無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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雄英体育祭⑫:終。

 

 

10倍界王拳!!!!

 

 

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)ォオオオオオオ!!!!

 

 

 

デトロイト・ビヨンドォオオオオオ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

勝利だけを求め、一気に解き放つ---!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かめはめ波ァアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

デュアルクラスタァアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スマァアアアアアアアアッシュ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッ……!!!

 

 

 

チュドォォオオオオオオオン!!!

 

 

 

真っ白な光が空間を、世界を支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光と煙が晴れ、そこに残されたものは―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

『結果は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全員場外だァー!!!!つーかステージが壊れて判定が出来ねえぇ!!』

 

俺たちには、ステージがあまりに狭すぎた。

俺だけ倒れているが、爆豪や出久は立ったままだ。

ただし、あくまでルール上はステージの外に出たら負け。

ラインどころかステージそのものが無くなってしまった。

大穴が空いている。

これでも何とか相殺した方なんだが…。

 

 

それにしても無茶がすぎたか。

あまつさえドーピング切れたし急激な成長に肉体が悲鳴を挙げている。

ついでに吐き気や幻覚と様々な症状が襲ってくる。

割と限界ギリギリらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、また引き分け…!」

「これ、どうなるんだ……?」

「決着つかないよな……?」

「普通こんな戦い学生で起きるとは思わないって…!!」

 

『一度選手は治療のために退場してもらい、審議に入ります!』

 

いつの間にか戻ってきたミッドナイト先生がそう宣言して。

その言葉に安心したのか。

俺はあっさり意識を手放した。

起きたら仙豆食わないとな、と思いつつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで。

30分くらい経過した。

俺は見事動けなくなった結果、ついさっき意識は無事に戻ったのだが包帯ぐるぐる巻きのミイラマンとなりながら”舞空術“で浮いていた。

流石に仙豆はまだ取りに行けない。というのも、荷物の中だ。あればかりは公にするわけにはいかないしなぁ。

それこそ世界を変えてしまう。

相澤先生、ミイラマンと言ってすみませんでした……。

俺も同じです。

ミイラマン2号誕生の瞬間だ。

 

「それではこれより!表彰式に移ります!!さぁメダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!!」

 

「私が!!!」

 

「メダルを持ってk」「我らがヒーロー!!!オールマイトォ!!!!!!」

「」

「ゴメンカブッタ…!!」

 

メダル授与のため、格好良く登場するオールマイトだったが、不幸な事に台詞が被ってしまった。

悲しさに身を震わせるオールマイトに、ミッドナイト先生は手を合わせて謝る。

 

ちなみに爆豪も出久も包帯は巻かれているが軽傷だったりする。

ちくしょう、”気“を扱う以上俺はどう足掻いても回復の恩恵を得られない…!!

ちなみにリカバリーガールにはまた怒られたため、流石に猛反省した。

今の状態だと”個性“も使えないとのこと。なので包帯ぐるぐる巻きだ。

 

痛覚がなかったことに関しては、マンドラゴラっぽいやつを食べた影響だ。

某モンスターを狩るゲームに似たようなやつで、効力は植物のマンドレイクに似ていた。

毒キノコは何度か食ったことがあったから問題ないと分かってたけど、なんというか…受けたことないが麻酔みたいな感じだと思う。

効力切れたら頭痛やら吐き気やら幻覚やら起きたから食べるもんじゃないな。味はちょっと美味かった。

毒キノコも問題ないなら立派な飯だと改めて思ったけど、問題ないのは多分俺の場合は”気“の影響もあるんだと思う。

まぁそこは治ったからどうでもいいのだ。もうどうしようもない時にしかやるつもりはないし。

 

問題は”界王拳“。

しばらく抑えないといけないかもしれない。無理して限界突破し続けると身体に良くない。脳無戦の後みたいな状態になると困るのは俺だし。

とにかく修行で鍛え直そう。

20倍はまだ使えないけど引き上げられるようにはなったからぶっ壊れない程度にコントロールの練習で維持と負荷の軽減。肉体の強化だな。

万全だと限界倍率は15倍くらいまでだろうか。基本的に使っても、やはり10倍までだ。

これ以上怪我して、もうリカバリーしないと言われたら貴重な仙豆を食うしかなくなるしな。

本当に命が掛かった状況にでも陥らない限りは限界の、さらに限界を超える倍率は使わないようにしよう。

体壊れる。

 

そうこう考えてるうちに、3位の発表。

 

「常闇少年、おめでとう!……どうやら。言わなくても分かっているようだね」

「ハイ」

「ならば今言うことはこれだけだ。頑張って”個性“だけでなく地力も鍛えてえていこう」

「御意に」

 

「まぁ彼が異常なんだけどね……」

 

そう言ってオールマイトは常闇にハグして、最後に何か聞こえた気がしたが次に移る。

飯田は家の事情とやらで離脱してしまったため、ここには居ない。

この時点でもう分かると思うが、雄英体育祭において本年が異質な順位になってしまった。

一体誰のせいなんだ…多分俺だ。

すみません、先生方。

 

「小森少女、おめでとう!B組で唯一表彰台に残ったことブラドくんがとても喜んでいたよ」

「あ、ありがとうございます。でもここまで残れたのは……」

「確かに拳王技少年と組んでいたが、彼に頼りきりだったわけじゃないだろう?この短期間でよくここまで”個性“を成長させたね。それは誇るべきことさ!このメダルは君自身が勝ち取ったモノ!ただ課題は見えたと思う。今度からはそこを鍛えていけばさらに成長出来るだろう!」

「はいノコ---!」

 

流石に小森さんにはハグはせず、メダルを首にかけるのと握手程度だった。

オールマイトなら問題ないだろうけど、異性にハグするのは色々問題があるもんな…。

で、ここまで来たら分かるだろうが、本来は俺らのうち誰かが二位になるはずなのだ。

だが欠席となった飯田が居なくなったとなると。

 

「爆豪少年、優勝おめでとう!……と言いたいが、君的には『残念だったね』と言うべきかな? それでも最後に見せた力。あの急激な成長には私も驚かされたものだ!あの力を制御出来るようになれば更なる高みへと行けるだろう!」

「オールマイト。本当の意味で勝ったわけでも優勝したわけじゃねェ……す。まだまだだ。ちゃんとした形で戦えたわけじゃねえし界にも出久にもハンデがあったしな。不完全燃焼だ。今度はちゃんとした形でぶっ飛ばす」

「ふむ…それほど強い意志があるならば何の心配もいらないみたいだね。ならば!この勲章()を受け入れて次に繋げていこう!」

「おう」

 

爆豪にもハグしてメダルを授与するオールマイト。

 

そう、こうなってしまったわけだ。

最終結果。

総合順位で決めるならば俺が一位になってしまうが、流石自由が売り文句な雄英。

まさかの結果になり。

観客のことを考えると正解でもあるかもしれないが、前代未聞だ。

伝説を作ってしまった。

 

「同じく緑谷少年!優勝おめでとう!三回戦目からまた大きく成長したね。多くは語ることは出来ないが、君ならばもっと先へ行けるだろう。君を見ていると、()()()を見ているようだった。それほどの気迫とパワーを感じたよ!だからこそ、今はこれを、()()()君自身が勝ち取ったものだと噛み締めるといい!」

「はい…はいっ……!」

「HAHAHA!優勝者が泣いてちゃ格好がつかないぜ。その泣き虫は治さないとな緑谷少年!」

 

感極まったのかオールマイトにハグされて滝のような涙を流す出久。

まぁ根っからのファンだしな、二人とも。

ところで出久のそれ、やっぱ修行に使えないかな。

 

まあここまで来たら分かるだろう。

まさかの---”全員“優勝だということを。

 

「さて、最後に拳王技少年。優勝おめでとう!その、色々とすごいことにはなっているが……正直、此度の体育祭は君が中心と言っても過言じゃなかった。障害物競走では予想の斜めをいく大逆転。騎馬戦での大活躍。そしてトーナメントでの活躍!左手に怪我を負っていながら棄権することなく緑谷少年や爆豪少年と互角以上に戦い続けた君は間違いなくトップクラスの実力があるだろう。私から見ても、()()()()者としては君は規格外の力だ」

「目指すべき場所はまだ先ですので、まだまだです」

「HAHAHA!ユーモアも大切にしてるようだな!謙遜は悪くないが、度が過ぎるのは良くないぜ」

「いや本当の事なんですけど…。あの、それより聞きたいことがあるんですけど。耳貸してくれません?」

「ん?何かな?」

 

多分”無個性“であることを言っているのだろう。

別に隠さなくてもいいのに。何を言われようと俺の目指すべき場所は変わらない。

それに師匠に比べればまだまだなのだ。

これですらスタートラインに立てていない。

俺の”戦闘力“は現状10倍界王拳を使ってやっと六桁までいった程度だろう。万全で発動したことがないから分からないが、七桁までは行っていない。

億に達してやっとスタートラインに足をちょびっと入れこんだ程度なのだ。やはり発目さんに力を借りることになりそうだ。

っと。

今はそれよりも、聞きたいことはオールマイトの”気“だ。

いや、この人なんか体育祭前より”気“がめちゃくちゃ膨れ上がってて平常時で全力の出久並にあるんだけど覚醒し(バグっ)てる?

そうじゃなくて。

なんで出久からオールマイトの”気“を感じたのか。

不確定だから大きい声で言えないし、だからこそ耳を借りることにしたが、さらに声も潜めておこう。

俺のせいで炎上されても困るし。

 

「”気“についてなんですけど出久の中から感じたんです。考えたんですけど、やっぱりそうとしか思えなくて。前例がないだけで”個性“はまだ不明な点が多い。だからこそ、もしかして出久の”個性“って、貴方の、おーるまいっ--」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごぎゃああ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すまない拳王技少年!加減を間違えてしまった!」

 

 

滝汗を掻きながら物凄い速度で口を塞がれた。

残像が見えたぞ。

なんてことするんだ、殺す気か!!というか今ので意識一瞬飛んだし死ぬかと思った!

こっちとら身体中バキバキなんだぞ!?お陰で今一人だけ”舞空術“で浮いてる異常な状態だし地に足つけられないんだからな!?

いくらオールマイトでも『平和の象徴』と君臨したことに俺は尊敬はしているがファンじゃないから怒るぞ…!!

俺が怒らないのは師匠のみだ…!

 

「と、とにかくこれ以上無理はさせらないからね。皆様を待たせる訳にもいかないし、最後に君に一言!」

 

「もし万全ならば優勝していたのは拳王技少年かもしれない。あれほどの激戦でなお成長を続け、ここに立っているのは君自身の努力の証! 今までよく頑張ってきたね。そしてこれからも頑張っていくのだろう。頑張れよ、未来のヒーロー!」

「ぐ、ぎぎ……」

「ご、ごめんね?マジで!」

 

すまないが話はまた後日、別のところで…!

 

涙目で頷く俺に、オールマイトは本気で申し訳なさそうだった。

わざとじゃないから許すけど、オールマイトの力だと本当に悪化するから勘弁して欲しい。

今は”無個性“の防御力しかないんだ、俺は。

 

 

「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にも()()()立つ可能性はあった!!!」

 

「ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽をのばしている!!」

 

「てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下さい!せーの!!!」

 

「プル-」「プルス-」「plus-」

「おつかれさまでした!!!」「おづがれざまでじだ…!!」

「プルス---」「---ウルトラ」「えっ!?」

 

「そこはプルスウルトラでしょ!オールマイトぉ!!」

「あとミイラの人!!」

「ああいやみんな疲れたかなと思って……」

「ミイラの人…!?」

 

他の皆からブーイングが鳴り響きながら、最後になんだか締まらない感じで雄英体育祭は終わりを迎えた。

余談だが、1年の部だけが長引いたらしく、後に知ることになるのだが歴代一位の視聴率を叩き込んだとか。

多分最後の延長戦が出来ないのは1年だけ長引いたのが大きいのだろう。先輩たちも最後の戦いは見に来ていたと言っていたし。

もしあったら俺は流石に出場出来なかったけどな。俺も流石に無茶だったと猛省してるし。

というかミイラの人って。

まあ今はミイラだから特徴は掴んでるか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動けないため、残った”気“で”舞空術“でふよふよと浮きながら会場からみんなと出ていると、()()()俺にだけ向けられた”気“に気づいてみんなに先に戻るように伝えると、人気の居ない場所へ向かっていく。

間違いない---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ししょ〜っ!!」

 

 

 

「おっ、と。おめえ今はあぶねえぞ?」

 

IQが極端に下がる音と共に俺は師匠に飛び込んだ。

俺の肉体に気づいているため、いつものように受け止められるのではなく三着目の体操着をキャッチされてしまった。

借りてきた猫状態となった俺は渋々浮遊する。

 

「念話されるまで師匠が来てたことに気づきませんでした……」

「仕方がねえさ。オラがわざとそうしてたからな。その方が下手に意識せず集中出来んだろ?」

「まぁ…はい。でも、ごめんなさい。完全な勝利が得られなくて……」

 

思わず俯いてしまう。

慢心があった訳じゃない。

左手が使えたら、はただの負け惜しみだ。

形となった以上、今回の体育祭は引き分けではなく俺の敗北だろう。特に決勝戦。

ルールがなければ悔しいが負けていた。ボロボロだったから、も言い訳に過ぎない。結果こそ全て。

倒れていたのは俺だけだしな。

総合的に勝ってもそれは順位だ。

俺は実力で上に行かなくちゃならない。

まだまだ道は遠い。

”個性“に頼らずヒーローになる。

両親が産んでくれた俺は”無個性“の俺だから。

”気“を極めてもっと強くなって師匠を超える。

俺の”原点(オリジン)“だから。

 

「勝てなかったのは残念だったな。でもオラだって似たような武道大会に出たとき、おめえと同じで勝てなかったぞ?」

「師匠……」

 

そういえば師匠は天下一武道会に何度か出て、初めて出た時は負けたんだったっけ。

うん、そう思ったらこれはこれでいい。

師匠とお揃いだ。

師匠とお揃いならむしろ嬉しい。

雄英体育祭は俺の負けだ!!

 

「それによ、おめえには高め合える存在が出来たじゃねえか!そのお陰で界はさらに強くなった」

「はい。俺も強くなるにはやっぱり戦いの中が一番って改めて知れました。もちろん修行はこれからも地道に続けますけど。ただやっぱり……悔しいなと」

「その気持ちがありゃ問題ねぇさ。だからこそ、もっともっと強くなりてえと思うし自分の”可能性“確かめたくなったろ? おめえはオラに似ちまって”サイヤ人“でもねえのに戦いに喜びを見出して、戦いの中で成長できること、そして自分の限界を超えることが楽しくてたまんねえと思ってる」

「はい…もっと、強くなれる…!そう実感出来ますし。それに壁を越えられることは嬉しいですから。相変わらず俺自身を信じることは出来ないですけど……」

「別に急ぐ必要はねぇよ。ま、オラがおめえの歳の時なんて”界王拳“も使えなかったし、その”戦闘力“ん時だって20倍どころか10倍すら使えなかった。おめえはよくやってる。オラの想像以上に強くなっていってっからな。もしかすると、学校を卒業する時にはオラに並ぶかもしれねぇな!ハハハッ!」

「そ、それは難しいと思いますけど……でも師匠がそう言うなら成長してる、んですよね」

「ああ、間違いねぇ。オラから見ても段々と成長速度も上がってっからな」

「じゃあ…間違いないですね。俺、これからも頑張ります。出久たちのお陰で”気“は高まりましたし、師匠の弟子として名を馳せて見せるので、見ててください…!」

「おう。見守ってんぞ!」

 

そう言って師匠は俺の頭を撫でてくれた。

心地よい感覚に目を閉じて()()()()()()つつ身を委ねて。

ボロボロだったはずの体は()()()()()()()()ような気がした。

 

「界くん!」

「拳王技くん!」

「界---ん?」

「拳王技くん?どないしたん?」

 

背後から声を掛けられ、ハッと振り向いた俺は出久たちがいることに気づいた。

あまりにも油断しすぎた。

まぁいいか。とりあえず。

 

「いや師匠と話を……」

「ししょ…?」

「界くんの師匠!?一体どんな人が……!?」

「何言ってんだお前」

「…は?」

「だってどこにもいないじゃん!はっ!もしかして私と同じ”透明化“とか……!」

 

指摘されて咄嗟に振り返ると、師匠の姿が消えていた。

”気“が無くなったことすら気づかなかった。

でも幻じゃないということはよく知っている。

それどころか、俺の体が本当に回復していて、仙豆を食う必要がないことに驚きつつ俺は地面に足をつけながら空を見上げた。

 

「…ありがとうございます、師匠」

 

”気“も回復してるし、師匠が治してくれたのだろう。

いつまでも見守ってくれてるはずだ。

なら俺は、俺が強くなるために。

この雄英高校で出会い、競い合い、高め合い、更なる高みへと登って見せる。

俺がいつの日か、誰にも負けないくらい強くなった時にはきっと、師匠に近づくはずだと、そう信じて。

 

『そうだ。もっと色んなやつと出会い、戦って、自分を高めてけ、界。おめえはもっともっと強くなれる!頑張れよ!』

 

聞こえてきた声を最後に、今度こそ師匠がどこかに行ったのだと頭で理解した。

その言葉を、脳に刻む。

 

「いつまで立ち止まってんだよマヌケ界」

「行こう、界くん!」

「今行く。って。おい誰がマヌケだ!?」

「てめぇしか居ねぇだろ。クソマヌケ舐めプボロ逆立ち髪野郎」

「お前俺にだけ厳しいよなぁ…つーか増えすぎだろ。意味わからねえよ平常運転め。…ん?てか爆豪。俺のこと”界“って呼んでるな。へー?」

「ケッ、今更かよ。ニヤニヤすんな、うぜぇ。……やっと追いついてきたんだ。そんな幼馴染でライバルを…しんゆーをいつまでも苗字で呼べねぇだろうがクソが」

「急になんだよ、変なこと言いやがって。照れるだろ、というかお前も恥ずかしいのかよ。顔赤くして照れるなよ。からかいづらい」

「んで揶揄う前提で考えてんだァ!?てめぇの思考回路どうなってやがるッ!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてかっちゃん!」

「お?やるか?今から二回戦やってもいいんだぜ?俺の体はもう治ってるからな!!」

「上等だ!ぶっ殺す!!!」

「いやダメだからね!?というか治った? え?治ったって言った!?界くんやっぱり君は人間じゃなかったんじゃ……」

「なんでそうなる!?普通の人間だよ、なんなら何も無い人間だぞ!?というかやっぱりってなんだ!?お前そんなふうに思ってたのか!?」

「何もねぇやつがこんなアホみたいな強さ持ってるわけねえだろーが」

「いくら”気“で防御力を上げてるとはいえ、僕らの全力を受けてもちょっとしたダメージにしかならず、普通に動ける人物を僕は同じ人間とは思えない……!ほぼ自壊ダメージでしょ!」

「喧嘩売ってる? ああいいぞ、久しぶりだよなぁ? 修行つけてやっから覚悟しろよ出久。お前まだまだ荒いところ多いからな!!特にあの速度の制御、酷すぎる。あんなの攻撃してくれと言ってるようなもんだ。だったら鍛えないとな? あ、もちろん”個性“使うなよ。地力を強化しねぇとな。とりあえず両手足に50kgの重りつけさせっからな。俺の連続エネルギー弾避けろよ、心配すんな一日寝込む程度だ。自由に動けるようになったら”界王拳かめはめ波“連発するからな」

「じょ、冗談だよ界くん。そっ、そうだ。僕先に買い物行ってくるね!ほら、打ち上げするために必要だし!!」

「逃げるなァ!!!」

「ちょっ、ここで気弾撃たないでよ!?」

「当たっても痺れるだけだ!」

「また変な能力手に入れてる…!!」

「そーいやババアから頼まれてたもんあったな…」

「光己さんからか?じゃあ行かねぇとな」

「急に落ち着くな。どうなってんだその落差」

「あ、そうだ。今思い出したんだけどもう一人約束した人いるんだけど呼んで大丈夫か?」

「別にいいんじゃねぇの。そいつがいいならな。……透明女か?」

「や、小森さん」

「お前いつか刺されても知らないぞ」

「は? 師匠に鍛えられた俺に一般的な普通の刃物程度が効くわけないだろ。やるなら”個性“由来のものか砲弾やら核爆弾やらレーザーでも撃ち込んでこいよ」

「普通はそんな言葉出てこねぇよ……っ!!」

 

連絡先を交換してるため、小森さんに準備が出来次第迎えに行くというメッセージを送りつつ、ひとまず俺と爆豪は先に逃げた…買い物に行った出久に追いつくために駆け足で駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでステップをするように上機嫌にスカートをはためかせながら歩みを進める一人の小柄な少女が居た。

服装は至って普通。

黒の短めのスカートに涼しそうな白色のオフショルダーと呼ばれる服。それから半透明な黒タイツ着用しているため、普通の人と何ら変わらないだろう。

ただ違うところがあるとすれば、彼女は目を引く容姿をしていること。

超人社会でなければ明らかに目立つ露出した淡い青肌。雪のような腰部にまで伸ばされた綺麗な白い髪が揺れる。

ぱっちりとした金の瞳は光そのものであるかのように綺麗で。

まさしく美少女という言葉がまんま体現したかのよう。

あまりに人間離れした美貌に幼い少女と成熟した少女らしからぬ精神性、その反する二面性を持っていた。

その少女はどこか嬉しそうに笑みを浮かべており、何かを見つけたように足を止めた。

血も出ておらず、なのに息絶えている死体の数々。

普通ならばパニックになったり混乱しかねない状況。

そこに立つ、一人の男性。

 

「君なら彼の力、もっと引き出せるかな。力を貸してくれる?殺し屋さん」

「…依頼か?」

「うん、依頼。詳しくは紙に書いておいたから。そしてターゲットはこの子。”拳王技 界”“くんって言うんだ。かっこいいでしょ?ふふん、とっても強いんだから」

 

そう言って殺し屋、と呼んだ相手に一枚の紙と写真を差し出した。

雄英体育祭は全国で中継されている。当然配信もあり、写真なんて出回っていた。

誰が持っていようと怪しいものではない。

ただ、雄英体育祭ということは写真の人物は大人でもヒーローでもなく。

 

「子供か……」

「出来ない?」

「誰であろうと構わん。詮索もせん。報酬さえ貰えるならばな」

「そう、じゃあ期待してるよ。ああ、紙に書いてる通りヒーロー殺しと合流してヴィラン連合って組織に合流してね。一応、私の協力者だから」

「…分かった」

「それと君の”潜在能力“と”気“を解放してあげる。そうすれば貴方の暗殺拳はもっと強くなるもの」

「必要ない」

「必要だからするんだよ、と」

「……!これは……」

 

一方的に、軽々と押し付けるように触れると殺し屋と呼ばれた者から薄紫色のオーラが溢れる。

比べ物にならないほどの膨大なパワー。解放されただけで周囲の建物が崩れるほどのエネルギー。

秘められている”潜在能力“の高さが窺える。

さながら猿が巨人にでもなったかのような成長力だ。

 

「ふふふ、その力試すといいよ。ただ慣らしはした方がいいかもね?じゃ、頑張ってね」

 

そう言って少女は軽快な足取りで去っていく。

隙だらけに見えて全く隙のない後ろ姿。

仮に後ろから攻撃しようと、今のパワーアップした自分でも勝てるビジョンが何一つ見えない不気味な少女の姿。

見送った殺し屋は”経験“から理解する。

極めた暗殺拳。殺しの技。全部を使ってもまず勝負にすらならない、と。

例えこの世界における最強のヒーロー、オールマイトだろうと()()()()()()()と。

 

視線を落とし、今の自分の力を確かめるように握ったり開いたりを繰り返し、()()()()()()ためオーラを沈ませるとポケットに手を突っ込んでその場から去っていく。

その場に残ったのは()()()()()()()()不気味な死体だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、君は勝てるかな?()()()()に近い”個性“に”気“を目覚めさせた彼、殺し屋『ネロ』に。流石にヒットくんは連れてこれないしまだ勝てないもの。なにより()()()()ちゃんに見つかったらタイムパトローラ呼ばれちゃうし…ただ探すのに時間かかっちゃったんだから、その分期待には応えて欲しいな。私に君の()()()を見せてよね?拳王技界くん」

 

以前よりも高まっている”気“を感じ取りながらその方角を見つめ、そう独りごちた。

その瞳の中に宿る感情は穏やかでありながら悪意を感じさせず、むしろ好意的なもの、と異質なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ〜て全くん。どうしてるかな?うわぁ……」

「……やあ」

「取り繕っても無駄じゃない?何この状況?」

 

真っ暗な部屋の中。

壁や地面には切り傷があったり物が壊れて四散したりしている中、机と椅子、テレビだけは無事だった。

ただ殆どの部屋中が無茶苦茶であり、荒れていたのが見るだけで分かる。

 

「ああ…ふふふ、そっか。全くんも()()が出たんだね、界くんに。彼が原因だものね、雄英体育祭見たよ。弟を取られた気分はどう?」

「思い出させないで欲しいものだね…。そうだな、僕自身の気持ちに気づけたよ。()()()()O()F()A()()()()今の僕なら奪える気がする。それほどに()()()()。残念なことに、今は無理だろうけどね」

「そう、それは残念だね」

「ただ彼の身体は僕たちが理想としていた最高傑作(マスターピース)の完成系に近い…もしかしたらそれ以上だ。彼こそ()()()()()()()()()と言ってもいいかもしれない。まず間違いなく僕の、いやもっと多くの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。その点ではぜひ---」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へえ?

 

 

 

 

 

 

 

その発言の途中で、魔王の口が閉じられた。

ここに他に誰か居たならば、まず立ち上がるどころか息すら出来ないだろう。

かくいう魔王ですら冷や汗が流れるほどの圧力が少女から放たれている。

それどころか隣の部屋にあるカプセルの中に居た近くの脳無が発せられた圧だけで数体()()した。

部屋そのものが地震でも起きたんじゃないかというくらいに大きく揺れ、壁には次々とヒビが入り、少女の身体からは”気“のオーラが発生している。

表情こそ普通の人間ならば見惚れてしまうほどに美しい笑みを浮かべているものの、目が一切笑っていない。

今話題にあった拳王技界という人間が準決勝で引き出した全力、例え彼が万全な状態だろうと圧倒的に届かないほどの力だ。

まさしく()()()()()

 

「---君を敵に回すつもりはないからね。君という友人を手放す方が惜しい。非常に残念でならないが、彼の身体を奪う計画を立てるつもりはないよ」

「ふぅん?」

 

その言葉が届いたのか、興味を無くしたように霧散する。

もし選択を間違えていたならば、この一帯は塵一つ残らなかっただろう。

()()()()()に魔王も欠片一つ残さず消し飛んでいた。

 

「それに彼のお陰で僕たちの研究はさらに進んだからね。そこに関しては感謝してもいい。まぁまさか、僕も()()()()と一緒に居た存在と彼が()()()()だとは体育祭を見るまでは気付かず、思うことすらなかったが」

「ふんふん、今じゃ界くんの戦い方はまるっきり違うからね。こっちが本来の彼なんだよ? だから仕方がないね、気づける人もほぼ居ないんじゃない?それより思ったより早く完成したんだ?」

「ああ、()()()()()()()()()()よ。より強く、ね。だからこそ次は弔に試してもらおうと思っている」

「それは楽しみかな。”気“を使わずどこまで強くなるのか気になるもの。見せてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最上位(ハイエンド)の性能をね。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

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