無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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雄英体育祭:最終種目⑥ 涙の意味。そして爆豪の力

 

常闇くんとの試合前にリカバリーガールのところに顔を出そうとすると、ふと見知った”気“を感じた。

この感じ、エンデヴァーか?

 

会わないように瞬時に移動方向では無い方へ移動し、気配を察知されないように極限まで殺す。

憔悴しきったような顔だ。

まるで現実を突きつけられたかのような姿。信じていたものが砕けたような。

おおよそ、出久に轟が炎を使ってなお完敗した姿を見たから、だろうか。確かに使い方は右に比べれば下手だ。

出久は”全力“だが”本当の力“はまだ出してない。その上で最後の一撃すら上から潰していたからな。ノーダメなだけじゃなく圧勝。

全部を出し切れないのは、轟を相手にやるには危険すぎるからだろう。

同級生に重傷を負わせるわけにもいかないしな。

それに今までの成績から見れば俺と出久と爆豪は突出している。

轟より上で、騎馬戦で互角に渡り合ってたのも俺ら三人だ。

つまり出久が轟より強いってことは俺と爆豪も同様だと考えたのだろう。俺に関してはエンデヴァーをぶん殴ったしな。

No.2になる程だ。力の差がわかってないはずがない。

今までは炎を使えば…など思ってたんだろうけど。

あと観客の声もあったかもな。

半分の力しか使ってない割には、ずっと負けてたんだ。客からしたら事情を知らないんだから実力差があるわけでもないのに舐めプして負けてる姿は何を考えているか分からないはずだ。

 

オールマイトのパワーに負けた。

オールマイトのような力を持つ、いやそれ以上の出久に負けた。

それは炎を使ってもなお、勝てないことの証明になる。

出久だけじゃない。俺や爆豪に対しても。

自分の人生とこれまでの所業の全てを否定されたも同然、ってとこか。

 

 

さて……俺はどうするべきか。

他人の家の事情に突っ込むのはイラついて文句を言ったというか一発ぶん殴ってしまったが、これ以上は過干渉だ。

解決してやりたいとは思うし家族がいるなら家族で幸せに暮らせるようになって欲しいと思う。

しかし、俺は所詮部外者でしかない。

轟は恐らく、”個性“については問題なくなった。でもまだ、家族のことが引っかかってるのかもしれない。それの影響で使えないかもしれない。背中を押すことくらいはできるが…。

 

そう思っても今すぐ行動には移せない。

俺は見なかったことにし、気配を殺しつつリカバリーガールの所へ向かった。

去る前に見えた顔には、瞳から雫が溢れていたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えないようにしても余計なことばかり考えてしまって、気合いで悩みを投げ出すと動く”気“を感じたので止まった。

 

「一応、目覚めたばかりなんだ。安静にしときなよ」

「はい、ありがとうございました」

 

扉を閉める姿が見えたので、気づけるように足音を立てながら声をかける。

今の彼女に見せる訳にはいかないから、腕は隠すことにした。

 

「葉隠さん」

「あ…拳王技くん……」

「体は?」

「大丈夫。もうばっちり!」

「そうか……」

「うん……」

 

俺から何か言えることがないから、どこか会話がしづらくて沈黙が訪れる。

”気“を探ると、切島は既に居ないみたいだ。

これ、場所的に俺がエンデヴァーを見てる合間に入れ違いになったか。残念。

 

「えっと……試合はどんな感じ? 轟くんが運ばれてきたのは知ってるけど…試合は大丈夫なの?」

「ああ…出久が勝った。次は俺と常闇くんだよ。ただ会場が壊れて修復まで時間あるから、試合はまだなんだ」

「そうなんだ…やっぱり緑谷くんも凄く強くなってるね」

「そうだな、”個性“が広がったみたいで二週間で仕上げたんだろうな」

 

それだけじゃないとは思うが、俺も確証はないので口を開かずに無言となりながら歩く。

こつこつ、と足音だけが嫌に大きく響いているような気がする。

普通に歩いているだけなのに、音がそれしかないからだろうか。

 

「あ…はは。拳王技くん次なんだよね! 拳王技くんなら心配ないとも思うけど頑張ってね!私観客席で応援してるから! さっきまでチアしてたからね、任せてよ!」

 

やけに体を動かして、身振り手振りでそう言う葉隠さんの表情は相変わらず見えないので分からない。

声質は明るくて、普段通りだ。そのテンションもいつもと変わらないだろう。

 

「やー、ちょっと小腹空いてきたね〜。拳王技くんは大丈夫?いつもたくさん食べてるし、力を出すためにもちゃんと食べないと!あと水分も摂らないとね。試合前なんだから!私も喉乾いちゃったし、飲み物買いにいこ!」

 

俺の手を掴んで、葉隠さんは走る。手を引かれつつ足を動かしながら俺は後ろ姿を見ていた。

気づかないはずがない。

見えなくたって、分かる。

二週間の間、誰が一番彼女を見てきたと思っている?

みんな同じなんだ。麗日さんがそうだったように、彼女もまた---

 

「葉隠さん」

「ん?どったの? 早く行こ!もう喉カラカラで……」

 

力を入れ、強引に止めると動かないことに気づいて彼女もまた止まる。

俺は正直、人の気持ちには疎い方なんだと思う。友達は殆ど居なかったし関わってきた人たちが少ないってのもある。ヴィジランテとして活動してた時は友達よりも協力関係だった。

大半の時間を修行に費やし、パオズ山ばかりに引きこもってたし。

でも彼女のことだけは分かる。見てきたからこそ、分かるんだ。

 

「葉隠さん、いいんだ」

「な…何が?」

「無理しなくていい。強がる必要なんてない。明るく振る舞わなくてもいいんだ」

「強がってなんて……拳王技くんは変なこと言うなぁ。そんなわけないじゃん、私は平気だって! ほら、早くしないと時間が---」

「葉隠さん…!」

「え、きゃ……!?」

 

意地でも認めない彼女に、俺は強引に手を引っ張って受け止める。

人の慰め方なんて、知らない。その手段を知らない。

でも見えないからと無理をして明るく振る舞う彼女を見てると、心が痛くなる。

無理矢理気持ちを押し殺そうとしたことは俺もあったから、過去の自分を見てるようで。

だからこそ、俺はかつて自分がそうされたように。

 

「けん、おうぎ……くん……は、なして。い、まは……」

「いい。いいから。ここには、この辺りには俺と葉隠さんしかいない。他に誰も居ない。葉隠さんの頑張りは俺が一番分かってる。俺の胸でいいなら貸すから……押し殺さなくて、いい」

「っ……」

 

周囲の”気“の探知を広げつつ、俺は彼女を抱きしめていた。

俺はこうされて、安心したから。

自分の本音を、言えたから。

そっと、その背中を撫でる。我慢する必要は無いと伝えるように。

 

「く、やしい……」

「うん……」

「くやしい…くやしいよぉ…!わた、し…わたし、勝ちたかった……っ!勝ちたかったのっ…!! ずっと、ずっと教えてくれたのに……時間くれて……考えてくれて……拳王技くんにあんなにお世話になったのに…負けて……なのに勝てなくて…ぇ!!」

「うん…うん……」

 

勝ち進んでいる俺に何かを言える資格はない。

ただ聞けるだけ。話を聞くしか出来ない。

よく頑張った。次がある。来年がある。

---これは、そんな簡単に割り切れる話じゃないから。

 

 

「うっ、わあぁぁあ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

悔し涙を流し続ける彼女に胸を貸して無心で撫で続けるロボットになっていたら、落ち着いたであろう葉隠さんは俺から離れていた。

 

「ご、ごめんね…あの、見ないで……は、恥ずかしすぎ…っ」

 

多分、両手を顔で覆ってるんだろうなぁ、と予想出来るしまず見えないのだが野暮ってやつだろう。

気持ちは分かる。

けれど伝えたいことはあるから、悪いけど目を逸らす訳にはいかない。

 

「葉隠さん」

「ひゃい…っ!?」

 

予想しつつ両手で腕を掴むと、降ろされる感覚があった。

真っ直ぐに目と思われる場所を見つめる。

 

「泣いたっていい。転んだっていい。恥ずかしがることでもない。ただ乗り越えて、諦めなければ、いくらでも泣けばいいんだ。俺の胸でいいならいくらだって貸す。だからそれを糧にしてさ、前に進もう。必要なら俺がいくらでも手を引く。俺が何度だって力になるから」

「拳王技くん……」

 

泣くことは別に悪いことじゃない。

我慢は毒って言うし。ただ立ち止まらなければいい。

いつかその涙が、過去のものになるから。懐かしくなるから。

少なくとも俺は、そう信じている。

 

「あ…ありがと。で、でも、迷惑じゃない…?」

「全然。俺は俺で鍛錬になるからな」

「拳王技くんらしいや」

「?」

 

俺らしいってことが分からず、どういうことか、と聞こうとしたら、急に葉隠さんがあーっ!っと叫んだ。

どうやらもう、大丈夫そうだ。

本当の意味で。

 

「そういえばその手!どうしたの!?包帯だらけじゃん!早くリカバリーガールのところに行かないと……!」

「あっ。え、えーと、これ? 話せば長くなるんだけど…エンデヴァー殴ってこうなった?」

「殴った!?エンデヴァーを? えっ!? てか、そんな簡単に終わらせていい話!? 大丈夫なの!? み、見せて!」

「いや待て葉隠さん。見ない方がいい!俺の手が焦げてるからグロい!!」

「もっとダメじゃんか!! リカバリーガールのところに行こ!?」

 

 

 

 

 

 

『待たせたなオーディエンスたち!ステージの修復も終わったことで、もうすぐ始めるぜ!』

 

プレゼントマイク先生のアナウンスが聞こえた。

どうやら俺の出番らしい。

そろそろ行かないといけないけど。

 

「ああ始まっちゃう…! 行く時間ない!?」

「ま、気にしないでいいって。ある程度”気“でカバーできるし」

「で、でも…」

「心配してくれてありがとう。その気持ちだけで俺は嬉しいから」

 

心配してくれる彼女に問題ないというように笑いかける。

すると、やけに視線を感じたが。

 

「う……そこまで、言うなら……。じゃあ観客席で応援してるから!勝ってね、拳王技くん。無理はしちゃダメだよ!」

「ああ…そうするよ」

「約束だよ!

よーし、それじゃたくさん応援するぞー!」

「じゃあ応援に応えなくちゃな」

「うんうん、頼むよー?」

「ああ、頑張るよ。行ってくる」

「またね!ほんっとうに無理しちゃだめだから!」

 

何度も心配してくれる彼女に苦笑しつつ、俺は時間なので返事代わりに手を挙げて走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行ったよね……。

怪我は心配だけど…。

 

 

 

いくらでも手を引く…力になる…かぁ。

 

 

もー…ずるいなぁ、ほんとに。あれで素だからなー……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第二回戦、二試合目を始めるぜ!影を操り、コンビネーションで戦う!ヒーロー科、常闇踏陰VS俺もうこいつよくわかんねぇよ!てか、なんか怪我してる!何があった!?ヒーロー科、拳王技界!』

 

いや、よくわかんねぇってなんだよ。プロが投げ出さないでくれ。

確かに切島相手に修行つけるとかしたけど、あれは俺が強くなるために必要なことだし…。

あと怪我は気にしないで。

 

「拳王技…大丈夫なのか?その、怪我」

「気にするな、ただの見せしめだ」

「よく分からないが…承知した。自らの手に封印する理由があったのだな…」

「ん?……ん?」

 

なんか誤解されてるような気がするが、ただ手が焦げて使えなくなっただけだぞ。言えないけど。

 

「…話を戻そう。拳王技、お前は凄い奴だ。緑谷や轟だけじゃない。俺もお前に”挑戦“する」

「そうか。だったら受けて立つ」

 

真正面からそう言われれば、俺も応えるしかないだろう。確か弱点は”光“だっけ。なら気功波類はまた使えないな。

始まる前に、一礼。

 

『START!』

 

「ダークシャドウ!」

『イクゼー!』

 

スタートと同時に向かってきたダークシャドウ。

掴みではなく、両腕を振り下ろしてくる。

両足に力を入れ、右腕を上げた俺は真正面から受け止めた、

ドンッ!と衝撃が走って地面に穴が空く。

なるほど、かなりの力だ。

 

「じゃ、反撃だっ!」

 

弾くように大きく右腕を斜め上に動かし、素早く戻して握った右拳でダークシャドウの顔面を殴り飛ばす。

瞬間、ダークシャドウが吹き飛んだ。

 

「ダークシャドウ!?」

『スゴイイタイ!』

 

結構な力で殴ったはずだが、”個性“だからか問題ないらしい。

確かに厄介だな、本体ごと潰すか本体を狙うのが最適だ。

---ただこれは、実戦じゃない。あくまで試合形式。

なら俺は”全力“を受け止めるだけだ。

 

「もう一度だ!」

『アイ!』

「同じことしたって変わらないぞ」

 

拳を受け止め、手のひらを蹴り飛ばして、回転しながら回し蹴りを腹部?みたいなところに叩き込む。

大きく後ろに下がるダークシャドウに追撃し、連続で右拳を叩き込む。

ガードされ、反応するダークシャドウに徐々に速度を上げていき、追いつけない速さで30発以上の攻撃を加えると真上に蹴っ飛ばし、瞬時に跳躍して常闇に向かって蹴り飛ばした。

 

「くっ……!?」

 

ダークシャドウを戻さず避けることを選んだようで、ステージの床が壊れて軽く穴が空いた。

どうやら勢いが強すぎると直接戻せないらしい。

予想通りだな。

正直、”界王拳“を使うまでもない。俺には暗雲を発生させる力はないから暗闇に出来ないのが残念だ。

ああいったことは”邪悪な気“を持ってないと出来ない。俺の”気“は性質上明るくすることしか出来ないのだ。

パワーボール投げたりとか。花火起こしたりとか。

師匠なら気を溜めるだけで天変地異を起こせるから物理的に暗闇にすることは出来るんだろうけどな。

いっそのこと天候を変えたら行けるか? 界王拳かめはめ波でやれるかもしれない。拳圧だと”気“を集中させた上でやる必要あるから他の人が吹き飛びかねないしなぁ。

 

『真正面から片手だけで叩き潰したァ!脳筋かよ!』

『それを可能にするパワーがあるってことだ。何より常闇はフルパワーで戦えない。いくら拳王技が()()()怪我してるとはいえ、その状態で拳王技相手には相性が悪いな』

 

試合よりも相澤先生の言葉に思わず目を向けたら、後で話せ、と目で言ってきた。

凄い怖いんだが。

…まぁそれは未来の俺に託すとして、どう足掻いても天候を変えるのは危険でしかないので、素直に床に着地。

 

『フミカゲ!アイツ、ヤベエ!』

「分かっている……!」

 

さて、どうするか。

俺がやりたいのは常闇の全力だ。しかし全力は出せない。

今のダークシャドウのパワーは俺が全開放せずとも圧倒出来るレベルでしかない。

それに制御出来ない可能性も捨てきれないわけで…。

 

「ならば取れる選択肢は一つ!」

「ん?」

 

諦めてないというのは伝わってくる。

どう来るかと油断なく構えると、ダークシャドウが真正面から来て、()()で振り下ろしてきた。

なるほど、目眩しか。せっかく直ったのに破壊されるステージだが、土埃によって視界が遮られた。

横。

腕を立てて防御。腕を足で踏みつけ、伸びてきた爪を首を動かして避ける。

”気“を感じて左足での回し蹴りをすると、空振る。

瞬時にダークシャドウを真後ろに投げ、振り向く。

 

「く……これもダメか……」

「悪いな、常闇くん。連携はありだが、俺には通じない。一気に決めさせてもらうぞ」

「……!」

 

両足に力を入れ、左手を脱力するように構えつつ、右拳を腰に添え”気“を集中させる。

白いオーラが拳に纏わり---

 

「なにか来る…!」

『ヤラセネェヨ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャーン拳!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グーッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその瞬間。

俺の拳がダークシャドウごと常闇を壁まで叩きつけていた。

意識を失ったのか、白目を剥いて背中から落ちる姿を見ながら振りぬいた拳を俺は戻した。

 

『常闇くん場外!!勝者!拳王技くん!』

 

 

 

会場の歓声を背にハンソーロボが常闇くんを連れていくのを見た俺は退場して観客席に戻る。

轟も戻ってきたようだ。回復早いな、流石鍛えられただけある。

 

「轟」

「拳王技……悪かった。お前は最初から分かっていたんだな。お陰で思い出せた」

「急になんだよ。怖いだろ。俺は別に何もしてないぞ。それより大丈夫なのか?」

「そうか。お前はそういうやつだよな」

 

ふ、と少し笑う轟に俺は正直意味は分からないが、一応聞くことにした。

もう使えるのか、と。

 

「もうこの”個性“は自分のだと思ってる……でも俺にはまだ、胸張って使うことは出来ない。だからもう少しだけ、待ってくれ。それと…緑谷から聞いたんだがクソ親父に何か言われたんだってな……すまねえ。その手は…どうした?」

「いや、こっちこそエンデヴァーには言い過ぎたかもしれない。この手は…うんちょっと耳を拝借しても?」

「…?ああ」

 

一応A組は知ってるとはいえ、大きく言えるようなことじゃないため、俺は轟の耳元で怪我してる理由を教えた。

 

「実はお前を道具扱いしたり願望を押し付けたりとか、色々聞いてるうちにムカついてさ、勝手ながらお前の分として殴ったんだ。その前にエンデヴァーの胸糞を掴んでさ、左手が燃えた。それでこうなった。そん時に殴ったから事情が事情だしリカバリーガールのところにもいけなくて」

「……!そう、なのか……俺のせいで…すまねぇ……お前はまだ試合があるのに……」

 

理由を説明すると、轟が目を見開いて驚いた後に顔を曇らせた。

なんでだよ。

 

「い、いやいやいいって!!俺が勝手にイラついただけだから。まぁ、なんだ。色々感情が追いつかないかもしれないが、俺に出来ることならする。素直に言ってくれよ」

「ああ…近いうちに、頼むと思う。それと……なんだ、クソ親父はどうなった…?」

 

何を頼まれるのだろうか。

戦いなら大歓迎なんだが、そういう訳じゃなさそう。

どうなったってのは容態かな。

 

「そうか。えーと多少頭から血が出て頬が腫れて鼻血が出たくらいだったな。流石にタフだ」

「そうか…… あいつ、エンデヴァーを殴り飛ばすなんて…やっぱすげぇな。ありがとな。なんか…聞いて、すっきりした。でも、不思議な気分だ……」

「…そっか。まぁ勝手に殴ったのは謝る」

「それは別にいい。お前の怪我は申し訳ないけどな……」

「お、おう……掘り起こすなって。この話は終わりだ!気にすんなよ!」

「ああ…当人のお前が言うなら……」

 

息子に心配されずに、それどころか別にいいって言われるって…ホントあいつロクでもないな、おい。

とにかく次は飯田か。

俺は戻ってきていた切島と互いに労ると手のことを聞かれたので爆豪の説明を借りつつ心配されて握手したのち、出久の隣に座る。

 

「お疲れ、界くん」

「見てて凄いなあって思ったよ、常闇くんを正面から倒すって思わんかった」

「ねー! さっすが!」

「せっかくの試合だからな。真正面からぶつかり合いたかったんだ」

「拳王技くんらしいね」

 

麗日さんまで…。

俺らしいってなんなんだ。

 

「それより悪いな、轟を任せて」

「僕もそうしたいと思ってたから。その、エンデヴァー(が)大丈夫だった?」

「(俺は)大丈夫だったぞ。殴り飛ばしたけど」

「ああ、うん…その程度で済んだんだ…良かったよ、本当に。で、手は、大丈夫?焦げて使えないって聞いたけど……」

「使えないだけだから大丈夫だ」

「それ大丈夫じゃないからね?」

「ほんとにそれ!!拳王技くんは気にしてよ!?」

 

そんなに心配だったのだろうか。

まぁ相手はNo.2だからな。

あんなやつに負けるつもりは毛頭ないが。

それとまた葉隠さんとさっきみたいなことになりそうなので目を逸らして誤魔化した。*1

それより本当に大丈夫だから。近いって葉隠さん。*2

いい匂いするからやめてくれ。俺も男だぞ。*3

 

大丈夫だと何とか納得してもらって離れてもらってから気づいたが小森さんが見当たらない。次の相手は爆豪……心配だな。

見に行くべきか?

いや、多分…次の試合、その時間が無い。

 

「小森さんは控え室?」

「うん、もう行ったみたいだよ。相手がかっちゃんだからね……」

「あいつ、さらに強くなったからな…前の爆豪なら小森さんでも時間さえ稼げたら何とかできたかもしれないが」

「急に強くなりすぎだよね」

「お前が言うか?」

「拳王技くんが言ってええの…?」

「二人とも人のこと言えないでしょ!」

 

それはどういう意味なのか俺は麗日さんと葉隠さんに聞きたい。

それを口にする前に、試合が始まっていた。

”創造“は厄介な力だ。でも瞬時に作り出すことは出来ず、大きければ大きいほど時間がかかる。

つまり。

 

『瞬・殺!そのまま運んで飯田が勝ち進んだーっ!』

『読んでいただろうが短期決戦だと八百万は厳しいな。今後の課題だろう。逆に飯田は無駄に怪我をさせずに終わらせた。これもまた相性が悪い』

 

開幕レシプロで終わってしまった。

俺みたいに相手の力を見たいならまだしも、飯田はそんなんじゃないし時間かけたらかけるほど勝率は下がるからな。

正直正しい判断だが、やはりすぐ始まってしまいそうだ。一言くらいかけたかったけど、心の中で小森さんを応援しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんじゃ次は第二回戦、第四試合!これはまたトップクラスの成績同士の戦いだ!ヒーロー科、小森希乃子!VS爆豪勝己!』

 

「てめぇには界の野郎と一緒にしてやられたからな。いくら知り合ったからといって加減はしねぇぞ」

「私も負ける訳には行かないノコ!」

 

『START!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Boooooomb!!

 

 

 

 

 

MUSHROOMS!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開始早々キノコが地面に一気に生え、爆豪の爆破が一気に焼き尽くす。

一度では終わらない。

焼かれたら次。生えてきたら一気に。

 

『両者ともにぶっぱかよ!!』

『短期決戦を仕掛けてきたな。どっちも長引けば長引くほど厄介になる』

 

「ハッ、その程度かァ!?」

「何度やっても焼き尽くされちゃう……ならツリガネタケちゃん!」

「いくら生やしてもこんなもん壊してやらぁ!!」

「それを待ってたノコ」

「…あ? どういう---ッ!?」

 

ツリガネタケやキコブタケ、シロカイメンタケ、マスタケ、カバノアナタケ(チャーガ)---他のサルノコシカケ科のキノコがびっしりと埋めつくされ、似たようなものばかりしかない。

それらを高威力で爆破した瞬間、爆豪の周囲が凄まじい勢いで一気に燃え上がった。

そこにさらに追撃として菌糸の弾丸が一気に放たれていく。

 

なるほど、そう来たか!

かつて火口(ほくち)として使われていたとされているキノコだ。

火打ち石でも十分火を起こすことが可能で、コルクのような柔らかい部分だけが使えたとか。ただツリガネタケに関しては白樺に生えてるやつなら、だったかな。

それにひとつひとつは結構少ない場合が多いが、”個性“だし物量でカバー出来る!

俺は”気“で火を起こすか摩擦熱で物理的に起こしてたから必要なかったが。

しかし”爆破“という強力な攻撃だからこそ、硬い部分ごと全部燃やし尽くす。

そうなれば当然、着火する部分にまで到達するわけでその結果起きたのが擬似的な強力な”火“の”個性“ってわけか…! そこに自分自身の攻撃も加わってる…!

触れるだけなら問題ない毒キノコを生やすならまだしも、毒キノコによって戦闘不能にする方法を使えない以上、取れる最善手か…!

それに拘束だけじゃなく弾丸まで撃てるようになってるとは。

 

『燃えたァ!?なんだ、爆豪の自滅か!?大丈夫かあれ!』

『どちらかというと引火したように見えたが……』

『よく分からないが、もしかして終わったか!?』

 

いや、終わってないな。

そう確信を持って火の中を見ると。

 

 

 

「っ、ぁああああ!」

「ノコ!?」

 

爆豪が火の中から爆破で飛んで出てきた。それも

ダメージは十分すぎるものだったようだ。

上の体操着は燃えてなくなってるし本人も煤がついてたりしている。正直爆豪じゃなければ力尽きてるだろう。息も出来なかっただろうし自分の爆破も受けてるし体燃えただろうし。

それに頬には切り傷があり、弾丸によるダメージもありそうだった。

瞬時に小森さんは菌糸の糸を飛ばす---瞬間。

空中にいる爆豪が()()()()()と共にブレた。

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

いや、嘘だろ!?

はやっ!?

 

 

 

 

 

 

「え? 今何が……」

「見えんかった……!」

「は、はは。間違いねぇ……」

「あれがかっちゃんの、”本気“……!」

 

 

 

 

「審判」

 

同時に、無言となる観客席。

そこにはいつの間にか場外に落とされて尻もちを付いて呆然としている小森さんとステージの端に立つ爆豪が居て。

 

「…はっ!? こ、小森さん場外! 勝者、爆豪くん!」

 

ミッドナイト先生の宣言によって、理解した観客席が今まで以上の歓声が挙がった。

スピード系のプロレベルかよ、とかいやそれ以上だろ、とか速すぎるだろ、とか。見えなかったとか。

目視出来なかったものが大半だろう。

逆に言えばあの速度を目視出来た者は、トップヒーローレベルや俺や出久に近い領域にいるってことだ。

生半可な実力じゃ何が起きたのかすら把握することは出来ない。

爆豪は自分の力を理解してるから小森さんを攻撃せず、そのまんま掴んで運んだ。

速すぎるあまり掴まれた、と意識した時には既に場外に持っていかれていたってところだろうな。

小森さんは”個性“は強くなってたけど、動体視力とかはそれほど上がってなかったみたいだし…本当の意味でバグっ(覚醒し)たわけじゃないのだろう。

それでも恐らく、体育祭前の数十倍は強くなっただろうけど。

人によって疎らというか、レベルが違うのかもな。小森さんのが1段階目としたら切島が2段階目。爆豪と出久が3段階目…みたいな。

もしかしたら4段階目くらい行ってるかもしれないが。

 

「…これだけは言っとく。界の野郎の前に”本気“を出すことになるとは思わなかった。強かった」

「……ノコ」

 

何かを話してるのは分かるが、声が小さくて聞こえない。

ただ小森さんが俯いてるのだけは分かった。

さっき見た爆豪の速度に危機感を覚えつつも、俺は心配になったため観客席から立ち上がって会場の方へ走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
何一つ誤魔化せてない。

*2
自業自得。

*3
心配させた罰。

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

  • 本編のみ
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