんが10倍界王拳を使って計算すると全盛期オールマイト以上。
ちなみに蛇の道の時の悟空さの戦闘力を8000と想定。根拠としては帰ってきた時に仙豆食ってたから。急いでるのに全開で飛ばさないとは思えないし。
しかもその後は温存のために筋斗雲で移動。マッハ1.5だっけ。
万全の状態で挑むという理由があったのだろう。
そうなると拳王技くんの推定戦闘力は4万。
既に拳王技くんは全力で駆けたらマッハ165くらい出るんかな。時速にすると202132.3。
ただ速度に関して界王拳の特性上はそのまんま倍にしていいはずだが、ダメなのかどうか。
そもそもドラゴンボールにおいて戦闘力=速度じゃない(ギニューがスピードではヤツの方が上か!と言っていたり自分より戦闘力の低いバータを宇宙一、多分宇宙一のフリーザ軍の中ではという意味で褒めてる)ので、実際には拳王技くんでようやく121くらいになると思われる。ただ界王拳ならスピードも倍になるはず。ようわからん。
しかし界王拳でスピードがそのまんま倍になってしまうなら100倍界王拳使った方が強くなる気がする。
それどころか戦闘力=速度なら同じ倍率とされてる超サイヤ人2の時点で光速を超え、矛盾が発生する。
理系は苦手なんだ、ダメならその辺でええやろ(唐突な投げ出し&適当)
逆に言えばオールマイトは地球に初めて来たベジータ以上はある計算になる?戦闘力で計算すると、単純計算で界王星帰還時の悟空さの3.5倍界王拳レベルやで…推定戦闘力は28000以上になるのかな。こっわ。
仮にマッハ30程度としても通常時と同等レベルくらいか。
ただオールマイトはOFAの特性上総合的にも高いはず。
速度と比例しないから、そのため実際にはフリーザ編レベル? 正確にはナメック星ドラゴンボール争奪編。
戦闘力にすれば3万〜くらいになるのだろうか。作品が違うからどう足掻いても無理。
好きなキャラなら好きにしたらいいと思います。ワイは盛るで。
ちなみに先程挙げた矛盾について。
スーパーゴテンクスすら地球を30分(休憩込み、ブウのところに移動)で9周?という点。
そう考えたらサイヤ人編より圧倒的に強い悟空さは超サイヤ人2で光速。
それ以上のスーパーゴテンクスが9周も掛かってる時点でおかしい。
そのためZまでは光速未満(光は1秒で地球を7周半すると言えばわかりやすいか)。
ただそうなるとスーパーゴテンクスはマッハ600以上の計算になってしまう。やはり速度=戦闘力じゃないから行って極超音速クラス、光速未満なのだろう。
初期ゴッドで光速。力の大会後時点では上回る超光速クラス。
根拠としては明かされているディスポが音速を超え、光速を超えてるらしいのでちょい下のほぼ同等だったゴッドが超光速クラス…ブルーがそれ以上。
といった感じだと思うし。瞬間移動はチートすぎるので例外。
こうやって調べてみると案外フリーザ編ってそんな速くないんやなって(感覚麻痺) だいたいマッハ100〜300くらいの世界だと思われる。ちなみに聖闘士星矢の方が速いと思われるだろうが、攻撃と実際に動けるのとは異なるのでそういう訳では無いと思われる。(黄金聖闘士は光速レベル。有名なペガサス流星拳も光速に達して叩き込んだこともある)それ言えばドラゴンボールのビームなんてそれこそ光速レベルのはずだし
どっちにしても、あんなにナメック星爆発まであと5分が長かったのにね!
結果。
算出した結果、既に全盛期オールマイトを超えてバケモノと化してる拳王技くんがやべえのか全盛期オールマイトがやばいのかわかんねぇなこれ。
ただインフレのえぐさを思い知っただけだった。
DBやべぇわ。原作通りのマッハ10を参考に考えたらサイヤ人編で既にヒロアカ勢最強クラスを超えてやがる。
エンデヴァー、こんなオールマイトを半冷半燃で本気で超えられると思ってたんですかねぇ…?
どっちにしても強くなったのに(速度殺したとはいえ)殴られた切島くんがワンパンされたのもしゃあないね…。
これを前提として考えると、今のところ強さランクは、ヴィジランテ活動時〜第一話拳王技くん(ただし界王拳は使用しない前提)<入試時重りあり拳王技くん<重りなし<脳無<<弱体化オールマイト<USJ時点の全力全開拳王技くん<100%以上オールマイト=USJ時の強化後拳王技くん<|越えられない壁<強化脳無<界王拳使用<|越えられない壁<<全盛期AFO<<<原作全盛期オールマイト<10倍界王拳使用時の拳王技くんって感じかな。
ちなみに本作ではwikiにもピクシブ百科事典にも書いてる方を採用。DBクロスオーバーやしそれくらいでも全然ええやろ。足んないくらいだし。
DBクロスオーバーの影響で目覚めてないだけで”気“が全員に存在するため、総じて世界レベルが上がってるってことで納得して。元々”気“が拳王技くんだけしかないってことにしてないのもインフレを考えてのことだったし。じゃなきゃ全盛期オールマイトが最大まで引き上げた界王拳使用前の拳王技くんレベルになってしまう。
ただ覚醒した拳王技くんだけが異常な力を見せてるだけです。だってこいつ、幼少時に悟飯もびっくりするほどの異常な戦闘力見せてるんで。
そう考えると最高にドラゴンボールしてきたな…?
というかこれヒロアカ完結では?
金玉殴りに行ってぶっ飛ばせばもう原作終わりだしこの小説終わりやで。
原作通りならね。
参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ
-
本編のみ
-
その他