無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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雄英体育祭:最終種目⑦ 緑谷出久VS拳王技界 その①

 

見えなかった。

気がつけば終わってた、と退場した私は思い返していた。

拳王技くんと繋がって、騎馬戦で()()()を見せてもらって、彼のことを知っていくと負けたくないって気持ちと一緒に()()()が宿った気がして。

気がつけば菌糸の糸を操作したり、弾丸を放ったり、”個性“の範囲や()()()()()()()()が出来るようになって強くなったと思ってたのに、何も出来ずに負けちゃった。

 

「小森さん……」

 

顔を挙げると、件の男の子がいた。

不思議な魅力のある人。

最初は競技中なのに私の”個性“に興味を持って話しかけてきて、キノコが好きらしく私も同じように好きだったから話があって、私を引くこともなく受け入れてくれた。友達になってくれた。

知識も豊富で話していると楽しいと思える人。自然のことに詳しくてキノコに対する知識もたくさん持ってるみたい。

その人の名前は拳王技界くん。

 

見てた。入試試験は別だったみたいだけど、巨大ロボを壊した生徒が三人いるって噂になってたし、障害物競走では後ろの方に居た私は彼が人のために競技中なのにロボットを蹴り飛ばしたところをこの目で見た。

そして(ライバル)同士なのに、話しかけたからといって力を貸してくれた。

”個性“を最小限しか使わないことにしてたから順位は正直ギリギリだったし彼自身も気にしてたから申し訳なく思いながら背中に乗せてもらったけど、”全力“で競技に挑む姿を見てたら物間くんに言われて様子見しているのが何だか恥ずかしくなって、”個性“を使うことにした。

私の”個性“はキノコ。人を巻き込むから基本的にこういった場では使えないけど、拳王技くんはバリヤー?を貼れるから問題なく使えた。

そして、彼は宣言通り一位になって。

私は彼の後ろに乗ってたから二位になった。

 

終わった後の彼は疲れてる様子だったけど、それでもカッコイイと思ったのはその”全力“でやる姿を一番近くで見てたからだと思う。

どんなことでも”全力“でやる。

当たり前のことなのに、忘れてた。大切なことを教えてくれた。

彼は宣誓の時にも言ってたのに。

 

それにキノコ友達。

いい響き。素敵な言葉だな、と思いながら私は彼に興味を強く持って、聞いた。

あんなに凄い身体能力の他に光線みたいなのを撃ち出したり、宙に浮いたり、赤くなったり、色々とやってて凄い”個性“だったから。

でも彼は、”無個性“だったみたいで。

信じられないことで思わず叫んじゃった。

今でも思い返すと、とっても恥ずかしいノコ。

 

詳しく聞いてみたら、私を含めて誰でも持ってる精神(生命)エネルギーである”気“を自覚して利用し、コントロールしてるらしく、自分以外に持ってる人は見たことないけど得られるかどうかは人それぞれで、基本的には修行で身につけるって言ってた。

体が赤くなってたものは”界王拳“という”技“らしく、自分の身体能力、防御力すらも何倍に引き上げられる技で代償として自分の限界以上を使えばしっぺ返しが来るものと言ってたノコ。

凄い技だけど、”気“のコントロールが上手くなければ自分の体を殺すほどの技で、”無個性“で入試一位になって、障害物競走で誰にも負けない強さを見せた姿を見てたら、彼が私たちの何十倍、何百倍も努力してここまで来たというのが伝わってきたノコ。

 

騎馬戦では一位に与えられるポイントの量で誰も組んで貰えずに地面に四つん這いになっていた彼が放っておけず、何より今度は力になりたくて私は理由を付けて彼と組んだ。

両手を掴まれた時は驚いたけど、その顔はあまりに純粋で嬉しそうで、綺麗な笑顔で。

アイドルヒーロー志望としてはあまり良くないことだとは思ってるけど、触れられても悪い気持ちは全然なかった。

むしろその手はとっても頼りがいのある力強さと鍛え抜かれた手で。包まれるだけで安心出来るキノコ。

それに少し話してるだけで分かったのが、彼には裏表がなかったということ。

 

それから発目ちゃんが来て、拳王技くんにちょっとイタズラ心が芽生えてからかうと良い反応してくれて。

会話が楽しくて時間がなくなったりはしたけど最後に葉隠透ちゃんっていう女の子が来てくれたお陰で無事に全員で騎馬を組めるようになった。

 

始まる前に両手を握られながら”気“を私の体内に流す…と私にはよく分からないことを言われたけど、彼の人柄は短くても分かってたから私は不思議なくらいに簡単に身を委ねた。

私の”個性“なら”気“と相性がいいかもしれないって言ってて、その、なんだか流されてた間は身体の芯が熱くなって火照って、でも暖かくて不快な感じはなくて…どちらかというと気持ち良かったくらい。

結果としては”相性“が良かったらしく、実際に試合では彼の”気“で活性化させたり菌糸の糸を操作したりエネルギーを撃ったり、と色んなことが出来て、彼と一緒にいると私の中で何かが高まるような感覚があった。

そうしたら、細かい制御も出来るようになってて、最後は奪われちゃったけど何とか二位で通過出来た。

 

彼に対する興味は、より高まっていた。

 

たくさん食べる人だと知ったり、彼ですら勝てず、最強とすら言う”師匠“という人物のお陰で強さだけならトップヒーロー以上になったのだと知ったり、髪の影響で見づらいであろう、と私にタイミングよく持ってた理由は分からないけど母親のヘアグリップを貸してくれたり。

不気味に思わず、むしろ隠してるのがもったいないほどに綺麗な目と言われた時は、顔が真っ赤になっちゃったけどノコ…。

それから一回目の試合のとき、小大ちゃんと話したりはしてたけど、そろそろ試合が始まって邪魔になるからと去っていくのを見送ったら緊張がぶり返して。

心配して見に来てくれた彼は私の緊張を解すために話してくれて、彼のことをちょっと聞けた。

 

”師匠“のことを語る彼は綺麗な目だった。

キラキラと輝いて、真っ直ぐで、優しい目で、誇らしそうで、嬉しそうで。

大好きなんだって伝わってきた。

 

もっともっと知りたくて、幼少の話をちょっとだけ聞けた。

学生だと”師匠“の件を多く語ったのと、幼少のことに関しては幼馴染で知っている緑谷くんや爆豪くん以外に話したのは私が初めてらしくて、何だか得したような気分ノコ。

昔はヒーローに憧れてなかった、とか何も出来ないくらい弱かった、とか今じゃ全然想像つかないけど、そう考えたら彼は本当に()()()()なんだと感じた。

努力家で、何事にも”全力“で、真っ直ぐで。

 

そんな彼に応援されたら、私も頑張るしかない。

夢を応援するって、言われたから。

こんなにすごい人に、そう言われたから。

もしかしたらオールマイト以上かもしれない、すごい人に。誰よりも努力してきた人に。

そして”無個性“でここまで来た人に。

そう思うと、()()()()()()って強く感じて、()()()()()()()()()()と思って---私の中で、何かが変わった気がした。

 

 

 

 

 

 

そして色々”個性“が上手く扱えるようになって、今。

 

「お疲れ様。…大丈夫?」

「うん…爆豪くん強かったノコ」

「あいつは才能マンだからなあ…俺も騎馬戦で見せた力以上はあると思ってたけど、あれほどとは思わなかったよ」

 

労わるように声を掛けてくれたけど、慰めたり励ますようなことは言わずに私は普通に話しながら一緒に歩いていく。

悔しい気持ちはある。負けたくなかったし、やっぱり勝ちたかった。

でも、涙が流れないのはきっと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いて、止まった私に拳王技くんは気づいて振り向いた。

 

「私、もっと強くなるノコ。だからこれからも応援してくれる?」

「そっか。もちろん、言ったろ?俺は小森さんを応援したくなったって。今回限りじゃないよ、俺は()()()()()()()()()()()をずっと応援するって決めたからな。俺でいいなら力も貸すから!」

 

 

 

 

 

 

それに俺は小森さんの一番目のファンなんだろ? だったら特等席で見続けるのは当然だ。

 

 

 

 

そう、笑顔での即答だった。

そう、きっと。

誰よりも夢に向かって努力した彼が、私を応援してくれるから。

ずっと、なんて言ってくれて。

今は泣いてられない。前に進みたいと思った。初めてのファンに応えるのがきっと、アイドルとしての第一歩だからノコ。

新鮮なことばかりを体験させてくれて、驚かされることも多くて、話していて全く飽きず笑顔にさせてくれるような不思議な人。

今も安心させてくれて。前に進む力をくれる。

強くて可愛いアイドルヒーロー。

その”夢“のためにも。

 

 

 

 

 

「そうだ。家に色んなキノコあってさ、体育祭終わったら一緒に食う?」

「いいの? 食べたいノコ!」

「お、おお…勢い。せっかくだからな。どうせ終わったら出久と爆豪は巻き込むつもりだったし」

「じゃあ楽しみにしてる! あっ、試合も応援するからね。頑張って!」

「そりゃ、負けられないな。頑張るよ」

 

思わず接近して顔を近づけちゃうほどの魅力に溢れた提案だった。

拳王技くんの顔がうっすらと赤くなってる気がしたけど、私は終わってからの楽しみに心が弾みつつ、分かれる前に伝わってるか分からないけど心からの応援を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

小森さんと分かれた俺は、相澤先生のところに行ってから精神統一していた。

考えてる時間はない。

次の相手は、出久だ。

 

今のあいつは油断ならない存在だろう。俺の手を多く知っているのは、出久と爆豪だ。

格闘は俺の方が上だろうが、戦い方を知るのと知らないのとじゃ全然違う。体の動きは分かってるだろうし。

今までは”界王拳“という切り札を伏せていたし、”気“を全開にすれば勝てたから余裕はあった。

だが、バグったやつらは本当に凄まじい成長度を誇る。

先輩がバグった時は普通にビビったくらいだ。

誰だ、あんなことさせたのは。

俺だった……。

 

恐らく出久は見せなかった全部を出してくる。俺も負けるつもりはないが、格下とも思わない。

出久は”個性“を得てから一気に成長した。

何よりあいつは、俺の知る中で二番目…いや三番目…いや四番目……いや五番目……いや、やっぱ六番目……いやもっと……とにかく”気“に覚醒するに近い存在だ。元々”無個性“だったから爆豪よりも”気“を得る可能性が高いからな。

爆豪は多分、何らかの拍子で目覚める。だってあいつ絶対そうなるぞ、勝手に強くなってるタイプだぞ。

現に俺と関わることになってから何度も成長しまくってるからな! もう今のあいつなら重りがあったら俺は負けるレベルの時点で成長度おかしいんだよ。

 

しかし、”個性“持ちが”気“を得ると俺の有利性って、マジで”気“のコントロール技術と格闘しかなくなるからな。

それは大変困る(わくわくする)

 

準備運動を済ませ、ただ待機するのみ。

 

『再び小休憩を終え、いよいよ準決勝! はっきり言おう!準決勝だと甘く見るな!決勝戦の戦いになることは間違いなし!目搔っ穿じて閉じるなよ!一つの行動も見逃すなぁ!』

 

準備万端。

俺は早速、入場していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

バクバクと心臓の鼓動が止まらなくて五月蝿いくらいだった。

でもその緊張は恐れからでもなく、喜びから来るものだった。

いよいよ、始まる。

今の僕の”本気“がどこまで通じるのか。

僕にとって界くんという最強の敵。本当の意味で勝てたことは、騎馬戦だけだ。

”界王拳“を長らく封印してたのは、危険な技という理由と僕たちがそのレベルに達してなかったから。

でも今はきっと違う。

彼も”本気“で来る。

僕の全部を持って君に勝つよ、界くん!

 

オールマイト、見ててください。

僕が来た!と証明するために。

 

界くん。

君が居たから僕はここまで強くなれた。

君のお眼鏡にかなうかは分からない。だけど僕は、君に精一杯の恩返しをする。

今から、そしてこれから。

 

『準決勝! ここまでフィジカルとパワーで勝ち上がってきたヒーロー科、緑谷出久!』

 

目の前にいる拳王技くんはいつものように一礼していた。

僕も軽く頭を下げつつ、深呼吸を挟む。

笑え、笑え。

界くんのように、強く。

 

『VS!!』

 

『雄英創設、そして体育祭が始まってオールマイト世代以来のとにかく規格外!誰がこいつの快進撃を止められる!?ヒーロー科、拳王技界!!』

 

ステップを踏むように、片足ずつ動かして肩を回して、拳王技くんは足を深く広げ、前屈みになって右半身を前に、左手を高く構える。反対の右手は拳の状態。*1

対して僕はスタンダードなキックボクシングの構えを取っていた。

両手足、全部を武器にする僕にはボクシングよりこっちの方があっている。

 

「出久、フルカウルを纏う時間は与える。強くなったお前と戦うのは楽しみにしてたんだ。ぜひ俺を楽しませてくれよ?」

「もちろん。僕は今日、君を超えるよ」

「その心意義やよし!」

 

『さぁ、両者ともに構えを取った!今!』

 

 

 

START!!

 

 

 

ワン・フォー・オール・フルカウル---45%ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

フルカウルを纏う出久を前に、俺も”気“を纏う。

稲妻のようにビリビリとエネルギーを纏っている出久とは違い、俺の全身に白いオーラが纏われる。

そして。

 

「だぁ------っ!!!」

「デトロイト---スマァアアアシュッ!!」

 

互いに突進するように加速し、俺の拳と出久の拳がぶつかりあった。

瞬間、互いの力がぶつかった影響で衝撃が空気が爆ぜる。

弾かれるように体が後ろへ下がり、”舞空術“を使って加速。

 

 

 

”浮遊“!”黒鞭“!

 

 

「っと!」

 

同じく浮いてきた出久は黒いエネルギー状の鞭を飛ばしてくるがまとめて掴み取り、一気に引き寄せる。

そのまま拳を叩きつけるが、突き出してきた足がぶつかった。

引き寄せた勢いが活かされ、俺の方が怯む。

すぐに頭上から下ろしてきた足を逸らし、アッパーカット。

身を逸らして空中で回転するように避けた出久が回し蹴りを放ってきた。

両腕を立てて防御し、自ら横へ飛びながら手に気弾を生成すると回転して投げる。

 

「デラウェア・スマッシュ!!」

 

出久の空気弾と気弾がぶつかり合い、気弾が爆発する。

両手に形成し、両手を合わせて合体させると、頭上に掲げて”気“を送り込む。

そして投げた。

出久は地を蹴って上空へ避け、俺は急接近する。

 

「だあっ!」

「はあっ!!」

 

突き出した拳が逸らされ、反撃の拳を逸らす。

蹴り、避けられる。

肘、ガード。

殴り、受け流され、叩き、弾かれ、一気に加速した。

高速とも言える拳と拳の応酬。ぶつかり合う度に空気が爆ぜ、揺れ、風が一気に巻き起こる。

 

 

『なんつーハイレベルな戦いしてんだ!完全にスタ〇ラとザ・ワ〇ルドみたいなことになってんだが!?オラオラ無駄無駄って言わせたら完全にアレよ!!』

『まだ互いに様子見程度だ。あんなもんじゃない。しかしまぁ…緑谷のやつ、轟戦でもそうだったが嘘のように力を引き出せているな』

 

「すご……」

「こんなもんじゃねぇよ。まだウォーミングアップ程度だろ」

「嘘だろ、あれでか!? 俺と戦った時の力は出てないみたいだが……」

「こっちに来る風が凄いノコ……吹き飛んじゃうかも…」

「これ、どっちを応援したらいいか、悩むね…!」

「ああ、俺たちにとって二人とも大切な友人だからな……ならば頑張れ!二人とも!!」

 

 

「う…りゃああああ!!」

「ぉぉおおおおお!」

 

大きく弾かれた俺たちが再びぶつかり合い、互いの拳が頬を殴り飛ばしていた。

同時に地面に落下し、ステージに軽いクレーターを作りながら起き上がる。

 

様子見程度とはいえ、やっぱりやるな出久。フルカウルの練度が嘘みたいに高まってる。出力だけじゃない、不安定さが何一つない。完全に物としている戦い方だ…!!

しかもこいつ、まるで歴戦の戦士みたいに戦闘経験を得てる…どうなってやがる? 戦闘経験で埋めてきてるな。

二週間で多くのプロヒーローを、それ以上の相手と戦って勝ってきたかのような…普通はそんなこと出来ないはずだが。

何でもいいか、バグった証拠だ。

あと左拳がクソ痛え。長く持たねぇな、これ。

そろそろ一段階、ギアを上げるか。

 

 

 

 

 

――――

 

 

やっぱり凄いな、界くん。

45%を使っても、互角にやるので精一杯だ。ちょっとは有利に立てるかと思ったけど、そんなこと全然ない。むしろ()()()の経験を受け継いだ僕がようやく、というレベルな時点でどれだけ界くんが異常なのか。

黒鞭の勢いを使っても押し切れない。

というか、あれで怪我してるって嘘でしょ。全然痛いし本人痛がってないし本当に怪我してる?

でもお陰で、()()()()

一気に解放して、ぶつける!!

一定の動作を繰り返すことで運動エネルギーを一時的に蓄積し、放出できる”個性“!

三代目、力をお借りします!

 

3th---『発勁』。

解放!!

 

 

「SMAAASH!!」

「うおっ!?」

 

加速。

蓄積された力が、45%以上の力を引き出し、界くんを一気に吹き飛ばした。

ダメだ!防御された!!

 

地面を蹴って竜巻のように回転し、勢いを殺した拳王技くんが気弾を放ってくる。

側面から殴って吹き飛ばし---居ない!?

 

頭の中に電流が走ったような感覚が走り、一気にしゃがむ。

頭上を腕が通過した。

速度が上がった! ギアを上げて来たんだ!

”危機感知“がなければ避けられなかった!!

 

すぐに片足を後ろに突き出す。

スウェーで避ける界くんにそのまま回るようにして突撃すると、彼は跳んで避け、手に向けて細いビーム状の気弾を指から撃ってきた。体勢が崩れる前に手で地面を押し、勢いをつけて空中で体を捻りつつ戻し、両足で着地。

即座に地面を蹴って殴り---寸前で”黒鞭“を体に巻き付けた。

このまま投げ。

 

「ハアッ!」

「く…!?」

 

気合いで掻き消され、その際の衝撃で重心が後ろに傾いたところを容赦なく胸に一撃を受けて吹き飛ぶ。

両手を地面について勢いを殺しつつ、倒立前転するように蹴りを叩きつける。どちらかというと、逆サマーソルト。

横にズレたのを見つつ、体当たり---する直前で止まって。

 

「こっち!!」

 

後ろに向かって肘打ち。

目の前にあった残像は消え、肘に当たった感触が---ない。

 

「こっちだ!」

「上!?」

 

上空を見上げ、太陽の光によって視界が遮られかけるけど強引に上げ、拳を突き上げて拳圧。

これも残像!?

 

「今度こそッ!」

 

懐に潜り込んでいた界くんに拳を振り下ろし、またしても空振った。

後ろを見ながら全身を動かし、回し蹴りをしたところで首に一撃を受けた。

間違いなく手刀による一撃。首を抑えつつ振り向くと、彼はしたり顔をしていた。

”残像拳“の連続使用…これに関しては”危機感知“が反応出来ない。それに残像どころかもはや透過しているレベルだ。

使い方がおかしいよ、界くん。今二人居たかと錯覚するレベルだったよ。ショートワープしてるのかと思うくらいだったよ。

最後の一撃に関しては当たる直前に消えて後ろに居たみたいだし。

 

 

『残像!残像!残像!なんだあれ!!』

『ただの超スピードらしい。移動と停止を繰り返してるらしいな。そして』

 

「………!!」

 

僕の周囲には既に()()の界くんが居た。

体を動かして全体を見通すけど、囲むんじゃなくステージのほとんどに界くんがいる。

これは、”残像拳“を超える”多重残像拳“!

 

『分身したように見せる多重残像拳らしい』

『Yeah!年齢偽ってると言われた方がまだ信じられるぜ!!本当に学生かよ!それにこれ決勝じゃねーの!?』

 

誰もが同じように手を突き出し、”気“を手のひらに生み出している。

これは、やばい!!

 

100%!”黒鞭“バンテージ!!

 

一気に掻き消すように---スマッシュ!!

 

100%の一撃でステージを殴り、衝撃が走ってステージの瓦礫が一斉に周囲に飛び散る。

それらは全ての界くんを貫くけれど、何処にもいない。

となると逃げ場は上空!

すぐに地面を蹴って---っ!?

 

 

「そっちだと思うよな」

「がっ!?」

 

僕は顔面から地面に叩きつけられていた。

予想外の場所から加えられた力の影響で受け身を取れずに声の方向を見れば、僕の片足を掴んだまま土に汚れた姿があった。

 

「その場に潜り込んでたことに気づかなかったな、出久」

「普通は気づけない…って!!」

 

掴まれてる足に体重を乗せ、空いた足で蹴りを放つと、解放される。

後ろに下がる界くんは土の汚れを払いながら軽く腕を回していた。

まだまだ余裕って感じだ。

 

『モグラかよ!あれはありなのか審判!』

 

「ステージ上なら問題ないわ!場外だったならダメだったけどね!」

『センサーを見る限り本人の進言通りその場から動いてなかった。緑谷が地面を殴った瞬間には既に潜ったみたいだな』

『準備万端だな、おい!』

『本人がサポート科から貰って渡してきたんだよ。最初は意味分からなかったがこういうことか』

 

不正を嫌う界くんらしいというか……。最初から戦略として考えてたのか。

流れる鼻血を手の甲で拭きつつ、呼吸を入れる。

 

「本当に強い……流石界くん」

「そういうお前こそ、今まで逃げていた力がちゃんと集中するようになっているな。見た感じ、あの鞭で内部を補強して擬似的に成功させたか?」

「それまでお見通しか……!限定的だけど、100%を使えるからね」

「成程、俺の”界王拳“みたいなもんってことか」

 

わざわざ隠す必要もない。

隠したって彼ならすぐに気づけるから。

”発勁“なら何とかダメージは入るけど、怪しまれる動作をしたらそれが原因だと彼なら看破してくる。

”煙幕“は界くんには使えない。”煙幕“は姿は隠せるけど”気“でバレるし、逆に僕が見えなくなるデメリットがある。

つまり所持する5つの”個性“で勝つしかない。

 

「さて、出久。お前も同じことを考えてるだろ」

「どうだろ。一緒に言ってみる?」

「いいぜ、勝負だ。間違ってたらカツ丼奢れよ」

「なんでカツ丼?というか普通合ってたらじゃ……まぁいいや。そうなると、合ってたら僕に奢ってよ」

「交渉成立だな」

「ちょっと間違えてると思う」

 

普通この場合、界くんから提案してきたんだから間違ってたら、じゃなくて当たってたら、の方が正しいはずなんだけどな。

もしかしてわざと僕に奢ろうとしてる???

…うーん、すごい有り得そう。

 

 

 

 

 

 

 

多分僕がここまで強くなったからでしょ。

 

 

 

 

 

「いや怖いんだが。なんで分かってんだよ」

「あ、口に出てた…」

 

どうやら正解だったみたいだ。

何年界くんの幼馴染やってきたと思うのさ。正直界くんのことは一番解ってるの僕だと思う。

一番長く居たし、誰よりも強い君を見てきたのは僕だ。

だからこそ超えたいとも思ってる。

 

「いいか。じゃ、いくぞ?」

「うん」

 

 

 

 

せーの!

 

 

 

 

 

 

 

 

”全力“でやろ()

 

 

 

 

 

 

「間違えろよッ!」

「なんでさ!?」

「ユーモアが足りないかな、と」

「今必要ないでしょ!?」

「いや、ちょっと今日はツッコミばかりで」

「ああ、普段ボケだもんね……いや、そうじゃなくて」

「あんまり話してると言われるもんな。じゃあ俺から引き出すか」

 

瞬時に意識を切り替えられるのは本当に凄いと思う。

さっきの穏やかな空気が霧散し、両拳を作った界くんが両腰に添え、両足を肩幅まで開いて膝を深く曲げて”気“を溜めていく。

それだけで凄まじい衝撃がやってきたけど、僕は吹き飛ぶことはなかった。

白いオーラが全身に纏わり、一際強く膨れ上がると赤いオーラへと変化し、界くんの体も赤く染まっていた。

 

 

 

”本気“ではない。

僕同様に、長く持たないからだ。僕もまだ”切り札“を切る訳には行かない。あれは知識と試した際に分かったけど、短期決戦向けの”個性“。

今の問題なく引き出せる”全力“でやる。

 

次は僕だと言うように目を向けてくる彼に応えるように、胸もとで両拳を作った僕は、出力を一気に上げていく。

 

 

 

 

 

ワン・フォー・オール・フルカウル。

常時、身体許容上限---75%。

 

 

 

 

 

 

「続き始めるとするか、出久!」

「行くよ、界くん!」

 

 

*1
ベジータ戦のアレ。






毎日投稿したら上がるかと思ったけどランキングは全然上がんねぇ…やっぱ評価値、特に8以上ないと対して高くならないんすねぇ。
お気に入り登録者数とUAアクセス数だけじゃ無理らしい。
ランキング上げてくれてもええんやで…?
実験で投稿してたけどそろそろ気力が完全に燃え尽きそう。ストックも、もうねぇや。
---止まるんじゃねぇぞ…(キボウノハナー)

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

  • 本編のみ
  • その他
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