無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
待たせたな!(待ってない)
私が帰ってきた…!
なお名前は決めれなかった模様。ちょっと参考程度にアンケしていいっすか、自分的には1番がいいかなぁと思ってはいるんですが。
ドラゴンボール要素入れたくて『龍』って入れたくなってしまう…。
あと吹っ切れたのとワイルズしてる間に念の為世界観とインフレの説明が出来るようにも設定は練ってたのでドラゴンボールらしくしていきます。
調べたらヒロアカとドラゴンボールって案外ないしほぼ解決してないのね…まぁヒロアカの二次創作自体があまり完結してるイメージないんですけど。そもそもDBがインフレの塊すぎて二次創作じゃ扱いづらい。
そのうえヒロアカはだいたいUSJ〜ヒーロー殺しだよね、気持ちはすげぇわかったけど2人の英雄編までは一応プロットあるから何とかなりそう。
地球さんはドラゴンボール使えないので頑張ってどうぞ。
それより!!小森さんめちゃすこなんだが!!メカクレの良さを知ってしまった…!!
まぁ今回出ないけど同じ声優さんは出ます()
事の発端は轟からのメッセージだった。
交換した覚えはないのだが、上鳴くんから聞いたらしい。
母親の見舞いについてきて欲しいと言われ、家の場所を聞いて轟家に着いた。
流石というべきか、凄く大きい家だ。
No.2ともなれば相応の家を建てるべきなのだろう。
”気“の探知をすると、轟の他にエンデヴァーともう一人いるみたいだが……家族のうちの誰かだろうか。
とりあえずインタホーン。
「はーい……あら?」
家から出てきたのは赤が入り混じった白髪と眼鏡が特徴的な女性だ。
俺や轟より大人っぽいし姉だろうか。
母親は入院してるみたいだしな。
「突然ごめんなさい。俺は---」
「焦凍が言ってたお友達の拳王技界くんね!本当に焦凍に友達が出来たなんて…! 特に拳王技くんは雄英体育祭で目立ってたから強く印象に残ってたの!それに昨日から貴方のことたくさん話してくれて---」
「あ、は、はい……」
いつの間に俺は轟の友達になっていたんだ…。
ま、まぁ友達の定義ってようわからんし友達なんだろう。一緒に戦った仲だしな、じゃあ友達だ。
解決。
にしても雄英体育祭昨日終わったばっかなはずなんだけど。
もうそんな話題になってるのか。
流石雄英だな…。ここに来るのもダッシュしてきたから誰かと会った訳じゃないし。
「あ、私ったら自己紹介もせずごめんなさい。焦凍の姉の冬美です。いつも焦凍がお世話になってます」
「これはご丁寧に……拳王技界です。あっ、これ菓子折りです」
「まあ……お気遣いありがとう」
金銭面的に問題ないであろうエンデヴァーの家族に必要なのかどうかは微妙なところだが、常識的に考えて一応持ってきたのを渡す。
「そうだわ。ぜひ入って入って!」
「あ、い、いえここで大丈夫です。たぶん、すぐ出るので」
「そ、そう…?じゃあ焦凍呼んでくるからちょっと待っててね」
家の中に入っていくのを見届け、息を吐く。
他人の家族と会うことなんてないからやりづらい。
しかし、気になるのが一つ。
離れた箇所にある”気“だ。やけに弱ってるというか、無くなりかけてるわけじゃないから大怪我とかそう言った類ではないはず。なってたらいくら情報に疎い俺でも知るくらいの噂になってるだろうし。
というかまず間違いなく出久が俺に言ってくるだろう。まぁ保須市の方で事件があって飯田が心配ではあるが…。
ヒーロー殺し、だっけ。
今はいいとして、エンデヴァーの場合は恐らく精神的。
思ったよりもやられてないか。
正直ないとは思うけどヒーロー辞めるとか言われたら困るんだが。
あれでも事件解決率はオールマイト以上だ。俺だけに影響があるなら何でもいいが、市民にまで影響を及ぼすのは望ましくない。
といっても俺にやれることはないだろうしな。
「悪ぃ、拳王技。遅くなった」
「いいよ。で?」
「姉さん。お母さんのところに行ってくる」
「え!?お母さんのところに!?急にどうして……」
「前に進むために…ヒーローを目指すには必要なことだから」
早く行きたいのか、それを最後に引き戸を閉めていた。
閉める前に見えたのは冬美さんの色んな感情が混ざりあった表情で。
なんだこの闇深い家。
「頼んでおいてなんだが……用事とかなかったか?」
「修行くらいだ、気にすんな。まぁ俺が居たって何が出来るか分からないが一人だと心細いんだろ」
「…ああ。情けない話だが」
「……そうは思わないよ、俺は。家族と話せるなら話せる時に話さなくちゃな」
「…悪い」
自分のせいだと思ってるみたいだし、会うのが怖いってのもあるんだろう。
それが俺に出来ることなら付き合うだけだ。
あといちいち曇るのやめてくれ。俺もなんかテンション下がるだろ。
「それよりエンデヴァーの様子おかしくなかったか?」
「? いや…帰ってからあいつの顔は一度も見てない。姉さんが声を掛けても反応が無くて心配してたのは知っているが……そういや酷い顔色だったとは言ってたな」
「…そうか」
「拳王技?」
「気にすんな。それよりもついて行くことはするが、病室の前までだ。あとはお前がやらなくちゃ意味がねえ」
「ああ、分かってる」
病院へと向かう中、左手はもう大丈夫なのかと聞かれたが全部完治してることを伝えたら珍しく驚愕する表情が見れたり何故か好物を聞かれたから基本全般と答えたり普段何してるのか、趣味とか---待て。そもそもなんでそんなこと聞いてくるんだこいつ?
「……これ、楽しいか?」
「?」
「俺の話ばっかだろ」
「俺は緑谷や爆豪のように拳王技のことを知らねえ…。俺が強くなるには一番強い奴を知るべきだと思ってな」
「確かにクラスの中では客観的に見てもトップクラスだとは思うが…一理ある……か?」
「俺はお前のことをもっと知りたい。だから教えて欲しいんだ、拳王技の好きなもん嫌いなもん。なんだっていい。友達として、クラスメイトとして、深く知ることが出来たらもっと仲良くなれるだろうし緑谷にもお前にも俺は感謝してもしきれないもんが---」
「わ、わかった。もういいから」
「そうか?」
なにかよく分からないが悪寒を感じた。
これ以上こいつに発言させたらやばい気がする。
そんな予感がする…!
師匠、こんな不思議な経験もあるんですね……。
どうせ辿り着くまで暇だし、俺は轟の喋り相手になっていた。
よくこいつ質問途切れないな……。
俺のことを知ってどうするんだよ。修行について聞くなら分かるんだけどなぁ。
それから病院に辿り着いた俺はひたすら轟の傍で控えるだけだった。
病院の受付の人も驚いていたし、来るとは思われてなかったのだろう。
まぁ10年くらい会ってないんだっけ。そりゃそうなるか……。
その頃だったらまだ俺にも家族が居た時くらいかな…。
「あとは頑張れよ」
「ああ。…ありがとうな。お陰で勇気を貰えた」
「何もしてないけどな」
謙遜してると思われたのだろうか。
ふ、とうっすらと笑った轟は緊張をしてないように入っていく。
どうやら座ってるみたいで、一瞬だけ母親らしき人が見えたが、こっから先は野暮だろうと俺は意識をシャットダウンして瞑想することにした。
どれくらい経っただろうか。
体感数時間だ。
脳裏で師匠と戦ったが、師匠に指先ひとつで捌かれる未来しか見えなかった。なんなら気合砲一発で動けないレベルでダウンした。
ダメだ、強すぎる。20倍界王拳でもビクともしない。
本気の師匠を見た事があるからこそ、余計に分かってしまう。
これでまだ超サイヤ人や超サイヤ人2やら超サイヤ人3やら色々とあるんだから今の俺の”戦闘力“じゃ足元にすら及ばないか。
超サイヤ人の師匠を想定したら瞬殺されたし。
やはり素で億を超えなくちゃいけない。そこから”界王拳“での強化。それが師匠に近づける方法なのだろう。
あと20倍以上となると引き出せるのだろうか。あの感覚を思い出す。
多分、今の俺はコントロールで精一杯だ。
かめはめ波を撃てないだろう。今の肉体をより強くすれば体が持つから撃てるだろうけど…既に重りは100kgを超えてしまっている。
これ以上のものを用意することは俺には出来ない。
”気“のコントロールをこれ以上高くしたって、恐らく20倍が限界。体が持たない。仮に30倍を可能としても、数秒で限界を迎えてしまうだろう。
むしろ子供の体で無理して20倍まで引き上げられる時点で異質なんだと思う。
これ以上倍率を増やすなら俺の肉体が成長しない限り無理だろう。
この辺りは実はゆっくりと別の修行をしている。夏休みが終わる頃くらいにはその修行も終えて成果を出せる…想定だ。
しかし20倍を常時発動を可能にすることは出来るはず。
俺のコントロール技術ならば、何とかなると思う。
ただそのために肉体を強化しようにも、残念なことに重りは既に余裕すぎて意味を成してないのだ。
これ以上強くなるにはどうすっかなぁ…とスマホを開く。
発目さんのメッセージ。
彼女は振替だというのにサポートアイテムを作ってるらしい。
『既に予定があるなら仕方がありませんね。明日にでも来てください!仰ってた重りはまだ出来てませんが、色々と拳王技さんで試したいことがあるので是非!!!!』と来ているが、やっぱり俺実験台と思われてないか。
まぁ確かに俺は自分でも他よか頑丈だと思うし、サポートアイテムは興味がある。
だからなんでもいいんだけど…。
扉が開く音が響く。
顔を挙げると、轟が真っ直ぐに俺を見ていた。
その顔は晴れやかなもので、完全に憑き物が取れたかのよう。
どうやら解決出来たらしいな。
なら俺の役目はもうおわr
「お母さんが拳王技と話したいらしい」
「…へっ?」
間抜け面を晒している自覚はあった。
ま、マジでか…もしかしてエンデヴァー殴ったのが原因か!?それとも訓練で轟殴ったのが原因か!?
トーナメントは出久が原因だろうし俺は悪くなくないか…!?
「わかった」
とにかく呼ばれたものは仕方がない。
大人しく頷くと、轟が開けてくれたのでそのまま中に入る。
病院に長らくいた影響か、その人はどこか氷のような印象を抱かせる。
ただ冷たいというわけではなく、どちらかと脆さを感じてしまうような女性だった。
容姿はさっき会った冬美さんに似ている。やはり家族は似るものなのだろう。
あと目が引くものが、ひとつ。
あれは……花?
植物は食えないからあまり詳しくない。
なんの花だろうか。見た感じ新しいが。
「貴方が…拳王技界くん?」
「はい、轟のクラスメイトで友達やらせてもらってます。拳王技界です」
「焦凍の母親の冷です。ごめんなさい。どうしても、一度会ってみたくて」
「…俺にですか? 出久、体育祭で戦った人なら分かるんですけど」
そう、俺は何もしてない。
なぜ俺に会いたいと思ったのか。
「その人にも感謝はしてるわ。たださっき話を聞いて…焦凍が貴方にも救われたと言っていたの。拳王技くん自身も苦しい思いをした…というのも知っているわ。”無個性“であること、”両親“を喪ったこと…」
「すまん…口が滑って話しちまって」
「それはいいよ。事情説明するなら仕方がないことだ。それに俺もお前の事情を知ったしお互い様だろ。それより俺は何もしてません。ただ轟の”本気“が見たかっただけですから。結局俺じゃなく、出させたのは出久ですし」
俺の言葉が力になったという意味かもしれない。
ただ結果としては何もしてないのは違いないのだ。
「言ってた通りの人ね」
「ああ…拳王技はこういうやつなんだ」
「待ってください。轟、お前何話した???」
くす、と笑う冷さん。
俺は理解が及ぼすはてなマークを頭上に浮かべていた。
「私からも謝罪させてください。左手を怪我して影響があったと聞きました。ごめんなさい、私たちの事情に貴方を巻き込んでしまって……」
「いえ。その件に関しては俺が勝手ながらエンデヴァーぶん殴っただけなんで。気にしないで大丈夫です。むしろごめんなさい、勝手にそちらの家庭に足を突っ込んでしまったので」
No.2に喧嘩を売るような行動は普通はしないと我ながら思うが、確かに左手が無事だったなら優勝は出来ただろう。
あくまで可能性の話だが、まず準決勝で引き分けになることもなかったと思う。
でもそれは可能性の話。過ぎたことはどうしようもない。
既に数粒他人に使ったことがあるせいであまり使いたくないが、仙豆食えば勝つことだけならできたしな。
そういやあと何粒だっけ。三粒くらいだっけ…後でパオズ山に戻って師匠のお爺さんの家に置いてあるから見とかないとな。
四星球もちゃんとあるか確認しとかなきゃ。”気“に覚醒しなきゃ入れないから問題ないと思うけど、もしあれが流出して7つ集められたら呪文まで知られてたらどんな恐ろしいことが起きるか。
あれの防衛は俺が師匠に与えられた使命のひとつでもあるんだ、勝手にそう思ってるだけだけど。
「…私にもそんなことが。拳王技くんのような強さがあれば、また違った形になったんでしょうね。私もちゃんとあの人に向き合っていれば、
「…お母さん」
窓の方を、どこかを見る冷さんは後悔してるようだった。
殴っても止まるようなタマでは無いと思うけど、冷静になって変わってたのかもしれない。
否定はできないことだ。
会って数分だから分からないが、冷さんはあまり主体的な性格をしてるようには見えないしな。
多分エンデヴァーの妻ということから相応な地位の人だろうし…。
「俺の両親は…互いに仲良かったし、俺のことを愛してくれてました。喧嘩なんて全然しなかった。でも、今の俺は両親と過ごすことは二度と出来ない。どれだけ望んでも、俺の両親は帰ってくることはない…」
俺はこの人たちとは違う。
”無個性“であることに心を痛める両親。それでも愛してくれていた両親。ちゃんと
真逆と言ってもいい。
エンデヴァーも家族を愛してるのだろう。ただ拗れまくってるだけで。
でも俺の場合は、あっさりと全部を失ってしまった。
俺が強ければあったはずの日常。家族。
「だからこそ、それは”過去“なんです。いつまでそこに居たって、人は前には進めない。どれだけ辛くても。どれだけ苦しくても。どれだけ死にたくても。どれだけ自分が赦せなくても。どれだけ取り返しのつかないことがあっても。どれだけ嘆いたって生きている限り人は前に進むしかありません。前に進むしか人は出来てません。時間を戻したり出来るのなんて、それこそ神---
「時計の針もぐるっと一周して、元に戻ったように見えても実際には巻き戻ってるわけじゃない。”時間“は常に未来へと進みます。たとえ元に戻ったように見えていても、着実に新たな”未来“に向かう。人間だって、同じじゃないでしょうか。俺たち人間が立ち止まって残り続けるもんなんて、停滞し続ける
”過去“を背負って前に進む。
そうすれば”今“と”未来“は変化させることが出来ると思います。
「貴女がやったことはそのまんま残る。エンデヴァーがやったことは未来永劫残り続ける。なら人に出来ることなんて、きっと---それを常に抱えて進むだけですから。今度はもう、繰り返さないように。今度はもう、悲劇を起こさないために。明るい未来へと進むために。一歩ずつ、小さな一歩でも。少なくとも轟は---」
---貴女に会いに来た。
それは間違いなく”未来“に進むための”変化“を起こす一歩だと、俺は思いますけどね。
そう、俺は締めくくった。
あくまで経験則だ。
俺は前に進んだ。
どういう経緯であれ、生きようと足掻いて進んだから生きることが出来た。師匠に出逢えた。
そうして雄英へと入り、雄英体育祭で優勝することが出来た。
あの時止まっていたら、この未来は既にないものだ。
例え俺が過去に囚われていたとしても、未だ自分を信じられなくても---それが俺の弱さだとしても”前に進む“。
そこだけは決して、変わらないんだ。俺にはもう、進むしかないから。
両親の死を背負い続けて、いつか死んだ時に
生きてヒーローになる。
俺に出来る、最後の親孝行でもあるだろう。
一番の目的は別にあるから優先順位としてはヒーローになるってのは低めだったりするが。
少なくとも生きるという点だけはどれにおいても高い。
「拳王技……」
「そうね……その通り。どうして、今まで気づけなかったのかしら。まだ学生で、子供なのに。大切な人を喪って、たくさん辛い思いをしたでしょうに…。そんな拳王技くんに言われて、今更気づくなんて。本当に大人として情けない話ね……」
「すみません。会って数分の、見知らぬガキがこんなことを。生意気なことだとは自分でも思いますが」
「いいえ……逆よ。ありがとう…今日焦凍と一緒に来てくれたのが拳王技くんでよかった。貴方のお陰で私も覚悟を決められたわ。いつまでも逃げてちゃいけない。目を背けて逸らし続けちゃダメだと分かったから。私の、私たちの過ちには私たちが目を向けないとダメだものね……少しでも、一歩ずつ前に進もうと思うの」
「そうですか…俺の経験が役に立ったならいいんですけどね。ただ轟のためにも無理だけはしないでください」
「ええ…本当にありがとう。もし良ければ、これからも焦凍のことよろしくお願いします。拳王技くんのような友人が居るなら私も安心出来るわ」
「…はい」
流石の俺もここは頷くべき場所というのは分かっていた。
これで少しは、彼女や彼らの関係性が良くなればいいんだけどな。
あとは…エンデヴァーだけだ。
変わらなくちゃいけないのはきっと、全員だろうし、勝手に余計なお節介をするが本当に関係を良くしたいならあとは当人たち次第だ。
とにかく俺は、少しの間冷さんと轟を交えて普通に雑談した。
「ありがとうな拳王技」
「何が? 俺は言いたいことを言っただけだし自分が勝手にやっただけ。感謝されるようなことは何もしてないだろ?」
「それでも…ありがとう」
「変なやつだな、お前」
「拳王技は変わってるな」
「どういう意味だよそれ」
病院から出たら突然変なことを言われた。
冷さんはまだ完全に回復したわけじゃないからすぐには戻れないと言っていた。考えて、整理したいこともあるから。
でも近いうちには退院する、と。
わざわざ俺に言ったってことは決意表明見たいなものなのだろう。
俺のせいで何かあったら流石に俺が自己嫌悪に陥りそうだからもう一度無理しないようには言ったけど。
「轟、家に行っていいか?」
「冬美姉に伝えとくよ。昼も食べていけばどうだ?」
「そりゃ遠慮しとく。食費クソかかるぞ?」
「そこは問題ねえと思うが」
…そういやNo.2の家か。
確かに問題なさそうだな。ただ用があるのはそっちじゃない。
「だけど急だな。俺は構わないが……」
「用が出来たからな」
「用?」
「ああ。簡単な話だ---俺に演技は出来ないからな。だから一度
「…は?」
ということで。
道場破りの時間だ。
訓練場のドアを勢いよく開く。
中央。
そこに座り込むエンデヴァーの姿は酷く小さく見えた。
背中は曲がってるしこっちを向かないし、重症じゃねえか。
出久に見られなくてよかったと思う。
「おい」
声を掛けて、ようやく気づいたらしい。
ゆっくりと振り向いたエンデヴァーは驚いたように目を見開く。
「お前は……あの時の……」
「いつまでそうしてんだよ。体育祭の威勢はどうした?」
「…俺は間違っていたのか」
「知らねえよ」
多分イラついてるんだと思う。
歩みを進め、エンデヴァーの胸倉を掴む。
オフというのもあるだろうが、覇気があまりにない。表情も死んでるように酷く、曇っていた。
いつものように炎すら出てないことから、こいつにとって仮面みたいなものなのだろう。
解決方法なんて思いつかない。
だからこそ。
「いっちょやろうぜ、エンデヴァー」
「…何?」
「俺と戦え。お前の許可が、プロの許可がありゃ問題ないだろ?間違ってるだの正解だのどうだっていい。後悔してぐだぐだ言ってる暇があるならかかってこいよ。オールマイトを超えるために努力してきたお前ならその意味が分かるだろ」
俺に出来るのは人の気持ちを受け止めるだけだ。
冷さんが覚悟を決めたなら、次はこいつを逃がさないようにしなくちゃならない。
覚悟を無駄にしないために。
俺はエンデヴァーと互いに向かい合っていた。
「さぁ…行くぜ?」
「……!?」
その瞬間。
一瞬にして接近した俺は拳を突き出し、エンデヴァーの頬を掠める。
反撃と言わんばかりに炎を纏わせて拳を突き出され、それを弾くと足を突き出す。
片腕で防がれ、エンデヴァーと俺の距離は離れた。
流石に生半可な相手じゃないらしい。
想像以上に隙がない。
”戦闘力“や”気“で見る癖があるが、この世界の人たちはそれだけじゃ分からない強さがある。
恐らく”個性“の影響だろう。
「何を笑っている……ッ!!」
「いけね……っ」
またしても表情に出ていたようだ。
目的は違うが、俺が成長するにも必要な相手と思って笑みを浮かべてしまった。
飛ばしてきた炎を身を逸らして避け、気弾を放り投げる。あっさりと迎撃されて爆発を引き起こし、爆風を突っ切る。
拳で殴ろうとして、居ないことに気づいた。
下。
咄嗟に左手で防御し、焼かれながらバックステップ。
”気“で守ったが、それでも熱いな。
だからこそ。
「本当に勿体ない」
「勿体ない……だと?」
「ああ、
「同じ、人間だと……。お前が、俺と同じ…?…ふざけるのも大概にしろよ。ああ、そうだ!
「そうだな、俺は違う」
共通点は意外と多い。
だが俺とエンデヴァーの、一番の違いがあるのだ。
それはきっと、俺が成長した一番の理由。
何も出来なかった”無個性“のガキが、ヒーローを目指せるほどに強くなれた理由。
エンデヴァーにはなく、俺にあったもの。
「貴様は既にオールマイト以上だ。あの体育祭で見せた力を維持出来るようになれば、それは間違いないだろう。それでも貴様は俺とは違って…辿り着けなかった俺とは違って、やつを瞬間的にでも超えて見せた……!なぜだ、何が違う…!? 同じだというなら何故俺は長年ヤツを超えられない!?」
「分からないのか? 本当に分からないってのか?」
「分かるわけないだろう……!」
「だったら体に叩き込んでやるよ。全開で行くぞ!」
吹き荒れる白い”気“が訓練場のドアを吹き飛ばし、盛大な音を立てた。
それが原因となったのか人の”気“が近づいてきて。
「何の音……お父さん!?それに拳王技くん…? と、止めないと!怪我じゃ済まなくなっちゃう---」
「今は止めない方がいい。拳王技なら心配いらないはすだ」
「でも…っ!」
「頼む、姉さん」
「焦凍……」
目を一瞬向けた。
止めず、続けさせてくれるよう説得してくれた轟に目で感謝を伝える。
演技が出来る性格じゃないせいでこんな危険な方法を選ぶしかないが、後で冬美さんには土下座しようと思っている。
許して貰えないなら切腹でもなんでもしよう。
「だあっ!」
「ぐぅ……!?」
加速。
同時に吹き飛ぶエンデヴァーを通り過ぎ、待ち構える。
経験からか見えなかっただろうに炎が吹き荒れ、攻撃をやめることを選択。
距離を離し、炎が消えた瞬間を狙う。
が、拳から放たれた直進する炎によって吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
予測か。
両腕を交差して防いだが、技でもないのに相当な威力だ。
本当に努力をしてきたのだろう。
オールマイトを超えるために。
それでも---。
「ふ---っ!」
距離を詰める。
飛ばしてきた炎をスレスレで避けていき、接近すると逆手にした拳を捻りを加えながら突き出す。
ガードされるが強引に持ち上げるように宙へ吹き飛ばす。
天井スレスレ。
足に炎を噴出させることで浮くエンデヴァーを見つめる。
「か」
落下しながら突き出してきた拳を交差して受け止め、素早くサマーソルト。
腕を弾き、瞬時に膝蹴りを叩き込む。
ジュアア、と焼ける音が響くが、関係なしに突っ込むと、エンデヴァーの拳と俺の拳が互いの頬を穿ち、宙で吹き飛ぶ。
「め」
放たれた炎を真正面から殴って打ち消し、連続の殴打を炎が熱いが避け、背後へ回って掴もうとすると背中から強烈な炎が噴き出して直撃する。
その際の衝撃で空中を回り、天井を蹴って加速するとエンデヴァーの拳に合わせて回し蹴り。
「は」
炎という性質上攻撃すると俺に少しずつダメージが及ぶ。
さらに炎がジェット機のエンジンのように推進力として噴流し、押し負けると腹部に拳が叩きつけられた。
「め」
怯む俺を捕まえようとするエンデヴァーだが。
「!?」
”残像拳“によって背面へ回った俺が”界王拳“を使用してエンデヴァーを大きく上空に蹴り飛ばした。
天井を突き破り、昼というのもあって太陽が照らしてくる。
眩い光に目を細めるが、俺は両手を腰部に添え、練っていたエネルギーを両手に即座に具現化させる。
波ぁあああああ---ッ!!
そして溜めたエネルギーを一気にエンデヴァーに向かって解き放つ。
「!! 赫灼熱拳---」
ジェットバーン!!
互いの技がぶつかり合い、爆煙となって視界を遮る。
そんな中で俺は”舞空術“で上昇し、エンデヴァーと同じ高度で停止する。
「あんたはすげぇよ。ここまで強くなるなんて、どれだけの努力を重ねてきたのか想像がつかない。俺とは違う修行方法で上り詰めたんだろう。”個性“だけじゃなく体術も鍛えられている。だからこそ恵まれたチカラを持っておきながら、なぜ諦めた?」
俺は師匠に鍛えられたから、ここまで来れた。
一人では到達出来なかった。
だが、エンデヴァーは俺のように師が居たようには思えない。となると、自力なのだろう。
何もかもなかった俺とは違って、強い”個性“があったとはいえ。
「赫灼熱拳は炎を超高温に圧縮し留め放つ一撃必殺だ……」
「だから連発すれば熱が篭り続ける。そのために弱点を無くせるもんを求めたってか?」
「そうだ…そうするしか俺に選択肢はなかった。
お前という存在がそれを否定した……!
拳を非常に強く握り締めている。
その顔も、苦渋に満ちたような激昂したような悲漢するような、後悔するような無茶苦茶なものだ。
「…ああ?」
「貴様だけではない。あの緑谷出久や爆豪勝己という学生も同じだ。俺の弱点を無くした”個性“じゃなくてもヤツと同じ世界へ踏み込んでいた……!! 別の方法で辿り着いてみせた。オールマイトを超えようと
…No.1になろうとしたのは、俺の夢は全部間違いだったというのか…!?」
「別に…俺はお前のその執着自体を完全否定するつもりはねぇよ。自分が背負う分には勝手にすりゃいい。結果的にとはいえそいつがなきゃ、轟は生まれてこなかった。俺たちと出会うことはなかった」
「まだ分からねぇのか。お前がオールマイトを超えられないのはそこだ。思い出せよ、お前はオールマイトじゃない。オールマイトみたいに”他人“のために生きる人間じゃねえだろ。
「俺とお前が違う一番の理由、それは限界を常に超えようとしないからだ…!」
「俺はどんなに高い壁だろうと足掻き、立ち向かい、そのことに絶望なんて一度もしたことは無かった!今も尚追い続けている!遥か先にいる人に追いつくために!!でもお前は自分でたどり着こうとしなかった。
そんなやつが
「お前は実力うんぬんかんぬんよりも、”心“で負けてるんだ! 精神論だと言われるだろうが、人間ってのはそう出来てんだよ!どんな”個性“だろうと人間だろうと力を引き出す一番必要な要素は”心“だ!”心“が負けを認めたら人はもう限界を超えることが出来なくなる!特に”個性“ってのはその要素が多く含まれてんだろうがッ!一番いい言葉をお前は知っているだろ!?俺たちと同じ高校に居たなら!!だったら、自分の限界くらい超えて見せろよ---!!」
界王拳!!
15倍!!!
「それが出来ねえなら、二度と立ち上がれないようにしてやる!」
”気“を全開にする。
この辺一帯を吹き飛ばすつもりで、俺の全力の”気“で。
無論、演技ではない。
ちゃんと安全性は考慮している。
ちゃんと高度もある。
地上に影響はない。見えることもないだろう。相手は知らないだろうが。
いや、もしかしたら…というか勘づきそうな人物を三人くらい知ってるが。
今はそれはいい。
ヒーローになれなくなろうともヴィランと扱われようとこの際どうだっていい。
友達と呼んでくれたあいつのために何も出来ないってなら、俺はもうヒーローじゃなくてもいい…!
俺の両親ならきっと、自分の”夢“のために動けない俺より動ける俺を褒めてくれるはずだから。
”気“が膨らみ、両腕を交差して両足を曲げて体を縮める。
膨らんだ赤い”気“が徐々に収束していき---
「ま、まさか……本気かっ!?貴様ッ!そんなことをすれば、俺どころか……!」
「言っただろ。俺がオールマイトと同じだと言うならば!
---超爆発波
赫灼熱拳---プロミネンスバーン!!!!
背中を大きく反るように全身を広げ、俺を中心として広がる”気“の爆発とエンデヴァーの全身から放たれた炎の放射。
その二つの技は拮抗し合い---
俺の技がエンデヴァーを押していた---。
――――――
また、同じだ。
この感覚、この遠のくような感覚。
絶望感。
間違いない、ヤツを、オールマイトの背中を追ってきた俺だからこそ一番よく分かっている!
”何らかのエネルギー“を扱う”個性“!
オールマイトに匹敵、いや、それ以上の力を秘めた学生……!ヒーローとして大成する頃には伝説として語り継がれるであろう者…!
俺では到達することの出来ない世界。
現に俺の全力の技を持ってしても、打ち勝つことが出来ない。
諦めることが出来たならば、どれほどよかったか!
嗚呼、わかっている。
自分が一番解っているのだ!
あのとき、雄英体育祭でこいつに殴られ、試合で実力を見せつけられ、自分の”弱さ“や今までやってきたことを全部叩きつけられた…!
まるで冷水を浴びせられたかのように……!
”個性“を呪い、諦めた。
俺では、超えられないと。
家族を傷つけた。
『俺から逃げるな。おまえから逃げるな』
かつて言った言葉は、果たして本当に焦凍に向けたものだったのか。
分からない。
思い出せる。
今でも、思い出せる。
悪漢から少女を救おうとし結果少女もろとも肉塊と化した父の姿。
誇示していなければ保てぬ程度の醜い心を…!
自己嫌悪と無力感。劣等感。
それらが俺をここまで連れてきた。
超人にはなれない。
俺ではオールマイトを超えられない。
だから、勝てないのだ。
押し負ける。
この学生は”本気“だ。
一体何があったのか。
俺を殴った際、左手に大怪我を負うことすら躊躇しない、自分の体なんて一切気にしない行動。冗談でも何でもなく、発せられる強い”殺気“。
こいつはこの歳で
もしこの一撃が地上へと行き渡れば、周囲一帯は吹き飛ぶ。オールマイトの一撃だ。
そうなるのは必然。
ならば、ヒーローでないこの学生はどうなる?
ヴィランとして扱われるだろう。
俺が仮に死ねば、残されたのはエンデヴァーというヒーローを殺した雄英生という肩書きのみ。
誰が許そうと、世間は許さない。
そうか、”全部“を投げ出すほどの覚悟。
それを動かす
俺と同じ人間。
俺と同じ、”弱さ“を抱える者。
違うのは、そこなのか。
命すら投げ出す---狂っている。あまりに
貴様も、同じであろう……!
そうでなくとも、俺は仮にもヒーローだ。
それが学生に負けるだけでなく、学生をヴィランにさせるなど、させていいはずがない。
俺がやってきたことは許されることでは無い。
だとして、未来ある学生の将来を奪っていいものか…ッ!?
そうなれば俺は、オールマイトどころか前提としてヒーローではなくなってしまうだろう……!!
ならば。
ならば。
ならば……!!
もっと火力を上げろ!!
お前に残されているのは、俺に出来るのは、それだけであろう轟炎司!!
押し負け---
---そうだ。
俺は……
俺の敵は……!!
そうして、
「ああ、そうだ。そうだったな。
赫灼熱拳---
「他の誰でもない、俺だった……ッ!!」
「……!?」
プロミネンスバーン
「なんだ---」
ノヴァ
「やれば出来るんだよ…”個性“があって
その瞬間、
俺の一撃がヤツを貫き、堕ちていく姿があった。
俺の長年の経験と、ヤツの実力から全てを理解する。
こいつは、
すぐに消したとはいえ、学生に出していい火力ではないことは頭で解った。
唖然としたのは一瞬で。
俺は、すぐさま男の救助へと向かった。
そして、俺に
――――――
何があったのか。
見えなかった俺には分からなかった。遥か上空だ。
雲に隠れていて見えない。
隣では姉さんが心配しながら見上げていて。
ただ俺に分かることは一つ。
拳王技は…また
俺にそうしたように。
俺だけじゃない。
切島にも同様のことをしたらしい。
こればかりは本人の気質ってやつなのだろう。
ここに来る前に聞いた。
なんでそこまでするのか。
『…まあなんだ。今、俺らって友達なんだろ。困ってるなら力になりたいって思うのがそうなんじゃないのか。全然居たことないし知らんけど』
『…なんてな。ま、俺がエンデヴァーと戦ってみたいだけだよ。ああいうやつにはズコーン!って誰かがやってやらねえとな』
そう、照れ隠しのように言っていた。
だからきっと、拳王技は俺の、俺たちのために動いてくれたのだろう。
あいつの実力は遥か上だ。トップの世界に居る。
だが同時に、
脳無の時もそうだ。
自分の実力を知っているからか、全部一人でやり遂げようとする。俺たちでは届かないから、やるしかないと思ってるのだろう。
それらのことは、今なら分かる。
「あれ……!」
すると。
雲の中から凄まじい速度で落下してくるものを捉えた。
全身が炎に包まれ、意識がないのか真っ直ぐに落ちてくる。
一瞬クソ親父かと思ったが、その割には包まれている炎があまりに小さい。
「まさか……拳王技か!?」
「えっ!?」
予感してた通りなことに
腐ってもNo.2だ。殺すような真似はしないだろう。
でもいくらアイツでも、状態によっては死ぬ!
脳無戦の時なんてギリギリだったんだ、不死身なわけじゃねぇ…!
”個性“の許可など気にしてる場合じゃない。
すぐに氷を生み出そうとして---
「とんだ無茶をする……ッ!!」
落下地点に割り込んだクソ親父が受け止めようとしていた。
「む……!?なんだこの重さは…!?サポートアイテムか!?焦凍ォ!!」
「チィッ…!!」
ここはヒーローとしてのエンデヴァーに従うべきだろうと、拳王技のために大人しく俺は氷結を生み出す。
クッションのように生成するが。
おかしい。いくら重力に引かれて落ちてきたといっても拳王技とクソ親父の体重を防げないはずは……まさか重りつけてるな…!?
最近は外してたらしいからこういうやつだと言うことを忘れていた!!服は燃えてるからその分減ってるだろうが……この際仕方がねぇ…!
「おい!リストバンド燃やせ!!」
「何!?ここか……!!」
拳王技には後で謝ることにして、すぐさまリストバンドがある場所らしき部分だけを正確に燃やしたであろうエンデヴァーの落下速度は明確に落ち、即座に氷を一気に生成させる。
すると軽くなった分マシになったお陰か、さっきのが嘘のように止まっていた。
「冬美!すぐに救急箱を頼む!焦凍は---」
「言われなくても分かってる!」
「わ、分かった!」
本当に無茶するやつだ…!!
クソ親父の顔がさっきに比べて生気が戻っていることから、拳王技が何かをしたのは間違いない。
返せない恩が出来ちまった。
何より、応急処置をしながら俺は---。
どこまでも先を行く拳王技を、改めて追い抜きたいと思った。
今度は俺が、力になれるように---
そうして心に、炎が宿った気がした。
おちたな(確信)
あぁ^〜プロットが崩壊する音〜^
アンケで解決して欲しそうな人も多数いたので…ここまで来たら目指せハッピーエンド。
暗いのは他のみんなに任せる。ドラゴンボールだし暗いのはあんまいらんやろ