無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
朝寝起きで見たら何故か日間12位載ってました。ぶっちゃけ書いておいて不安だったけど面白いと思ってくれたのかしら。
UAもお気に入りも急増しててびっくり。俺もだけどみんなランキングで見てますよね。
ありがとうございます
月日というものはあっという間にすぎるものらしい。
ヘドロヴィラン事件に首を突っ込んで、出久が”個性“を発現して、その力が自壊するほどの超パワーととんでもなくて。ワクワクはしたけど、俺も試しに受けてみたら片手を折られてしまったり。
それから八木さんというやけに痩せた男と出会って。
…あの人、なんかどこかで感じた”気“を持ってるんだよな。
と、それはいいとして。
爆豪と訓練したり、バイトしたり、行くたびに綺麗になっていく海浜公園にたまに赴いて八木さんと出久の”個性“について制御方法を考えたり、結局初めて見たときに見つけようとした力の”流れ“を完全に把握して八木さんがイメージを与え、ついに制御に成功したり。
なんか爆豪が知らん間に強くなってて”気“を使う必要があったり。
一部一部のみに発動するせいで”超必殺“のように使う出久に爆豪と一緒にアドバイスすると、フルカウルというスタイルを確立したりと。
本当にもう、色々あった。
まぁ出久の件については、俺の扱う”気“に近いからアドバイス出来ただけで増強系じゃなければ無理だっただろう。
あとはひたすら特訓と休息や勉強、呼ばれた時にバイトなどなどしていたら、あっという間に受験の日を迎えてしまった。
受験の前に、俺はいつもの山を登って小屋に入る。
絶対に合格するという覚悟を伝えて、出て行こうとした時、たった一言だけ声が聞こえた。
「……行ってきます!」
その言葉は、本当にたった一言だ。
アドバイスでもなんでもない。でも、それだけで十分だった。
師匠は間違いなく、俺にこう言ってくれたんだ。
---がんばれ
本来は電車で行く場所なのだが、俺も出久も爆豪もそれぞれ雄英に行く際には走って辿り着いていた。
「一着もーらい!」
「クソがァ!」
「は、はは……素の状態だと追い抜けない…!」
門の前でふう、と軽く息を吐くだけの俺と少し息が乱れている出久と爆豪。
そもそも自宅から雄英まで走ってくるのは俺らだけだと思うけどな。
「しかし結構ギリギリになっちゃったな」
「そうだね。でも後悔はないよ、助けを求める声を無視なんてできないし…」
「もしもの場合も用意してたから平気だろ。とっとと行くぞ」
「かっちゃんは緊張してなさそうだなぁ…うん。行こう!」
「なに仕切ってんだ」
「いやお前が言うな」
と、いつものように会話をして門を越える俺と爆豪。
そして。
「あっ」
「(あ、こいつ)」
「(あーやったな)」
「(強くなってもこれだよ…)」
緊張からか躓いた出久は転びそうになり、このままでは地面とキスをしてしまうだろう。
対して気づいてから哀れみの目を向ける爆豪と同情する俺は出久が地面に激突する姿を目撃---
「へ?」
「---大丈夫?」
することなく、宙に浮いた。
そのことに少し驚きつつ視線を動かせば、女の子が居た。
「私の“個性”!ごめんね。勝手に、でも、転んじゃったら縁起悪いもんね。緊張するよねぇ。お互い、頑張ろうね!」
「う、うんありがとう! お互いがんばろう!」
重力制御系だろうか。
それだけ言って歩き出す女の子を見送りつつ。
「女子と喋っちゃった……!!」
「おいキモイ顔してねぇで行くぞデク!」
「クソナード部分は変わってないよな。早くしろよ」
俺達も会場へと足を進めることにする。
今まで”無個性“ということもあってバカにされたり蔑まされたりすることしかなかったから女子との会話がないのも必然だったわけで…仕方ない部分ではあるんだろうけどな。
『今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!』
説明会場で横の解説を聞きつつボイスヒーロー・プレゼントマイクがハイテンションで受験者に語りかけた。
どうやら彼はプロヒーローらしい。ヒーローにはあまり詳しくないから出久がいると助かるな。
緊張からか、俺と同じく知らないからか受験者からは静寂しか返って来ないというのに続けるのはある意味すごい。
それから説明される。
試験内容は書いている通り10分間の模擬市街地演習。サポートアイテムなどの持ち込みは自由で仮想敵を倒していくポイント制だ。
1P、2P、3Pといった種類があり、ポイントが多ければ多いほど強いらしい。
ただし他者への攻撃は禁止で、減点にもなるとのこと。
「同校同士は協力させねえってことか…」
「見事全員分かれているな」
「ある意味よかったよ…この内容で二人と一緒だとか仮想敵殲滅しそうだし」
「この三人ならやれそうだな。さすがに他の受験生に被害が行くからしないけど」
試験会場は分かれているらしく、指定された箇所は俺も出久も爆豪もそれぞれ別だ。
まぁ下手に俺らが一緒になるとつい競い合う可能性かあるため助かるし、学校側も協力、もしくはそういった競い合いを阻止するためにしたのかもしれない。
一人の受験者が手を挙げる。
「質問よろしいでしょうか!?」
そんな中で、眼鏡をかけた、如何にも優等生的風貌の少年が声を上げる。
「プリントには四種のヴィランが記載されております。誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態! それからそこの三人組! さっきから声が少し大きいぞ!」
「あ?」
「どうどう。同中でな、試験のことで少し話し合っていたんだ。だから声が大きくなったのかもしれない。気を悪くしたならすまない」
「む……そうだったか。いやこちらの方こそ怒鳴るように言ってすまない」
「オーケーオーケー、お便りサンキューな」
喧嘩売りそうな爆豪を抑えて出久に任せると、下手に事が起きないように謝り、向こうからも謝罪されて収まった。
喧嘩にもならなかったからか、司会役の人は受験者からの質問に答える。
「四種目のヴィランは0P、そいつは言わばお邪魔虫。 倒してもいいが、倒しても意味が無い。逃げるのがおすすめだ」
「ありがとうございます!!失礼しました!!」
「俺からは以上! これからはリスナーに、ウチの校訓をプレゼントしよう。かのナポレオン・ボナパルトは言った。真の英雄とは、人生の不幸を乗越えていく者であると、」
---Plus Ultra!!
「それでは、よい受難を!」
説明が終わると、それぞれが指定区域に向かっていく。
俺たちは分かれる前に、言葉を交わす。
「いいか、ぜってー加減すんな。そのうえで俺が勝つ」
「いや合格すればいいと思うけど……でも今までの努力を本番で出すだけだ」
「うん…二人とも絶対合格しようね!」
「当然だ!」
「だな」
長く話す必要はない。
俺たちはその会話を最後に、それぞれ試験会場に向かう。
爆豪の心配なんて必要ないし、出久も既に”個性“をものとしている。
なら他人の心配はせず、目の前の試験に集中するだけでいい。
こんな試験で落ちたら、弟子にしてくれた師匠に申し訳が立たない!
界くんやかっちゃんと分かれた僕は無事にたどり着くと、もう既に集まったみんなが試験前の準備をしている、そのなかにさっき僕を助けてくれた女の子が居た。
そうだ、あの時のお礼を言わなきゃ。
そう思って近づこうとすると、誰かに肩を掴まれた。
「君!その女子は精神統一を図ってるのではないか?」
「えっ、あ……ご、ごめんなさい! さっき助けられて、その時のお礼を言おうと……あれ?」
「む、君は確か説明会に居た三人組の一人! 事情があるのは分かったが、今じゃなくて終わってからにした方がいいだろう」
「そ、そうだよね…ごめん。ありがとう」
三人組とまとめられているのは気になったけど、彼の言葉は尤もかもしれない。
僕は幼馴染二人のお陰で緊張が和らいでるけど、ここは試験なんだ。
彼女も目の前の彼もヒーローになるために、ここに来た。これ以上は邪魔になっちゃうか。
僕が納得を示したからか、互いに頑張ろうとだけ言って彼は離れていき、僕も深呼吸をして頭のスイッチを切り替える。
不思議なほどに落ち着いている。でも忘れるな。
僕は他の人よりも遅れてる。体を鍛えることだけはしてきたけど、”個性“に関してはまだまだひよっこなんだ。
それでもなるんだ。やるんだ。
オールマイトに見初められて、”個性“を受け継いで、かっちゃんや界くんにアドバイスをもらって、特訓に付き合ってもらったのに僕が合格出来なかったら合わせる顔がなくなる。
オールマイトのような憧れのヒーローになるために、今日僕は---
「ハイスタート!!!」
言葉と共に、反射的に駆け出す!
迷わない!OFA---フルカウル!
(5%!!)
10%だと他の受験者の妨害をしてしまう危険性を考えた僕は出力を下げ加速。
誰よりも前に出ることが出来た。
出だしは好調!
『どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ! 走れ走れぇ!賽は投げられてんぞ!? ソッコーで出たリスナーたちに追いつけ!』
『ニンゲン!コロス!』
「口悪っ!?」
どういう趣味の人が作ったのか一瞬気になったけど、ロボの叩きつけに対して5%のまま殴って破壊する。
思ったより脆い! よく見てみると接続部とかは戦闘向けの”個性“じゃない人でも倒せるように設計されてるんだ!
だったら!
(10%!)
指先に集中して!
DELAWARE SMASH!!
次々と仮想敵を倒していき、見かけた範囲で危なそうな人を見つけると横取りにならないよう威力を落としたデラウェアで援護していると、変化が起きた。
ビル群の隙間から姿を現す巨大ロボ。
「あれが言ってた---0P」
一歩歩くごとに瓦礫を生み、辺りに被害を撒き散らすその巨体を見た受験生たちは一目散に逃走していた。
界くんなら嬉々と戦いに行くんだろうけど、ポイントを稼ぎに行った方がよさそうだ。
僕の10%じゃあれは一撃では倒せないし戦う意味は無い。
合格ラインも不明瞭だし、そうと決まればすぐに---
「いったぁ……」
移動しようと巨大ロボに背を向けたとき、誰かの声が聞こえた。
振り返ると巨大ロボの足元に、あの時助けてくれた女の子がいる。
瓦礫に足を挟まれて---
『転んじゃったら、縁起悪いもんね』
瞬間、僕は駆け出した。
「あれはさっきの……君!あれは0Pだぞ!?」
眼鏡をかけた男の人の声が聞こえた気がしたが、関係ない。
目の前の怪我している人を一人救うことをせず、僕は雄英に入るつもりはない!
10%じゃ無理なら、出力を上げる!
無理して出せる許容範囲ギリギリの20%を維持!跳躍して、ビルの壁を蹴ってさらに大きく跳躍。
腕を引き絞り。
そして
OFA---瞬間出力30%!
「SMAAAAAAAASH!!!!!」
右腕だけに集中することで30%の力で胴体に向かって振り抜き、僕は巨大ロボを吹き飛ばす。
まだだ!
20%のフルカウルによって先程より速度が上がっているため、加速しながら巨大ロボの接続部を殴り、行動を起こさせないようにすると脚部を足場にして跳躍。
両手に30%を集中させると腕部分を掴み、人の居ない場所を把握。
被害が出ないよう、巨大ロボを地面に叩きつけた。
また別の会場では。
「死ねえええぇぇッ!」
超火力とも言える爆破が巨大ロボを破壊し、連続で叩き込まれる爆破が完全に破壊し尽くしていた。