無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

30 / 62
雄英体育祭:最終種目③ 葉隠透VS常闇踏陰

 

急いで待機室へ向かった途中で出久たちと会ったが、一人で行くことを伝えた。

大人数で行くとプレッシャーになるかもしれないと言って。

それで分かれてすぐ、俺は走って扉を勢いよく開ける。

バギッ!とドアが外れたので慌ててぶっ刺しつつ振り向くと、葉隠さんがこっちを見ていた。

 

「拳王技くん……?あれ、切島くんと」

「さっき終わったよ。俺がちょっと壊しちゃったからまだ時間ある。だから葉隠さんに会いに来た」

「そっか……」

 

姿が見えなくたって分かる。

緊張しているってのが。

モニターがあるのに試合のことを知らないことが証拠。

相手は常闇くんだ。ダークシャドウの攻撃力はかなりもので、常闇くん自身も俺との特訓で最低限は戦える。

それでも常闇くんには悪いが、俺は決めてるんだ。

 

「葉隠さん、手を出して」

「…?う、うん」

 

言った通りに両手を出してくれたので、おおよその位置を予測して両手を上から重ねてそっと握る。

 

「け、拳王技くんっ!?」

 

目を閉じ、”気“をコントロールして同調させていく。

力を渡すことは出来ない。それはフェアじゃないし一時的な力で勝ったとしても嬉しくはないうえに、今までの努力を無碍にする行為。

本人が望まない以上、俺からアドバイスもしない。

勝手にやろうものなら、俺がそいつを許さない。

それに”気“ってのはあくまで体力を回復させる程度。

人それぞれだが、中には回復どころか再生すら可能にしてしまうらしい。

少なくとも俺の師匠は傷口は治せる。

俺はまだ体力を回復させる程度しか出来ない。

それでも落ち着かせることは出来るから。

 

「温かい…」

「少し落ち着けるだろ? 大丈夫。葉隠さんは今まで頑張ってきたんだ。その成果を見せてやろう。プロに、同級生たちに。例え戦闘向きの”個性“じゃなくたって勝てるって。葉隠透という女の子が来た!ってさ」

 

心配な気持ちは、もちろんある。

だけど一番不安なのは彼女だから。

俺はただ笑うだけだ。

 

「今までの……そうだね!うん、そうだ! ありがとう、拳王技くん。私頑張るね。今の自分が出来る、全部を出し切ってみる…!」

「応援してるよ、俺は。常闇くんには悪いけど俺が一番葉隠さんが頑張ってきたところを見てきた。だから…頑張れとは言わない」

 

 

 

待ってる

 

 

 

 

そう、告げて俺は彼女の手を離した。

表情なんて見えない。

姿も。

ただ不思議と両手を握りしめて、覚悟を決めたような顔をしている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉隠さんと分かれた俺は観客席に戻ると、席に座る。

クラスごとに分かれてる。

はずなんだけど。

 

「大丈夫ノコ?」

「ああ…うーん、多分。緊張は和らいだと思うけど…」

 

小森さんが俺の隣を確保していた。

ちなみに目が隠れてて試合が見づらそうだったので、休憩の時に鞄から取ってきた母親が使ってた花柄のヘアクリップを貸して片目だけ見えるようになっている。

彼女の目は、なんというか綺麗だから隠れてるのが勿体ない。正直他の人にはない魅力的な部分だ。

クリップ貸す時にそれ伝えたけど。

けど俺はいいんだけど、B組から何か言われない?

まぁ俺も小森さんと話したいから、来てくれるのはむしろ有難いし困らせるやついるならぶっ飛ばすけど。

 

「拳王技!テメェ何1人抜け駆けしてやがる!オイラにも紹介しろよぉ! どうせサポート科だけじゃなくB組の女子とも知り合ったんだろ!?そうじゃなくてもその子に話して紹介してくれよ!お前にはそんな巨乳女子がいr…ぶべっ!?」

「失礼だろ」

 

早速居たのでデコピンで吹っ飛ばしておいた。

 

「あれ…大丈夫?」

「大丈夫、加減はした。それにあいつは多分シリアスでもない限りギャグ漫画の世界にいるようなやつだろ。小森さんは気にしなくていい。それにアレだ。ある意味物間くんみたいなやつ。ごめん。それは物間くんに失礼か…」

「やあ呼んだかな?キミが拳王技?ってやつだっけ?うちの小森のお陰で最終種目に残れたラッキーくんだろ。実力はあるみたいだけど、うちの小森のお陰ってことは忘れられちゃ困るなぁ!」

「言ってたら絡んできた…。そりゃそうだろ、小森さんが居なきゃ負けてたし。小森さんを頼りにしてたからな」

 

”気“で気づいてたけど、なんでB組がこっちに来てるんだ。

試合が近いぞ、早く戻れ。

それに小森さんのお陰だろう、何言ってんだ。彼女がいなければまず参加すら出来なかったんだぞ?

思わず真顔になるレベル。

隣では俯いてた。

何か悪いこと言った…いやそんなはずは。

 

「な、ふ、ふふふ…わ、分かってるじゃないか。全く小森も可哀想だ、こんな言われっぱなしの男と組まされるなんて---」

「む…そんなことない。私から組んだし、拳王技くんはすごいノコ」

「随分とそいつの肩を持つじゃないか小森。いいかい、そいつはA組!そして僕らはB組だ!つまり敵ってことさ。ヴィランと戦ったってだけで凄いなら僕たちは?たまたま巡り合わせただけで何故A組だけが注目される!?同じく雄英の入試試験を合格したのは僕たちも同じだろう!? いいかい、今回は負けたけど次は僕たちが---」

「そうか、そりゃ楽しみにしてるよ。お前もきっと、凄い”個性“だと思うからな」

「……っ!」

 

何かを言いたそうな顔だった。

もしかしてコンプレックスか? どんなもんか知らないけど、雄英に入れたってことはいい”個性“だと思うが。

 

「やめときなよ、物間。拳王技はこれ、本気で言ってるから。皮肉にも煽りにもなってないよ」

「拳藤……どういうことだい?キミも知ってるのか?」

「ちょっと話したくらいだけどね。ただ拳王技からしたら誰のでも、物間の”個性“も()()()って認識になるから」

「ますます理解が出来ないな。あれほどの実力を持っておいて? 認めたくはないが、僕たちよりもヒーローらしいじゃないか。正直オールマイトのような」

「色々あるんだよ。とにかく行くから悪いね、邪魔して。あー…希乃子のことは任せていい?」

「俺は話したいから全然大丈夫。まあなんだ、物間くん。確かにA組ばかりが噂になってるけどさ、B組も凄いってのはよく分かってるよ。今度機会があるなら、戦いたいって思うほどにさ」

「……ふん、憐れみなんていらないね。忘れないでくれたまえ。次に勝つのは僕たちだ。それにまだ負けたわけじゃない。小森がA組の一人でも勝てば実質僕らの勝ち!! 油断したら足元を掬われ…いいや、むしろ油断しておくといい!そのまんま鼻を---」

「今度そっち行くから一緒に修行しようなー!!」

 

最後の最後までなんか喋っていたが、拳藤さんに連れて行かれてたので、大声で伝えておいた。

あれほどライバル視してくれて闘志があるなら、きっと凄い成長できるだろう。

自分ルールは、うんまぁいいんじゃない…?

 

「なんだかんだいいやつだな、あいつ。小森さん応援してたし」

「うん、あれでもまとめ役の生徒の一人だし、B組のこと考えてくれてるから」

「ああ、俺はああいうやつ好きだぞ」

「ねぇ、僕気になったんだけど界くんはいつの間にB組の人たちと仲良くなってるの……?」

 

今更なことを出久が聞いてきた。

なんならダウンしてる峰田とさっきより何故か曇りつつ俺から気まずそうにしてる轟、興味無さそうな爆豪以外が頷いてる。

理由か。

理由ね……。

 

「飯一緒に食って…話した……?」

「なんで界くんが疑問形なの!?」

「いやぁ、でも小森さん以外とはそんなにじゃない?なぁ?」

「ノコ?」

「目で通じ合っとる!?」

「流石は拳王技くんだ!!」

「流石とは…?それよりそろそろ始まるぞ」

 

何が流石なのかは不思議だったが、俺がそう言うと葉隠さんと常闇くんが既に入場していた。

 

「界くんはどう思う?葉隠さんの相手は常闇くんだから、正直……」

「厳しいだろうな。でもまあ、俺は葉隠さんを応援する。常闇くんには悪いけどな」

「私も、そうするノコ。昨日の敵は今日の友って言うもん」

「そうしてあげてくれ」

 

A組だからどっちも応援しなくていいのに本当に優しい子だと思いつつ、俺は観戦に集中することにした。

さて、俺が教えた技術がどこまで通ずるか。勝負はそこだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

手の中に、体にまだ温もりが残ってる。

緊張は気がつけば止まっていた。

もし勝てば、次に戦うのは拳王技くん。

待ってると言ってくれた。ライバルとして見てくれた。

だから勝ちたい。

あの時とは違って強くなったんだと証明したいから。

相手は常闇くんで、”個性“だけ見るなら勝ち目は無い。でも”個性“だけが全てじゃないと拳王技くんは証明してる。

だから私も頑張るんだ。

 

『さぁ、先の戦いの余韻が消える前に第四試合! 俺はこっちを応援してるぜ!なんと透明人間!葉隠透VS影のようなモンスターを身に宿し、自在に操作する男!常闇踏陰!』

『相変わらず贔屓がひでぇな』

 

「葉隠。ここに立つ以上、我らは敵同士。級友とはいえ加減はせんぞ」

「私もだよ。全力でやろう!」

「嗚呼」

 

『いざ!スタートォ!』

 

「ダークシャドウッ!」

『アイヨッ!』

 

試合開始と共に、黒い影が薙ぎ払うように攻撃してきた。

咄嗟に後ろに下がり、避けながら走る。

私の場合、正面戦闘じゃ勝ち目は無い!

思い出すんだ、二週間の日々!

 

『とにかく足を止めないこと。葉隠さんはフィジカルで勝つのは厳しい。相手の懐に入るには足を止めないことが一番大切なんだ。なんたってオールマイトとA組くらいの差がない限り、逃げに徹するやつほど攻撃は当てづらいからな』

 

常闇くんのダークシャドウはオールマイト先生や拳王技くんに比べれば遥かに遅い。

私でも目で見えるから、避けることくらいは何とかなる!

 

『マダマダイクゼェ!』

 

右からの掴み!

まともに受け止めたら力負けする…!

 

『流すってのは相手の”力“を利用するってこと。つまり、自分自身で受け止めるんじゃないんだ。そっちは防御の分野だからな。より簡単に言えば、力の向きや勢いを利用するんだ』

 

攻撃箇所をしっかりと見て、位置を変えて。

交差する直線方向の力を加えて、逸らす!

次、左!

逸らすのは無理!なら、次は。

 

『回避に関しては、次の行動を予測しなくちゃならない。しゃがんで避けることに成功しても、次の行動が出来なければ避けられるのは一発だけだ。慣れないうちはとにかく、下がって、チャンスを探れ。特に葉隠さんの長所は、”体の柔らかさ“だ』

 

しゃがみ、低く。

バレエのように低く避け。

考えるより先に地面を蹴って横に逸れる。

側面に回った。

でもダークシャドウはすぐにこっちに体を向けてきた。

やっぱり簡単には近接戦に行かしてくれない…!

 

『透明だから分かりづらいが、葉隠確かに避けているゥ!これは誰が予測出来た!?』

『不自然な攻撃の逸れ方。それに反応から見る限り、間違いなく”武“をかじっている。その上、透明人間という特性上、読みづらいときた。どうせアイツの仕業だろうが、もういっそ生徒じゃなく教師に任命するか臨時で授業やらせた方がよくないか?』

 

「掴め、ダークシャドウ!」

『ワーッテル!』

 

今度は両手を広げて向かってくる。

これが常闇くん自身なら投げ技を仕掛けにいけるけれど、”個性“である以上攻撃は出来ない。

ならとにかく、目を逸らさず避け続ける!!

後ろに下がり、追いついてきた。

両手が迫る。

掴む、寸前で低い体勢に移行しながら前に出て、避ける。

するとダークシャドウは空振って空気を抱きしめていた。

 

『これも避けたァ!』

『ほう、身体能力、”個性“。総合的には男女の差もあり常闇の方が上だが、動体視力は葉隠の方が上だな。それを活かし、攻撃を冷静に見極めている。ただ一つ問題が浮き出ているか……』

 

すぐに振り向いて来る。

常闇くんの位置を一瞬だけ見て、すぐに左から来た手を半身を反らして手で流し、右から来た手を先回りするように右側へ回るようにして位置を変える。

背中に回ってダークシャドウを掴んでみるけど、ビクともしない。

 

やっぱり投げれないよね!!

 

手が伸びてきたのが見えた瞬間には、地面を蹴って後退。

空振った瞬間には駆け出して抜ける。

私の速度じゃ近づくより速くに攻撃される。

ジャンプ!

 

地面スレスレで向かってきたダークシャドウを避けて、着地と同時に左へ転がる。

さっきまで居た位置には既に手が通り過ぎていた。

もう少し、もう少し……!

 

「っ、掴みだけじゃ無理か…!ダークシャドウ!」

『覚悟シロー!』

 

無力化ではなく、今度は明確に拳を作って接近してくる。

影という特性上、人の射程距離を超えている。

 

右拳を避けて。

ずらして飛んできた左拳をガードしつつ、同時に後ろへ飛ぶ。

いっ…たぁい!!

ダメージ軽減しても痛い! うう、拳王技くんは上手く調整してくれてたから問題なかったけど、全然違う…!

 

声を挙げてしまいたくなる痛みに唇を噛み締めて耐え、体と足を必死に動かして次々と避けていく。

拳王技くんと違って最小限の動きで避けることはまだまだ出来ない。

頭上。

両手を合わせて、叩きつけるように。

逸らせない。流せない。いなせない。

避けるしかない!

 

前へ跳ぶように。

背後で強い衝撃が駆け抜け、体が地面に伏せちゃう。

痛みに耐えつつ完全に立ち上がるより早く前に走る。

 

あと、数秒……!

 

回り込むようにしてダークシャドウが目の前に来た。

手のひらで叩くように動かしてくる。

私は腰を曲げ、前傾姿勢で駆け抜ける。

 

『ミエナイッ!』

 

ダークシャドウの視界を遮るように、体操着が邪魔をしている。

見えないから脱ぐことは躊躇する必要ないもの!

そして、接近。

 

「間に合わないか…なら……!」

 

拙い中、掴むようにして片手を伸ばしてくる。

手首を曲げて逸らし、足掛けて。

 

「うお……!」

 

浮いた勢いを活かして、相手の上半身をひねるように横に倒させる!

 

『投げたー!』

『これは、分かりづらいな。”個性“が衣服のせいでほぼ殺されているが、見えないということは動きが分からないということだ。つまりいつ拳が飛んでくるのか、手が飛んでくるのか、目で分からない以上回避は困難だろう。特に常闇のような”個性“で戦う者はな』

 

そのまま場外に---

 

『フミカゲ!』

 

「きゃっ…!?」

 

咄嗟に脇を締めて両こぶしを頭にくっつけるようにして防御するけど、薙ぎ払うような一撃を受けて簡単に離される。

見えなくても、範囲でされたら当たる…!!

でも、お陰で溜められた…!

私が集められる光の量は多分、限界がある。

それは試してないから分からないけど、常闇くんのダークシャドウは光に弱いんでしょ!?

影である以上、照らされたら弱いはず!!

 

常闇くんは立ち上がるのと同時に、駆け出す。当然、ダークシャドウをけしかけてくる。

もう衣服で妨害はできない。

ただのひとつの技じゃ戦闘能力のない私は勝てないから。

 

 

『必殺技?うーん……まぁ体育祭なら必要か。葉隠さんの視界を攻撃する技は厄介だけど、対処は簡単すぎる。言うなら俺の”太陽拳“を使いづらくしたバージョンだ。太陽がなければ出来ないし。じゃあ、前提として考え方を変えようか。発動の際に()()()んじゃなく---』

 

 

 

 

 

 

体内に光を貯め続けること!!

 

 

 

蓄積した光を、一気に……!

拳王技くんを参考にした私だけの技!

まだ上手くいくか分からないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

集光解放! 光束波!!

 

 

 

 

貯め続けた光が一気に解放されると同時に眩い光が、会場を照らす。

 

 

 

 

光の中、駆け出して。

手を伸ばして。

掴み。

 

 

 

 

 

 

 

ダークシャドウに掴まれていた。

同時に。

力が、抜けた。

な、んで……?

あ……そっ、か……”個性“は身体機能の一部だから---

 

 

「……見事」

 

復帰したであろうダークシャドウに、私の体は場外へ降ろされていた。

 

「あと少し、もう少し光が強ければ……負けていた」

『モゥムリィ!』

 

我慢してたのかな。

萎れて、常闇くんの背後に隠れてた。

そっか、あとちょっとだったんだ。

ああ、悔しいなぁ……あとちょっとで、拳王技くんと戦えたのに……。

”個性“をもっと使ってきたなら、もっと早くに気づいていたら、きっと……。

 

意識も、力も落ちて。

 

「……!葉隠っ」

 

 

 

 

 

 

「常闇くん相手によくやったよ。今は休んだ方がいい、葉隠さん」

 

意識が途切れる前にそんな声と何度も感じたことのある匂いと温もりに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

まさかここまで戦えているとは思っていなかった。

確かに攻撃を防御するだけでなく受け流し、いなし、崩し、投げる。

最大限教えられることは教えたが、あくまで人に対してだ。

俺はダークシャドウという異形型の混じった”個性“に対しては何も教えていない。

 

「教師になった方がいいんじゃないかって……うん、相澤先生の気持ちもちょっと分かるかも」

「おい待て、俺が戦いを教えるにはまだ俺は未熟すぎるぞ」

「どの口がほざいてんだ」

「この口だが?」

「もう十分だと思うノコ…」

「いやいや、俺なんか師匠の足元にも及ばないんだって。ぜっったいお断りだ!」

「でも切島くんにも教えてたし、デクくんや透ちゃんにも教えたんよね?」

「うむ、教えることには向いていると思うが。臨時でやってもいいかもしれないほどにな!」

「あの透明女が証拠だろーが。何よりデクがな」

「はっは、なわけ。あれは彼女自身の努力だよ、出久に関しては体に教えたからな。ボッコボコにしただけだぞ、ばっきゃろー」

「誰がバカだァ!?」

「バカって言った方がバカだが!?」

「テメェから言ったんだろ!!」

「いやいや……言ってたわ、すまん」

「お、おう…急に謝んな。こっちが困るわ」

 

しかしコントしてる間にも戦いは進んでいく。

やっぱり葉隠さんの弱い部分はそこだよなぁ。

 

「まずいね……」

「ああ。せんせーの問題ってのが表に出ちまってる」

「?どういうこと?」

「何かあるの?」

「葉隠さんには攻撃力がないんだ。彼女は正面切って殴り合うタイプじゃない。これが体育祭じゃなく、コスチュームで戦えたなら”透明化“を最大限に引き出すことで接近、殴ることも出来たが、体操着で位置がバレる以上、ダークシャドウ相手に正面は勝ちを捨てるもんだ。そもそも出久のようなパワーがあるならまだしも、それがない葉隠さんの拳や蹴りが効くとは思えないしな」

 

だからこそ。

葉隠さんは接近しなくちゃならない。生身の常闇を撃破しなければ、勝ちはない。

ただ”気“が溜まってる。何かを待ちながら戦っているんだろうけど。

”個性“は鍛えれてない…もしかして、この場で俺が言ったことをやる気か……? 土壇場でやるのは一か八かの賭けだぞ?

 

「攻撃が……!」

「軽減したか」

「被弾しなかった方だろうな」

「うん…凄い身のこなし。”個性“だけ見たならこの試合は勝てないノコ。それを覆してるけど…」

「そうだな、このままではマズイのではないか?」

「さて、どうかな」

 

あと数秒あれば、といったところか。

体操着で目眩しはナイス判断だ。それでいい。

使える武器は何でも使えば。姿が見えない葉隠さんならではの行動だな。

もし”透視“出来るやつがいたら見えるんだけど、客席に”気“を集中させてもそんな最低なことをしてそうなやつは居ない。

居たら流石に殴るまではしないが、発明さんとこ行って特殊性の目隠しを付けさせるところだった。

 

「投げた……!」

「足りねぇ」

「それに直撃か…!大丈夫なのか?」

「一撃が大きそうだもんね…」

「防御は出来たみたいだが…とにかく、そろそろ仕掛ける頃合いだろう。ほら、みんなサングラス付けて。あ、他の奴らは頑張れ、流石に人数分はない!八百万さんは今いないから諦めて背けるか見ないようにしておけよ!」

 

彼女の”気“から何かあると察した俺は袋を取り出してこの場にいる五人にサングラスを渡した。

俺が”太陽拳“が使った時に誰か使えるかなと置いていたサングラスだが、まさかここで使うことになろうとは。

少なくとも光に関連するものが来るだろう。

警告はした。

あとは知らんぞ。俺のバリヤーは光を遮断する力は無い。

 

そして次の瞬間、眩い光が会場を照らした。

流石太陽拳すら防ぐことの出来るサングラス。普通に見えるが、()が足りてない。

見た感じ、完全に制御出来ずに分散してるのか。あまりに不完全だ。

しかも使い方は発光ってよりも攻撃の方がいい気がする。

上手くいけば、エネルギーとして撃ち出すことも出来るだろう。ソーラービームみたいな感じで。

しかし体中に溜めるってのは、実はそんな簡単に出来るもんじゃない。

俺の”気“とは異なるものだが、葉隠さん自身の肉体に負荷が大きく掛かっているはず。

俺だって未だに体の中に”気“を抑え込む領域に辿り着いていない。溢れ出る”界王拳“のパワーを体内に押し込めることが可能になれば、師匠すら辿り着いていない”界王拳“の()()()()()に行けると踏んでいるが……。昔、二倍制御が出来るようになった時に思いついて一度やろうとしたら骨どころかあの世に行きそうになったしな。

 

どちらにせよ、俺ほどじゃなくても”光“を体内で溜めるってことはエネルギーをまんま体内に押し込むようなもんだ。

下手をしたら”個性“に悪影響を及ぼす危険性もあるし、身を壊す危険性もある。

これは……早く解決させなくちゃな。

 

「ダークシャドウが弱っとる?これなら……」

「いや、これは」

「無理だ」

「葉隠さんが限界だな」

 

麗日さんの言葉を俺らは否定すると、残りの三人は首を傾げていた。

出久と爆豪、俺は理解している。

現に舞台の方ではたどり着く前に力が抜けたように足がぐらつき、葉隠さんはダークシャドウに捕まってしまった。

まずいかもしれない。

勝負が終わらない以上何も動けないが、少し不安定になっている気がする。

 

『葉隠さん場外!常闇くんの勝利!』

「小森さん、これお願い」

「あ、うん」

 

勝者宣言も終わり、隣に居るのもあってサングラスを小森さんに預けた俺は席を立って跳び、加速する。

 

 

 

 

 

舞台に降り立つと、彼女が放った体操着を回収しつつ倒れかける葉隠さんを支える。

そしてその体に体操着を被せながら労るように俺は言葉を投げかけた。

 

 

「常闇くん相手によくやったよ。今は休んだ方がいい、葉隠さん」

 

意識を失ったのか、重さが少し増えた。

俺からすれば微々たる程度で全然問題ないのだが、血が出てきている。

おそらく、鼻血だろう。

”気“を見てみるが、大きな影響はなさそうだ。どうやら負荷がかかりすぎただけらしく、”個性“に影響もない。

申し訳程度に体力は回復させとくか。

 

「葉隠は大丈夫なのか?」

「ああ、意識を失ってるだけ。特に怪我もないよ」

「そうか…なら良いが」

 

来てくれた運搬ロボにゆっくりと乗せ、落ちそうになった体操着の位置を戻す。

流石に異性の俺が着せることは出来ないから、あとはリカバリーガールが何とかしてくれるだろう。

それより。

 

「次、楽しみにしてるぞ常闇くん」

「…全力で行く」

「ああ」

 

長居して何か言われても困るので、ミッドナイト先生に頭を下げつつ”舞空術“を使って元の席に戻った。

サングラスを返されたので、装着…はもうしなくていいので、みんなから返してもらいつつ袋に入れた。

いや、こんな要らないけど。使う機会もうないだろ。

記念として配った方がいいのでは…?

 

「次は上鳴くんと八百万さんか」

「俺、既に未来が見える気がする」

「まァ相性最悪だろうよ」

「?どんな”個性“?」

「上鳴くんが『帯電』。八百万くんが『創造』だな。生物以外なら作れるらしいぞ!」

「でも、透ちゃんみたいに近接に行けばいけるんちゃうん?」

「いや、上鳴くん体術鍛えてないから……」

 

知らなかった小森さんですらもう察した顔になっていた。

どうやらこの中で勝てると思ってる人は誰もいないらしい。

いや、こればかりは”相性“が本当に悪いから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに。

予想通り八百万さんが勝った。

だろうな。

ぶっぱ→電気を通さない→実は二発目で全力って感じだったけど、結局通らなくてアホになって終わってた。

もっと使い方を身につけた方が良くない? 身体に纏えないのか? それで俺のような”界王拳“もどきは出来るだろうし。

そうしたら一気に強くなれると思うが…あとはもっと深く”個性“を理解したらプラス電荷を射出して、マーキングしたポイントにマイナス電荷を帯電させたりとか色々あるだろ。

雷系は出来ることが多いんだから、本当に勿体ない。

リミッターも外せるだろうしな。

 

 

 

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

  • 本編のみ
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。