無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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雄英体育祭:最終種目⑤ 緑谷出久VS轟焦凍『轟焦凍:オリジン』

第一試合が全部終わって小休憩が挟まれる。

 

「やー、負けてしまった」

 

僕が控え室に向かうとそこには麗日さんが居て、開口一番にそう言って、笑顔だった。

無理をしていることはすぐ伝わる。

何かを言おうとして、伝えたくて、でも言えなかった。

言っちゃ、いけないんだ。

 

「最後行けると思って調子乗ってしまったよ。くっそ---…」

「…怪我とかは、大丈夫なの?」

「リカバリーされた! 体力削らんよう程々の回復だからすり傷とかは残ってるけど」

「…そう。無理しないでね?」

「無理なんて…」

 

『そろそろ始めようかぁ!!!』

 

そうこうしてる間に、小休止は終わったみたいだった。

次は、僕の番だ。

 

「…じゃあ、いくよ」

「ああごめん!私おってデクくん全然準備が」

 

 

見とるね。頑張ってね。

 

 

「うん!」

 

 

そうして、笑顔を浮かべる彼女に僕は笑顔で返すと、外に出る。

そしてすぐ、拳を強く握りしめながら扉に背中と頭を預けた。

閉じた扉の中から、啜り泣く声が聞こえてくる。

悔しくないわけが無い。

全力が通じなかった。

本気でやって、負けた。

助けになれば、なんて思ってたのに何にもしてあげられない。それどころか…!!

 

 

また。背中を。

 

 

 

「出久」

「界くん……」

 

麗日さんが心配で来てくれたのか、それとも別の理由か。

界くんが目の前に居た。

話、聞いてたのかな。

 

「何も言わなかったことは、間違っちゃいねぇよ。俺らには彼女に何かを言える資格は無い。麗日さんは負けて、俺たちは勝った。勝者の俺たちが慰めるのは、違う」

「うん……」

 

そう、僕たちは勝った。

勝った僕たちが負けた麗日さんを慰めたり励ましたりするのは、しちゃいけないことなんだ。

それは最大の侮辱だから。

 

「切り替えろ。お前の相手は轟だ。あいつはまだ左を使わないと思う。でもお前は俺を含め、みんなが”本気“でやったのを見た。麗日さんが”本気で挑戦“したのを見た。…だからこそ、麗日さんが気に病まないようにお前も試合に集中しろ。思いに応えてやれ」

 

そうだ。みんな”本気“でやった。

そんな中で、轟くんだけが使わないのは間違ってる。僕が引き出させるんだ、彼にも本気を。

そして勝つ。麗日さんが責任を感じないように。

押してもらった背中に応えるために。

 

「ありがとう、界くん。わざわざ言いに来てくれたんだよね」

「ついでだ。俺もちょっと、この先に用があるからな」

「……?」

 

歩きながら答える界くんだけど、用?

この先には特に何も無いはずだけど……。

隣で歩きながら少し考えていると、静止するように伸ばされた手に僕は止まった。

学生からは感じられない、強烈な気配がする。

 

「おォ、いたいた」

「エンデヴァー……?」

 

すると、曲がり角から巨体が出てきた。

No.2のヒーロー、エンデヴァー。

なんでここに……。

 

「ふむ、ちょうどよかった。君たち二人に話があったんだ」

「奇遇だな、俺も話があったんだ。()()No.2のヒーロー」

 

明らかな界くんの挑発に眉を顰めるエンデヴァーだけど、突っかかりはしない。

けれど僕は、分かっていた。

 

---()()()()()

表面上は普段通りにしてるけど、界くんは間違いなく敵意を抱いていた。

用件って、これのことなのか。

彼は小さい頃に両親を喪ってるから、轟くんの話を聞いて思うところがなかったわけじゃないんだと思う。

人一倍”家族“のことを想っていた彼だから、他人の家とはいえ轟くんの事情を知ったからには放っておけないといったところなんだろうな…界くんってお人好しだから。

それはそうとして、宣戦布告したのに左を使わないことに対する不満もあったんだと思うけど。

何か起こらないかとハラハラする。

 

「…君たちの活躍は見せてもらった。素晴らしい『個性(こせい)』だね。様々な力に応用する他に、パワーだけで言えばオールマイトに匹敵する『個性(ちから)』だ」

 

「ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ。そしてそこの君も焦凍と戦う際にはぜひ本気でやって欲しいものだ」

 

エンデヴァーに対して言いたいことが無いわけじゃない。

ただ冷や汗が出てくる。

エンデヴァーにじゃなく、隣の界くんに。

界くんは師匠っていう人の教えからすぐ手を出すような人じゃないけど、”危機感知“がすごい鳴っててやばい。

これ、ガチギレしてない?

さ、さすがにこんなところで戦い始めることはないと思うけど、とりあえず僕が何とかしないと試合どころかこの周辺が壊される!!

雄英体育祭が強制的に中止になりかねない…!

僕に全てがかかってる!

考えろ!

時間はあまりない。考えて行動に移せ---!!

 

 

 

「……僕は、オールマイトじゃありません……」

「そんなものは当たりま……「当たり前の事ですよね…」」

 

 

 

 

 

 

 

轟くんもあなたじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとサインもらっていいですか!?」

 

---欲しいと思ったのは本当のことだけど、僕の機転のお陰か界くんの怒りは少し収まったようで、呆れた目を向けられた。

ただ僕の圧にか根負けしたエンデヴァーは動揺しながらも色紙に筆を走らせてくれて、こういう所はヒーローなんだな、としみじみ思ったけど。

 

「出久、先に行け。俺はまだ話が終わってないから」

「あ、うん」

 

ダメだった。

僕は無力だ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

出久を先に行かせた俺は、エンデヴァーを真正面から見る。

凄い”気“だ。確かにオールマイトに近いもんを感じる。努力してきたんだろう。

同時に、もったいないとすら感じる。

うちに秘める()()()()はかなり高い。

まだ上に行けるだろうに。

自覚してないだけで”気“に関しても精神面で邪魔してるっぽいなんらかの壁さえ取っ払うことが出来たら目覚めてパワーアップ出来るだろう。

なんだ、お前のそこにある()()は。

なんだ、その目は。

 

「そういえば話があると言っていたね」

「いいんすか、時間は?」

「俺だけが一方的に話して終わりってわけにはいかないだろう」

 

一理ある。

話の時間をくれるなら有難いもんだ。

今から試合がある出久を巻き込む訳には行かない。

No.2だから分かってはいると思うが、戦闘になる可能性は捨てきれないからな。

 

「まずひとつ、残念だが轟は俺と戦うことは無い。出久が必ず勝つからな」

「…何? 焦凍はいずれオールマイトを超える俺の()()()()だ。その為に作った存在だ!今は右しか使ってないが、こんなところで負けるような---」

「黙れ」

 

エンデヴァーの声音に僅かに怒りが混じり、俺は()()の”気“をぶつける。

エンデヴァーの足が、自然と数歩下がっていた、

出久は俺の使うチンケな”舞空術“とはいえ”界王拳“について行けるレベルだぞ。今の轟が勝てるわけが無い。

例え炎を使ってもバグったあいつの方が強い。俺もあいつに”無個性“で戦えるように技術はある程度教えたしな。

 

「話は終わってねぇ。轟から事情は聞いた。俺はエンデヴァーのこと好ましいと思ったよ。オールマイトを超えようと努力した点では、どのヒーローよりも好ましく感じた。誰もが絶対視する中でそう思うやつなんてそう居ない」

 

その点だけは、高く評価出来た。

やったことは俺から言わせてもらうとクズでしかない。倫理感と道徳観なんてあったもんじゃない。

子供の俺でも分かるくらいだ。

何より轟の尋常じゃない憎悪の感情から推測すると、妻に対しても酷い仕打ちをしたんだろう。

轟の母親が轟の左を憎いと感じたことから、多分、精神的に追い込まれるくらいのことを。

 

「お前ほどの実力なら大抵のヤツらじゃ、まず口答え出来ないだろうよ。だから俺が言ってやる。それは轟の憧れでも夢でもないだろ。自分(てめぇ)の憧れを押し付けるなよ、()()N()o().()2()。独りよがりも大概にしろ」

「きっ…さまぁ!!」

 

顔の炎の勢いが強くなり、胸ぐらを掴まれる。

大抵の学生じゃ圧に負けて動けなくなるだろう。何より熱い。

強い()()を感じる。

 

「貴様に何が分かる!?何も知らない子供に、高々人生の半分も生きてない子供が何を知っている!?何を知った気でいるッ!」

「だったらお前には子供の気持ちが分かるのかよ!?あいつが望んでしたか?やりたいと言ったか?本人がオールマイトを超えたいって言っていたか!?歪んだ思想を押し付けるのはお門違いってやつだろうが!!」

「そ、れは……っ!!」

「言えねぇのかよ!それを独りよがりって言うんだろ!何が最高傑作だ?道具みたいに言いやがって…!だったら他の家族は失敗作か!?ふざけるのも大概にしろよ、んなのは命の冒涜にも程があるッ!」

 

掴まれた両手を強く握りしめ、無理矢理外す。

驚くように目を見開くエンデヴァーだが、俺は”左手“で胸ぐらを掴み返した。

エンデヴァーの火が俺の手を燃やす。

何も纏ってないため、俺の手は焼かれていた。

わざと普段から纏っている”気“を解いたのだ。

さすがNo.2なだけあり、鍛えただけの俺の手は簡単に燃やされてしまう。

 

「……っ!貴様、バカか!? 早く手を……」

「最初に謝っとくよ。だからこそ、これは俺の罰だ!今からやる行動に対しての罰だ!だから代わりに、その分---轟の分の一撃を食らえ!この大馬鹿野郎がッ!」

「何を---がはぁ!?」

 

1()0()()()()()を瞬間的に発動させた俺の拳は、エンデヴァーの頬を穿つ。

意識が一瞬飛んだのか白目になっていたが、構わず地面を強く踏みしめながら一気に殴り飛ばし、壁に向かって”気“の防壁を貼って壊れるのを防ぐ。

そのお陰か音だけが響く。

タフなやつだ。殺す気でないとはいえ、気絶しなかった。

 

代わりに掴んでいた俺の手は真っ黒に焦げていた。

振り抜いた拳で支えるようにするが、痛みに顔を顰める。

 

「ぐ、うぅ……な、んだ……この、一撃……! い、しきが……お、オールマイト以上……というのか…!?」

 

痛みを強引に殺しながら俺の一撃で大きなダメージを受け、鼻血を出しつつ頭から少量の血を流し、頬が腫れているエンデヴァーに向かって叫ぶ。

 

「轟には轟の”夢“がある。()()()()なら分かる…!だが一方的に自分の願望を子どもに押し付けるな…!親なら子供の人生を勝手に決めるなよ…!あいつだって普通の子供だ!オールマイトを超える為だけに存在する兵器でも機械でもねぇ……!轟はちゃんと生きてるんだぞ!?おめえの操り人形でもなく、ちゃんと自分の意思で!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙って見てろ。左を使わせた上でお前の最高傑作ってやつは出久が必ず打ち砕く。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当はもっと言いたいことはあった。

なんで親なら、子供を見てやれない。なんでちゃんと向き合ってやれない。あいつの笑顔を見たことはあるのかよ。目を覚ませと。

家族ってのはもう居なくなったら話せない。何もしてあげられないんだぞ。

あの調子なら、家族ともちゃんと話し合えてすらいない。向き合えていない。ちゃんと見てやれてないのだろう。

エンデヴァー……分かるんだ、似てるから、いや…同じなんだ。

こいつは多分、自分の”弱さ“が許せないんだ。力がなければ人を救えない。俺がかつて”個性“があれば、と渇望したように。

俺のように、似た経験もしてきたんだろう。ただ違うのは超人とも言うべきだったオールマイトを目にして自分じゃ超えられないと諦めたところ。

俺はこいつとは違う。

宇宙一と言っていいほど凄まじい力を持つ師匠に俺は必ず追いつく。追い抜く。何年掛かろうと、必ず。一度見せてもらった”本気の姿“。変身直後の圧だけで気絶したが、超えると決めたんだ。

それが俺の生きる目標であり、精一杯の恩返し。俺の命の使い所とも言えるもの。

狂気的とも思われるかもしれない。それでもいい。

俺の全部は、師匠のために使うって決めたんだ。

 

 

それに違うところがもうひとつ。

こいつ(エンデヴァー)はどこか不器用で鈍感で。

肝心な部分が見れてない。

俺は俺の両親を見てきたから、大事な部分は分かってるつもりだ。

二人は俺を愛してくれた。俺を肯定してくれた。”無個性“だろうと関係なく大切にしてくれた。俺のことを考えてくれた。

だからこそ---まだ取り返すのつくエンデヴァーに、怒りが収まらない。

ああ、そうか。俺はイライラしてるのか。自分にはない存在を持ってるから。

それなのに誤ちを繰り返したこいつを。未だに改善すらしないやつを。

”家族“という宝物を、大切にしないから。

父親に囚われて、大事なもん見失っている轟に対しても。

でも、轟に関しては俺の役目じゃない。

出久なら上手くやれる。必ずやれる。

あいつは、昔っからヒーローになるべき人間だったから。

 

それでも、俺にやれること。

お節介でいいなら、轟。

俺は---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ…あの子供は……。俺が押し負けただと…?それどころか…意識を失った直後に何かされた……!

それだけじゃない。まるで、オールマイト…いやそれ以上の圧……!

どんな”個性“があればあの歳で()()()()()()()()()()()()を…? 何より手を犠牲にするなど…怖くないのか……!やつは、本当に学生なのか…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺には、超えられなかったというのに……やつは……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンデヴァーの炎、普通にやばいな。

左手が使い物にならなくなったため、事情が事情なのもあってリカバリーガールのところには行けない。

ヒーローとして相手がヒーローといえど意味無く殴る訳には行かないから、これで痛み分けということにしてもらおう。

何より、師匠の言葉を俺は思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいな、界。おめえは自覚してねえだけで既にこの世界においてはかなりのもんだ。けどまだ一番じゃねぇ。おめえより上はもっともっと居る。そのために世界を見るべきだ。だからこそ、オラも師匠に言われたことをまんま伝えっぞ』

 

 

 

武道を習得するのはケンカに勝つためでも人の気を引くために使うもんでもねえ。

武道を学ぶことによって心身ともに健康となり、それによって生まれた余裕で人生をおもしろおかしくはりきって過ごしてしまおうというものなんだ。

 

ただし!

不当な力で自分、もしくは正しい人びとをおびやかそうという敵には、ズゴーン!と一発かましてやれ!

 

 

 

俺の武術は暴力として存在するもんじゃない。

ただムカつくから、イラついたからと使っちゃダメなんだ。でもエンデヴァーは師匠の言ってたもんに該当すると、俺は思う。

轟も、轟の母も不当な力で追い込んだみたいだしな。客観的に見たら、だけど。

正義なき力は無力であり、力なき正義もまた無力…ある意味”師匠“の”師匠“の言葉はその言葉が合ってるのかもな。エンデヴァーは理解してるのだろうか。

してないか。してたらあんなことしないだろ。

 

まぁそれに、あいつ自身も何か行動には移さないだろう。自分のやったことが表沙汰になりかねないし、流石にNo.2まで登り詰めたというのにそこまでアホとは思いたくない。

もし報告されたらワンチャン除籍だな。それは別にいいけど。

俺、既に死柄木を逃がしてるし。逃がしてなかったら俺が結果的に死んでたとはいえ、結果論だ。

前科ありなのだ。

とにかくやったことは仕方がないため、俺は焦げた手を隠しつつ八百万さんのところに向かった。

 

「八百万さん、包帯って出せる?」

「? ええ、出せますけど何かありましたか?」

「いやー、その、えー……け、けが、して……?」

 

しまった。

なんて言えばいいか分からない!

目が泳いでる自覚を持ちつつ、出来れば指摘しないでくれ、と心から願った。

 

「もう少しマシな嘘をついてくださいまし。第一、拳王技さんほどの者が怪我をするとは思えません」

「俺人外だと思われてる?」

「…こほん。申し訳ありません、ちょっとしたジョークですわ。……リカバリーガールの所へ行かず、私の方へ来た上にその態度。

何か話せない事情があるとお見受けしますが」

 

そんなジョーク言う人だっけ、とは思ったが突っ込んだら進まなそうなので何も言わない。

彼女の視線は俺が隠している左手に向けられている。

 

「…聞かないで貰えると助かるなぁ、と」

「…はぁ、分かりましたわ。拳王技さんには恩がありますので、それのお返しということで」

「ありがとう。と言っても大したアドバイスは出来なかったけどな。今度また、八百万さんに必要な課題を伝えるよ。なんだったら俺が修行に付き合う」

「それは…有難いですわね。素直にお願い致します……出来ました、これでよろしいでしょうか?」

「ああ、助かった!」

 

包帯を貰った俺は、すぐさま離れて左手を隠すように包帯をぐるぐる巻きすると、いつもの席に戻った。

 

「おお、拳王技くん! 麗日くんは……ってどうした!?」

「拳王技くん…どうしたノコ? 怪我してる…?」

「…何かあったんか」

「えー、と…使いもんにならなくなった? ごめん、これは俺の罰なんだ。大丈夫だ、片手が使えないだけで戦えはする。棄権はしない」

 

心配して見つめてくる三人に俺は苦笑しながら伝える。

何か事情があるんだろう、と納得してくれた。

ふぅ、たすかっ---

 

「するわけねえだろアホ。見せろ!」

「あ。ちょおま」

「こ、これは……大丈夫なのか!?」

「ひっ……何があったノコ!?」

「おい爆豪!無駄に騒ぎに」

「拳王技!?それ……!」

「どうしたよ!?」

「何かあった?って…何その怪我!? 真っ黒じゃん!」

「…何があった?何者かに襲撃されたのか?」

「はあああ!?あの拳王技がこんなになるなんてどんなやつだよ!?」

「大丈夫なのか!?」

「何かあると思ってはいましたが、一体何をしましたの…?」

「ほら、こうなった!! 襲撃とかでもないから大丈夫だって!転んだだけだから!」

『嘘つけ!!!』

「転んで焦げるわけねぇだろうがアホバカクソ界が!!」

「なんで罵倒増えてんだよ!!」

「そこじゃないでしょ!?どうする?リカバリーガールにところに」

「大丈夫大丈夫!とにかく俺のせいだから!!ごめん、話せない!!断じてエンデヴァーを殴った影響だとか言えない!」

『言ってんじゃねーか!』『言ってるよ!?』『本当に何がありましたの!?』

「何やってんだバカが!!」

「やっべ……」

「とりあえず話、聞かせて?いいノコ?」

「え、なんかすごい怖いんだけど……わ、分かった。話すから近づかないで!なんかこわい!!た、ただ轟の事情もあるから、話せるところだけ!」

「…そういうことか」

「なんか分かったのか?」

「踏み込めねえ事情ってもんだアホ面」

「アホ!?そこは余計だろぉ!」

「とにかく全部話せとは言わねぇよ。俺は事情を知ってる。俺が話すからまず俺に話してみろ。どうせ嘘つけねえだろお前」

「助かる……ってことで」

 

 

爆豪に代わりに話してもらった。

”個性婚“とかは言えないから、轟を簡単に言うと道具扱いしたこと。自分の願望を押し付けたこと。

上手いこと話してもらい、それに怒った俺が炎に焼かれつつ殴ったと。

 

話したら俺の行動にドン引き、主に峰田くんがしてたり、他の人たちは納得半分だったり、轟に同情だったり、純粋に俺に対して心配だったり、No.2に歯向かった俺に対して凄いだのと注意だの色々分かれたが、リカバリーガールのところにいけない理由も理解はしてもらった。

クラスメイトのことを思いやれる人たちばかりだから、親が子を道具扱いしたってことで怒るに怒れない。

同じ立場なら怒りを抱いていた、と言われてとりあえず収拾が着いた。

まぁ相手がNo.2のエンデヴァーなのに殴る俺に対して嘘だろ、信じられないみたいな目はあったけど。

でも俺の師匠は太陽の表面と同じ摂氏6000℃の相手に戦ったんだぞ?

つまり俺がまだまだ弱いからこうなったってことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「緑谷少年。時間があまりないだろう?話って?」

「オールマイト……最初に言っておきたいことがあるんです。すみません」

 

今から僕がやることは、オールマイトの期待を裏切ってしまうかもしれない。

”僕が来た“と知らせることが出来なくなる可能性が出てくる行為だ。

 

「…轟少年のことだね」

「はい…僕は轟くんに()を使わせるつもりです。でも、それはきっと僕の身勝手な行動で、望まれてない行動で……」

「…緑谷少年。余計なお世話ってのは()()()()()()()なんだぜ」

「ヒーローの、本質…?」

「そうさ。助けを求めてないのに相手からすれば余計なことでも他者のために行動することはヒーローとして必要なことだ。緑谷少年が轟少年を救いたいと思ったなら、私は応援しよう。そういう君だからこそ、私は後継として選んだのだ!」

「オールマイト……」

「君は君自身がやりたいと思ったことをすればいい!それと、試合が始まるぜ。行ってこい、ヒーロー!」

 

ぽん、と背中を叩かれて押し出される。

物理的にも、精神的にも、背中を押された。

だったらもう、僕に悩んでる時間はいらない。オールマイトが言ってくれたように僕がやりたいことをやる…!

 

「…はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第二試合始めて行くぜ!いきなり両者トップクラスの成績! 緑谷出久VS轟焦凍!』

 

入場してステージに立つと、僕は真っ先に界くんの姿を探した。

特に壊れた音もないから戦いには発展しなかったらしく、観客席に座っているのが見えた。

良かった、色んな意味で。

それなら、今は。

 

『START!!』

 

フルカウル---30%!!

 

開始直後に形成された氷結を、タイミングを合わせて蹴ることで一気に破壊する。

氷が壊れた影響で冷たい風が吹いた。

 

『緑谷、轟の氷結を破壊したぁ!』

 

「ちっ……!」

「ぉおおおおおおっ!!」

 

拳を握りしめ、次々と殴って破壊しながら突き進む。

通り抜けた先、既に轟くんは横にズレていた。

デコピンによるデラウェア・スマッシュ。

咄嗟に生み出したであろう氷の壁に防がれ、瞬時に加速した僕は地を蹴って浮きながら蹴り壊す。

 

「がっ!?」

 

突破しながら蹴り飛ばし、氷結を生成しつつ後方に張ることで場外から逃れた轟くんはまた放ってきた。

跳躍。

かかと落としで破壊し、着地を狙ってきた轟くんの拳をスレスレで避け、はたき落とす。

蹴り。

掴んで、投げた。

着地と同時にさっきより強い氷結。

指じゃ足りない。強く拳を握りしめて。

 

瞬間出力50%。

デトロイト・スマッシュ!!

 

破壊し尽くしながら威力の下がった拳圧が轟くんを吹き飛ばし、またしても背面に張った氷で場外には行かない。

繰り返す。

氷が形成され、壊して、接近して攻撃。

冷静に見極めて捌き、反撃。

腹部を片手で抑える轟くんと構えを解かない僕。

この程度なら、界くんの理不尽な速さに比べれば遅い。

 

『轟、攻めるが防戦一方!全然攻撃が当たらねぇ!』

 

「轟くん……震えてるよ」

「個性だって身体機能の一つだ、君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう……!?でもそれって左側の熱を使えば解決できるものだろ!使いなよ、その力!」

 

「みんな……”本気“でやってる!! 勝って目標に近づくために……一番になるために!!」

()()()()で勝つ!? まだ僕は君に傷ひとつ付けられちゃいないぞ!!」

 

 

 

 

 

全力でかかって来いッッ!!

 

 

 

 

 

 

「てめえ……!クソ親父に金でも握らされたか……? イラつくな……!!」

 

体温の低下によって動きが鈍くなっているにも関わらず、熱を使わずにまた氷結を生み出してきた。

避けることはせず、正面から打ち破る。

地面からジャンプ台のように生み出し、高度を上げてくる。拳で壊すと、そのタイミングでそこから跳躍。

落下しながら、拳に氷を纏って殴りかかってくるけれど。

 

50%エアフォース!!

 

空気圧で空中で迎撃した。

 

「くそ……なんで……!」

 

地面に落ちて、背中を起こしながら僕を見てくる轟くんに対して、頭の中で思い浮かべながら叫ぶ。

思いの丈を、叫ぶ。

 

「僕には”挑戦“したい人が居るんだ! 期待に応えて、()()()()()()があるから! 笑って助けられる、強くて守れるヒーローになりたいからっ!!」

「だから全力でやってんだ!! みんな!! 君の境遇も君の()()も僕なんかに計り知れるもんじゃない……。でも……全力も出さないで1番になって完全否定なんて、フザけるなって思ってる!」

 

そう、みんな”本気“だった。

間違いなく単純な実力なら一番の界くんですら、切島くんに”本気“を見せた。

彼なら使わず勝てたのに。

それは切島くんの思いに、界くんが応えたからだ!

 

「君は今まで何を見てきたんだ! 誰もが”本気“だった!誰も加減なんてしなかった!いつまで君は、相手である僕を見ずに別のところを見てるつもりなんだ!?他の誰かなんて関係ない! 今の君の相手は僕だろっ!!」

「うるさい……!うるせぇ……!!」

「僕は勝つ! 僕が目指す夢のために!”挑戦“するためにッ!君を倒して!!」

 

 

 

 

親父を---

 

 

 

 

 

君の! 力じゃないか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

拳王技はともかく、緑谷との実力はそう離れていないと思っていた。

でも、違った。

障害物競走では緑谷や爆豪に全く追いつけず、それどころか後方から来た拳王技にすら負けた。

騎馬戦では拳王技に勝てず、一位となったのは爆豪と緑谷のチームだった。

左を使わず、右だけで勝たなくちゃならねぇのに。あいつらの中に、俺が居なかった。

いつの間にか緑谷と爆豪にも置いて行かれて。拳王技には気圧されて無意識に()を出してしまって。

体育祭前に緑谷がオールマイトに目をかけられてることを食堂で聞いた。

そしてあのパワーを見て、確信を持った。

それでも緑谷と拳王技には勝たないといけない。

だから、事情を説明した。改めて、宣戦布告と共に。

 

その結果---知っちまった。

拳王技の強さの中には、俺のように()()()()()があったことを。

努力をしてきたことは知っていた。”無個性“でありながら俺らの上を行くようなやつだ。

ただそれは、”個性“がないから俺らの何倍もしてきたんだと思っていた。

クソ親父はNo.2のヒーローだ。それに鍛えられた俺は学生の中でも客観的に見れば上澄みだと思う。

そんな俺より強いということは、俺以上のことをしてきたということ。

地獄のような日々だった。

五つの頃には泣いても吐いても止まらない訓練を強制的にやらされた。

あいつは、それ以上のことをしてきたのか……。

何より俺は”無個性“であったアイツからすれば”個性“が二つあるだけで十分()()()()ものだったのだろう。

幼い頃に、両親を喪って。

でも俺の母親は生きている。会いに行きづらくて会えてないだけで、拳王技と違って会える。

でもあいつは、喪って、力も無くて、”師匠“っていう人物に救われたと言っていた。

それを聞いて、顔を見れなくなっちまった。

実力差だけじゃなく、別の部分でも遥かに負けてる気がしたから。

何より何かを思い出しかけて。

 

 

 

そうして妙に胸がザワつくまま試合が始まって。

緑谷に一度もダメージを与えられなかった。

隙を狙っても捌かれて、氷結は”個性“に掻き消されて。

今までの学校での日が思い返された。

 

 

 

 

―――俺は目の前の”誰か“をいつだって見ている。でもお前は違う。お前は俺を見てるようで”別の誰か“を常に見ている。

 

―――いつまで君は、相手である僕を見ずに別のところを見てるつもりなんだ!?他の誰かなんて関係ない! 今の君の相手は僕だろっ!!

 

否定出来なかった。

あの時も、そうだ。

最初の戦闘訓練。そしてこの試合。

俺はずっと、二人を通してエンデヴァー(クソ親父)を見ていた。

『奴を完全否定』することばかりで。それ以外考えられなくて。

試合のさなか、脳裏では母との記憶が消えては現れるを繰り返していた。

自分を庇ってくれたこと。泣きつく自分を慰めてくれたこと。そして、心が壊れ自分に危害を加えてしまったこと。

だが、それを思い出しても浮かぶのは父への憎悪ばかりで。

 

 

 

 

君の! 力じゃないか!!

 

 

 

 

 

そう、緑谷に言われたとき。

頭の中に拳王技の言葉も浮かんだ。

 

―――どんな理由かは分かんねえけど、それは逃げてるだけだろうが!”力“は”力“だろ!

 

―――お前が()()()()()()()()()()()()()()()と思った理由が、お前の中にもあるはずだろ?思い出せよ!その”力“は父親でも母親でも、ましては誰のもんでもない。()()()()()()だろうがッ!

 

二人の言葉が脳裏に駆け巡る。

そうして、ある言葉を思い出した。

それは幼い頃オールマイトを見ていた頃の母の言葉。

いつの間にか忘れていた、復讐に囚われて忘れてしまった、自分の”原点(オリジン)“。

 

『嫌だよお母さん……。僕……お父さんみたいになりたくない。お母さんをいじめる人になんてなりたくない』

『……でも、ヒーローにはなりたいんでしょ?』

『……うん。父さんが嫌いな……()()()()()()()()()()なりたい……』

『いいのよ、おまえは。血に囚われることなんかない。なりたい自分になっていいんだよ……

 

ああ、そうか。

お前はずっと、あの時から俺に”答え“をくれていたのか。

だと言うのに俺は視野が狭まってて、気づけなくて。

何事もないかのように明るく振る舞っていたくせに、本当は辛い過去を隠して、今もずっと隠して…!

それなのに他人のことばかり気にかけて……!

 

お前も、緑谷も。

 

そうだ、ようやく分かった。

やっと、分かったんだ。

この”力“はクソ親父のもんでも母のもんでもねぇ。

俺の、俺だけの”個性“だ。受け継いだだけで、それを持っているのは紛れもなく---

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

FOOSH!!!

 

『こ、これは---!』

 

目を焼く光が轟くんから発せられ、先程までの冷えた空気が散らされて、代わりにひりつくような熱気が伝わってくる。

()を使った……!!

 

「勝ちてぇくせに……ちくしょう……。敵に塩送るなんて、どっちがフザけてるって話だ……」

 

 

 

 

俺だって、ヒーローに……!!

 

 

 

 

右手からは氷を、左手からは炎を。

ふたつの力を携えて立つ轟くんの姿があった。

その姿を見て、何故か分からないけれど僕は口角が上がっている気がした。

 

 

 

「…何笑ってんだよ。まるで()()()みたいに」

「そういう君こそ…同じ顔をしてるよ」

 

轟くんは目尻に涙を浮かべながらも、確かに笑っていた。

彼の中で、吹っ切れたのだろう。

凄い力だ。今の状態だと、押し負けるかもしれない。

だったら。

 

「俺にここまでやらせたんだ……どうなっても知らねぇぞ」

「僕も、全力で応える……!!」

 

轟くんは足を踏みしめて右足から氷結を、左手に炎熱を纏っている。

対して僕は、四肢に”黒鞭“を纏わせて、OFAを一気に引き上げる。

今出せる、ありったけを……!!

 

 

 

ワン・フォー・オール・フルカウル---1()0()0()%()

 

 

「緑谷………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとな

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

接近した僕の100%による超パワーと轟くんの空気膨張によって、とてつもない爆風が発生しステージを破壊し、土埃が辺り一帯に吹き荒れた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

咄嗟に全身から”気“を発し、バリヤーを貼ることでA組を守った。

今のは大氷塊を生み出し空気を冷やしたのちに、それを超高熱の炎で瞬間的に熱して膨張させたことによる影響。

その結果、緑谷の超パワーと空気の瞬間膨張によって観客席全体に及ぶ爆風が起きたのだろう。

相澤先生も轟の技について似たような解説をしてた。

威力だけで見ればかなりものだ。

セメントス先生が壁を作ってたけど、それなかったら俺がいる観客席以外はもっと被害があったかもしれない。何人か吹っ飛びかけてたしな。

しかしまぁ。

 

見えなくなっていたステージな煙が徐々に晴れていき、勝敗が明らかとなる。

破壊されたステージ。

そこに立つのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『轟くん場外! 勝者、緑谷くん!』

 

予想通り、出久だった。

対して轟は出久のパワーに押し負けて、壁の近くで横たわっていた。

 

炎を無事に使わせ、原点(オリジン)を思い出させたか。

俺の思ってた通りだな、出久。やっぱりお前は()()()()だよ。俺にはあいつを救うことは出来なかった。

やれたのはお前だからこそだ。

お前ならやれると思ってたから、俺は昔から今もずっとお前がヒーローになるべきだと思っている。

だからといって、戦うことになるなら加減はしない。

バグったやつなんて加減しようものなら俺が負ける。バグの成長度は人それぞれっぽいが出久と爆豪はとんでもないくらい上昇しているからな。

地道に強くなっていった俺と違って急成長をするのがバグだ。

 

その前に、常闇くんに勝たなくちゃいけないか。

ただ暗闇じゃないからなぁ……全力のダークシャドウとやりたいんだけど暴走するならさせられないしな。

果たして平常時のダークシャドウがどれだけ強いか。

とにかく次は俺だから、仲良し組に声を掛けておく。

ステージの修復もあるだろうし、試合前にリカバリーガールのところに顔を出すか。

顔だけだ。

姿は見せられないからな。

手を見られたらまた怒られる!

 

 

 

 

 

 

 






みんなが殴れと言うから……。
ついでに勝手に曇った。
多分顔色めちゃ悪い状態で観戦してる。

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

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