無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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打ち上げ

俺は先に爆豪の家に荷物を降ろすと、引子さんや光己さんに挨拶したのちスマホを見ながら迎えに行く。

俺の家は本当に何も無いから向かないのだ。

基本的に俺が暮らしてるのは家じゃないし。すぐ修行するためにも山の方。

掃除はしているし電気も水道もちゃんと通ってはいるけど、わざわざ爆豪の両親や出久の母親を呼ぶのもな。

それにせっかくの打ち上げなのに、俺の両親のことを思い出させて辛い思いさせるかもしれない。

両親の物は当時のまんま掃除だけしてて、写真立てとかあるし。

 

それはそうと俺は師匠のお陰で肉体も”気“も完全回復を果たした。まぁそのせいか帰る前に相澤先生に捕縛布で〆られたが、正論パンチを叩きつけられてしまったので大人しく受け入れた。

過ぎたことはいい。

 

走って数分で辿り着くと、彼女は玄関先で待っていた。

もう着くことをメッセージで伝えたから出てきてくれたのだろう。

今は髪を降ろしてあの椎茸のような綺麗な目が見えなくなっているが、服は私服に着替えたらしい。

アイドルのような可愛らしい服だ。

衣装や頭部につけられたリボンがまた彼女の良さを引き出してるように感じる。

俺は買い物に行ったばかりなので雄英の服だけど。

 

「小森さん、ごめん遅くなった」

「大丈夫ノコ!」

「そっか。じゃあ行こう。それと…それ、私服?」

「うん。変…ノコ?」

 

フリフリとしたスカートを動かすように揺らして、服の外見を見せてくる小森さんは僅かに見えた瞳が不安げだった。

まずい、俺のせいで自信を無くすかも。誤解される前に解かないと。

急に服のことを言われたら気にしない俺と違って、中にはそう感じてしまうだろう。

似合ってないんじゃないか、と。

 

「いや凄く似合ってるなって。服はよく分からないけど小森さんに合ってるというか、可愛らしいと思うよ。アイドルみたいだなと思ったくらいだしな」

「えへへ、ありがタケ!そう言って貰えると嬉しいノコ。いつか服だけじゃなくてちゃんとしたアイドルとしてステージに立ってみせるノコ!」

 

一転して笑顔、だと思う。

口元的に。

声質からしても誤解は解けたようだ。

 

「そっか、お互いに頑張らないとな」

「うん!」

「っし、じゃあ今は英気を養うためにも早く行こうか。親は大丈夫だった?挨拶でもした方がいい?」

「さっき話したから大丈夫!遅くなりすぎないようには言われたけど…。それに挨拶はまだ早いノコ」

「まぁ学生一人だと危ないしな。帰りは責任もって俺が送るから」

 

挨拶に早いも遅いもないとは思ったが、確かに友達を親に紹介するのは気恥しくなるかもしれない。

俺は幼馴染二人の親と俺の親が仲良かったし。

 

「いいの?」

「もちろん。小森さんを一人になんてさせられないしさ。不審者が現れようが絶対に守るから安心してくれ」

「拳王技くんが守ってくれるなら安心ノコね。世界で一番安全なボディーガードだと思うからお言葉に甘えるノコ」

「そこは言い過ぎじゃないかなぁ」

「間違ってないと思うノコよ?」

「うーんまぁ小森さんがそれで安心出来るなら、いいか……。そんじゃぱっぱと行きますか。抱えて大丈夫か?」

「うん」

 

出来るなら急いで戻りたい。

引子さんたちが先に作ると言っていたが、手伝いたいのだ。

そのため許可をもらったので俺は小森さんをお姫様抱っこで抱える。

 

「だ…大丈夫ノコ?」

「ん?全然軽いから問題ないぞ。”気“を使わずとも羽みたいに小森さんは軽いよ」

「ノコッ!?」

「?」

 

俺の力は分かっているはずだが、声を挙げたかと思えば大人しくなって力が強まる感覚だけがあった。

掴まるように言わなくて良さそうだ。早く行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地面を壊さない程度の力で駆け抜け、ギリソニックムーブが起きない速度で数分で辿り着いた俺は小森さんを降ろしてから爆豪家に入っていく。

靴を揃えて置くと案内するようにリビングの方へ歩いていくと。

 

 

「出久、冷蔵庫に醤油入ってるみたいだから持ってきてくれる?」

「うん!」

「勝己それ終わったら皿持ってって!」

「言われんでもわーってらぁ!!」

 

もう作業をしているようだった。

入り口で立っていると運んでいた爆豪が俺に気づいたようで目を向けてきた。

 

「何ボサっとしてんだ。はよ動けや」

「ああごめん。すぐ俺も入る。小森さんは座ってて」

「ううん、私も手伝うノコ」

「いや、でも小森さんお客様みたいなもんだし…」

「手伝うノコ」

「あ、うん」

 

髪を分けて両拳を握って見つめてくる彼女の圧に負け、ひとまず引子さんたちの方へ向かう。

 

「あ、界くん。それに小森さんも早かったね」

「いらっしゃい界くん。出久や爆豪くんから話は聞いてるわ。小森ちゃん…よね?」

「お、お邪魔してますノコ。小森希乃子です」

「出久の母親の緑谷引子です。よろしくね」

「は、はい!よろしくお願いしますノコ!」

 

頭を下げた小森さんは俺の服を掴んだかと思うと、くいくい引っ張ってくる。

何か話したそうなので膝を曲げつつ耳を寄せた。

 

「お姉さんかと思ったけど、本当に緑谷くんのお母さん?爆豪くんのお母さんも…その、美人すぎるノコ…」

「ああ、二人とも母親だよ。というか出久も爆豪も一人っ子だからな」

 

引子さんも光己さんもスタイルが良い。近所でも美人と言われてるらしいし。

見た目だって出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでるって言われてたのは知っている。よく分からないが、見た目がいいということなのだろう。

まあ光己さんに関してはまあまあ強いしな。

引子さんは引子さんでまた別の強さを持っている。

やはり母親というのは強いものなのだろう。

俺の母さんなんて普段は優しい人だけど怒ったらビビるレベルでとんでもなかったしな。

今の俺でも正直逆らえないだろうな……っとまずい。

思い出せばまた弱さが露呈する。

これに関してはしょうがないことではあるんだろうなぁ。

 

「なに?どしたの、二人で内緒話?」

「大した話ではないです」

「そう?それにしても女の子が来るって聞いてたけど随分可愛らしい子ね。勝己の母親の爆豪光己です。やるわね、界くん。こんな可愛らしい彼女がいるなんて。隅におけないねぇ」

「か、かのっ……!?」

「友達ですよ、光己さん。からかわないでください」

 

その手には乗らないぞ、と軽く流しつつ火は満員っぽいので、ひとまず火を使わない作業に参加する。

ひとまず肉でも焼いとくか。

俺が体育祭前に捕ってきた鶏とよく分からん豚みたいなやつ。

味は問題ないけど明らかにこの地球の生物ではない気がするのは多分師匠の世界の生物だからなんだろう。

まぁ何故か生態系が形成されてるしな、あそこ。

どんだけ壊れても”気“で治るし不思議な空間だ。

”気“に覚醒しなきゃ入れないことからそれで作られた世界なんだろうけど、一度戦いの余波で完全にぶっ壊れたのは目にしたことあるが…。

家以外が消滅してたのはびっくりした。生物は殺さないようにしてたのか生きてたみたいだが。

 

それはさておき、”気“の軽いビームで焼く。長年の山暮らしでコントロールはばっちりだ。最高の焼き加減に調整可能。

全ては師匠に美味しいものを食べてもらうために身につけた俺の技術力…!

肉や魚の焼き加減に関してはプロレベルと自称している。料理は凡庸だが。

味付けもぱぱっとこなす。

次は野菜でも盛り付け、魚を”気“で形成した”気の刃“で高速で捌く。

簡単お手軽刺身の完成。

 

「相変わらず手際がいいわねぇ。界くんがいると料理が早くなるもの」

「ほんと、助かるわ」

「遅れは取り戻しますので」

「使い方は明らかに間違ってるけどね……」

「凄いノコ…」

「小森さん、こっち手伝ってくれる?」

「うん!」

「次はどれだゴラァ!!」

「これ頼む。多くなると思うが大丈夫か?」

「は?運び殺すわ」

「僕もそっち手伝うよ!」

「引っ込んでろ!俺一人で十分だわ!」

「勝己!出久くんに手伝ってもらう側でしょうが!」

「うるせえババア!」

「ババア言うな!ごめん出久くん、頼める?」

「はい!」

「おーい爆豪早くしろよーもう五皿あるんだがー?浮かせるこっちの身にもなってくれ」

「てめえは少し加減しろ!!」

 

俺が食べる分が多いからその分俺が大量に作るのは当然だろ。

光己さんや引子さんに負担をかけさせる訳にはいかない。

なんなら分身してやってもいいんだぞ。

とりあえずキノコの方は小森さんに任せて大丈夫そうだ。流石小森さん。

そんじゃ、俺はグラタンでも作るかな。

そうだ、どうせならカツ丼も作らねば。

デザートはどうしようかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

騒がしい---主に爆豪くんが荒れてるけど、全然悪い空気じゃなかった。その逆。

何より拳王技くんの動きがすごいノコ。

火を使わないでも焼くくらいは出来るみたいで、出来ることでぱぱっと作っている。

 

「ごめんなさいね、騒がしくて」

「仲良しなのが伝わってきて…これもこれで素敵だと思うノコ」

「ふふ、これも界くんのお陰なのよ。出久は界くんのお陰で”夢“を諦めずに済んで、私も助けられたから。昔から友達でいてくれて守ってくれて、傍で支えてくれて。出久に”個性“が出来ても変わらず友達で居てくれてね…」

「ノコ?」

「そうそう、勝己も同じさ。勝己の場合は昔からなんでも出来ちゃって恵まれた”個性“も持ってた。周りからもチヤホヤされちまった。だから調子に乗ってたんだろうね。昔から真正面から勝己とぶつかってくれてたのも界くんだけだった…。勝己が親の私から見ても変わったと感じたのは界くんと大喧嘩したあと。今じゃ人を見下したりせず立派にヒーローを目指す、口や態度こそは悪いけれど自慢な息子だと言えるよ」

 

緑谷くんのお母さんの引子さんも爆豪くんのお母さんの光己さんも、忙しなく動いている拳王技くんに強い感謝の気持ちを込めた目で追っていた。

拳王技くんを見ればレンジを使うために離れていて、何故か爆豪くんと言い争いをしてる。

でもそれは喧嘩ってわけじゃなくて、二人なりのコミュニケーションに見えて。

 

「私らも返せる恩は返したいと思ってる。本当は親である私たちが子供に注意して直させなくちゃいけなかった。本人の口から聞いたんだよね」

 

「信じられるかは分からないけど勝己、昔は出久くんや界くんを虐めてたみたいでね。今じゃ深く反省してそんなことはしてないけど、界くんが居なきゃ出久くんに取り返しのつかないことをしていたかもしれない。本当に、感謝してもしきれないよ」

「私も出久がヒーローになれるかって聞いてきたとき、返事が出来なかった。なれるって言ってあげられたらよかったのに…()()()()()からって言ってあげられなかった。ヒーローって危険なことばかりだから、”無個性“の出久に言ってもしものことがあったら怖くて…。でも界くんだけはずっと、ヒーローになれると言ってくれてたみたいなの」

「情けないことに親の私が味方になってあげられなくて、幼馴染の界くんだけが味方になってくれて」

 

意外なことで驚くことばかり。

あんなに仲のいい三人が、爆豪くんが虐めてたということ。あれほどのパワーを持つ緑谷くんが元々”無個性“ということ。

緑谷くんに関しては後天的に目覚めた、のかな。珍しいけど有り得ない話ではないらしいノコ。

それにしても…拳王技くんはここでも中心になって、()()()()()になってたんだ。やっぱり凄い。

他の人の母親に、ここまで言わせるなんて。

今の緑谷くんや爆豪くんの関係性も彼が居たから、みたい。

 

「雄英体育祭は私達も見てたけど界くんは勝己くんや出久より強いでしょ?だから二人は目標にして頑張って追い抜こうとしてるみたいでね。まぁ出久は小さい頃から界くんのこととオールマイトのことばかり話してたからあんまり変わらないんだけど……」

「でもさ、界くんは強いように見えて弱いんだ。今もそこは変わっちゃいないんだよ」

「え?」

 

料理する手が止まって、信じられないと私は二人を見て、拳王技くんを見た。

弱い?昔は弱かったというのは聞いたノコ…。今はあんなに強くて、間違いなくトップクラスの強さを持つ拳王技くんが弱いって…どういうことノコ?

 

「それって……」

「あー…ごめん。詳しくは私らから言う訳にはいかないからさ。ただ小森ちゃん…だっけ?」

「ノコ」

「出来たら勝己や出久くんもそうだけど、界くんとは仲良くしてあげてくれない?」

「ああ見えて小学生の頃も中学生の頃も界くんには全然友達もいなくてね。幼馴染だった勝己くんや出久だけだったみたいで……”無個性“で凄く強いから関わりづらいと思われてたみたいなの。遊ぶ時も三人ばかりで、こうして女の子を連れてくるなんてことなかったのよ」

「拳王技くんが……」

 

少し意外だけど言ってることが少し分かった気がしたノコ。

多分、実力面じゃなくて精神面のこと。

拳王技くんは優しい言葉をかけたり楽しく会話してくれるけど、そもそもそれが出来るのは雄英だから。

本人にその気がなくても”無個性“でありながら”個性“より強いというだけで恐れられてたのかな。

拳王技くんは気を遣ってくれて、とても親切で、誰であろうと本音で真摯に向き合うような優しい人なのに。きっと表面上の、ほんの先しか誰も見なかったから。

私も似たような経験はあるから、ちょっとわかるノコ…。

私は”無個性“じゃないから同じ気持ちにはなれない。でも緑谷くんもだけど、拳王技くんは特に周りから虐められたり悪口言われたり、陰口叩かれたりして。

私も”個性“が()()()だから小さい頃に酷いことを言われたことがある。今だって、その人次第では言ってくる人もいると思う。

でも拳王技くんは、逆に凄く褒めてくれたノコ。いい”個性“だって。ヒーロー向きだって。

なんだかこの二人は、当時爆豪くんや緑谷くんのお母さんだけど拳王技くんのお母さんみたいな人たちでもあるノコね。

 

「ごめんなさい。せっかく遊びに来てくれたのにこんな暗くなること言っちゃって…」

「私たちから出来るのはこうしてお願いすることだけでさ…小森ちゃんが嫌じゃなければ、なんだけど」

 

そう、少し不安げに言っていた。

なら今は。

 

「大丈夫ノコ。二人は友達だし、拳王技くんのこともっと知れて嬉しいノコ。私にとって拳王技くんは()()()()()()()。ファンを大切にするのはアイドルとして基本だから!」

 

そんな二人を安心させるように。

アイドルとしてもヒーローとしても、私は笑顔でそう宣言した。

アイドルは人の笑顔にする仕事でもある。目指すならそれを実践しなきゃ。

すると二人は顔を見合せて。

 

「ありがとうね、小森ちゃん」

「本当にいい子!勝己に何かされたら言ってよ、私からガツンと言っとくわ!」

「界くんのこともお願いね!」

「のこのこ♪」

「それにしてもアイドル目指してるの?」

「将来はアイドルヒーローノコ!」

「ああ、だからそんな口調なんだ? 確かにアイドルってキャラ付け大事だって言うもんねえ」

「あ、これはそれもあるけど……」

「それにしても、もっと知れて嬉しい…ねえ。ふふ、どうなの?もしかして界くんのこと好きになったり?」

「ノコ!?」

「本人は自覚してないけど、なかなか整った容姿してるもんねえ」

「え、ええっとぉ……」

「光己さん。引子さん。そっちはどうです?…って、小森さん大丈夫か!?」

「だ、だだだ大丈夫ノコ!!」

「そ、そうか…?」

 

いつの間にか戻ってきていた拳王技くんに心臓が跳ねるような感覚があって、顔の熱さを隠すように料理に戻る。

魅力的な、素敵な人だとは思ってるけどまだ早いと思うしアイドルとしてもヒーローとしてもまだまだだもん。

私は拳王技くんのことまだまだ知らないから、そういった感情は抱いてないノコ…!

 

 

 

 

…あれ。そういえば、拳王技くんの()()()()()ノコ?忙しくていないとかかな?

話にでも出てないし……もしかしたら海外にいるのかもしれないノコ。

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

俺が爆豪と言い争いをしてる間に何やら小森さんが光己さんや引子さんと仲良くなっていた。

まぁ同性だし俺らと違う何かがあるのだろう。引子さんは父親が海外だし、光己さんも子供は爆豪で爆豪が女の子連れてくるなんてないしな。

正直俺もあんまりイメージ出来ないのだが、知り合いだと拳道さんみたいなタイプの女の子とかだろうか。姉御肌、というべきか。

強い女性じゃなきゃ無理だろうな。

だからこそ子供の幼馴染が連れてきた初めての同性の子供、というわけだ。

深く追求はしないでおこう。

 

「それじゃここは三人の優勝を祝って……はい、界くん!」

「俺ですか!?」

「適任だと思うわ!」

「頑張って界くん!」

「はよしろや!」

「えぇ……?」

「いいと思うノコ!」

「小森さんまで……えーじゃあ……」

 

 

 

一夜限りの打ち上げ、楽しんでくれ。乾杯!

 

 

乾杯!

 

 

 

 

 

何故か俺に振られたが、典型文的な発言をしていよいよ始めることが出来た。

そして。

 

 

 

 

 

 

ムシャムシャ、ガツガツガツガツ、バクバクバクバク、モグモグ―――

 

 

 

 

俺は早速食らいついた。

俺ほどじゃないとはいえ爆豪も出久も次々と料理に手をつけていく。

 

 

「あ゛あ゛っ!?てめ、俺が残してたやつ!」

「むぐむぐ食べるのが遅い」

「いいぜ、そっちがその気ならこっちもやってやらァ!」

「は?人のもんを奪うとは…!」

「そっちからやったんだろうが!」

「ちょっと二人とも落ち着いて---って僕のまで手をつけないでよ!?ああもう、ここでも負けられないなぁ、ほんと!!」

「おまっ、ここでも2対1は卑怯だろ!いい加減にしろ!」

「す、凄いノコ…色々と」

「相変わらず負けず嫌いなんだから。喉詰まらせないにしなよ」

「わーってる」

「はい!」

「俺は大丈夫です」

「三人ともまだまだあるからね。落ち着いて大丈夫よ」

「ありがとうお母さん」

「ありがとうございます」

「っす」

「引子さんや光己さんには三人ともちゃんとしてるノコ…」

 

二人に言われたならば仕方ない。

俺は頭が上がらないので、大人しく従うようにゆっくりと食べ始めた。

うーんしかし美味い。ランチラッシュも美味しいんだけど、プロとはまた別の味だ。

懐かしいって言うのかな。こうやって二人の手料理を食べることも全然なかったからな…基本山暮らしだから自足自給だし金稼げるようになってからはバイト代にしか手をつけてないから。

ちゃんと昔に使った分も補充したし。

 

お、これポットパイかな。

俺作った記憶ないし、引子さんや光己さんが作ってた記憶もない。

ということは…。

 

「これ小森さん?」

「あ、うん。口に合うか分からないけど…」

「もぐ……」

 

迷いなく口をつけた。

普通に熱い!ポットパイだからそりゃそうだ!

 

「ど、どうノコ?」

「熱いけど凄く美味い。キノコがたっぷり入ってるし焼き加減も絶妙。それにキノコだけじゃなく味付けもしっかりしてて他の具材も活かせてる。ホワイトソースもいい匙加減だな。小森さんが作ったのって他にもある?食べたくなったからあるなら教えて欲しい」

「よかったノコ…えっと、他には---」

 

安心したように笑顔を浮かべた彼女は次々と教えてくれて、俺が採ってきたキノコもあれば市販のものもあって、キノコ料理以外も作ってたみたいで色々と咀嚼した。

全部美味しかったのでその度に感想を伝えたが、彼女も料理に慣れているのだろう。

感想伝えた方が作った本人も安心するだろうし嬉しいだろうからな。

っておい馬鹿野郎。

他のは譲ってやっただろ。滅多に食べられない小森さんのキノコ料理は俺のもんだぞ。お前になんてやるか、と爆豪の箸を”気“で妨害したら戦争が始まった。

ちなみに勝さんは遅れてやってきて、料理をそっちのけに組み合っていた俺と爆豪を見て困惑していた。

その後は譲り合って大人しく全員で食べた。

いい運動になったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹が膨れたらちょっとしたゲームで遊び、テレビゲームではまたしても俺と爆豪が戦争したり、雄英生だけで他が順位争いしてる中、ババ抜きで10戦して10戦とも()()()ババだけ残るというこいつら予知能力持ってんのか?と思い出すレベルで最下位を取った俺が自分の弱さに絶望したり、パオズ山産のキノコやこの世界にもある食用以外の危険なキノコ以外を小森さんに見せたりと色々あったが明日は振替休日とはいえ時間も時間だ。

解散となったため、俺は小森さんを送る。

 

「ごめん、騒がしくしたな」

「ううん、楽しかったノコ。私の知らないキノコも見れたし、料理だって拳王技くんが作ったものも、引子さんや光己さんのも美味しかった。緑谷くんや爆豪くんのことも人柄が見てきたし、何より拳王技くんのことがたくさん知れたノコ!」

 

普段と変わらない状態になってしまったから心配してたけど、全然問題ないというように小森さんが言ってくれた。

本当に優しい子だ。友達想いなんだろうな。

でも俺は自分のこと話してないはずだが…?ああ、アレか。見てて知ったってことか。

雄英の時とあんまり変わらないと思うけどな。取り繕う必要性がないし。

 

「拳王技くんって料理上手ノコね」

「山で採れるものならだいたいはね。流石にデザートとかスイーツはそこまでだし、大したもんは作れないよ」

「それでも十分ノコ!」

「そういう小森さんこそ美味しかったよ。正直また食べたいと思ったし、あれならいくらでも食えそうだ」

 

思い返すように目を閉じて味を思い出す。

ご飯はよく食べてきたから味にうるさいってわけではないが、本当に美味しいかどうかは判別つく。

小森さんのは美味しいに分類されていた。

一番はやはりキノコ料理だ。

キノコのことをよく知る彼女だからこそ、より旨味を出せたのだろう。

俺もまだまだだ。キノコについては結構詳しいと思ってたんだけどな。

肉は肉だろ。魚は魚だ。

野菜は人参がいいな。とっても美味しい。あと英語が師匠のもうひとつの名前みたいでとても気に入った。

ちなみに後者が9.9割。

 

「の、のこ……」

「あ、ごめん。料理の味思い出してた。何か喋ってた?」

 

いけないいけない。

思い馳せてる場合ではなかった。

彼女の護衛兼、喋り相手だ。

 

「う、ううん」

「それならよかった。出久はまあ、女の子に慣れてないからぎごちなさはあったけど爆豪も出久も楽しそうだったし」

「うーんそこはあんまり分からなかったノコ…」

「なんか爆豪がごめん」

「気にしてないノコ。面白い人たち!」

「はは、出久はまだしも爆豪が面白いとはなかなか聞かないなぁ」

 

何気に俺ら三人、全く友達が居なかったメンバーだからな。

出久と俺は”無個性“で爆豪は態度的に。

特に俺と出久は全然だ。

俺は恐れられてたしな、ソフトボール投げで燃やしたのが原因か…?それとも身体能力を発揮したのが…?

そんな筋肉ムキムキってわけじゃないから見た目は普通だろうし。

理想は師匠みたいな体になりたかったが、体質は仕方がない。

別に力が弱いってわけじゃないし見た目に出にくいだけ。母が産んでくれた体に文句のつけようなんて何一つないだろう。

苗字は思うところはあるけど、それはご先祖さまだし。

何を思って拳王技にしたのだろう。

不思議。

 

「今日は不思議なことばかり。まるで不思議の国に迷い込んだような、メルヘンな一日で、夢なんじゃないかって思うノコ」

「それはまた、ロマンチックだな。でも間違いなく現実だよ。そしてこれからも、夢のような日々は続いていくと思う。なんたって俺たちはヒーロー科だぜ?」

「それもそうノコね。でも…とっても濃厚で濃密な時間。これが1日の出来事なんて信じられないかも」

 

それはそうだ、と納得してしまう。

雄英体育祭。

色んなことがあった。

小森さんと出会って。発目さんと出会って。話しが合いまくって。轟家の事情を知って。轟に俺の両親のこと話したら何故か曇って。体育祭前とは顔つきが変わった心繰くんを見たり。切島が覚醒し(バグった)り。麗日さんの”挑戦“。葉隠さんの悔しがる姿を見て。エンデヴァーぶん殴って。轟が過去を振り切って。何故かまた曇って。でも晴れやかで。覚醒し(バグっ)た出久と戦って。成長して。俺もまた成長して。出久からオールマイトや複数の”気“を感じて。

そんで決勝戦。バグ組二人と戦い、何故か二人がさらにパワーアップして。

……いや濃すぎるな? これ絶対1日じゃないだろ。しかも1日の半分くらいの出来事だぞ、これ。

おかしい、絶対おかしいと思う。

1週間くらい時間飛んでないか?

 

そう思って考えながら歩いていると、ふと小森さんが前に出て走り出したかと思えば止まって振り向いてきた。

随分と夜は老けてきた。まだ深夜帯ではないがいくら5月とはいえ十分すぎるほどに暗い時間帯だ。

 

「1日。たったの1日。出会ってばかりでそんなに経ってないのに、不思議と何日も何ヶ月も前から話してたかのように思えるノコ」

「そうだな、あまりに濃い1日だった」

「うん。私も他の人も短時間で凄く成長出来た。それはきっと、拳王技くんのお陰」

「いや、それはみんなの力だと思う。俺はただ自分がやりたいようにして戦いたいから戦っただけだしな」

 

俺は特別なことは何一つしていない。

やったのは全力で取り組み、”本気“でやっただけだ。

強くなったのはみんなの努力の証だろう。

精神面でも肉体面でも”個性“面でも。

何もしてないやつが強くなれるはずもない。例え先天的に努力する必要がないくらい強くてもいつかは必ず必要になる。

 

「例えそうだったとしても、私は違うと思うノコ。それに私にとっては特別な1日でもあるノコよ?」

「小森さんにとって…特別?」

「生まれて初めてのファン。自分が成長出来たって実感を得られた1日。新しい友達。私もまた”本気“で”挑戦“したいと思った日。これが特別じゃないなら他に何があるノコ?」

「それは……確かに、他にはないかも」

 

彼女にとっては、本当にそんな1日なのだろう。

俺にとっても自分が大きく成長した日だ。

師匠にはまだまだ及ばないが、確実に一歩ずつ歩めている。

 

「だから今日は特別な日。この日のことを私はきっといつまでも忘れないノコ」

 

まるで宝物を抱きかえるように、目を閉じて両手を胸の前で握りしめていた。

心の中に、仕舞い込むように。

そうして目を開けて。

 

「きっかけはなんてことのないものでも拳王技くんと会えたから体験出来た。今日出会って、1日でたくさん拳王技くんのことを知れた。知っていく度に、もっと知りたいと思えたノコ。そこに時間なんて、日付なんて、そういったものは関係なくて、少ないならこれから作っていきたい。と思ってるノコ。

夢のようで幻想的で…でも現実。今日だけで終わらないのは分かってるけど、だからこそどうしても拳王技くんに伝えたいことがあって」

 

 

 

 

 

 

ありがとう。あの時、偶然でも私に話しかけてくれて。

これからも拳王技くんのことたくさん知って、たくさん話したい。だからこれからも私と仲良くして欲しいノコ!

 

両手を後ろで組んで微笑みながら告げてきた。

まるで、はにかむように。

そんな彼女に月光が射し込む。

世界が彼女を照らすように。

狙ったわけじゃない。

偶然。

だとしてもその姿は彼女の服や表情、動き。容姿。そのどれもが相まって、本当にアイドルのようだ。

スポットライトのように月光に照らされた彼女はこれまでで見たことがないくらい素敵な笑顔だと感じさせられる。

もしかしたら自然や人工物、それら世界を味方にする。それこそアイドルの力なのかもしれない。

そう考えるなら彼女はきっと、アイドルで。ヒーローになれるだろう。

それでも、どんなことがあろうと俺だけはずっと応援するって気持ちは一切変わらない。

ただ残念ながら俺はアイドルとかその辺に詳しくはない。今はいないがそういった道の人を知っているだけ。

いや、別に死んだわけじゃなくてアメリカにいるだけだが。連絡先はあるし。

 

でも夢を”本気“で追うというのは簡単そうに見えてとても難しいものだ。

彼女だけじゃなく、他のみんなも。当然俺も。

ただそれでも、なりたいものがあるからそこへ向かっていく。

 

そのための仲間…か。

師匠にも大切な仲間が居た。

俺は一度全部を喪ったから、もう無くしたくはないと思う。だからといって関係性を生み出したくないわけじゃない。

じゃなきゃ友達を大切にするなんて思考にはならず、作らないようにするだろう。

一度決めたことは変わらない。

俺は守りたいから強くなろうとした。超えたいから強くなろうとした。

これからもそれは、続けていく。

だから俺の返事は、一つ。

 

 

 

 

もちろん。俺は小森さんの初めてのファンだもんな。

 

 

ただその一言で、十分なんだろう。

傍で応援するって言ったからな。

 

 

 

「えへへ……なんだか恥ずかしくなってきたノコ。まるで告白みたいで…」

「告白……信仰?」

「茨ちゃんみたいなこと言ってるけど、違うノコ。やっぱり拳王技くんは鈍感ノコ」

「?」

 

何か間違えたか、と本気で悩む。

違うなら別の意味を考えて、心の内を明かすことだろう。脳内辞書を引けばそうだ。

仲良くして欲しいってことなら別に照れる要素もないんじゃ?

 

「でも、もしそうなるなら私からじゃなくて拳王技くんからがいいな、なんて……あっ。わ、忘れて欲しいノコ。引子さんや光己さんの言葉が残ってて!他意は特になくて---」

「? ああ、そうか。小森さん」

「へっ…!?」

 

近づいた俺は彼女の両肩をそっと掴む。

何故か目を泳がせたり顔を赤くしたりと慌てふためく姿があるが、任せて欲しい。

 

完全に理解した。

これでも俺は爆豪のお陰で勉強は捗ったからな。師匠の言葉で勉強もちゃんとしたし雄英の筆記も文句なしと言われるくらいに合格するほどの頭脳はある。

ホイポイカプセルとか師匠の世界の科学力に関してもある程度理解出来る頭もあるし。

つまり彼女はこうして欲しいのだろう---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も仲良くしたいと思ってる。だから俺の方こそ仲良くしてくれ」

 

そう、こういうことに違いない。

内心で自信満々のドヤ顔をしている俺が居た。

俺の頭脳を持ってすればこの程度たやs---

 

「…………」

「…………」

 

…あれ?

 

「やっぱり鈍感ノコ」

「えっ」

 

視線を感じたかと思えば、小森さんはそのまま走っていく。

距離はそんなに離れていない。

見ればもう彼女の家だった。

どうやらたどり着いていたらしい。

しかし間違えたのか…? 客観的に考えればこういう意味だと思うんだけど。

 

「だけど私の気持ちも同じだから、仲良くはするノコ。これからもたくさん、からかわせてね!それと私以外にファンになるのは絶対ダメノコ!」

「分かった。小森さんがそう言うなら小森さんだけにするよ。ただ揶揄うのは勘弁して欲しいかなぁ…」

「んー…素直にそう言ってくれたから許すノコ」

「じゃあ…」

「でもだめ。女の子の心を誑かしたお仕置き!またね!ノコ!」

「たぶ…?あ、うん。また!」

 

最後の最後で意味は分からなかったが、俺が悪いらしい。

騙したつもりはないのだが。

仕方がない。

大人しく受け入れよう。

ただ俺はどちらかというとボケだと思うんだけどなぁ。

また爆豪でツッコミした分を解消しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

「いっちょやろうぜ、エンデヴァー」

 

俺はNo.2と戦うことになった。

 

参考程度に。本編のみかその他(日常、修行、ヒロインとの話、オリジナル編など色々)ありか 後者はDB要素や他のヒーローや他の生徒など多くのキャラとの関わりが増えると思われ

  • 本編のみ
  • その他
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